October 24 2006, No.270
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     リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World   
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▽特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
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「ゴールドフィッシュだより」 / ミナコ・ジャクソン
          〜 Goldfish Liverpool Update / Minako Jackson 〜

  ― 第66号 / 「ホスピタル&メディカル・アート特集」 ― 

こんにちは。
バイエニアルも後半戦に入り、だいぶ落ち着いてきたものの、まだま
だ新しいイベントや隠れたショーがあったりして気が抜けません。

バイエニアルのオープニングのときにご一緒したロンドン在住のアート
ジャーナリスト、伊東豊子さんの運営するサイト『フォグレス
(www.fogless.net)』で、『Artinliverpool(http://www.artinliverpool.com)』
と「ゴールドフィッシュだより」について触れられています(しかも写真つ
き!)。
後日、詳しいバイエニアル・レポートがアップされる予定だそうですの
で、要チェックです。また、今月発売の『美術手帖』に伊東さんのリヴァ
プール・バイエニアル・レポートが掲載されているそうですので、そちら
もお見逃しなく!

さて、今回は、リヴァプール・バイエニアルの一環で行われている、ホ
スピタル&メディカル・アートをご紹介します。

まずは、 Royal Liverpool Hospital の Roald Dahl Haemostasis and
Thrombosis Centre 。
え、え、何センター? と思ってしまうのは現地の人も一緒で、どんな
センターかというと、haemostasis が 「止血」、thrombosis が「血栓症」
なので、平たく言えば血液の病気を治療する医療センターです。
Roald Dahl (ロアルド・ダール)は、幼児文学作家。近年のものでいえ
ば、映画「チャーリーとチョコレート工場」の原作者。
このセンターは、ロアルド・ダールの死後に未亡人が設立した、「ロア
ルド・ダール基金」のバックアップを得て開設した施設です。

ここのセンター長である、Chen-Hok Toh 教授(写真)の専門はもちろ
ん止血・血栓症なのですが、アート好きで、しかもアートと健康の関連
性に対する関心がとても高く、センターを訪れるとすぐに分かります。
病院であることを忘れるような空間。天井には、ロアルド・ダールの絵
本に出てきそうな、Tom Hill による鳥のオブジェや、Ticky Lowe のカラ
フルなフェルトのぬいぐるみ(しかも触って遊べる!)や絵画の数々。
患者さんたちの診察前の緊張を和らげ、穏やかな気持ちになれるよう
な配慮がされています。
そして Bluecoat Display Centre のアート&クラフトのキャビネットも設
置されていて、とにかくセンスがいいのです。

今回は、バイエニアルの一環として、SoundNetwork との共同サウン
ド・スケープ・プロジェクト、"Inherent Accoustics(内在する音響効果)"
が行われています。
リヴァプール出身のソニック・アーティスト、Samantha Jones が Toh
教授や病院のスタッフと話合いながら創りあげたサウンドピース。音が
いかに環境、肉体、心理状態に影響するかがテーマになっているので
すが、とにかく聴いていて心地がいいんです。待合室であまりにも気持
ちよく聴いていると、受付の人がきて「診察ですか?」と声をかけられ
てしまいました。
基本的にこの期間は一般に開放していますので、診察目的以外でも
出入りOKなのですが、受付の人には先に一言伝えたほうがいいかも
しれません。
Toh 教授をはじめ、センターの人たちは、みんなとっても感じがいいで
す。
"Inherent Acoustics" は、11月23日まで。

 < The Roald Dahl Haemostasis and Thrombosis Centre >
 住所:Royal Liverpool Hospital 内
    Prescot Street, Liverpool L7 8XP
    (London Road 坂を登った右手に病院の正面玄関があります)
 一般公開:火、水、木曜日 9:00am 〜 2:00pm
 詳細:SoundNetwork のサイト http://soundnetwork.omweb.org 
    センターのサイト http://www.rlbuht.nhs.uk/content/default.asp?web=243&sub=1081  


