October 06 2009, No.394
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  リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World   
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▽特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
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「ゴールドフィッシュだより」 / ミナコ・ジャクソン
          〜 Goldfish Liverpool Update / Minako Jackson 〜

 ― 第164号 / It's Happening in Hope Street! (Part 1) ―

 ≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish164_photo.html ≫

こんにちは。
あっという間に9月が過ぎ、10月がやってきました。寒い夏でしたが、10月に
入って一段と寒さが増しているリヴァプールです。

さて、9月もイベントで盛りだくさんの1ヶ月で、まるで欧州文化首都やバイエ
ニアルが戻ってきたかのような勢いでした。

9月15日から5日間に渡って行われたLiverpool Biennialの環境プロジェクト
《Urbanism 09》。
http://www.art-it.asia/u/liverpool/JcfElSgYKD1xaXtNq4Ui?lang=ja

翌週には、FACTが中心となって行われた映像&デジタルアート・フェスティバ
ル《Abandon Normal Devices (AND) Festival》、そしてANDフェスに付随して今
年も《The Long Night》イベントが行われました。
http://www.art-it.asia/u/liverpool/NC3JufasEG5k10wbmH8B/?lang=ja

また、ピア・ヘッドでは、音楽とアートに続いての《On The Waterfront》シ
リーズ第3弾、《Film On The Waterfront》が開催され、白黒の古きよき映画が
建設中のMuseum of Liverpoolの大きな窓に映し出され、寒空のした多くの人々
がクラッシック映画を楽しみました。

Walker Art Galleryでは、大御所のBridget Rileyの展覧会《Flashback》が開
催。
http://www.art-it.asia/u/liverpool/6hw3UiAL8lpozVQMN7TD/?lang=ja

などなど。他にも、ホープ・ストリートやボールド・ストリートで地域活性の
フェスティバルも開かれました。

♪ ♪ ♪

今週と来週の2回に分けて、先月にホープ・ストリート界隈で起こった、イベン
トや出来事をお伝えします。

9月20日・日曜日のホープ・ストリートでは、毎年恒例となった《Hope Street
Feast》が開催され、昨年より更にパワーアップし、大々盛況で終わりました。
《Liverpool Food & Drink Festival》の最終日ということもあり、路上には沢
山のフード・ストールや、ファーマーズ・マーケットが並び、そのほかアート&
クラフト・マーケットや音楽、パフォーマンスで溢れていました。
町内会のお祭りの域を超えた贅沢なラインアップで、私達も半日めいっぱいエン
ジョイしてきました。

Philharmonic Hallではオープン・デーが開かれ、入場無料でRLPO(ロイヤル・
リヴァプール・フィルハーモニック・オーケストラ)をはじめとした、クラッ
シック音楽のコンサートが楽しめました。
つい最近2015年まで契約を延長し、チーフ・コンダクターに昇格したばかりの
ロシア人指揮者Vasily Petrenkoによる、迫力満点のベートーベン「運命」を
鑑賞。

ストリートでは、ユース・シアターのHope Street Limitedが<Big Nosh>という
テーマで様々なパフォーマンスやインターヴェンションを展開。
ピンクのカツラをかぶって通りかかりの人々にちょっかいを出すインフォーメー
ションデスクのギャル達、Philharmonic Pubの2階バルコニーから大きな
ティーポットでお茶を注ぐ「ハイ・ティー」。ハードマン・ストリートのカフェ、
Quick Chefの前にステージを組んで、芸者風のメイクアップや出で立ちで観客
をもてなす「スロー・シェフ」など。
また、4つの仮設ステージが設けられ、そこでもパフォーマンスやライブミュー
ジックが繰り広げられました。

何といっても、今回の目玉はDeaf Schoolの復活ライブ。
Deaf Schoolといえば、疑いなくレジェンドと呼ぶにふさわしいバンドで、NME、
Q、Mojoなどの音楽雑誌を手掛けた音楽ジャーナリストでライターのPaul Du
Noyer氏(次号で詳しく紹介します)も著書『Liverpool: Wondrous Place』の
中で、次のように述べています。

「リヴァプールの音楽史全体において、最も重要な2つのバンド:ひとつはThe
Beatles、そしてもうひとつはDeaf School。彼らがリヴァプールにもたらした
影響は、現在も存在している」

Deaf Schoolは、John Lennonと同じアート・スクール出身で、1970年中盤に結
成されました。
マージービート衰退後の乾ききったリヴァプールの音楽シーンに新風を巻き起こ
しましたが、わずか3枚のアルバムを残して去っていった、まさに伝説のバンド
です。
その後、1988年と2007年に再結成ライブをしていますが、今年は結成35周年
を記念してEveryman Theatreで3日間の復活ライブを行い、すべてをソールド
アウトにしています。
アニヴァーサリー・ライブの会場がEveryman Theatreになったのは、彼らがバ
ンドを結成する出発点となったアート・スクールの立地するホープ・ストリート
で、というこだわりがあったようです。

