October 21 2008, No.361
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  リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World   
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▼特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
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「ゴールドフィッシュだより」 / ミナコ・ジャクソン
       〜 Goldfish Liverpool Update / Minako Jackson 〜

 ― 第141号 / アーバン・キャンヴァス&ダニエル・ジョンストン ―

 ≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish141_photo.html ≫

こんにちは。
夏時間から冬時間に切り替わるまで1週間を切りました。このところ日
照時間が著しく短くなってくるのを感じます。
長い冬への突入かと思うと少々へこみますが、その代わりといっては
何ですが、冬は晴れれば夕焼けが素晴らしく綺麗で、ついついボーっ
と空を眺めてしまいます。
家の窓から撮った写真を送りますね。

♪ ♪ ♪

さて、今週ですが、まずは18日土曜日。ボールドストリートから一本道
を入ったFACT前の広場にて、アーバン・キャンヴァス主催《James
William Carling Pavement Art Competition》 が開催されました。アイ
リッシュ・フェスティバルの一環でもあります。

この大会の名前となっているジェームス・ウィリアム・カーリングは、ヴィ
クトリア時代のリヴァプール出身の画家(1857年生まれ)。
アイルランド人の両親のもとに生まれ、貧しい家計を支えるために5歳
から物乞いを余儀なくされ、8歳になる頃にはボールド・ストリートをは
じめとした市内の路上で描いていたぺイヴメント・アートの才能が認め
られて「リトル・チョーカー」として知られるようになりました。

14歳で大志を抱いて兄のヘンリーと共にアメリカに渡り、その後、エド
ガー・アランポーの小説の挿絵を手掛けるなど画家として成功を収め
ます。
1887年に故郷のリヴァプールで画家の活動を続けるために帰国しまし
たが、同年に亡くなりました。
カーリングの作品は現在、ボールド・ストリートの<Maggie May's Cafe>
の上の階に展示されています。

ぺイヴメント・アート(又はストリート・ペインティング)は、路上でパステ
ルやチョークを使って地面に直接描く絵画で、16世紀のイタリアで発祥
したと言われています。
英語ではペイヴメント・アートを描く人のことを「スクリーヴァー」と呼ぶ
そうです。
かつて、腕のあるスクリーヴァーは、観客からの投げ銭でかなり儲かっ
たらしいですが、現在は時代の流れで、管理社会で市の規制が厳しく、
許可なしに路面に絵を描いたり、ミュージシャンがバスキングをするな
どの大道芸は禁止されています。寂しいですね。

今回は、そんなカーリングの縁の場所であるボールド・ストリート地域
で、(もちろん合法に!)20名の参加者が朝10時から描きはじめまし
た。
不安定な天気の中、参加者の中には突然の雨でチョークが流れてしま
い涙をのむ場面もありましたが、全体的に沢山の買い物帰りの通行
人が足を止めて眺めていて賑わい、FACTの前の広場がちょっといつ
もよりヨーロピアンな雰囲気に見えました。

審査員には、リヴァプールのカルチャー・リーダーであるフィル・レッド
モンド、リヴァプール・ホープ大学のファイン・アート学部長のピーター・
ドーヴァー(彼自身もかつてスクリーヴァーだったそうです!)、私の旦
那のイアン・ジャクソン、故エイドリアン・ヘンリーの未亡人キャサリン・
マルカンジェリ、そしてマイク・マッカートニーが出席。

表彰式は、Maggie May's Cafeにて和やかに行われました。
結果は、<ジェームス・カーリング賞>の大賞は、リヴァプールへやって
きたアイルランド人の移民たちを描いたテリー・ケインが、<エイドリア
ン・ヘンリー賞>の大賞は「そして神はフットボールを創造された−神は
赤か青か?」というユーモアのある作品を描いたクリフォード・セイヤー
ズ(式は欠席)、二位にステイシー・ケリーが受賞しました。

殆どのアーティストにとってペイヴメント・アートという慣れない手法で
あったにもかかわらず、なかなかスタンダードも高くて驚きました。
肌寒い木枯らしの吹く中、心温まるローカルなコミュニティーイベントで
した。また来年も楽しみです!
Urban Canvas: http://www.merseyworld.com/interfest/jamescarling.htm
Open Culture: http://www.culture.org.uk/News.aspx?newsId=49

