May 01 2012, No.503
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リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World 
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▼特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
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「ゴールドフィッシュだより」 / ミナコ・ジャクソン
          〜 Goldfish Liverpool Update / Minako Jackson 〜

 ― 第206号 / Sea Odyssey Giant Spectacular ―

 ≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish206_photo.html ≫

こんにちは。
先々週末の4月20日から22日までの3日間、待ちに待った《シー・オデッセイ》
が リヴァプール市内各地で繰り広げられました。
北リヴァプールのスタンリー・パークからスタートし、アンフィールド、エヴァ
トン・ブラウ、そしてリヴァプール中心部の23マイル(37キロ)の道のりを3
つの巨大なマリオネットが練り歩き、象徴的な街の風景が余すところなく舞台背
景として活かされたストリート・シアター・ショウです。

これは、タイタニック号沈没100周年を記念して行われたリヴァプールにおける
目玉イベントで、フランスのストリート・シアター集団<ロワイヤル・ド・リュ
クス(Royal de Luxe)>によるものです。
ちなみに2008年のスパイダーを手掛けた<ラ・マシン>はロワイヤル・ド・リュ
クスから枝分かれしたカンパニーなのだそうです。DNAが流れているのが分かり
ます。

決して沈まないと言われていたホワイト・スター・ライン社の豪華客船タイタ
ニック号は、サウサンプトンからニューヨークへの最初の(そして最後となる)
航海の途中1912年4月15日に氷山に接触し沈没し、乗客、乗員合わせて1513
人が犠牲となりました。
タイタニック号がリヴァプールに立ち寄ることはありませんでしたが、ホワイ
ト・スター・ライン社の本社がリヴァプールにあったことから、登記上タイタ
ニック号の母港はリヴァプールで、乗員の多くがリヴァプール出身でした。

リヴァプールのケンジントン地区に住んでいたウィリアム・マクマレーもその
一人で、タイタニック号の一等船客の客室担当として働いていました。
10歳になる娘のメイ・マクマレーは、航海に出ていてなかなか会えない父を恋し
く思う気持ちをしたためた手紙を父ウィリアムに出しますが、その数日後に事故
が起こり、その手紙はウィリアムのもとに届くことはありませんでした。

この手紙は、マージーサイド・マリタイム・ミュージアムに展示されています。
http://www.liverpoolmuseums.org.uk/maritime/collections/liners/titanic/mcmurray.aspx
この一枚の手紙がインスピレーションのもととなって、《シー・オデッセイ》が
生まれたのです。

《シー・オデッセイ》の物語の設定はこんな感じです。
タイタニック号には、50フィート(約15メートル)の巨人が潜んでいました。
この巨大な密航者は娘と会いに行くためにこの船に乗り込みましたが、船は大西
洋沖で事故に遭い沈没し、巨人は娘と再会することなく船に閉じ込められたまま
水深12,000フィートの海の底で命を失います。
でも父が娘に宛てて書いた手紙が船のどこかに残っているはず。。。

そのことを知った娘のリトル・ジャイアントは、巨人の弟である叔父を探し出し、
話しをします。
姪の話を聞いているうちに、叔父はダイビングスーツに身を固め、海底に潜るこ
とを決意します。
100年かけて海の底をさまよいながら、タイタニック号の沈む場所を見つけ、兄
を安らかに葬り、手紙の詰まったコンテナを海から運び出し、巨人が娘に宛てて
書いた手紙を探し当ててリトル・ジャイアントに届けるべくリヴァプールへ向い
ます。
リトル・ジャイアントはいたずらっ子の犬のゾロと一緒に市内を歩き回り、途中
何度も叔父とすれ違った後、ようやく再会を果たします。
そして二人と犬のゾロは、船に乗ってマージー川を後にします。。。

2008年のスパイダーも相当素晴らしかったですが、今回の《シー・オデッセイ》
は、スケールの大きさや驚きの要素だけでなく、マリオネットの細やかで豊かな
表情や動き、時折見せるお茶目な仕草(犬のゾロは目の前でおトイレをしてくれ
ました!)、そして何よりドラマ性の強さが加わって、観る側のハートを掴む力
が十二分にありました。

またメカニカルなスパイダーとは対照的に、《シー・オデッセイ》では、もちろ
んクレーンなどの大型重機も使われてはいましたが、マリオネットの操作そのも
のは主に人力で行われていたのが特徴です。
特に叔父さんが歩くとき、リリピューシャン(小人)と呼ばれるユニフォームで
身を包んだ操作チームが、ターザンのごとくワイヤーにつかまって飛び降りる力
で足を動かす様子や、叔父さんのダイバーヘルメットを取り外す光景などは目を
見張るものがありました。まさにガリバーと小人の実写版といった感じです。

書き忘れてましたが、女の子が30フィート(約9メートル)で、叔父さんが50
フィート(約15メートル)もあります。

このイベントには200人ほどの地元リヴァプールのボランティアが参加し、なか
にはリリピューシャンを務めた人達もいます。
この3日間の体力的にハードな大役を務めたオペレーションチームには、本当に
拍手を送りたい気持ちです。

ストリート・イベントにはパーフェクトとはいえない、肌寒く雨のちらつく不安
定な天候だったにも関わらず、街は本当に大勢の人々で賑わい、どこもかしこも
興奮と笑顔で満ち溢れていました。

