May 01 2007, No.296
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     リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World   
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▽特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
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「ゴールドフィッシュだより」 / ミナコ・ジャクソン
       〜 Goldfish Liverpool Update / Minako Jackson 〜

  ― 第89号 / 「聖ジョージ イン・ リヴァプール」 ―
 ≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish89_photo.htm ≫

4月23日は、St George's Day (聖ジョージの祭日)でした。
聖ジョージは、イングランドの守護聖人。ドラゴンをやっつけたという伝
説でも知られているこの聖人は、イギリス人というわけではなく、生ま
れはカッパドキア(現在の東トルコ)で、ローマ帝国の将校でしたがキリ
スト教に改宗、キリスト教迫害に屈することなく信条を貫き殉教したこと
からその栄光と勇気をたたえて聖人となったそうです。イングランドだ
けでなく、グルジア、ブルガリア、ポルトガル、カタルニア、ギリシャ、パ
レスチナ、カナダ、エチオピア、セルビア、トルコなどでも聖人として祭
られています。

リヴァプールの生誕800年、そして「ヘリテージの年」ということもあり、
今年の聖ジョージの日は1週間にわたってお祝いされました。街のあち
こちで、St George's Cross(イングランドの旗。白地に赤の赤十字)が
はためいていまました。

午後1時半ごろからリヴァプールの街の各地で、"Symphony for St
George - Liverpool Symphony of Bells"が行われました。
最初私は家にいたのですが、窓の外を見るとPhilharmonic Hallの屋上
にユニオンジャックが掲げられ、ベルが鳴り始めたのに気づき、雨の
中外に出ると、各方面から鐘の音色が聞こえてきました。
私のいたところからは、大聖堂、Philharmonic Hall、St Luke's Church
(爆弾の落ちた教会)から異なる鐘の音が織り成されていました。ほか
にも教会だけでなく、街中の公共の建物や船などあらゆるベルが鳴り
響いたそうです。

この日、St George's Hall(セント・ジョージズ・ホール)がチャールズ皇
太子によって正式に再オープンされました。
ホールの前には、雨のなかたくさんの人々が詰め掛けたそうです。10
年間のプラニング、5年間にわたる修復工事の後の一般公開で、館内
を見学できるヘリテージ・センターやショップも常設され、新しい観光ス
ポットとなること間違いなしです。

セント・ジョージズ・ホールは1842年〜1854年にかけて建てられた、裁
判所、そしてコンサートなどの多目的ホールという主な2つの機能をも
つ建築物です。
Harvey Lonsdale Elmesが設計、Charles Robert Cockerellによって完
成されたこの建物は、世界でも有数のネオ・クラッシック建築のマス
ターピースで、ヴィクトリア女王も「古代アテネに匹敵する」と賞賛した
ほどだそうです。ヴィクトリア朝は、イギリス帝国が繁栄し、 産業革命
が花開き、同時にファッション、アート、建築も華やかとなった バブリー
な時代。リヴァプールも例外ではなかったんですね。

 <St George's Hall Heritage Centre(ヘリテージ・センター)>
  [Ground Floor] 入り口、ショップ、South Entrance Gallery、牢獄
  [1st Floor] Crown Court(裁判所)、Judges Robing Room(裁判官
         の着替え室)、The Minton Tea Room(6月1日オープン
         予定)、Power And Glory Gallery
  [2nd Floor] 学習センター、特別展用ギャラリー、Great Hallを見下
         ろすバルコニー

見どころは、なんといっても Great Hallの床を埋め尽くしている30000
個ものMintonタイル。すべて手作りです。リオープンから1週間に限り、
ナマの状態を見ることができましたので写真に収めました(その後は、
表面保護のためガラス張りになります)。
そしてパイプ オルガン、シャンデリア、天井、ステンドグラスの細部に
渡って豪華で美しいです。

ゴージャスなデザインの Grand Hallから打って変わって、牢獄は同じ
建物にある部屋とは思えない雰囲気で、昔の牢獄の様子を視覚的に
だけでなく、嗅覚からも再現してくれているのですが、とても臭かったで
す。

コンサートルームは残念ながら、ヘリテージ・センターの一環で見学す
ることはできないのですが、今後さまざまなコンサートなどが催される
のでそういった機会に見に行かれるといいかと思います。

新しい見ものとしては、聖ジョージがドラゴンを捕らえる彫刻、そして
ショップ近くに飾られている、Singh Twinsの描いた'800th Birthday
Coat of Arms'(エンブレムとでもいうのでしょうか)。

Singh Twinsは、双子のインド系イギリス人アーティスト。以前ウォー
カー美術館での展覧会を見たことがありますが、インドの伝統的な手
法で描かれたミニチュア・ペインティングで色鮮やかで緻密で美しく、
一瞬、「インドの伝統美術品」で流してしまいそうなのですが、よーく見
るとモチーフが現代社会やセレブリティーへのユーモアたっぷりの風
刺で、そのギャップが楽しめたのを覚えています。

