May 15 2007, No.298
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     リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World   
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▽特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
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「ゴールドフィッシュだより」 / ミナコ・ジャクソン
       〜 Goldfish Liverpool Update / Minako Jackson 〜

  ― 第90号 / 「 Finest Hour & Futuresonic 2007 」 ―
 ≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish90_photo.html ≫

こんにちは。
先週は "Digital Show 2" の準備やその他諸々に追われてお休みをい
ただきました。スミマセンでした。
お陰様で、無事100作品セレクトし、アップしました。テーマは「サイケデ
リア」で、マンチェスターでこの週末に行われた "Futuresonic 2007" の
'EVNT'(イベント)の一環としての開催です。イギリス、アメリカ、日本を
はじめ17カ国から素晴らしいエントリーがありますので是非見てみてください!
http://www.digitalshow.co.uk/gallery/thumbnails.php?album=3

"Futuresonic 2007" フェスティバルの模様は今週のレポート後半でお
伝えします。

まずは今週のリヴァプールから。
火曜日。現代美術界でその年に活躍した若手のブリティッシュアーティ
ストに贈られる賞、ターナー賞(Turner Prize)の候補者4名の発表が
テート・リヴァプールで行われました。
20年間ロンドンのテート・ギャラリーで行われていましたが、今年初め
てロンドンを飛び出してリヴァプールでその展覧会と授賞式が行われ
ます。
候補者は、Zarina Bhimji, Nathan Coley, Mike Nelson, Mark Wallinger
の4名。今年は、政治、宗教などの社会性が強いみたいですね。
展覧会はテート・リヴァプールにて10月19日〜1月13日。受賞者の発
表と授賞式は12月3日に行われます。
ターナー賞2007:
http://www.tate.org.uk/liverpool/exhibitions/turnerprize2007/default.shtm

リヴァプールの「裏ターナー」もまだまだ続いています。近々ノミネー
ションが決定しますので、またお伝えします!

♪ ♪ ♪

「ボムド・アウト・チャーチ(爆弾の落ちた教会)」というニックネームで
知られるSt. Luke's Churchですが、中に入れるようになりました。
これは、Urban Strawberry Lunchというバンドのメンバーが立ち上げ
た 'Finest Hour' というプロジェクトで、リヴァプールで起きた1941年の
ドイツ軍による空爆に関する写真、資料をアーカイブしています。
St. Luke's Churchはその意味でリヴァプールの中で最も象徴的な建
物であり、これまでも空爆のあった5月5日には毎年、戦前・戦後の教
会の写真や絵画を展示したり、ライブを開催してきました。
今回は向こう5ヶ月間、月曜日から金曜日までの午後12時〜2時(まさ
にランチタイム?!)の時間帯のみ開放されます。入場無料。
これからも引き続き市に働きかけて、この教会の跡地で定期的にイベ
ントが行われるように運動していくそうです。

Finest Hourホームページ: http://www.finest-hour.net/
Urban Strawberry Lunchマイスペースでは彼らのヴィデオクリップも見
れます。車のホイールやドラム缶など廃材を楽器にした面白いパ
フォーマンスですよ。
http://www.myspace.com/urbanstrawberrylunch

♪ ♪ ♪

週末はマンチェスターで "Futuresonic 2007" に行ってきました。
今年で11回を迎えるこのマルチメディアフェスティバル、プログラムの
数は10周年であった去年よりは少なかったものの、なかなかのツワモ
ノを揃えていました。
主な会場は、Contact Theatre, Academy, そして周辺イベントで
Victoria BathsやKro Barなど。
今年は、ロンドンのアンダーグラウンドシーンを作った UFOクラブや
Pink Floydの "Games for May" コンサートなど、初期のマルチメディ
ア・イベントから40周年を迎えて、オマージュを込めたトークやイベント
が行われました。

