August 04 2009, No.389
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  リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World   
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▽特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
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「ゴールドフィッシュだより」 / ミナコ・ジャクソン
          〜 Goldfish Liverpool Update / Minako Jackson 〜

 ― 第161号 / "Up To Something" なリヴァプール ―

 ≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish161_photo.html ≫

こんにちは。
今年もやられました。
春、英国の気象庁より「今年はBBQサマーの見込み強」との発表がありました。
確かにここ数年に比べて夏日が数週間あったものの、7月下旬からはほぼ毎日
20度を割る冷夏が続いています。
先日、正式に「8月はブロリー(傘)サマーになる」との発表があり、がっかり
です。
もういっそのこと、8月を「夏」と呼ぶのをやめてしまえば、人々の期待も薄れ
るのでしょうが。。。
渡英の際には重ね着アイテムと折りたたみ傘を忘れずに。。。

そんな中、この週末は、野外イベントが目白押しでした。ピア・ヘッドでは
《Music On The Waterfront》ウィークエンド、爆撃で中が空洞になってしまっ
た教会St Luke's ChurchではFab Collectiveによる写真展。Princes Parkでは
恒例の《Brouhaha International Street Festival》、シティーセンターでは夕
暮れどきに《Liverpool Samba Carnival》など、野外イベントが目白押しでした。

♪ ♪ ♪

まずは、7月31日(金)にオープンした、Fab Collectiveの写真展 "Up To
Something" から。会場は、St.Luke's Church(爆弾の落ちた教会)。

Fab Collectiveは、写真サイトのFlickrを通じて知り合った、地元のプロの写
真家や写真愛好家で結成されたフォトグラファー集団。
共通して皆、リヴァプールを愛し、人々や日常、風景、出来事をレンズを通して
記録をしています。

この展覧会は20枚の写真で構成されていて、それぞれの写真にはリヴァプール
に関する引用句が添えられています。
この展覧会の企画段階で、各フォトグラファーには引用句が割り当てられ、それ
をキーワードに写真撮影が行われたそうです。
写真と引用句が巧みににリンクされていて、見る人の感性により深くパワフルに
訴えかけるものがあります。印象に残ったものとしては...

ゴールドフィッシュだよりでもお馴染みの写真家、Pete Carrによる、ヒルズボ
ロの悲劇から20年たった今年の記念式典での遺族の表情。
"You'll never walk alone." Hillsborough Memorial, Anfield 2009.

壮大に聳え立つSt George's Hallを捉えた Simon Barrowの作品。
"The magic of Liverpool is that it isn't England." Margaret Simey

Sam Bythewayによる、躍動感あふれるマージー川の波しぶき。
"It's the power of the Mersey, there is a power in those rivers, the
artery of life." Paul McCartney, 1990

Tom Faircloughによる、霞のかかった静寂なマージー川に浮かぶ造船所とドッ
ク。
"Every phase of my life has been touched, sprinkled religiously perhaps,
by the waters of the River Mersey." Anthony Wilson

特に、Tom Faircloughの美しくかつ哀愁の漂う写真と、ミスター・マンチェス
ターで知られる故Anthony Wilson(Factory Recordやハシエンダ・クラブなど
マンチェスター音楽シーンの仕掛け人)の最後の寄稿文となったこの文章のコン
ビネーションは、ハートにじりじりと焼きつくものがありました。

この展覧会のタイトルである、"Up To Something" も例外でなく、ある引用句か
ら由来しています。
"You know what scousers are like, they're always up to something. Please
do not repeat that to anyone from Liverpool." JACK STRAW 1999

1999年に、政治家のJack Strawが、「スカウサー達がどんな奴らか分かってる
だろ? いつもなにかを企んでいるんだ。このことは、くれぐれもリヴァプール
出身の人に言わないように」とコメントしたことで物議を醸し、結果的にリヴァ
プール市に対して謝罪をする羽目になったという実話があります。

"Up To Something" とは、「何かを企む・目論む・計画する」といった、ネガティ
ブな意味に使われることが多いのですが、Fabのメンバーたちは、皮肉と彼らの
もつポジティブなアティチュードをこめてタイトルに使っています。

リヴァプールのリヴァプールらしさを様々な角度から体験できるこの写真展は、
8月30日まで続きます。

 < St Luke's (Bombed-Out) Church >
  Leece Street, Liverpool, L1 2RT (Bold Streetを上がりきって正面の教会)
  オープン:木曜日〜日曜日 正午〜午後4時まで。入場無料。
  Fab Collective: www.fabcollective.com

♪ ♪ ♪

Fab Collectiveの展覧会のオープニングのあと、ピア・ヘッドへ向かい、
《Music On The Waterfront》の一環のコンサート "The Rightful Owners of
the Song" を観にいきました。

このタイトルは、Liverpool Poetsの1人、Brian Pattenの詩 "Interruption at
the Opera House" からの引用で、音楽は一部のお金持ちやエリートだけに属す
ものではなく、大衆すべてに捧げられたもの、といった趣旨を表現した、心温ま
る詩です。

これはミュージシャンのJonathan Raisinが発起人となったプロジェクトで、
「ミュージック・シティー」の金看板を掲げるリヴァプールの中で、才能があり
ながらも一般的に忘れられがちなパブ回りのシンガーやパフォーマーに脚光を当
てたコンサートです。
リヴァプールで最も有名な交響楽団 Royal Liverpool Phiharmonic Orchestra
(RLPO)を従えてのコラボレーションですが、主役はあくまでもパブ・シンガー
たちです。

