August 02 2011, No.470
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  リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World   
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▽特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
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「ゴールドフィッシュだより」 / ミナコ・ジャクソン
          〜 Goldfish Liverpool Update / Minako Jackson 〜

 ― 第198号 / Happy Birthday Museum of Liverpool
                      & Royal Liver Building ―

 ≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish198_photo.html ≫

こんにちは。
7月19日、待望の<Museum of Liverpool(ミュージアム・オブ・リヴァプー
ル)>がオープンしました。
その前日にスニークプレビューに行ってきたのですが、その時はまだ展示物の設
置作業だけでなく、博物館周辺の舗装作業までもがフル回転で行われていて、本
当に開館式に間に合うのかと、見ているほうがハラハラしてしまうほどでした。
でも翌日には何事もなかったのごとく、めでたく開館を迎えました。

7月19日の午前10時、ミュージアム・オブ・リヴァプールの入口前には大勢の
一般客が詰め掛け、リヴァプール国立博物館(National Museums of Liverpool)
ダイレクターのデヴィッド・フレミングと会長のフィル・レッドモンドが大きな
ピンク色のリボンを手に持ち、6歳のフィン・オヘア君が巨大なはさみを抱えて
登場し、テープカットを行いました。

フィン君は、昨年の秋にデヴィッド・フレミング宛に「ボク、何でも開ける
(オープン)のが得意なんです。ボクに博物館をオープンさせてくれませんか?」
と手紙を書いたことがきっかけで、開館式の主役として抜擢されました。
何とも「人々の人々による人々のためのミュージアム」のオープニングにふさわ
しい人選です。

フィン君から正式に開館宣言がなされた後、群集の流れに交じって館内に入ると、
2羽のライヴァーバードに扮したパフォーマー達がお客さんにちょっかいを出し
ています。
実はこの日は<ロイヤル・ライヴァー・ビルディング>の100周年記念に当る日で
もありました。
ピアヘッドをはさんで両端に建つこの2つのラディカルな建築物が、100年の月
日を経て同じ7月19日にオープンしたことになります。
お客さんがライヴァーバード達に「ハッピーバースデー」を歌っている光景も見
られました。

お年寄りから子供達まで、本当に幅広い層の人達が博物館を見学しています。
今回は第一段階のオープニングで、地上階と最上階のスペースが開放されました。
地上階には、エレガントな白い螺旋階段がフィーチャーされた吹き抜けロビーと、
ショップ、カフェ、6歳以下の子供達を対象にした「リトル・リヴァプール」、
リヴァプールの多国籍なルーツを物語る「グローバル・シティ」のセクションが
あります。

「グローバルシティー」は定期的に展示が入れ替わる企画展で、今回はリヴァ
プールと上海をテーマとした「イースト・ミーツ・ウェスト」展が開催されてい
ます。

「リトル・リヴァプール」には、リヴァプール国立博物館の所蔵品のA-Zが壁に
展示されていて、中央には「リヴァーパドルズ」と名づけられたマージー川と川
岸の建築物の模型があります。
実際に水が張られた川の底には海底トンネルの覗き窓があり、ハンドルを回すと
自動車や電車がトンネルを走るようになっていて、大人も子供心に戻って楽しめ
ます。こちらは時間制になっていて、セッションが終わると、4匹のビートルズ
(カブトムシ)の人形達が、さよならを告げる歌を披露してくれます。

螺旋階段で最上階まで上がると、階段を取り巻くエリアが「スカイライト・ギャ
ラリー」と名づけられています。
ここにはアーティストのベン・ジョンソンがウォーカー美術館で2008年に制作し
た大型の絵画「リヴァプール・シティースケープ」と、マイク・マッカートニー
の写真展が見られます。