主なラインアップをざっと紹介すると、初日の木曜日、UFOクラブの仕
掛け人Barry Milesのトークからスタート、2日目はクラウトロックの雄
Faustのトーク、そしてライブ。3日目はエレクトロ・ミュージックの父(又
は神?)KraftwerkのWolfgang Flurのトーク、そしてクロージングイベン
トでは 'UFO vs Tramp!' というのコラボレーションナイトで、DJには
KraftwerkのWolfgang Flur 氏を迎えて行われました。

Faustのトークでは、メンバーが工事現場のヘルメットをかぶって登場。
マンチェスター代表で、Joy Division, New OrderのドラマーStephen
Morrisも同席してましたが、メンバーはトークイベントの中ごろまで誰だ
か気づいていなかったようでおかしかったです。
Faustは、70年代に廃校になった建物でコミューン共同生活をしながら
音楽活動をスタートし、以来アングロアメリカンとは全く異なるルーツの
音楽を作り続けています。

フロントマンのJean-Herve Peronはフランス人で、英語で話しているか
と思ったら突然ドイツ語やフランス語で話はじめるので、観客がボラン
ティアを名乗りでてステージ上で通訳を始め、最終的にはイタリア語の
通訳まで登場しました。
「僕らは僕達じゃなく、僕達はここにいない。僕らは単なるベクトルに過
ぎない」
と、発言も宇宙的で、アシッドマザーズテンプルを思い出しました。
プログレッシブロックって、いったい何が先進、前衛かと考えていたの
ですが、当時の既存のバンドや音楽のスタイルから飛び出した音楽性
だけでなく、それ以上にそこに宿る精神がモノを言っているのだな、と
実感しました。

続くライブは、このおじさんたち、どこからエネルギーが湧いてくるのだ
ろう? と驚かされる2時間近いぶっ続けのパワー・パフォーマンス。
ベース、ドラム、トランペット、パーカッションなどの普通の楽器に加え
て、ドラマーはぶら下がった金属板2枚をバンバン叩き(そのうち1枚
はライブ開始5分以内に落下!)そして、電気ドリルが出てきた時点
で、まさか次は電気ノコギリ、、、? とよぎった嫌な予感が的中。
チェーンソーをグイングインと振りかざしてステージの際を歩くから怖
い! 発泡スチロール板やドラム缶を斬りはじめました。
かと思えば、静けさが戻り、詩の朗読の女の子が出てきて、その間メ
ンバーが観客のTシャツのアイロンがけをはじめたり、観客にバナナを
配ったり、最後にはスモークと本物の炎の演出のオマケつきで、ハプ
ニングの連続。最後は煙で目も息も苦しくて、ライブ終了後は急いで
会場を出ました。
去年のCobra Killerも相当キレてましたけど、Faustにかなうものな
し!? 恐るべしドイツ人バンド。
Faustマイスペース: http://www.myspace.com/faustpages

♪ ♪ ♪

翌日は、エドワード朝時代のスイミングプールとトルコバスが保存され
ているVictoria Bathsへ行きました。
こちらはSoundNetworkのイベントで、バイオリン、チェロ、ギター、そし
てリヴァプール出身のアーティストRos Hyndがマイク端子のつながった
パステルで描く音で織り成す
サウンドパフォーマンスです。昨日の狂気の沙汰とは対照的に、穏や
かな午後を過ごしました。
SoundNetworkホームページ: http://soundnetwork.omweb.org
Victoria Bathsのホームページ: http://www.victoriabaths.org.uk

夕方はContact Theatreにて、KraftwerkのWolfgang Flurのトーク。
もともとはドラマーで、ビートルズなどのポップグループのカバーなども
していて、Keith MoonやJimi Hendrixに憧れていたそうです。ロボティッ
クなシンセ音のテクノのイメージの強いだけに、意外。

今や誰でも宅録で電子音楽が作れてライブも簡単にできる時代であり
ますが、Kraftwerk以前の電子音楽は冷蔵庫みたいな巨大な機材で
作られていて移動できないのでライブは不可能、音的にも大衆音楽か
らは大きくかけ離れていたそうです。
クラフトワークがもたらした小型のシンセサイザーやドラムマシーンの
導入は音楽界において革命を起こし、後にイギリスでUltra VoxやOMD,
Human League, Depeche Modeなどのエレクトロポップのバンドが生ま
れました。

