April 03 2012, No.499
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リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World  
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▼特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
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「ゴールドフィッシュだより」 / ミナコ・ジャクソン
          〜 Goldfish Liverpool Update / Minako Jackson 〜

 ― 第205号 / Pier Head & Parkgate and The Florrie Re-opened! ―

 ≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish205_photo.html ≫

こんにちは。
3月の後半は、春を通り越して初夏のような温暖で晴れた日々が一週間以上続き
ました。
北部のスコットランドでは23度というこの時期としては記録的な気温となり、
リヴァプールでも連日18度くらいまで気温が上がりました。
晴れているだけで、街や人々の様子が見違えるものです。私達も晴れた日に散歩
がてらピアヘッドや隣接するマンアイランドを歩いたり、川向こうのパークゲー
トまで足を伸ばしてみました。

ミュージアム・オブ・リヴァプールへ行った際は、ちょうどビートルズの《サー
ジェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド》のアルバムカバーを
手掛けたピーター・ブレイクのアートバスが来ていました。
このダブルデッカーバスの中では、ピーター・ブレイクの作品のプリントやマイ
ク・マッカートニーの写真が展示されています。上の階のデッキからのスリー・
グレイシズ(ライヴァー・ビルディング、キュナード・ビルディング、ポート・
オブ・リヴァプール・ビルディング)の眺めも抜群でした。
CCA Art Bus: http://www.ccaartbus.co.uk/

ピーター・ブレイク氏といえば、現代版のサージェント・ペパーズをお披露目し
たばかりです。なかなかの面白いメンツ揃いです!
http://www.bbc.co.uk/news/entertainment-arts-17582676

♪ ♪ ♪

パークゲートは、マージー川の向こう側のウィラルとチェシャーの境に位置しま
す。
見どころは、ディー川に向ってどこまでも広がる湿原です。河口という土地柄、
潮汐の影響でときどき満潮時に冠水するのですが、最満潮を記録する3月初旬に
は、多くの珍しい野鳥が観察できることから、バードウォッチャーが集まる場所
としても知られています。

そして湿原と並んで有名なのが、創業1973年の老舗のアイスクリームショップ
「ニコルズ(Nicholls Famous Ice-Cream Shop)」で、カラフルなホームメイド
のアイスクリームがずらりと並んでいます。
乳製品がダメな人でも、シャーベットがあります。私達は、ジューシーでフレッ
シュな期間限定の<スーパー・スペシャル・ブラッド・オレンジ・シャーベット>
を堪能しました。
http://www.visitparkgate.co.uk/#/famous-ice-cream/4552888575

湿原が見渡せるプロムナード沿いには、ニコルズのほかにも複数のレストランや
パブ、フィッシュ&チップのテイクアウェイがあります。

パークゲートの北側にあるボートハウス・パブの向こう側には、「ウィラル・カ
ントリーパーク」の入口となります。
1973年にイギリスで初めてカントリーパークの指定を受けたことで知られる公園
で、土手沿いを歩きながら、左手には湿原が、右手にはゴルフコースという珍し
い景観が楽しめます。

途中、ゴルフ場の真ん中を横切る公共の歩道を通って、旧バーケンヘッド鉄道跡
のウィラルウェイというハイキング・サイクリングコースまで行き、そこから
ウィラル半島の北端のウェストカービーまで足を伸ばすことも可能です。
さすがにそこまでは歩きませんでしたが、私達はヘズウォールまで歩いてパーク
ゲートまで戻りました。ラッパ水仙やハリエニシダの黄色い花々が咲いていて、
春も本番といった感じでした。

パークゲート
http://www.visitparkgate.co.uk/

ウィラル・カントリーパーク
http://www.visitwirral.com/attractions-and-activities/country-attractions/wirral-country-park

<リヴァプールからパークゲートまでのアクセス>
マージーレイルのウィラルラインでリヴァプール・ジェームズ・ストリート駅か
らチェスター方面のフートン(Hooton)駅まで乗り、272番バスに乗り換え、終
点のパークゲート・ザ・パレード・シップ・ホテル(Parkgate, The Parade,
Ship Hotel)前で下車。

時刻および乗換え情報はこちらから。
http://www.traveline-northwest.co.uk/journeyplanner/enterJourneyPlan.do?hss=0YajT66791660

♪ ♪ ♪

エイプリルフールの日曜日、リヴァプールのディングルでは、市民団体の長年の
努力と情熱と夢が崩壊寸前の建物を救い、息を吹き込みました。
「フロリー」ことザ・フローレンス・インスティチュートが修復され、コミュニ
ティーセンターとしてオープンしました。

フローレンス・インスティチュートは、ヴィクトリア朝時代の裕福な商人でリ
ヴァプール市長でもあったバーナード・ホールが、22歳という若さで他界した娘
のフローレンスを偲び、
1889年に建てた地元青少年育成のためのクラブです。
ユースクラブを目的として建てられた英国初の建築物として、国の第二級指定建
造物に登録されています。

しかしフロリーは、80年代には財政上の理由から閉鎖となり、廃墟と化します。
さらに1999年には、火災により内装や屋根が焼かれ、この建物の再生は不可能
だと思われていたといいます。