♪ ♪ ♪

一日戻りますが、18日金曜日に、個人的に待ちに待っていたダニエ
ル・ジョンストンの《Fear Yourself》展が始まりました!
ダニエル・ジョンストンはアメリカはテキサス在住の奇才、天才と呼ば
れるシンガー・ソング・ライターでありアーティストです。
双極性疾患,、統合失調症を患い、精神病院への入退院を繰り返しな
がらも、世界中からの根強いカルト的音楽ファンだけでなく、他のミュー
ジシャンからのリスペクトを得て、現在も活動を続けています。

ビートルズの影響を多大に受けて、ソングライティングやレコーディン
グをはじめます。
ニルバーナの故カート・コバーンがダニエルの最初のカセット「ハロー・
ハウ・アー・ユー」のジャケ写のTシャツを好んで着用し、メディアに現れ
たことがきっかけで、ダニエル・ジョンストンの存在が音楽ファンの間で
ダニエルの存在について話題が急騰。後にはソニック・ユースやジャ
ド・フェア、ヨ・ラ・テンゴとのコラボレーションでレコーディングとライブを
行ったり、2004年にはトム・ウェイツやベック、ティーンエイジ・ファン・ク
ラブ、フレーミング・リップスといったミュージシャンがダニエルの楽曲
のカバーをレコーディングし、リリースされます。

様々な奇行をなしたことでも知られていて、ファンからテープを送って
ほしいと注文があると、ダビングという概念がなかったのか、宅録で
一曲一曲録音してファンに送ったというような微笑ましいエピソードか
ら、気分はすっかり『おばけのキャスパー』のコミックの一シーンになり
きって、父親の操縦する小型飛行機に乗っている最中に、突然イグ
ニッションキーを引き抜いて窓から放り投げて、機体を墜落させると
いった笑えない事件まで。幸運にも2人とも生還したのでよかったです
が。。。

2006年に放映されたジェフ・フォイヤジーグ監督によるダニエルのド
キュメンタリー『悪魔とダニエル・ジョンストン』には、幼少の映像から撮
影当時の40代の様子までそうした生き様が見られます。機会があった
ら是非見てみてください!

ダニエル・ジョンストンは、シンプルで純粋で壊れやすい彼だけの小さ
な世界の中で生きていて、精神面では10代のまま成長が止まっていま
す。
歌や絵画には似たようなモチーフが頻繁に登場していて、今回の展示
を見てもそれが分かります。
オリジナルのカエルのジェレミア・ザ・イノセント、空飛ぶ目玉、頭のな
い胴体、初恋の相手のローリー、大好きなマンガ『おばけのキャス
パー』や『キャプテン・アメリカ』、ドリンクのマウンテンデュー、悪魔、善
と悪の戦い、などが色とりどりに描かれています。

プライベート・ヴューには、普段よりも音楽よりな観客が多く詰め掛けま
した。私もかなり写真を撮りましたが、ダニエル・マニアらしき若者達は
上には上をいっていて、頭が下がりました。
10月30日の晩には、ギャラリーで地元のバンドが集まり、ダニエル・
ジョンストン・ナイトも企画されています。
この展覧会は、11月1日まで続きます。

 < Red Wire Gallery >
  Carlisle Building, 69 Victoria St. Liverpool
  開館時間:木〜日午後12時〜6時まで 入場無料
  ホームページ: http://redwireredwire.com/page5.htm
  ダニエル・ジョンストン公式HP: http://www.hihowareyou.com/

♪ ♪ ♪

【今週の告知】
今年もまたリヴァプール・ミュージック・ウィークがやってきます。特に今
年は《MTV European Music Awards》が11月に行われることもあり、更
にパワーアップの様子です。初日、二日目だけでも、10月30日Nation
にてザ・フォール、同日TateLiverpoolでは元クラフト・ワークのウルフ
ガング・フリューア、31日にはゴールドフラップ、ミステリージェッツ、そ
して個人的に最近ヘビーローテーションで聴いているノア・アンド・ザ・
ウェイルのライブをはじめとして沢山のステージが予定されています!
Liverpool Music Week: http://www.liverpoolmusicweek.com/

それではまた来週。

ミナコ・ジャクソン♪

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