トップ・ページ>フットボール>エッセイ「Footballの旅」

   



Vol.23 Premiership; Manchester City VS Arsenal, City of Manchester Stadium 24.10.2010

from NLW No.436 - November 02 2010  
バックナンバー

 
下村えり
Eri Shimomura
リヴァプール在住のフローラル・デザイナー。ファンとして長年プレミアリーグをウォッチし続けるうち、日本からの取材コーディネートや原稿執筆を手がけることに。スカウス・ハウスのメールマガジン「リヴァプール・ニュース(NLW)」に『Footballの旅』と『リアルエールのすすめ』を不定期連載中。
【 Introduction:はじめに 】
10月というのに朝から霜が降りました。リバプールも秋が深まり、冬の足音が静々と聞こえてくるこの頃です。
皆様お元気でしょうか。今日はマージーサイドを出て、お隣マンチェスターでの熱戦、<Manchester City Vs Arsenal>のライブの模様をレポートします。しばらくお付き合いください。

【 Manchester City Vs Arsenal:今回の見所 】
“秋深き隣は何をする人ぞ”
お隣のマンチェスターと言えば、先日、マンチェスター・ユナイテッドのWayne Roonyの契約延長拒否発言が物議を醸し、メディアを大いにぎわした。
結果から話すと、Alex Ferguson監督やクラブの説得にRoonyはあっさり決心を翻し、ユナイテッドと再び5年間の契約を結んだ。そして、『このクラブに将来性、情熱を感じない』という自らの発言に対し、クラブ、チームそしてファンに謝罪した。

本当にお騒がせも程ほどにしてほしいものだ。マンUのファンだからということではなく、Wayne Roonyを一人の大人として見て、彼の行動に腹が立つ。クラブに留まろうが去っていこうが、彼が考え抜いて決断したことであれば、貫いてほしかった。数時間のクラブの説得で翻意するくらいなら、メディアへの発言はもっと慎重にするべきだろう。彼の意思の弱さが、そのまま彼の今のプレーに現れていると私は思う。

どんな名プレイヤーも、決してぬくぬくとその地位を与えられたわけではない。
困難に直面しても自分を見失わず、真っ向から立ち向かってそれを乗り越えたからこそ、英雄と称されるのだ。
駄々っ子のようにしか見えないRoonyであるが、今後は成長して、一歩ずつでいいから進化して行ってほしいと願う。

イギリスのメディアが一番最初にWayne Roonyの新しい移動先に予想したのは、もちろん同じ市でライバルでもあるマンチェスター・シティである。
以前も、Carlos Tevezがユナイテッドに契約延長を拒否され、大勢の熱いファンが見守る中、泣く泣くマン・シティに移籍したことがあった。このことは今でもユナイテッドファンの傷として残っている。

今回に関しては、マン・シティ・サイドは表向き全く興味を示してなかったようだ。欧州の強豪チームでは、「マンUが放出するなら、 私のところに電話してほしい」とレアル・マドリッドのモウリーニョ監督がコメントするなど、興味を示すところも出ていたが、ゴシップがスクープに化けることはなかった。
騒ぎがひとまず収まり、個人的にはホッとしている。

さて、そろそろ今日の主役であるマン・シティとアーセナルにライトをあてることにしよう。
アウェイチームのアーセナルは、プレミアリーグではマンUと肩を並べ、トップを走るチェルシーを5ポイント差で追う。10月の最初の一戦はそのチェルシーを相手に2−0で落とすものの、その後はバーミンガムとのホーム戦を2−1で勝利し、UEFAチャンピオンズ・リーグではグループステージでの第3節、FCシャフタール・ドネツクを5−1の大差で圧倒、6点を奪ったSCブラガ戦に続き一蹴した。かなりの上昇ムードでここCity of Manchesterに乗り込んで来たわけだ。

未だにエースのMF Van Persieをはじめ何人もの怪我人を抱えているアーセナルであるが、MF Cesc Fabregasが完全にポジションに戻ってきたのは嬉しいニュースである。加えて、DF Laurent Koscielnyは間に合わなかったものの、今日はDF Bacary Sagnaが大腿部の故障から復帰のようだ。

一方のホームのシティは、リーグ戦、ブラックバーンでのアウェイゲームを2−3で勝ち、先週はUEFAヨーロッパリーグ、グループAでFW Emmanuel Adebayorのハットトリックにより3−1で勝利、KKSレフ・ポズナニに3ポイント差をつけて首位へ浮上した。

アーセナル、シティともに調子は上向きで、今シーズンのリーグチャンピオン争いでしっかりと存在感を見せつけている。

【 City of Manchester:シティ・オブ・マンチェスター 】
秋晴れのフットボール日和になった今日のシティ・グラウンド。相手が共にリーグの上位でチャンピオンの座を狙うアーセナルの大一番とあって、大勢の人で賑わった。
スタジアムのサイドでは、10日ほど前に亡くなったMalcolm Allison(享年83)の追悼セレモニーが厳かに行われていた。60年代後半から70年代にかけて、シティに栄光をもたらした監督である。スタジアム入り口の一角にある彼のメモリアル・プレートは、ファンからの花束で飾られていた。

シティ・オブ・マンチェスター・スタジアムは、2002年のCommonwealth Games(英連邦の競技大会。4年ごとに開催)のために建てられたスタジアムを増改築したブランド・ニュー。外観もモダンだが、中に入ると文句のつけようの無い完全な設備とスペース。急角度でちょいと目が眩みそうな階段も何度も来るうちに慣れて来た…のだが、今回は本当に一番トップにあるBB席だった。

【 Kick Off:試合開始 】
試合の直前に、スタジアム全体でシティの英雄Malcolm Allisonを追悼。黙祷の代わりに、ファンの拍手で感謝を込めて故人を送り出した。
そして午後4時、アーセナルのキックで試合が始まった。