そんななか、2000年代初頭に入って地元の有志が集まり、フロリー再生に向けた
動きが加速、2005年には「ザ・フローレンス・インスティチュート・トラスト・
リミテッド」を結成し、再生実現に向けた資金調達や関係各団体との交渉、修
復・改装計画の立案などを開始しました。
最終的には630万ポンド(現在のレートで約8億6,300万円)の助成金を獲得し、
2年前から工事が着工、今回のオープンにこぎ付けました。
地元住民が揺ぎ無いビジョンを貫き、不可能を可能にしたサクセス・ストーリー
です。

生まれ変わった建物の中には、グランド・ホールという多目的ホール、カフェ、
歴史資料室、図書館、スポーツジム、そしてホロックス・タワーと名づけられた
展望台があります。

歴史資料室には、フローレンス・インスティチュートと修復過程の記録だけでな
く、ディングル・トクステス地区の歴史に関する展示物があり、ちょっとした
ミュージアムになっています。
この地区が輩出した著名人は、リンゴ・スターとフロリーのOBでもあるジェ
リー&ザ・ペースメーカーズのジェリー・マーズデンだけではありません。ロッ
クンローラーのビリー・フューリー、フットボーラーのロビー・ファウラーとイ
アン・キャラガン、ボクシングの元世界チャンピオンのジョン・コンテ、詩人・
歴史家・植物学者・国会議員・奴隷貿易廃止運動家だったウィリアム・ロスコー、
そして1600年代に金星の日面通過の最初の観測者として歴史に足跡を残したエ
レミア・ホロックス(こちらではジェレマイアと発音します)もこの地区出身で
す。

また、フロリーが建てられる以前のはるか昔の1207年には、このエリアは貴族
や地主層が鹿、狼、猪などの狩猟を楽しむためのロイヤル・パークで、庶民は立
ち入ることはできませんでした。密猟者には、かなり過酷な罰が待っていたよう
です。

上の階からさらに螺旋階段を上ると、ホロックスにちなんで名づけられた展望台
があり、マージー川や大聖堂などがぐるりと見渡せます。ここには望遠鏡も設置
される予定です。

ジムのエリアはまだ完成していませんでしたが、この地区のボクシングとの深い
関わりが表れた壁画が見られました。この多目的ジムのスペースでは、スポーツ
各種やダンス教室が行われ、その他月一回ファーマーズマーケットも開かれる予
定です。

2008年のゴールドフィッシュだよりで、日本人アーティストの中村政人さんによ
る「Zプロジェクト/セイヴ・ザ・フロリー」
( http://scousehouse.net/goldfish/goldfish139.html )
( http://scousehouse.net/goldfish/goldfish139_photo.html )
のイベントをご紹介しましたが、あの時はまだ資金調達の真っ只中でした。そし
てグランドホールのあるエリアは、屋根が焼け崩れて空が見えて、中には雑草が
生えている状態でした。

今回この建物に入ったとき、地元民でない私でもとてつもない感動を覚えました。
屋根やタワー部分のドームなど建物が単に修復されただけでなく、バーナード・
ホール氏の遺志が現代の住民にしっかりと受け継がれているのがひしひしと伝
わってきます。
しかも新生フロリーは、青少年はもちろん、赤ちゃんからお年寄りまでがスポー
ツ、文化、社交イベントやプロジェクトを通じて楽しめる21世紀のコミュニ
ティーセンターです。
家族連れ向けのアクティビティや、ティーン向けのレクリエーション活動、年配
に人気のビンゴなどが定期的に行われます。
また貸しスペースとしてイベントや結婚式場としても使われます。

スカウスハウスでも何度も登場している友人のトミーさんは、セイヴ・ザ・フロ
リー運動を精力的に行ってきた人物です。
オープンの当日、「スティーヴィー・ワンダーの曲じゃないけど、イズント・
シー・ラヴリーだろ?」と満面の笑みを浮かべてました。

<ザ・フロリー(The Florrie)>
 住所:377-401 Mill Street, L8 4RB Liverpool
 ウェブサイト: http://www.theflorrie.org/

♪ ♪ ♪

【4月のイベント告知】

タイタニック沈没100周年記念イベントが現在リヴァプール各地で行われます。
目玉イベントとなっているのが、4月20日から22日まで行われる『シー・オ
デッセイ(Sea Odyssey)』。リヴァプール市内に巨大な女の子が出現し繰り広げ
るストリートシアター・ショウです。
http://www.giantspectacular.com/

マージーサイド海事博物館では特別展《Titanic and Liverpool: the untold
story》が始まりました。
http://www.liverpoolmuseums.org.uk/maritime/exhibitions/titanic/index.aspx

またタイタニックのスモーキングルームのレプリカとして有名な、アデルフィ・
ホテル内のセフトンスイートでも、4月9日から15日まで展示やイベントが行
われます。

リヴァプールでのタイタニック関連のイベント情報はこちらから。
http://titaniccities.org.uk/liverpool/events/

それではまた!

ミナコ・ジャクソン♪

 ≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish205_photo.html ≫


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