September 19 2006, No.265
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     リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World   
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▼特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
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「ゴールドフィッシュだより」 / ミナコ・ジャクソン
          〜 Goldfish Liverpool Update / Minako Jackson 〜

  ― 第61回 / 「アーティーパーティー♪ Liverpool Biennial 開幕」― 

こんにちは!
2年に一度のアートの祭典、リヴァプール・バイエニアル( The
Liverpool Biennial of Contemporary Art )がスタートしました。ビエン
ナーレではなく、「バイエニアル」と発音します。

1999年から始まったバイエニアルも今回が4回目で、今や現代アート
のビエンナーレとしては英国最大とも言われています(しかもほとんど
が入場無料♪)。
バイエニアル本体は、International 06 、International + 、John
Moores 24 、Bloomsberg New Contemporaries 2006 の4本柱で構成
されています。
 公式ホームページ: http://www.biennial.com

また、周辺イベントとして、リヴァプールのアート団体、アーティストを中
心に展開している、Independents Biennial
( http://www.independentsbiennial.co.uk )があります。

そして、Biennial 本体とも Independents とも呼びがたい、A Foundation
( http://www.afoundation.org.uk )というアート団体が主催する
Greenland Street があります。
Greenland Street は、2004年のバイエニアルでは Independents
District と呼ばれていたエリアですが、今回はより中心的な位置づけを
占めています。

今回は、Independents 部門を含めると、とてつもない数のイベントに
膨れ上がっています。
14日(木)の朝、プレス向けのオープニングが大雨の中、アデルフィ・ホ
テルにて行われたのですが、リヴァプール・バイエニアルCEOの Lewis
Biggs も、
「常にさまざまな催し物がオーガニックに枝分かれしているので、とに
かくご自分で探して観てください」
と言っていたように、誰も把握しきれない状態です。

今年は、「xxxx it」が合言葉のようで、プログラムは「follow it」、「find
it」、インフォメーション・ハブの看板には「know it」、街に掲げられたバ
ナーには「make it」、「break it」、「catch it」、「miss it」、「love it」、
「hate it」 などなど。
前回のオノ・ヨーコさんのバナーやピアヘッドの ABBA House のような
インパクトさに比べると、今回は少々薄いかもしれませんが、今回はと
にかく数とバラエティーに富んでいるので、オリエンテーリングのノリで
リヴァプールの街を探索しながら発見する楽しめるのではないかと思
います。

14日(木)は、プレス向けのオープニングの記者会見のあと、ウォー
カー美術館では、John Moore 24 の受賞者の発表が行われました(審
査の様子は、ゴールドフィッシュ第51回でお知らせしましたね)。
この栄誉ある絵画のコンペは、1954年からここウォーカー美術館で行
われていて、今回の審査員である Sir Peter Blake も受賞者の一人で
す。
午前中のプレス発表では Peter Blake がアナウンスをし、午後の授賞
式は Tracy Emin がプレゼンターでした(午後の部は、会場がすし詰め
で、とてもじゃないけどステージに近づくことはできませんでした!)。

今年は、Martin Greenland の "Before Vermeer's Clouds"が大賞を受
賞。
「抽象絵画の流行は去った?!」と囁かれるほど、今回は、写実主義、
フィギュラティブな作品やランドスケープの傾向にあることは間違いな
いようです。
入賞作品のひとつである、James White の "In the Basement (Kit II)"
などは、テクニックが凄すぎる。近づいて観ても写真みたいです。

今回の展示作品は、ナショナル・ミュージアム・リヴァプールのホーム
ページでも見れます。
 http://www.liverpoolmuseums.org.uk/walker/johnmoores/24/exhibitors.asp
ひとつだけ、Andrew Griffith の "Welcome to My Garden" が絶対入
賞すると思ってたのになあ。。。
でも一般からの投票もできるみたいなので、次行ったときにしてこよう
と思います。
とにかく見ごたえのあるコレクションで、大おススメです。すでに私の中
ではトップ3入り確実です。

