July 08 2008, No.349
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  リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World   
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▼特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
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「ゴールドフィッシュだより」 / ミナコ・ジャクソン
       〜 Goldfish Liverpool Update / Minako Jackson 〜

 ― 第133号 / ローマン・スタンダード(鳥)事件! ―
 ≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish133_photo.html ≫

こんにちは。
今週は、身近に起こった話題をひとつだけお伝えします。

トレイシー・エミンは、90年代に注目を浴びたヤング・ブリティッシュ・
アーティスツ(YBA)と呼ばれるムーブメントの中心作家の一人として
ブレイクして以来、イギリス現代アートが誇る代表選手です。

過激&お騒がせアーティストというイメージが先行しがちな彼女が、
初のパブリック・アート作品<Roman Standard>をリヴァプール大聖
堂に隣接するオラトリーにて除幕したのが、2005年2月。
アーツ・カウンシル主催の「アート05」というイベントと2008年のリヴァ
プールの欧州文化首都を祝って、BBCが6万ポンド(約1,200万円!)
かけて依頼したコミッション作品ということでも話題になりました。

<ローマン・スタンダード>は、4メートルのブロンズ製の棒の上にちょ
こんととまっている手の平サイズの鳥の彫刻で、「希望、信仰、スピ
リチュアリティ」を象徴しています。
発表当時から、国営放送局がこんな彫刻に多額のお金をつぎ込む
なんて税金や受信ライセンス料の無駄遣いだという非難と、これま
でのイメージを払拭してトレイシー・エミンが好きになったという賛否
両論でした。

私事になりますが、2週間ほど前に来客があり、大聖堂を案内した
ついでに、せっかくだからオラトリーにあるトレイシー・エミンの作品
も見てもらおう、と思って覗いてみたら、、、なんと鳥がいませんでし
た!
状況が瞬時に把握できないまま、その時は通り過ぎましたが、数日
後に旦那が大聖堂に報告したところ、どうやら誰も気づいていなかっ
たようでした。
<Artinliverpool>では真っ先にブログに掲載
( http://www.artinliverpool.com/blog/blogarch/2008/06/tracey_emins_bird_has_flown.php )
し、BBCや関連団体にもメールをしたのですが、寝耳に水だったよう
です。

それが今週の火曜日になって、BBC地方局の《North West Tonight》
の特派員から連絡があり、第一発見者(であろう)と私と通報者の旦
那がインタビューを受けました。
特派員のジェーン・バレットさん曰く、関係する団体に取材をしたとこ
ろ、どこからも芳しいコメントが得られないとのこと。ここでいう関係
団体とは、BBC、アーツ・カウンシル、ナショナル・ミュージアム・リ
ヴァプール(NML)、トレイシー・エミンの所属するロンドンのギャラ
リーのホワイト・キューブ、そしてリヴァプール大聖堂。

アーツ・カウンシルは、「この件については関与していないので何と
もいえない」。
大聖堂は「オラトリーは大聖堂ではなく、NMLが管理しているので、
大聖堂はこの件について関与していないが、警察に連絡をしたとこ
ろ、所有者から盗難届けが提出されない限り、動きがとれないと言
われた」とのこと。
オラトリーを管理するNMLは、「オラトリーの敷地を提供したが、彫刻
の所有も管理もしていないので、この件には関与していない」。
BBCは「出資はしたが、著作権と所有権は作家本人に帰属するの
で、BBCとしては関与できない」。
作家本人からは「コメントが得られなかった」、作家の所属するホワ
イト・キューブからは「BBCがコミッションしたものなので、BBCに相談
すべきこと」とのこと。

盗まれたのか? それとも修復のために一時的に持ち出されたの
か? といった鳥が消えた疑問から、責任を擦り合う様子に焦点が
移り、ますますナゾが深まっていきました。

「棒にとまった鳥の彫刻が、ただの棒に?!」という火曜日の晩の
BBCのニュースが放映された翌日、ようやく地元紙のエコーやデイ
リー・ポストなども記事に取り上げはじめ、トレイシー・エミン本人から
も「これは犯罪でリヴァプールに対する侮辱だわ」とのコメントも発表
されたようです。

そして木曜日の午前7時ごろ、BBCラジオ・マージーサイドから電話
があり、「鳥が返ってきたので見にきますか?」とのこと。
旦那と私が急いで準備をして大聖堂に向かうと、レポーターのイア
ン・ケニオンさんが、ジフィー・バッグ(プチプチのクッション付きの封
筒)に入れられた<ローマン・スタンダード>を見せてくれました。
イアンさん曰く、その日の早朝未明に「オラトリーに鳥を返した」とい
う匿名のメッセージがBBCのリヴァプール支局の留守電に残ってい
たので半信半疑でオラトリーに向かってみると、「FAO Tracey Emin,
Urgent!」と書かれた白い封筒を発見したそうです。
中には、鳥とエコーの記事の切り抜きと、紙の切れ端に鉛筆書きで
「ごめんなさい。鳥を盗りました。でも悪気はなかった。もっと早く返し
たかったけど、怖くなった。xxx(キスマーク3つ)」と書かれたメモが。

おそらく複数の若者がいたずらで盗んだのではないかと思いますが、
有名なアーティストの高額な作品だと知ってビビッてしまったのでしょ
う。
それにしても無事に返還してよかったです。あとは、管理責任などの
役割分担を、はっきりしておかなきゃですね。

Artinliverpool:
http://www.artinliverpool.com/blog/blogarch/2008/07/tracey_emins_bird_returns.php

♪ ♪ ♪

【今週の告知】
ワールド・ミュージアム・リヴァプールにて、《Beat Goes On》展が7月
12日からスタートします。
ビートルズからズートンズまで、イングランドにおける "Most Musical
City" と認められたリヴァプールの60年間の音楽の歴史を、メモラビ
リアや写真などで綴った展覧会です。
数多いビートルズのメモラビリアの中でも注目なのは、ジョンとポー
ルが出会ったセント・ピーターズ教会ホールにあった今はなきステー
ジのオリジナルが、初めて再び組み立てられて展示されます。
また、ジュークボックスやカラオケ・コーナーも設けられるそうですの
で、各ジェネレーションの音源を聞くだけではなく、せっかくだから
歌っておきたいですね。

Beat Goes On: http://www.myspace.com/thebeatgoesonliverpool
World Museum Liverpool: http://www.liverpoolmuseums.org.uk/wml/exhibitions/thebeatgoeson/index.asp

それではまた来週。

ミナコ・ジャクソン♪

PS: 先週に続いて、ゴー・スーパーラムバナナの写真を送ります。
今週は、アルバートドック近辺のラムバナナちゃんたちです!


≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish133_photo.html ≫


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