またアメリカのデトロイトでは、87年にブラックミュージックと融合さ
れ、ハウスなどのダンスミュージックに発展し、その後ジャンルはさらに
細かく広く枝分かれしています。

Flur氏が、
「ドイツは産業国家で、クラフトワークはその落とし子だ」
そして、
「今後は、ロマンティックなメロディーを追究したいと思う」
と言っていましたが、これもインダストリアルなテクノロジーと多くの美し
いクラッシック音楽を輩出した国ならではのコンビネーションですね。生
音の素材を新しいテクノロジーで料理してできた、美しいメロディーを聞
くのが今後楽しみです。

♪ ♪ ♪

夜は場所を移してマンチェスター大学の敷地内にあるClub
Undergroundにて、1967年ロンドンのUFOクラブのライトショーを担当し
たJack Henry Mooreによる映像と、マンチェスターの現役クラブ
Tramp!のDJとKraftwerkのWolfgang FlurによるDJセットというコラボイ
ベント。
UFOクラブのプロモーターであり、カウンターカルチャーのヒーローだっ
たHoppy Hopkinもいました。

ステージから離れたところでは、67年のライトショーがどのように映し出
されていたかが再現され、白衣を着た人たちが、OHPの台にガラスの
お皿を置いて絵の具を流し込んだり、吹いたり、ビー玉をぐるぐる転が
したり、柄や色のついたトランスペアレントシートを重ねて回転させたり
してできた模様が映し出されていました。
サイケデリックというイメージにつきものの極彩色のウニョウニョとした
柄は、こうやって作られていたんですね。
現在はCGIなどで手を汚さずに作れてしまいますが、こういう風景がク
ラブにあるほうがよりミックスメディアといった感じで面白いと思いまし
た。

Tramp!のDJから大御所のWolfgang Flurにターンテーブルが引き渡さ
れるときに、若いDJ君がアラーの神をあがめるかのようにハハ〜!と
Flur氏の前でひれ伏すポーズが笑えました。
曲のつなぎでブツッと音が切れたりもしてましたが、そんなことはお構
いなしに、Kraftwerkのビートマスターは若い観客を踊らせ夜は更けて
いきました。。。
Kraftwerk公式ホームページ: http://www.kraftwerk.com
Tramp!マイスペース: http://www.myspace.com/trampclub

今年のFuturesonicは、過去から未来へのタイムトリップのようで楽し
かったです。
http://www.futuresonic.com/

♪ ♪ ♪

【今週の告知】
6月2日に、Liverpool Hope Universityにて、文学作家カズオ・イシグロ
のトークが行われます。
Artinliverpoolでは、クイズに答えて抽選で正解者3名さまにイシグロ・
トークのチケットと最新作『私を離さないで (Never Let Me Go)』をセット
でプレゼントします。
クイズの質問は、
「映画版の『日の名残 (The Remains of the Day)』のなかで、執事の
Mr. Stevensを演じた俳優は誰?」
です。
住所、氏名、電話番号、クイズの答えを明記して、
info@artinliverpool.com までメールでご応募下さい。締め切りは5月27
日です。
詳細は、こちらから。
http://www.artinliverpool.com/blog/blogarch/2007/05/competition_win_kazuo_ishiguro.php

♪ ♪ ♪

前回の号の記載で訂正があります。
St. George's Hallのレポートのなかで、「今後はMintonタイルの床がガ
ラス張りに」とお伝えしましたが、その後確認したところ、床の大部分
は残念ながら再びカバーをかけられ、タイルの一部分だけがガラス越
しに見えるように展示されるとのことです。
次回の床全体の公開は未定ですが、また近いうちに見られるといいで
すね。

それではまた来週!

ミナコ・ジャクソン♪

≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish90_photo.html ≫


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