February 27 2007, No.287
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     リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World   
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▼特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
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「ゴールドフィッシュだより」 / ミナコ・ジャクソン
          〜 Goldfish Liverpool Update / Minako Jackson 〜

  ― 第80号 / 「 Centre of the Creative Universe !! 」 ―
 ≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish80_photo.htm ≫

こんにちは。
2月もあっという間に終わりに近づいてしまいました。そして気が付い
たら「ゴールドフィッシュだより」も80号! 驚きです。引き続きよろしく
お願いいたします。

今週は、月曜日に Tate Liverpool に行ってきました。
月曜日は休館なのですが、翌日からスタートする展覧会を特別に見せ
てもらいました! しかも普段は撮影不可なのですが、クローズアップ
でない限りはOKがでましたので、写真もお送りします(クローズアップ
のものは、Tate Liverpool から使用許可を得た画像です)。

800年のバースデーを迎える今年のリヴァプールでは「ヘリテージ」を
テーマにさまざまな展覧会や催し物が企画されています。
Tate Liverpool では、Christoph Grunenberg (Tate Liverpool のディレ
クター) と Robert Knifton (Manchester Metropolitan University の博
士課程在籍中)の共同キューレーションによる、過去50年間のリヴァ
プールのアートシーンを総括した企画展が行われています。

その名も "Centre of the Creative Universe: Liverpool and the
Avant-Garde" 展。
それにしても 「センター・オブ・ザ・クリエイティヴ・ユニヴァース」だなん
てそこまで断言しちゃっていいの? と聞いているほうが照れてしまうよ
うな大袈裟なテーマですが、どうやらまんざらウソではないようです。
アメリカのビート詩人 Allen Ginsberg が、当時手紙のなかで、

「ビートルズの故郷、リヴァプールで丸々1週間過ごして、新しいバンド
をいっぱい観て、長髪の野郎たちと楽しい時を過ごした。 まるでサンフ
ランシスコみたいだった、天気がグレーなのを除けばね」

とその興奮ぶりをしたためていたくらいです。やっぱりメンタルなレベル
でクリエイターたちを惹きつける何かがあったんですね。

この展覧会は、リヴァプールという街が戦後、いかにさまざまなアー
ティストに影響を及ぼしたかを、中からの視点、外からの視点を含め
て、作品や当時の映像、ポスター、グッズなどを通じてドキュメンタリー
化しています。

入り口をはいると、リヴァプールをセンターに枝葉が分かれになった系
譜。これが面白い。
リヴァプールからスタート → 詩人、ミュージシャン、アーティスト Adrian
Henri → 彼のバンド The Liverpool Scene → 名物DJ John Peel → ア
メリカ・サンフランシスコ → ビートニクの発信地 City Lights Bookstore
→ ビート・ジェネレーションの中心人物である作家 William Burroughs
に辿り着きます。

別の枝葉を見てみると、リヴァプールからスタート → ビートルズ →
[右に行くと] オノ・ヨーコ → Bluecoat Arts Centre へ。
この展覧会では、1967年に Bluecoat で行われた "Concert of Music
for the Mind"(ハプニング・イベント)のコーナーも設けてあり、映像も
見られます。

ビートルズ → [左に行くと] Brian Epstein → Jeremy Deller & Paul
Ryan(アーティスト。この展覧会では 今回 Tate がコミッションした
Paul Ryan とのコラボレーション作 "Drawing for 'Brian Epstein's
Liverpool' from Sketchbook" が展示されてます) → Cream (言わず
と知れた、リヴァプールのクラブ) → ええ? Scouse House !?
(。。。一瞬びっくりですが、ダンス系音楽のハウスです。スカウス版ハ
ウス・ミュージックのことですね。。。)
 
この系図は、50ペンスの寄付をすればお持ち帰り可能ですが、Tate
Liverpool のホームページからもダウンロードできます。
http://www.tate.org.uk/liverpool/exhibitions/centreofthecreativeuniverse/pdfs/creativemap.pdf

この展覧会は、60年代のアート、詩、音楽に重点が置かれています
が、70年代のパンクシーンにも触れています。
パンク、ニューウェーブの中心地であった Eric's のチラシやバッジ、バ
ンド Big in Japan (紅一点のシンガー Jayne Casey 、Frankie Goes To
Hollywood の Holly Johnson 、Lightning Seeds の Ian Broudie 、KLF
の Bill Drummond 、そして Tear Drop Explodes に参加後 Food
Records 創設者となる David Balfe という、現在も活躍するゴールデン
メンバーでした)のサイン付きの写真も展示してあります。

70年代は、アートでいうとリアリズムの復活、 当時アート・スクールで教
鞭をとっていた John Baum 、Maurice Cockrill 、Sam Walsh など。
80年代は、Martin Parr や Tom Wood などの写真家が景気が降下し
たダークなリヴァプールを捉えた写真の数々。
最近のところでは、2007年 Bill Drummond 作の "I Challenge You" な
ど。このポスターは街中にも貼られてました! 写真は Seel Street に
て撮影したものです。

リヴァプールの人は、いい意味でも悪い意味でも、性格的に突飛な発
想の持ち主が多いです。そして議論好きで、よく喧嘩別れもします。
もうひとついうと地元意識が非常に強い。そして街が比較的小さいの
で、ミュージシャン、詩人、アーティストなどがカフェやパブでたむろして
語り合って、クロスカルチャーで既成概念にとらわれない新しいものが
自然発生的に生まれてくるんですね。そしてこのエネルギーが異国の
アーティストまでも巻き込んでいったのでしょうか。
今でもそういうところ、とっても強いので、分かる気がします。
Bill Drummond のポスターを見ながら、リヴァプールはもしかして
"Capital of Culture" なんて看板なしでも「文化の中心」として君臨し続
けるんだろうな、と少し納得してしまいました。