同じくウォーカー美術館で、Lemon Jelly というエレクトロニカ・グルー
プの片割れの Fred Deakin のやってるデザイン集団、Airside による
『Insyde』展。これは前から目をつけていたのですが、その期待を裏切
りませんでした。音楽もこのために書き下ろされたそうです。最高にか
わいくて和めて、しかもインタラクティブで参加型だから楽しい。バイエ
ニアルの Lewis Biggs 氏もピョンピョン飛び跳ねていました。
この作品のショートビデオが見れますので、チェック!
 Airsideホームページ: http://www.airside.co.uk/press/insyde/

場所を移して、St. George's Hall の小コンサートホールで Silent Sound
という奇妙なパフォーマンス。Iain Forsyth & Jane Polland の二人が、
ステージの上の防音のきいた銀色のボックスに入って、ある同じ言葉
を繰り返し発し、そのメッセージをキャッチしたミニオーケストラがその
演奏を通じて、観客に潜在意識に語りかけるというもの。
1865年に同じ場所で、The Davenport Brothers によるこのようなパ
フォーマンスが過去に行われていたそうで、そのスタイルを再現したも
のだそうです。
音楽は、Spiritualized の Jason Pierce が作曲。私は特に何も感じませ
んでしたが(無意識に感じてるのかもしれませんが)不思議な空間でし
た。ここでレコーディングされたサウンドピースは、Greenland Street
の Blade Factory にて聴くことができます。

その晩は、ロンドン在住の美術ジャーナリスト、伊東豊子さんと合流し
て、Greenland Street でのオープニングパーティーに行きました。伊東
さんは、「フォグレス」という非常に充実して分かりやすいロンドン発
アート情報サイトを運営しています。イギリスのアートシーン&ギャラリ
ー情報を日本語で得られる、とっても貴重なホームページです。必読! 
 フォグレス: www.fogless.net

倉庫街ということもあって、音出し放題のストリートパーティーで驚きま
した。シンプルなセッティングだったにもかかわらず、どこかシュールで
華やかで、誰もがハッピーな雰囲気で包まれていました。
テントの中で踊るひとたち、ソーシャライズしている人混みの間をドラッ
グクイーンが通り過ぎたかと思うと、Jump Ship Rat の Ben Parry とフ
ランス人アーティスト Jacques Chauchat によるメカニカル・ミュージッ
ク・トーイ、The Milk Float が光を放ちながらドッタンガッチャンいってい
たりして(これは牛乳配達の車をジャンクで組み立てたもので、実際動
くんですよ。バイエニアル期間中、街中を巡回するそうです!)。
会場には、Peter Blake と元 Frankie Goes To Hollywood の Holly
Johnson の姿も見かけられました。

15日(金)は一般公開前のプライベートビューの日。
「Fuse Box」という名前のバイエニアル・インフォメーション・ハブへ行き
ました。
場所は、Polished T。Parr Street の坂を下りて、くねくねした丸いラン
プのオブジェ "Penelope" の近くです。
とにかくいろんなイベントが起こっているので、まずはここからスタート
することをお勧めします。Fuse Box では、Ros Hynd さんその他フレン
ドリーなスタッフがアドバイスしてくれる上に、インターネットが無料で使
えて、パソコンを持ち込んでワイアレス・コネクションもOK。近日中にカ
フェもオープンするそうです。
そして、Fuse Box の奥には、 International 06 のアーティスト、オースト
ラリア出身の The Kingping によるビデオインスタレーション。これが最
高に笑えます。マージー川の向こうの Port Sunlight Village(ユニリ
バー社の前身の石鹸工場が工員のために建てた社宅。チューダー様
式で白黒のパターンが特徴)の閑静な住宅街を、Little Britain の
ヴィッキーみたいにトラックスーツを着た4人が跳ね回り、 しまいには
牛乳配達の車を乗り回して大暴れ。