このコンサートの第一弾は、昨年のリヴァプール欧州文化首都プログラムの一環
で行われ、Philharmonic Hallをソールドアウトにした人気のコンサートでした。
今回が第二弾となります。野外の無料コンサートというセッティングも、素晴ら
しいアイディアです。

しかし、ここはイギリス。開演のほんの直前から大粒の雨が降りだしました。
ジンクスでしょうか、2006年のMathew Street Festivalのピア・ヘッドでの
RLPOのコンサートも雨に降られました。
それでも、観客は傘やレインコートで雨をしのぎながら音楽を楽しんでいました。

この日の午後にリハーサルを少しだけ観たのですが、そのときはみな私服で、隣
のおじちゃんやおばちゃんといった出で立ちでしたが、本番ではビシッとドレス
アップし、堂々と輝いて見えました。
懐メロのポップスやジャズのスタンダード・ナンバーが中心で、観客も一緒に大
合唱。娘、父ともにステージに立ったJoanne WentonとBill Wenton、85歳の
Bill Whelanがステージに上がったときは、客席から大きな歓声が湧きました。
素晴らしいと思ったのは、屋外の大きなステージで歌っていながら、距離感を感
じさせない、一対一の親近感のようなものが感じられたことです。

天気予報を見て覚悟はしていたものの、横なぐりの雨と、椅子の座面にできた水
溜りと戦いながらの鑑賞は容易ではありません。
結局、コンサート半ば、スペシャル・ゲストのエルヴィス(Phil King)が登場し
たところでギブアップしてタクシーに乗り込んで帰宅してしまいました。
後半のパフォーマンス、特にお目当てにしていたスプーン・プレイヤーのJohn
McGuirkおじいちゃんの演奏が聴けず残念でした。

James Street駅に近いパブ<The Liverpool>では、地元のパブ・シンガー達が時
折ライブをしているようです。
リヴァプールの伝統ともいえるパブ・カルチャーを体験できること間違いなしで
す!

♪ ♪ ♪

8月1日(土)の午後8時半から、《Liverpool Samba Carnival》がシティー・
センターにて行われました。
これは、Liverpool Carnival Company主催のブラジリアン・カーニヴァルで、
今年で2回目を迎えます。このカーニヴァルは、リヴァプール大学キャンパスか
ら始まり、メトロポリタン大聖堂を通ってHope Street、Hardman Streetの坂を
下り、Bold Street、Slater Street、Duke Streetを上がって、最終目的地、中
華街の門の前で終了。

トップ・グループは、意外にも悪夢に出てきそうな、ゾンビやオバケや妖怪のパ
フォーマンス。
続いてリオ風のパーカッション、カーニヴァル・ダンサー、そしてアクロバ
ティックなカポエイラ(ダンス要素の加わったブラジルの格闘技)、巨大でカラ
フルな山車が続きました。

Brouhahaに比べると規模は小さいですが、夕暮れどきのリヴァプールを華やか
に彩るパレードは高揚感を掻き立てるものがあって、いいものですね。
来年もがんばってほしいと思います。

Liverpool Samba Carnival: http://www.liverpoolcarnivalcompany.com/

♪ ♪ ♪

A for Apocalypse - Z for Zombie ?!
最後に、オバケや妖怪がでてきたところで、若手アーティストの集うアトリエ&
ギャラリー、Red Wireの新しい展覧会にも触れておきます。
このところの不況で暗い世相を反映しているのでしょうか、映画『地獄の黙示録
(Apocalypse Now)』をテーマで一般公募し、セレクトされた作品のグループ展で
す。

ギャラリーに入ると、今にも「いらっしゃ〜い」とでも言い出しそうな、Laura
Collinsonのオブジェ 'Hawkiniranasaurinator T-500' が出迎え、奥にはLaura
Smithによる光る「Z」'For Zombie' と'Dead Handy'をはじめとした、15人+1
組のアーティストの描く「地獄」が表現されています。

プライベート・ビューに定評のあるRed Wireの今回のエンターテインメントは、
地獄フード。
3フレイバーのイナゴとゾンビ・ケーキ。イナゴに関しては、日本では普通に
売ってるものなので、地獄でもなんでもないのですが、「うーん、ポークみたい
ね」などと試食するお客さんのリアクションが楽しめました。
ゾンビ・ケーキもなかなかよくできています!

この展覧会は、8月8日(土)まで続きます。

 < Red Wire Gallery >
  Carlisle Building, 69 Victoria St. Liverpool
  開館時間:木、金、土 午後12時〜6時まで。 入場無料。
  ホームページ: http://redwireredwire.com

♪ ♪ ♪

【今週の告知】
8月14(金)から16日(日)は、《Art On The Waterfront》が開催されます。
現在開催中の、Tate Liverpool "Colour Chart" 展に呼応した様々なアートイベ
ントがアルバート・ドックとピア・ヘッドにて展開。ハイライトは、金曜日と土
曜日の夜にピア・ヘッドで行われるサウンド&ライト・ショー "LuminoCity" が
見ものです。
パンフレット(PDF)は、こちらからダウンロード可能です。
http://www.liverpool.gov.uk/Images/tcm21-160099.pdf

それでは、また再来週!

ミナコ・ジャクソン♪

≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish161_photo.html ≫


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