パンク、ニューウェーブ、グラム、パブロック、アート・ロックと一言でジャン
ル分けしがたい独特のサウンドと、ドラマティックで華やかなライブ・パフォー
マンス。

彼らのエンブレムやロゴを目にし、凄いバンドだと耳にしていただけに、彼らの
ライブを体験できて、本当にラッキーです。
ステージ最前列でかぶりつきで観ていたのですが、息がぴったり合っていながら、
メンバー同士の間の並ならぬテンションの高さがビリビリと伝わってきます。

ステージ下では、伝説のクラブEricsでDJをやっていたNorman Killonがリズ
ムに乗りながら観ていて、一方、同じくEricsで写真を撮っていたFrancesco
Mellinaが地面に座りこんでファインダー越しにステージを捉えていました。

私の周りは、他にもEricsの常連で通っていたらしいDeaf Schoolフォロワーだ
らけだったのですが、一語一句歌詞を覚えていて大合唱している様子を見て、
ちょっと羨ましかったです。
取り巻きの1人のマダムが「今日は着くずしてるけど、本格的にライブやるとき
は、メンバーはみんなビッチリ決めこんでるのよ」と言っていて、次回のライブ
は絶対に観にいきたいと思っていたら、どうやら12月20日にクリスマス・ギグ
を行うそうです! 楽しみです。

このライブの一部を、旦那がビデオに撮ってアップしましたので、ご覧ください。
Deaf School at Hope Street Feast
 Part 1 http://www.youtube.com/watch?v=xL-6HMRGX_E
 Part 2 http://www.youtube.com/watch?v=lNzFIQgww8w

Deaf School website: http://deafschoolmusic.com/
Deaf School Myspace: http://www.myspace.com/deafschool

このライブで無料で配布されていた冊子<Deaf School Scrapbook>は、一生の宝
物にしたいと思います。

ホープ・ストリートのこれらのイベント、そしてPaul Du Noyer氏やDeaf
Schoolを通じて、この街のもつクリエイティブな底力に再び触れて、リヴァ
プールに改めて惚れ直した週末でした。

♪ ♪ ♪

こうしたイベントや、数ヶ月前にリヴァプール観光局が全国レベルで「カルチュ
ラル・デスティネーション」としてのホープ・ストリートのプロモーション展開
( http://www.visitliverpool.com/site/welcome-to-liverpool/its-happening-in-liverpool )
をしたりと順風万帆に見えるホープ・ストリートですが、8月末から9月初頭に
かけて、ちょっとした騒動がありました。

ホープ・ストリートのPhilharmonic Pubのすぐ隣に、巨大スーパーマーケット・
チェーンのテスコが出店する、という噂が流れ、Geekchicのイベント(次号で
お伝えします)でもインタビュアーを務めたMike Neary氏が、SNSサイトのフェ
イスブックに"There is just something plain WRONG about a Tesco on Hope
Street"(ホープ・ストリートでのテスコ出店は明らかに間違っている)という
名のグループを立ち上げ、出店反対を呼びかけました。

「カルチュラル・クオーター(文化地区)」として確立されたこのストリートに
できるということには、全くの場違いで納得がいかなかったため(ホープ・スト
リート沿いには、実はひとつもショップがありません。大きな看板を掲げた
チェーン店などもってのほかです!)、私達もこの反対キャンペーンに参加しま
した。近隣の既存の自営業のビジネスに影響が出ますし、それよりなによりテス
コは、現在シティーセンターに既に9店舗も増殖していています。

しかも、テスコの創設者でCEOはリヴァプール出身で、都市再生会社<Liverpool
Vision>の役員を兼任している人物。この地域を熟知しながら、このようなプラ
ニングするというのは、いかがなものか、と住民の怒りに油を注ぎました。

このキャンペーンの存在が地元新聞社の目に留まり、ニュースになったことも手
伝い、あれよあれよといううちに、グループは4000人以上に膨れ上がりました。
メンバーは、地域のビジネスや住民、リヴァプール市民だけでなく、英国内外の
人々にまで広がり、いかにホープ・ストリートが特別な場所であるかが分かりま
す。
ストリート沿いの建物の窓には、住民が率先して作った"No Tesco On Hope
Street"ポスターが貼られ、反対グループのメンバーの多くはテスコや市に異議
申し立てのメールを送り、最終的には、地元の政治家が本格的に動き出してテス
コの代表者と対話の場を持って説得し、結果的にテスコのホープ・ストリート出
店はめでたく白紙となりました。

テスコの代わりに、この物件は一体どうなるのだろうと思っていたら、Ladytron
のメンバーが経営しているカフェ・バー&クラブ<Korova>が引っ越してくる模様
です。
Philharmonic Hallでクラッシック、その斜向かいKorovaのステージで新鋭の
バンドがクロスし、一段と文化色の濃くなるホープ・ストリートです。楽しみで
す。

♪ ♪ ♪

【今週の告知】
旦那が、ホープ・ストリート界隈のニュースをまとめたブログをスタートしまた
のでどうぞご覧ください。
Hope Street Blog: http://hopestreet.co.uk/

また、日本のアート・ウェブサイトのARTiTに、ミニArt in Liverpoolブログ
を立ち上げました。日本語と英語のバイリンガルでお届けします。
Art in Liverpool Blog at ARTiT: http://www.art-it.asia/u/liverpool/?lang=ja

それではまた来週!

ミナコ・ジャクソン♪

≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish164_photo.html ≫


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