街で通りすがる人達の発する言葉も、ソーシャルメディアのタイムラインも、
「ジャイアント・ガールが、」とか「アンクルが、」とか「犬が」と、すっかり
ジャイアンツで持ちきりで、リヴァプールは紛れもなく「ジャイアンツ現象」
一色となった週末でした。
誰もがこの週末、夢の中かあるいは映画のシーンの中にいるような感覚に包まれ
て、月曜日になってもその余韻から醒めることなく、今日も街のどこかで少女と
ゾロや叔父さんが歩いているのではないか、という錯覚に陥ったのは、私だけで
はなかったようです。

市の発表によると、推定60万人もの人々がこのイベントを鑑賞し、12万ポンド
の経済効果があったといわれています。
もちろん、こういう数字は良いに越したことはありませんが、それ以上に心のイ
ンパクトの大きさは、数字では計れない絶大なものだったに違いありません。
実在したリヴァプールの一人の少女が書いた手紙と彼女に降りかかった悲しい出
来事が、このようにこれまで誰も体験したことのない壮観な感動のフェアリー
テール(お伽噺)として昇華され、人々の心やまぶたの裏側にしっかりと焼け付
いて、いつまでも、きっと百年先にまで語り継がれるリヴァプールの原風景とな
るのではないか、と思います。

シー・オデッセイ: http://www.giantspectacular.com/

♪ ♪ ♪

【今号の告知】
5月も文化イベントがまだまだ続きます。

今年で5回目を迎える《リヴァプール・アート・プライズ》が4月24日にス
タートしました。
今年も強力な4組の候補者、アラン・ダン、ロビン・ウールストン、トモ
(ジェームス・トンプソン)、ドローイング・ペーパー(ジョン・バラクロフ&
マイク・カーニー)が非常に充実した展示を展開しています。
これに関連して、5月は《リヴァプール・アート月間》として、市内各地で展覧
会やアートオークション、アートフェアなどが行われます。
リヴァプール・アート・プライズ&アート・マンス: http://liverpoolartprize.com/

音楽の分野では、4月27日に第一回リヴァプール版マーキュリー・アワード
《GITアワード》が行われ、今年最もホットなバンドに、12組のバンドの中から
<ラヴド・ワンズ(Loved Ones)>選ばれました。
http://www.peterguy.merseyblogs.co.uk/2012/04/git-award-2012-and-the-winners-1.html

5月も音楽イベントが続きます。毎年恒例の《リヴァプール・サウンド・シティ》
が5月17、18、19日の3日間開催されます。
http://www.liverpoolsoundcity.co.uk/

5月18日(金)は、毎年恒例になりつつある《ライト・ナイト》が戻ってきま
す。市内各地のアート、音楽系の会場が夜遅くまでオープンし、さまざまな特別
イベントが開催されます。
http://www.lightnightliverpool.co.uk/

その他にも、日付が戻って5月のバンクホリデーの週末は、Liverpool ONEの
シャヴァス・パークでLIPAが主催する《グルーヴ・オン・ザ・グリーン》と題
したジャズ、ソウル、スウィング、ブルースの無料野外音楽イベントが5月5日
から7日までの3日間行われます。
http://www.liverpool-one.com/website/news-event-article.aspx?eventId=56

文化系以外では、2つほどお知らせがあります。
4月23日からしばらくのあいだ、リヴァプール・セントラル駅が再整備工事の
ため閉鎖となります。
ウィラル・ラインは8月25日から、ノーザン・ラインは10月22日に再開とな
ります。この間、2種類の代替バスが運行されます。

1)モーフィールズ−エリオット・ストリート(セント・ジョンズ・マーケット)
  −ライム・ストリート(セント・ジョージズ・ホール)循環シャトルバス:
  月〜土 始発〜午前7:00 10分おき
      午前7:00〜午後7:00 5分おき
      午後7:00〜終電まで 10分おき
  日曜日 始発から終電まで  10分おき

2)ブランズウィック(ノーザン・ライン)−ベリー・ストリート間シャトルバ
  ス:
  月〜金 午前7:00〜午後7:00 15分おき

あるいは、閉鎖はセントラル駅のみですので、ウィラル・ラインをご利用の方は
ライム・ストリート駅、ジェームス・ストリート駅、モーフィールズ駅から、
ノーザン・ライン(クロスビーやサウスポートなど)をご利用の方はモーフィー
ルズ駅から直接ご乗車ください。

詳細はこちらから。
http://www.loveliverpoolcentral.com/letmehelpyou/Default.aspx

リヴァプール観光案内所がセント・ジョージズ・ホールにオープンしました。
ホワイトチャペルの<08プレイス>が閉鎖されて久しいですが、ライム・ストリー
ト駅の目の前ですのでとても便利になります。
営業時間は、火曜日から日曜日まで午前10:00〜午後4:00。月曜定休ですが、バ
ンクホリデーマンデーは同じく午前10:00〜午後4:00まで営業しています。

セント・ジョージズ・ホール: http://www.stgeorgesliverpool.co.uk
リヴァプール・シティ・カウンシル: http://liverpool.gov.uk/news/details.aspx?id=214411

それではまた!

ミナコ・ジャクソン♪

 ≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish206_photo.html ≫


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