 < Fuse Box at Polished T >
  電話:0151 707 6719
  住所:85-89 Duke Street, Liverpool, L1 5AP
      (入り口は、Parr Street 側から。クラブ Cream 跡地、Nation
      の向かい側。カラフルな丸いオブジェPenelope 近く)
  オープン:毎日午前10時〜午後6時
 

Greenland Street に入る前に、そのはす向かいに、The Caravan
Gallery を発見。「Welcome to Britain」という本も出版している
Teasdale 夫妻は、イギリス中を旅して、可笑しな風景を写真で記録し
ています。

そして Greenland Street 。
ここは、もともとパン用のナイフを作る工場だったところです。The
Coach Shed 、The Furnace 、The Blade Factory の3つのエリアに分
かれています。とにかく巨大なスペースなので、余裕をもって見に行く
べしです。

The Coach Shed エリアでは、Bloomsberg New Contemporaries 2006
という、毎年行われる、イギリスの美大の学生または新卒アーティスト
の展覧会。
Chiho Kato さん、Akiko Takizawa さんなど日本人アーティストの作品も
展示されています(お二人にその晩のパーティーで会って写真を撮ら
せてもらいました)。
The Furnace では、Goshka Macuga による立体迷路のようなインスタ
レーション。ギャラリーのスタッフがツアーもしてくれるそうです。
The Blade Factory では、下の階では Grizedale Arts (越後妻有アー
トトリエンナーレでは「7人の侍」プロジェクトを展開)、上の階には、
Silent Sound のサウンドインスタレーション、そして、Office for
Subversive Architecture による屋上スペースは不思議な色合いで、
眺めもいいのでマストです!

 < Greenland Street >
  住所:67 Greenland Street, Liverpool L1 0BY
      (Cains ビール工場近く。"a"と書いてある煙突が目印です)
  オープン:水曜日〜日曜日。午前10時〜午後6時(木曜のみ8時)。
  入場無料

その晩は、Carling Academy でまたパーティー。
Lemon Jelly の Fred Deakin のDJ、リヴァプールの Hive Collective 、
そしてバンドがいくつか出ていましたが、食べる暇もなくまわっていたた
め空腹と疲労に負けて退散。帰りがけに演奏していたのは The
Wombats かな? 多分。。。

一般公開のスタートした16日(土)。アルバートドックでのウェルカミング
イベントには沢山の人が詰めかけ、ごったがえしていました。
Tate Gallery をザーッとみて、ゆっくりお昼を食べて、午後は Arena や
新生 Museum MAN などのインディペンデンツ部門の会場にいくつか
足を運びましたが、コレを書き始めると収集がつかなくなるので、今週
はメジャーどころのみでやめておきます。

バイエニアルはこれから10週間続きますので、ゆっくり紹介していきま
す。
「アートはイマイチ解らないし。。。」
と私も昔は思ってましたが、そんなこと関係なく楽しめるお祭りですの
でこれを機会にアートにどっぷり漬かってみてはいかがでしょうか。

日曜日は、トドメの Hope Street Festival 。
今回は、Philharmonic Hall のオープンデー、Heritage Week も重なっ
て、ホープ・ストリートは、マーケットストールやクラフトフェア、パフォー
マンスなどで、和やかな午後となりました。
フィルハーモニックホールで10周年を迎えたHOPESの HOTFOOT コ
ンサートを観て(今回は観客として鑑賞!)、おもてで地元の農家から
の野菜をたんまり買い込んで帰りました。

楽しむのも体力がいりますね。来週も忙しくなりそうです。

それではまた来週!

ミナコ・ジャクソン


(この連載に関連する写真は、ウェブサイトの「NLW ゴールドフィッシュ
だより」ページに掲載しています。
http://scousehouse.net/goldfish/goldfish61_photo.htm )


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