次は、Royal Liverpool Hospital から坂を下ったところにある Glaxo
Neurological Centre で行われている "At Last Something Different!"
展。
こちらは、Alan Martindale の個展です。ここは病院ではありませんが、
神経系の病気に関する相談に応じたり、情報提供をする施設です。
エントランスホールに、カラフルな 'This is a nice place' という絵画や、
タブレットでつくった、'System Crash' などが印象的でした。アーティス
トの Alan 自身、側頭葉てんかんを患ってから、人生の短さ、時間の尊
さを感じ、それまで17年間携わった建築関係の仕事を辞めてアーティ
ストとしての道を選びなおしたそうです。
ポップな色使いと、かわいらしささえある作風のなかに、せつなさが感
じられます。
この展覧会は、11月24日まで。

 < Glaxo Neurological Centre >
 住所:The Glaxo Centre, Norton Street, Liverpool(コーチステーション隣り)
 オープン:月〜金曜日 9:00am 〜 5:00pm
 詳細は、インディペンデンツのホームページから。
 http://www.independentsbiennial.co.uk/plug/content/content.php?content.117


その次は、世界でも名門校、リヴァプール大学 The School of Tropical
Medicine (熱帯医学)の共同スペースで行われている "Contagion"
展。
リヴァプール出身のアーティスト Barbara Jones が、電子顕微鏡で見
たマラリア、エイズ、サーズなどのバクテリアやウィルスからアイディア
を得て描かれた絵画やインスタレーション。
この手のトピックをアートにするというのは、なかなか勇気がいることだ
と思います。人の生命を脅かす根源となる病原菌ですから、内容とし
て不快に思われたり、アーティストの無責任な美意識と捉えられるリス
クもあります。
でもぐるっと壁にかかった作品を見た後に上を見上げると、 天井には
世界の平和と人類の病が消えることを願って作られた折り鶴(紙には
天然痘の細菌の柄)を見て、ちょっと救われました。
"Contagion" 展は、11月24日まで。

 < The School of Tropical Medicine >
 住所:Pembroke Place, Liverpool, L3 5QA
 一般公開:月〜金曜日 0:00pm 〜 2:00pm
 詳細は、インディペンデンツのホームページから。
 http://www.independentsbiennial.co.uk/plug/content/content.php?content.127


今週の告知も、ホスピタル・アートつながりです。
11月20日から24日まで、Royal Liverpool Hospital の The Linda
McCartney Centre でチャリティーエキシビション&オークションが行わ
れます。
Deep Purple のベーシストでありアーティストでもある Roger Glover が
絵画をセンターに寄付しました。この作品はオークションにかけられて、
収益金はセンターの運営、癌治療の研究に充てられるそうです。

 < The Linda McCartney Centre >
 住所:RLUH, Prescot Street, Liverpool L8 7QA
 ホームページ: http://www.yourcentre.org


最後に、また今週も Mike McCartney さんを目撃!
FACT で Tenantspin による公開番組のインタビューに登場。
Tenantspin は、高層アパートの住人が中心になって運営しているイン
ターネットTVプロジェクト。FACT が協力しています。
私の大のお気に入りの75歳のスカウスじいちゃん John McGuirk がプ
レゼンターとなって、Mike さんへの爆笑インタビューを繰り広げました。
ラストには、The Scaffold の "Lily The Pink" を披露してくれて、会場
は大合唱。司会の John のもうひとつの顔である、スプーン・プレイが
見ものです。天才カメラマンとベスト・スプーンプレイヤー・イン・ブリテ
ンのコラボレーション! このインタビューの模様は、近日中にネット
上にアップされるそうですが、待てない方は、私の撮ったショートビデ
オをご覧下さい。
http://video.google.com/videoplay?docid=-1418335202515182015&pr=goog-sl

参考までに、Scaffold オリジナルのビデオは、こちらから。笑えます!
http://www.youtube.com/watch?v=lwTh3_qG6hs

We'll drink a drink a drink to Lily the pink a pink a pink♪
The saviour of the human race♪
For she invented medicinal compound♪
Most efficacious in every case~♪
            - from Lily The Pink by The Scaffold

本当にどんな病にも効く薬が発明されたらいいですね。

それではまた来週!

ミナコ・ジャクソン♪


(この連載に関連する写真は、ウェブサイトの「 NLW ゴールドフィッシュ
だより」ページに掲載しています。
http://scousehouse.net/goldfish/goldfish66_photo.htm )


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