<前半>
わずか1分を過ぎたところで、ホームのシティが良い動きを見せた。FW Carlos Tevezの右サイドからのクロスをMF David Silvaがあわせ、鋭いシュートを打つが、アーセナルGK Lukasz Fabianskiが辛くもセーブ。開始早々にエキサイティングな一場面だった。

シティはその後も意欲的に前に出る。しかし開始5分、この試合の行方を左右する決定的な事件が起きた。
アーセナルMF Fabregasからの素晴らしいロング縦パスを受け、ペナルティーエリアに切り込んだFW Marouane Chamakhが、シティDF Dedryk Boyataの遅いタックルにより倒される。審判は周りを囲むアーセナルの選手達を振り切り、レッドカードを高々と掲げた。

ペナルティーエリア外であったが、決定的なチャンスでの、ゴールに一番近いプレイヤー(英語ではラストマンと呼ぶ)へのファウルであり、いきなりのレッドも当然だろう。さすがにホーム・シティの観衆も納得したかのような、落胆まじりの静けさがスタジアムに訪れた。

Boyataが退場となり、シティは残りの80分以上を10人で戦わなくてはならなくなった。数的有利になったアーセナルサイドは、徐々にシティゴールに迫って来る。

そして20分、いつものアーセナルらしい連携パスが見事に決まった。
今日鋭い動きを見せているMF Nasriが、シティのデフェンスを潜り抜けてボックス内に進入したMF Arshavinを見つけるや否や、シャープなパスを送る。送ると同時にすぐさまゴール右に駆け込んだNasiは再びArshavinからボールを貰うと、ボールはあっさりとネットに収まった。0−1。アーセナル先制!

押されぎみのシティは30分前、DF Micah Richardsが右サイドからシュート。しかし惜しくもゴールを外れる。

それからもアーセナルの美しいパス回しは続き、観戦するものたちの目を楽しませてくれる。『ブラボー!』
そしてハーフタイムが近づいた39分、シティDF Vincent Kompanyのボックス内ファールからFabregasがペナルティーを取る。
1点では十分と言えないアーセナルに追加点のチャンス。一方のシティとしては、これ以上敵にリードを許すべきではない。緊張感がひしひしとスタジアムに漂った。

ペナルティーシュートを蹴るのは、やはり怪我から戻ったチームキャプテンFabregas。ネット右を目掛けて蹴ったボールは左にカーブし、スイングするが、イングランドゴーリーJoe Hartに阻まれてしまう。アーセナル追加点ならず。

<後半>
0−1で迎えた後半、シティは1人少ない10人で、必死で1点を追う。
しかしながら、アーセナルは後半も動きがシャープで守りも堅い。完全にアーセナルが主導権を握る展開。

シティも57〜58分とSilvaとサブで投入されたAdebayorが左右からアーセナルゴールを襲うが、得点に結びつかない。

その後も地道にボールを連携させるアーセナルに追加点のチャンスが現れた。
65分を回ったところだった。ペナルティーボックスの外中央のFabregasが、ボックス内右で待つChamakhにパス。ボールはシティのデフェンス陣に遮られ跳ね上がる。しかしラッキーにもそのボールは走り込んで来たMF Songの前に落ち、彼はゴールへとティップ。0−2。
ちょっと幸運なゴールと言えるだろうが、ラックもやはり勝負の内であろう。

シティも2点差をどうにか縮めようと必死にボールを蹴るが、数的不利に加えて、若く、俊足ぞろいのアーセナルが相手では、試合の流れを変えるまでには至らない。

そして88分、左中央ラインからのNasriのロングパスがサブで入ったFW Bendtnerに渡ると、疲れの見えるシティのディフェンス陣を尻目に駆け抜け、ダメ押しの3点目が決まった。0−3。

【 Ending:試合終了 】
結局、最後まで食い下がるシティを振りほどき、ジリジリと時間を掛けてパスワークで攻めるアーセナルに軍配が上がった。
試合開始わずか5分に起きたBoyataのファール、レッドカードが完全に勝敗を分けた今日の試合だった。
これでアーセナルはマンUと共に勝ち点3を上乗せし、リーグ上3位に浮上。マン・シティは4位に後退した。

下村 えり(Eri Shimomura)


【 マッチ・データ 】
 Premiership 10-11
 Manchester City VS Arsenal
 City of Manchester Stadium
 24 October, 2010  16:00 Kick Off
 Attendance: 47,393
  マン・シティ アーセナル
スコア
(Nasri20, Song66,
Bendtner88)
ターゲットショット
コーナーキック
ファール 11 12
オフサイド
イエローカード
(Barry13,
Kompany72)

(Denilson8, Fabregas27, Song33, Djourou36)
レッドカード 1(Boyata5)
ポゼッション 38% 62%

 Man City
  Hart, Richards, Boyata, Kompany,Boateng, Silva, Toure Yaya,
  De Jong, Barry, Milner, Tevez.
  Subs Not Used: Johnson, Lescott, Given, Vieira.
  Booked: Barry, Kompany.
  Sent Off: Boyata.

 Arsenal
  Fabianski, Sagna, Djourou , Squillaci, Clichy, Nasri, Fabregas,
  Song , Denilson, Arshavin, Chamakh.
  Subs Not Used: Eboue, Gibbs, Koscielny, Szczesny.
  Goals: Nasri, Song, Bendtner.
  Booked: Denilson, Fabregas, Song, Djourou.

from NLW No.436 - November 02 2010     

Copyright(C) 2014 Eri Shimomura & scousehouse

トップ・ページ>フットボール>エッセイ「Footballの旅」