この階にある二つの主な展示スペース「ザ・ピープルズ・リパブリック」と「ワ
ンダラス・プレイス」には、右にも左にも上にも見どころがぎっしり詰まってい
ます。

「ザ・ピープルズ・リパブリック」は、過去200年におよぶリヴァプールの街に
おける暮らしの変化に焦点を当てたセクションです。
住宅、福祉、雇用、失業率、労働運動などについても触れています。
ヴィクトリア時代のリヴァプールの繁栄の陰で、過密化した貧窮地区のひとつ
だったリヴァプール北部のスコットランド・ロード地区の「コート」と呼ばれる
集合住宅、26コート、バーリントン・ストリートの一部を再現したライフサイズ
の模型があります。
1870年のリヴァプールの庶民達が、衛生状態の悪い小さな住宅で大人数で暮らし、
トイレも「プリヴィー」と呼ばれる屋外トイレを数世帯で共用していたことが伺
われます。
プリヴィーの模型の前で年配のご夫婦が、「私達も昔はこういうところに住んで
いて、お風呂もこんなブリキの風呂を使っていたんだよ」と懐かしみながら語っ
ていました。

そことは対照的に、綿花の輸入で富を築いた当時の国会議員ジョージ・メリーが
妻子と召使と共に暮らしていた90チャッサム・ストリートの部屋の様子も垣間
見ることができます。
展示されている豪華な調度品も同じく1870年のもので、ヴィクトリア時代がい
かに貧富の激しい時代だったかが伺えます。

写真や人々の思い出で綴られる「シークレット・ライフ・オブ・スミスダウン・
ロード」、そしてかつては小さな農村だったエヴァートン地区が200年のあいだ
にどのように発展して行ったかを辿る「エコーズ・オブ・エヴァートン・ヴィ
レッジ」といった特定のコミュニティにフォーカスを置いたコーナーもあります。

窓際の壁には、ライヴァービルディングのてっぺんにあるライヴァーバードの等
身大のレリーフが飾られていて、窓から望める現物のライヴァービルと見比べな
がら、その大きさが実感できます。

また、当初建てられるはずだったサー・エドウィン・ルーティエンスが設計した
メトロポリタン大聖堂の「夢の設計模型」が展示されています。
実際に建てられたものとは全く異なり、模型を見ているだけでもその壮大さが伝
わってきます。これが建てられていたら、きっとホープストリートの風景もまた
違ったものとなっていたことで
しょう。

南リヴァプールのへールウッドにあるフォードの自動車工場で最初に造られた
1963年製のフォードアングリアの実物がディスプレイケースの上に置かれていま
す。

もちろんスカウス・コーナーもあり、リヴァプール特有のフレーズも学べます。
「ワンダラス・プレイス」のセクションでは、リヴァプールの音楽、文学、コメ
ディ、アート、テレビ番組、スポーツがフィーチャーされています。

ハイライトの一つに、ビートルズコーナーのミニシアターには、ジョン・レノン
とポール・マッカートニーが初めて出会ったセント・ピーターズ教会のホールの
ステージの実物があります。
ここでは、「イン・ザ・タウン・ホエア・アイ・ウォズ・ボーン」と題した、映
像とビートルズのメンバーそれぞれが自分立ちの生い立ちからバンドキャリアに
ついて語る音声が織り成すショーが鑑賞できます。

フットボールのコーナーでも「キッキング・アンド・スクリーミング」と題した
映像ショーが上映されるミニシアターがあり、ともに無料ですが、時間制になっ
ていますので、事前にチケットが必要です。

ビートルズ関連のメモラビリアは他にも、ビートルズ4人の衣装、ジョン・レノ
ンとオノ・ヨーコが1969年にモントリオールのベッドインで使用したオリジナ
ルのベッドカバー、プラスティックのギターやロシアンドールといった当時のプ
ロモーショナルグッズなどが見られます。
埼玉のジョン・レノン・ミュージアムにあったメンディップスの模型も現在ここ
で展示されています。

ビートルズ以外の音楽コーナーでは、ビートルズ前から、パンク・ニューウェー
ブを経て最近のバンドのメモラビリアが展示されている他、ポップクイズのゲー
ムで知識を試してみたり、カラオケ・ブースで歌って楽しむこともできます。

