June 23 2009, No.386
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  リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World   
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▽特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
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「ゴールドフィッシュだより」 / ミナコ・ジャクソン
          〜 Goldfish Liverpool Update / Minako Jackson 〜

 ― 第158号 /
     White Feather & Turning The Place Over Birthday Party! ―

 ≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish158_photo.html ≫

こんにちは。
夏至にさしかかり日照時間が伸び、午後10時になっても午後5時のような明る
さですが、気温はまるで10月のような肌寒い毎日が続くリヴァプールです。

6月12日(金)の正午、ピア・ヘッドのフェリーターミナル・ビルの2階のテ
ラスから、300個の風船が空に放たれました。
フェリーターミナルにできた Beatles Story (ビートルズ博物館)別館での初
めての展示《White Feather: The Spirit of Lennon》のオープニングを記念し
てのイベントです。

透明の風船の中には、白い羽根が一枚ずつ入っていて、300個のうち50個には、
この展覧会の無料チケットが付いています。
風船のほとんどは、風に乗って北東方向に飛んでいきました。どこで拾われるの
かが興味深いところです。

さて、この展覧会ですが、これはJohn Lennonの前妻Cynthiaと、ふたりの息子
でミュージシャンでもあるJulianの全面協力によって、写真やインタビュー映
像、メモラビリアで綴られた、これまであまり知られることのなかった初期
John Lennonの極めてパーソナルな家族の物語です。

6月17日の一般公開に先駆けて、前日の16日(火)に行われたオープニングに
は、CynthiaとJulianが揃って出席しました。
展示品は一切撮影禁止でしたので、残念ながらお見せすることができませんが、
見ごたえがありました。
CynthiaやJulian自身も、完成した展覧会をみながら、見たことがなかった写真
に驚き、忘れかけていた記憶が呼び起こされたとのことです。

私が駆け足で回って見学した中で印象に残ったもののなかには、乳母車に乗った
Julianを一目見ようと押しかけたファンに囲まれながら自宅を出ようとする
Cynthiaの写真、子供時代にJulianが描いた絵や、ホリデー先から家族・親戚に
宛てたポストカード。

Cynthia自身のスケッチで、「Johnとの待ち合わせ」、「結婚式」、「Julian誕生」、
「ハネムーン」。
ハネムーンのスケッチでは、滞在先のパリにてJohnとCynthia、そしてAstrid
Kirchherrが3人で雑魚寝をしている微笑ましい姿が描かれています。

そしてJohnがJulianに贈ったホンダのMonkeyバイク(これがきっかけでバイク
狂になったと苦笑していました)、「To Julian from Daddy Christmas 1973」と
刻まれたケースに入ったエレクトリック・ギターの現物などが見ものです。

Cynthiaのオーディオ・インタビューで、Johnとの出会いについて、「彼はハン
サムでもないし、何よりとっても失礼な人という印象」だったと語るのを聞いて、
思わず噴き出してしまいましたが、彼のユーモアに触れるにつれて、次第に魅力
が湧いてきた、と話す口調には愛情が感じられました。
また、アートカレッジの頃のこと、1960年代当時のリヴァプールの様子も伺うこ
とができます。

John Lennonの死後、JulianとCynthiaには遺品が全く相続されなかったため、
Julianはこの10年間、多額を注ぎ込んで、オークションに出されていた父親の
形見となるパーソナルな所持品やビートルズのメモラビリアを精力的に収集した
といいます。

「自分のためだけではなく、いつか自分が家族をもったときに、子孫たちにも家
族の歴史を見てもらいたいと思った」

また、こうして集められたアイテムが、日の目をみることなく倉庫で大事に保管
されるよりも、外に飛び出して、特にリヴァプールの街で、ビートルズ・ファン
たちと分かち合いたいと考え、Beatles Storyでの展示に踏み切ったそうです。

Cynthiaが「We're back to where we once belonged」とつぶやいたのが印象的
です(Get Backの歌詞ですね!)。

こうした経緯で収集された、ビートルズのゴールド・ディスクやプラチナ・ディ
スクの数々、Johnが着用したアフガン・コート、映画《Help!》で使われた黒い
ケープ、そしてこの展覧会のハイライトでもある、Paul McCartneyによる鉛筆書
きの<Hey Jude>のレコーディング・メモが見られます。

有名な話ですが、この曲はJohnとCynthiaの離婚騒動の中で可哀想な思いをして
いたJulianを慰めるためにPaulが書いた楽曲。
当初は「Hey Jule」と書かれましたが、言葉の響きがしっくりくるとのことで
「Hey Jude」に落ち着いたというエピソードがあります。

自分のことを歌った曲だと知らされたのは幼少の頃だそうですが、改めて知った
のは、10代に入ってからだったそうです。
この曲がきっかけで直接的にJulianが父親と和解することはありませんでした
が、「周囲にいた人々が僕だけでなく、お母さんに対して愛情をもって接してく
れたことを実感した」といいます。
「特にPaulの愛情と気遣いには今でも感謝していて、彼のとても心優しい行い
は、忘れることはない」と語っていました。

自分達を捨てたJohnに対して、そして彼らの置かれた辛い状況に対して、怒り
ややるせない気持ちを抱いて暮らしてきたCynthiaとJulianは、親子愛を超え
て、一緒に戦ってきた同志の絆が感じられました。
Cynthiaいわく、
「私達は、このような経験をくぐりぬけ、そして常に世間の目にさらされてきま
した。でも私とJulianは、母と息子としては奇妙かもしれませんが、常にブラ
ザーフッド(兄弟愛、同胞愛)のようなものを感じます」