Liverpool University Press から同タイトルの書籍も出ています。50年
間のリヴァプールの文化が詰まった完全保存版とも言えます(アマゾン
でも売ってます)。

この展覧会は Tate Liverpool 2F にて。入場無料。9月9日まで開催
です。

 < Tate Liverpool >
  住所:Albert Dock, Liverpool L3 4BB
  電話:0151 702 7400
  Email:visiting.liverpool@tate.org.uk
  オープン:火〜日曜日 10:00〜17:50 最上階以外は入場無料
  ホームページ:http://www.tate.org.uk/liverpool/exhibitions/centreofthecreativeuniverse/default.shtm

♪ ♪ ♪

World Museum Liverpool では、ウォレスとグルミットなどのクレイ・アニ
メーションで知られる Aardman の "Animated Adventures" 展が行わ
れています。
12月に帰国したときに東京三鷹のジブリ美術館に見に行ったときも感
じましたが、宮崎駿にしろ Aardman にしろ、ここまでするか〜?! と
思わず感嘆してしまう、シゴトの細かさとこだわりが見られます。
映画制作には250名ものクルーが関わり、完成までに5年かかるそう
です。キャラクターのデザイン、背景になるセット、小道具などのデザイ
ンや制作に多くの時間が割かれ、撮影に18ヶ月が費やされます。
キャラクターは、プラスティシーンという粘土でできているのですが、口
パク用に発音ごとに異なる口の模型が作られ、髪型から衣服まで作り
こまれていています。
セットは本物の家の内装とおそらく変わらないプロセスで作られている
のではないかと思うほどです。家具や柱のミニチュアには非常にデコラ
ティブな彫刻が施されていて、そのほか布張りされた椅子、床材、タイ
ル、壁紙、壁に架かった絵画どれをとっても溜息もの。Anti-Pesto バ
ンの模型などは、本物のオースチンA35よりも高いそうです!

この展覧会に行ってから映画 「ウォレスとグルミット」シリーズを観てみ
てほしいです。
こちらは8月26日まで開催されます。

 < World Museum Liverpool >
  住所:William Brown Street, Liverpool L3 8EN
  電話:0151 478 4393
  Email:visiting.liverpool@tate.org.uk
  オープン:毎日 10:00〜17:00 入場無料
  ホームページ:http://www.liverpoolmuseums.org.uk/wml/exhibitions/adventures

♪ ♪ ♪

アニメーションものでもう一つ。
Town Hall から程近い Artfinder's Gallery にて、昔ながらの漫画、子
供向けの絵本の原画やアニメのセル画が展示されています。
くまのプーさん、機関車トーマス、ピンクパンサー、ポパイ、シンプソン
ズなど日本でも知られるアニメから、イギリス人たちが思わずノスタル
ジーに浸ってしまう Captain Pugwash 、Rupert Bear 、Dr. Who など。
イラストレーター、グラフィック・デザイナーを長年している友人たち3人
と一緒に見に行ったのですが、そのうちの一人ジョージが回顧モードに
入っていました。

「昔は、みんな手作業だったんだよ。漫画の吹き出しの文字専門の担
当なんかもいたしね。今じゃパソコンで入力できちゃうけど」
「吹き出しの部分は上から貼り付けてあるね。Cow Gum っていう糊を
使うんだよ」

当時は手で描いて、切り貼りしてたんですね。テクノロジーの発達で便
利になった分、人間が本来もつ手の技術が退化していくのかなあ、と
思うと少しさみしい気がします。
この展覧会は3月31日まで。

 < Artfinder's Gallery >
  住所:6 Queen Avenue, Liverpool L2 4TG
      (Castle Street を一本入ったアーケード内)
  電話:08452570357
  オープン:11:00〜18:00(火〜金) 10:00〜13:30(土)
  ホームページ:http://www.lydiabates.com/artfinders-gallery.html

♪ ♪ ♪

【今週の告知】
その1;
Anthony Brown の "100 Heads Thinking As One" 展が、3月3日(土
曜日)から場所を移して、メトロポリタン大聖堂で行われます。期間は
3月30日まで。
公式ホームページ: http://www.100heads.co.uk 

その2;
3月9日は "39 Art Day"!
ドイツで活躍中の日本人アーティスト、開発好明氏が提唱した「サン
キューアートの日( www.39art.com )」。日本をはじめ、今年は、ニュー
ヨーク、ベルリン、香港などのギャラリーが参加していて、「文化の中
心」リヴァプール(?!)も黙ってはいられないでしょう!
…という勢いで、私と旦那でこちらのギャラリーやアーティストに声をか
けたところ、「それは素晴らしいアイディアだ!」と思いのほか反応よく、
参加者が続々増えています。

この日は、ギャラリーやアート系のショップでさまざまな特典やMSNメッ
センジャー上でのパフォーマンスなどもありますので、是非是非アート
に浸ってみる一日にしてください! 日本にお住まいの方も、北は北海
道から南は沖縄まで各地くまなく行われていますので、おもしろそうな
企画を探してみてはいかがでしょうか?

<"39 Art Day" 参加団体リスト> http://www.39art.com/2007/list2007.htm
<リヴァプールの部> http://www.artinliverpool.com/list/39artday.htm

それではまた来週!

ミナコ・ジャクソン♪

≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish80_photo.htm ≫


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