スポーツのコーナーでは、フットボール、ボクシング、競馬、競輪などがカバー
されています。
エヴァートンFCの経営陣のあいだでの話し合いが決裂し、リヴァプールFCが誕
生する舞台となったサンドン・パブのレプリカ。リヴァプールのイベントカレン
ダーの中で重要なグランド・ナショナルにちなんで、ジャンプする競走馬の模型
の下には、1900年に優勝したアンブッシュIIのスケルトンの実物が展示されて
います。

博物館の内外では、オープニングを祝ってブルーハーハに参加している世界各国
のパフォーマー達がサンバドラムやダンスを披露し、盛り上がりました。

今年末には、1階のリヴァプール高架鉄道(Liverpool Overhead Railway)、シ
ティー・ソルジャーズ、ヒストリー・ディテクティブ、グラウンドフロアのグ
レート・ポートのセクションを含む、第二段階のオープンが予定されています。

<ミュージアム・オブ・リヴァプール>
 住所:Pier Head, Liverpool L3 1DG
 電話:0151 478 4545
 オープン:毎日午前10時〜午後5時 入場無料。
 ウェブサイト: http://www.liverpoolmuseums.org.uk/mol/

♪ ♪ ♪

同じ週の週末(7月22日〜24日)には、《オン・ザ・ウォーターフロント》イ
ベントの第二弾、《リフレクション・オン・ザ・ウォーターフロント》がピア
ヘッドで行われました。
私は木曜日のプレヴューと土曜日の回を観にいきました。カール・デイヴィス指
揮によるロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラの野外コンサートが開か
れ、ビートルズやクラッシックのお馴染みのナンバーを披露し、くつろいだ夕暮
れを楽しみました。

ようやく日が暮れた夜10時過ぎに、100周年を迎えたロイヤル・ライヴァー・ビ
ルディングと新たに誕生したミュージアム・オブ・リヴァプールを祝い、この二
つの建物の外壁には迫力ある音響とともに見事な3Dプロジェクションマッピン
グが披露されました。

仕掛け人は、チェコのアーティスト集団ザ・マキュラ(The Macula)で、プラハ
の天文時計600周年記念を手掛けた作品がリヴァプール市の文化事業担当者の目
に留まり、今回英国でのデビューを果たしました。

ライヴァー・ビルディングの建築的な特徴を細部まで余すことなく活かしたこの
アニメーションは、リヴァプールの歴史からイメージを得たストーリー仕立てに
なっていて、建物は様々な表情を見せました。

プロジェクションの模様は、Vimeoから見られます。このビデオをパソコンで見
ていると、普通の画面で見るアニメーションかと錯覚してしまうほどクリアで精
巧です。
http://vimeo.com/26827092

ライヴァー・ビルディングのプロジェクションに続いて、ミュージアム・オブ・
リヴァプールに映像が映し出され、音楽とともに建物に美しい躍動感を与えまし
た。
http://vimeo.com/26884619 

The Macula: http://themacula.com/

オン・ザ・ウォーター・フロントの第三弾は、海洋をテーマとし、9月8日〜15
日に開催されます。
http://www.liverpoolonthewaterfront.co.uk/8-15-sept/

♪ ♪ ♪

夏のカーニバルはまだまだ続きます。8月6日(土)、LGBTカルチャーを讃える
<リヴァプール・プライド>のパレードが午前11時にセント・ジョージズ・ホー
ル前の広場から出発します。
またピアヘッドでは、《サマー・オブ・ラヴ@ピア・ヘッド》というテーマで、
ヒッピー色に染まります。音楽ステージやストールが建ち並びます。
http://www.liverpoolpride.co.uk/  

8月末には、恒例の《ビートル・ウィーク》と《マシューストリート・フェス
ティヴァル》に加えて、一年のブランクを経て《シェイクスピア・フェスティ
ヴァル》が帰ってきます。
8月25日から9月10日まで、セント・ジョージズ・ホールにて「ロミオとジュ
リエット」が上演されます。
http://www.liverpoolshakespearefestival.com/

それではまた!

ミナコ・ジャクソン♪

 ≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish198_photo.html ≫


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