October 3 2006, No.267
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     リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World   
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▽特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
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「ゴールドフィッシュだより」 / ミナコ・ジャクソン
          〜 Goldfish Liverpool Update / Minako Jackson 〜

  ― 第63号 / 「 Fire & Eurhythmy 」― 

こんにちは!
今週は、日本人アーティスト2人にずっとご一緒しています。
ガラスアーティストのノグチミエコさん、アーティスト&パフォーミング・
アーティストのナガッチョさんが、2週間の予定でリヴァプール入りして
いるのです。
今回、ちょっとした縁で、彼ら日本人アーティストと地元のアーティスト
によるグループ・ショーを開催することになりました。
リヴァプール・バイエニアルのインディペンデント部門の一環として、マ
シューストリートにある Ikonography というギャラリーで、"Fire &
Eurhythmy" というタイトルのエキシビションを開いています。

ことのいきさつはというと…。
去年帰国したときに東京原宿の住宅街を歩いていると、たまたま、
「ギャラリー華音留」がありました。一瞬通り過ぎようとしたのですが、
3歩戻って中に入ってみると、ナガッチョさんの作品や、他の方々の作
品が展示されてました。
その時にオーナーの薫さんに、自分はリヴァプールにいて、リヴァプー
ルはアートが熱いということ、2年に1回ビエンナーレがあるので日本
とつないで何かしましょう、という話をしたのが、そもそもの始まりです。
薫さんが何人かのアーティストに声をかけてくださって、リヴァプール
行きに名乗りをあげたのが、ナガッチョさんとノグチさんだったのです
(薫さん、古川さん、ありがとうございました!)。

そして今年の春に帰国したときに、神奈川県藤沢市にあるノグチさん
の工房をお邪魔して、作品や制作プロセスを見学して感動しました。
出来上がった作品はとっても繊細なのに、作る過程というのは、火と
スピードとの勝負でとってもダイナミックなんですね。

リヴァプールに戻ると早速、ハンガリー系ルーマニア人のキューレー
ター Nicole Bartos と、Blackburne House のカフェでお茶を飲みなが
ら、ナガッチョさんから預かったポートフォリオとノグチさんの工房の写
真を見せました。
Nicole は1時間半くらい見入っていたのですが、彼女の頭の中でイン
スピレーションが湧いているのが分かりました。
そしてグループ展のテーマを「火」にすることに決定。火にまつわる
アーティストを合計9名集める運びとなりました。

参加アーティストは、ナガッチョ、ノグチミエコ、Nicole Bartos 、
Sarah Nicholson 、Richard Ashworth 、Jayne Hannay 、
Elizabeth Hodgkinson 、Sharon Mutch 、Barry Cooper の9名です。

テーマが、「火」と「オイリュトミー」。
紙、キャンバス、木、セラミック、ガラス、蝋、マッチなど、各アーティス
トがそれぞれ思い思いの素材を用いてこれらを表現しています。
オイリュトミーとは、20世紀初頭に、オーストリア人哲学者ルドルフ・
シュタイナーが提唱したスピリチュアルな運動芸術。人間のもつ身体
の営み、リズム、言葉の響きを見える形で表現し、世界や宇宙とのつ
ながりを認識するというものです。

ナガッチョさんは、即興の書の作品で「炎(エン)」、パイログラフィーと
いう木に半田ごてで焼き付けてから墨で彩った「烈(レツ)」で、噴きあ
がるような爆発するようなエネルギッシュな作品の数々です。
金曜日のプライベートビューでは、「の夜に」というハプニング・パ
フォーマンスも披露。黒い塊のようにして登場し、和とタップダンス、フ
ラメンコ、サックス演奏などが融合したステージでした。
『Art in Liverpool』から、一部ですが映像が見れます!
http://www.artinliverpool.com/biennial06arch/2006/10/fire_eurhythmy_at_ikonography.html

ノグチさんは、「錬金師の眺め」というイメージで、炉の炎、宇宙、ラボ、
心の景色、そして窓の外の秋の眺めがガラスの中に凝縮されて繰り
広げられています。
これは、錬金師とガラスアーティストであるノグチさん自身と重ね合わ
せたものともいえますね。
ちなみに、紅葉した植物は、Nicole の家の庭で摘んできたものです
(写真)。

セラミックアーティストの Jayne Hannay は、紙のような餃子の皮ほど
の薄さの陶器のモビールを制作したのですが、ギャラリーで3日間、
黙々と糸でつないでいる彼女の姿がとっても絵になっていました。

このほか、Barry Cooper のガラス作品、Richard Ashworth の燃えた
紙マッチのコラージュ、Sarah Nicolson と Nicole Bartos の蝋を使った
コラージュ、Elizabeth Hodgkinson のバーナーで焼き付けたキャンバ
ス、そしてチラシの画像に使われている、Sharon Mutch のアクリル板
に転写された写真など、それぞれのアーティストが「火」にまつわる素
材を用いていて、思い思いの方法で独自の世界観をもってこのテーマ
に呼応しています。
アーティストの詳細は、こちらから。
http://www.gallery4allarts.com/sept%20artists%20notes.htm