この新しい'Coat of Arms'も見ればみるほど本当に面白いです。左に
ネプチューン、右にトリトン(でもなぜかマイクを握ってます!)、中央に
ライヴァー・バード、下には リヴァプールのモットー "Deus Nobis Haec
Otia Fecit"(ラテン語で「この平穏さは神からの賜物」)のドレープ状の
バナーといった、既存の'Coat of Arms'のデザインを基に、リヴァプー
ルのウォーターフロント、800年のリヴァプールの歴史上の人物や出来
事、近代〜現在のポピュラーカルチャーのアイコン(ビートルズ・ストー
リーの入り口のアーチ、エヴァートン&リヴァプールのスカーフ、スー
パーラム・バナナ、姉妹都市であるニューヨークを象徴する自由の女
神とエンパイア・ステイト・ビル[キングコングもいます!])、中国のパゴ
ダなどが散りばめられています。

従来のライヴァー・バードは、海藻をくわえていますが、この作品では、
ペンと筆にとって代わられています。これはリヴァプールの、「海洋都
市からアートや文化の街への変貌」を意味するそうです。
100年後の900年のバースデーではこの絵がどのように変わっていくの
でしょうか。
このポストカードは館内のショップで販売していますので、持ち帰って
後でじっくり研究してみることをお勧めします!

先週の告知でお伝えしていた"Son et Lumiere"(音と光のショー)。
月曜日の回を行きそびれたので、金曜日に観にいきました。
ホール裏手のSt John's Gardenに座席がセットアップされ、ホールの
外壁にリヴァプール800年の歴史を綴った映像が映し出されました。驚
くほど解像度の高い映像と良い音質で、楽しめました。

200人ほどの漁港から始まり(当時の公用語はフランス語だったそう
で!)、奴隷貿易、鉄道開通、2つの大聖堂、リヴァプールとエヴァート
ン、戦争、ロックンロールの伝来、ビートルズ、アートetc. etc...
繁栄と衰退をくぐりぬけて、またパワーアップしはじめる現在のリヴァ
プールのシーンでBGMとしてかかっていたThe Boo Radleysの"Wake
Up Boo!"が妙に効いていました。

この建物がライムストリートの駅前にどかんと鎮座していて、その名前
や存在は知っていましたし、そしてここがリヴァプールFCの凱旋パレー
ドやジョンレノンが亡くなったときなど、嬉しいときも悲しいときも市民が
集う場所ということは知られていましたが、正直なところ私自身、これ
までセント・ジョージズ・ホールの正体は今ひとつ掴めていませんでし
た。
今回のリオープニングでより身近な存在となった気がします。

 <St George's Hall ヘリテージ・センター>
  住所: William Brown Street, Liverpool Merseyside L1 1JJ
  オープン: 10:00〜17:00(火〜土) 13:00〜17:00(日)

月曜日はお休みですが、祝日の場合は開いています。入場無料。
入り口は、クイーン・スクエアに面した 'South Entrance'になります。

過去の セント・ジョージズ・ホール関連の写真を掘り返しましたのでご
参考まで。
http://www.scousehouse.net/goldfish/goldfish55_photo.htm
http://www.scousehouse.net/goldfish/goldfish69_photo.htm

 ♪ ♪ ♪

【今週の告知】
その1;
コアなビートルズ・ファンの方々に耳寄りな情報です。
5月6,7日の2日間、Beatles Storyで、"Beatles Valuation Event"が行
われます。これは「ビートルズ・グッズのお宝鑑定会」とでもいうもので
しょうか?
アルバート・ドックとビートルズ・ストーリーとビートルズ・メモラビリア鑑
定の専門会社Tracksによる共同イベント。お持ちのメモラビリアを持ち
込んで、無料で鑑定してもらえます。鑑定は、午前10時〜午後4時で
すが、午前9〜10時にアルバート・ドックのAnchor Courtyard(Yellow
Duckmarine Toursとなり)にて登録が必要です。
詳しくはビートルズ・ストーリーのホームページ: www.beatlesstory.com
を。

その2;
最近の音楽ファンの方への情報です。
ゴールドフィッシュだよりでも何度か登場しているフォトグラファーMark
McNultyの新しい写真のコレクション"REMIX"が、Berry Streetの
Metropolitan Barにて発表されます。リヴァプールの音楽シーンを撮り
続けて今年で20年を迎えることから、100%音楽がテーマです。
モデルは Candie Payne, The Kooks, The View, Little FlamesのEva
Petersen, The Pipettes, Pop Levi などなど。
5月10日午後8時のオープニングではライブも行われるそうです。
ラインアップは Candie Payne, Bexy Sitch & The Creepy Crawlies,
Whiskey Headshotです。 是非是非!
Mike McNultyホームページ: www.mcnulty.co.uk

それではまた来週!

ミナコ・ジャクソン♪

≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish89_photo.htm ≫


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