この展覧会のタイトルである、「ホワイト・フェザー(白い羽根)」ですが、幼い
頃に親子の会話の中でJohnがJulianに、「僕があの世に行ったあと、僕は大丈
夫だよ、とか、僕たちみんな大丈夫だよ、とメッセージを送る方法があるとした
ら、白い羽根となって知らせるよ」と語ったそうです。

その後何年も経ってから、10年ほど前にコンサート・ツアーでオーストラリアに
行った際に、アボリジニ族の長老から白い羽根を受け取り、彼らの厳しい状況を
支援してほしいと懇願され、はっとさせられるものがあったといます。
これがきっかけとなって、Julianは、環境保護および人道的援助を促進する
チャリティー団体<The White Feather Foundation>を設立しました。
ホームページ:http://www.whitefeatherfoundation.com/

「憎悪がいかに時間とエネルギーを無駄にしてきたか、と気づいた。どんなエネ
ルギーも良いこと、ポジティブなものに変えていかなければならないと思った」

「白い羽根は、自分にポジティブな行動を起こさせる原動力となった。そしてそ
れは僕にとって一番重要なことだ」

これもすべて、白い羽根を通じたJohnからのシグナルだったのでしょうか?
この特別展は、今年いっぱい12月31日まで続きます。

<Beatles Story Pier Head>
 住所:Georges Parade, Liverpool L3 1DP
   (マージー・フェリーズ・ターミナル・ビルディング内)
 電話:0151 709 1963
 Beatles Story: http://www.beatlesstory.com/
 White Feather: The Spirit of Lennon: http://www.whitefeatherexhibition.com/

 開館時間:09:00〜19:00(最終入館時間は午後5時ですのでご注意下さい)
      週7日年中無休(12月25、26日は休館)

 入館料(Beatles Story本館を含みます):
  £12.50(一般)、割引£8.50 (無職、シルバー、学生)、£6.50 (5〜16才)
  5歳未満無料

 《White Feather: The Spirit of Lennon》展のみの入場料は以下の通りです。
 £8.00(一般)、割引£6.00 (無職、シルバー、学生)

♪ ♪ ♪

2007年6月20日、Moorefieldsの駅前に出現した驚きのパブリック・アート、
<Turning The Place Over>の公式オープニングが行われたことは、ゴールド
フィッシュ95号( http://scousehouse.net/goldfish/goldfish95_photo.html )
でお伝えしました。
あれから2年たった今年の6月19日(金)、同じ場所に再び集まり、アーティス
トのRichard Wilson本人も駆けつけ、2周年記念のバースデー・パーティーが
開催されました。

お祝いには、Liverpool BiennialがクロスビーにあるケーキショップDavid
Cakes of Distinction( http://www.davidcakes.co.uk/ )に特注してできた、
4x4フィート(約1.2m x 1.2m)のTurning The Place Overのケーキ。
プラニングから完成まで2ヶ月かかったそうで、すべて手作り。かなりの腕前で
す。しかも、くり抜かれた部分も回転しています!

Richard Wilson氏も、「うーん、回り方が微妙に違うけど、よくできてると思う
よ」と満足そうでした。

スピーチの中で、Richard Wilsonが面白いエピソードを聞かせてくれました。
前回彼がリヴァプールを訪れたのは、2007年の秋にTate LiverpoolにてTurner
Prizeが開催されたとき。ロンドンからリヴァプールに来て、駅からタクシーに
飛び乗ってTate Liverpoolへと運転手に告げると、運転手に「どこから来たん
だ?」と訊かれたそうです。

「ロンドンからだよ」
「おまえはアーティストか?」
「そうだ、彫刻家だ」
「時間はあるか? この街のホンモノの彫刻を見せてやるよ。そこまでのタク
シー代はいらないから連れてってやるよ」
「そうか、じゃあそうしてくれ」

そうして連れて行かれた先は、なんと Turning The Place Over!
運転手さんには自分が作家本人だとは明かさなかったそうです。。。

スピーチの後は、建物内の見学ツアー。一度上まで上がったことがありましたが、
行く度に発見があるものです。
また逆に、何度見てもエンジニアリング知識ゼロの私には、どういうメカニズム
で動いているのか、さっぱり見えませんが。。。

今後、毎週土曜日の午前11時と午後3時に、見学ツアーが開催されることにな
りました。
ツアーは、ツーリスト・インフォメーション・センター(08 Place)からの出発
となります。人数制限がありますので、予約が必須です。
予約は08 Placeにて。 電話:0151 233 2459

当初は2008年の終わりまでという話でしたが、建物の使用期限が延長となり、
今年の夏の間は間違いなく回り続けるとのことです。
現時点でははっきりしたことは言えないようですが、パブリック・アートとして
永続的に残される可能性もなくはないようです。
リヴァプールの名所として回り続け、3年、5年、10年、20年後のバースデー
パーティーにも参加できたら最高です。

Liverpool Biennial: http://www.biennial.com/content/LiverpoolBiennial2008/TurningthePlaceOver/Overview.aspx


♪ ♪ ♪
7月10日(金)は《Beatles Day》。モップトップのカツラなどのグッズ販売、
街頭や学校での募金活動、チャリティー・マラソン、コンサートを通じて、昨年
は45,000ポンドもの収益をあげ、Beatles Day Foundationが設立され、小児病
院Alder Hey Children's Hospital に寄付されたそうです。
今年もカツラが店頭でちらほら見られます。今年のBeatles Dayイベントのライ
ンアップはこちらから。
http://www.beatlesday.tv/index.php?option=com_eventlist&view=categoriesdetailed

それではまた再来週!

ミナコ・ジャクソン♪

≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish158_photo.html ≫


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