元々フォトギャラリーであるこの場所で、バイエニアル期間中のみ、こ
うした絵画やオブジェなど異なる素材の作品を展示するのは、いろん
な意味で容易ではありませんでした。
なんとかセットアップも完了し、金曜日にはオープニングパーティーも
とってもいい雰囲気で終わりホッとしているところです。
展覧会は6週間続きます。

 < Ikonography (アイコノグラフィー)>
  住所:31 Mathew Street, Liverpool L2 6RE
    (マシューストリートのビートルズ・ショップの上。ビートルズの銅
    像の上にナガッチョさんの書の作品が見えます!) 
  電話:0151 726 0659
  オープン:11月10日まで。10:30am 〜 4:30pm(日・月定休)

Independents Biennial ホームページ:
http://www.independentsbiennial.co.uk/plug/content/content.php?content.50

プライベートビューの後は、キューレーターの Nicole の自宅で打上げ。
レイト・ナイトスープ・パーティー、そして暖炉の火を囲って静かにゆっ
たりとした夜を過ごしました。。。


リヴァプール・バイエニアル International 06 が発表した「公共スペー
スアート」をいくつか紹介します。
海外のアーティストがリヴァプールにインパイアされて制作されたもの
です。地図と照らし合わせて歩いてみてください!
http://www.biennial.com/Resources//7/1/71c24920-57ab-4d2a-a0b2-7b799ca75b16.pdf
 
(1) Rigo 23
 場所はセント・ジョージズ・ホール前広場。ライオンの像が檻に?!
 手だけ微妙にでてて、ちょっと悲しそう。LA在住のポルトガル人アー
 ティストの作品ですが、檻は地元のStanley Steel で製造されたもの
 です。

(3) Mario Navarro
 場所は Picton Library(Central Library 内。ウォーカー美術館のとな
 りです)。チリ人アーティスト作。何もしなくてもクラッシックで素敵な図
 書館の中央に、ピンクのドームが出現。中は中古品で作った立体コ
 ラージュで、社会的メッセージが込められています。

(5) Ken Lum "Monument to Napoleonic Soldiers and Other Things in
  Common"
 場所は St. John's Garden(セント・ジョージズ・ホールの裏の公園)。
 カナダ人アーティストの青いパビリオン。2〜3人で行ったほうが楽し
 めるかもしれません。スロープを上がると円筒が3本あって、そこか
 ら下を覗けます。
 また下から円筒に入ると、他の2本の筒の中にいる人や上にいる
 人、反射した自分の姿が青白く見えて不思議な雰囲気です。

(6) Matej Andraz Vogrincic
 空爆で空洞になっていた ボム・チャーチこと St Luke's Church の中
 にボートが?!
 スロヴァニア人アーティストによるインスタレーション。どうやって運び
 込んだのかが興味深いです。

(13) Teresa Margolles "On Sorrow"
 メキシコ人アーティスト。場所は Duke Street と Wolstenholmes
 Square をつなぐきらきらとしたガラスで舗装されたこの通路ですが、
 説明を読んでギョッ。メキシコ・シティで暴力犯罪に関わった車のガラ
 スでできたものなんですって。綺麗だけど一人で歩くのはちょっと怖
 い。。。

(17) Jeppe Hein "Loop Bench"
 チャイナタウンのゲート近くの広場に、滑り台のようなオブジェ。デン
 マーク人アーティスト作。さっそく子供たちが遊んでいました。

(24) Pricilla Monge "Untitled"
 場所は Mann Island という通り(ピアヘッド近く)。出来上がってすぐ
 は青々としてきれいなサッカーグラウンドのランドスケープだったの
 ですが、残念ながら現在は芝を養生中でフェンスで覆われています。
 期間中に修復されるといいのですが。。。

アーティストの詳細は、バイエニアル公式ホームページから。
http://www.biennial.com/content/Programme/ArtistDirectory.aspx


告知コーナーです!
10月6日から、Black History Month がスタートします。
リヴァプールは歴史的にも社会的にも黒人および他のマイノリティーグ
ループの文化と密接なかかわりがあります。1ヵ月間、音楽、アート、
トーク、フード・フェスティバルなどが開催されます。詳細はこちらから。
http://www.liverpoolblackhistory.co.uk


最後に、あのスティーヴン・ジェラードがウォーカー美術館やワールド・
ミュージアム・リヴァプールなどの美術館&博物館を紹介するビデオク
リップを発見しましたので、見てみてください!
 http://blog.liverpoolmuseums.org.uk/graphics/gerrard.mpg    

それでは!

ミナコ・ジャクソン♪


(この連載に関連する写真は、ウェブサイトの「NLW ゴールドフィッシュ
だより」ページに掲載しています。
http://scousehouse.net/goldfish/goldfish63_photo.htm )


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