June 12 2007, No.301
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  リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World 
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▼特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
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「ゴールドフィッシュだより」 / ミナコ・ジャクソン
       〜 Goldfish Liverpool Update / Minako Jackson 〜

  ― 第93号 / 「暑い夏がやってきた!?」 ―
 ≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish93_photo.html ≫

こんにちは!
今週は毎日晴天が続き、暑いくらいです。夏至に向かって日もどんど
ん長くなっていて、午後10時くらいにようやく夕暮れといった今日この
頃のリヴァプールです。
週の前半は、スカウス・ハウス留学担当のMarikoさんがリヴァプール
入りしていたので、一緒に回りました。

今週の火曜日は、Liverpool Community CollegeのHNDファイン・アート
の学生によるショーが、The Bridewellにて行われました。HNDとは、
Higher National Diplomaといって、イギリスの職業専門分野での国家
資格です。専門学校卒業とほぼ同格と考えれば分かりやすいと思いま
す。
小さなギャラリースペースではありましたが、ペインティング、デジタル、
粘土、サウンドボックスなど様々で、今後が楽しみです。

このコースは今年度で最後になってしまいましたが、来年度からは、
The Foundation Degree in Fine Artを取得するコースに生まれ変わりま
す。
ファウンデーション・コース は、デッサン、絵画、彫刻、、版画、デジタ
ルなどひととおりの異なる手法の基礎を学ぶいわゆる一般教養で、こ
れが修了すると、大学の学士課程の2年生か3年生に編入することも
できます。
http://www.liv-coll.ac.uk/esp/resultlist.asp?section_id=11

この日の目玉は、なんといってもギャラリーオープニングスピーチに登
場したBill Drummond氏。
70年代にはリヴァプールにて伝説のパンク・バンド Big in Japanで活躍
し(このバンドには、その後のLightning Seeds, Frankie Goes To
Hollywood, Siouxsie & The Bansheesの主要メンバーが所属)、90年代
前半には ロンドンにてJames CautyとともにThe KLFを結成し、
'Justified and Ancient' や 'Last Train to Trancentral' や 'What Time
is Love' などのヒットで大ブレイクをしました。

The KLFはダンスミュージックの歴史の中で、アンビエント・テクノという
新しいジャンルを作り出した、という話で有名ですが、その傍ら当時、
無断で他のミュージシャンの楽曲のサンプリングして自分達の曲の中
で駆使したことで物議をかもしたことでも知られていて、精神は完全に
アナーキーでパンクです(ちなみにKLF=著作権解放前線とのこと)。

92年には突然音楽業界からの引退宣言をして嵐のように解散し、その
後K Foundationとしてアートの世界に殴りこみをかけます。
ゴールドフィッシュ53号でも少し触れました、100万ポンドを燃やすなど
ラディカルなプロジェクトを敢行したと思えば、'Soupline' といって、ベル
ファストからノッティンガムまでの直線距離上に住む人々に、Bill
Drummond自らスープを作ってあげるといったランダムでクレージーな
企画を行っては世を騒がせている人物です。
Bill Drummondプロジェクト・ホームページ: http://www.penkiln-burn.com  

彼は、スコットランドに住んでいたティーンエージャーの頃、将来何をし
たらいいのかが分からず考えていると、お母さんに「ロンドンまで行っ
て進路相談を受けてきなさい、お金は出してあげるから」、といわれる
ままにロンドンでアドバイスを受けて適正検査の結果が送られて見て
みると、「楽器職人になるといい」とのこと。
理由は、1)音楽が好き 2)ものづくりが好き という単純な理由らしい。

さてどうやったら楽器職人になればいいかと調べてみると、まずはアー
トスクールに通いなさい、とのこと。カレッジに問い合わせてみると、
「それじゃあポートフォリオを持ってきてください」と言われ、ポートフォリ
オって何?! というところから始まり、絵を描くことは好きだったので、
いくつか絵を描いてフォルダーに入れて面接に行くと、合格(後になっ
て、誰でも入れるコースだったときいてガッカリしたそうです!)。

ファウンデーションコースを修了後、Liverpool Art School(ホープ・スト
リートのジョン・レノンが通った学校と同じです)に入学。
「あまり学校には行かなかったけど、一つだけチューターから学んだこ
とがある。見る(look)ことは誰にでもできるけど、見える(see)ようにな
ることの重要性」
ほほ〜、なるほど。メモメモ。私も勉強になりました。

そして最近のプロジェクトに話は移って、テート・リヴァプールで行われ
ている、"Centre of The Creative Universe: Liverpool and The
Avan-Garde Scene" 展の企画への出展依頼があったときの話。
当初お呼びがかかったときは、「ボクはリヴァプールという場所に対し
て酷い愛憎関係にあって、どうしようか、と躊躇した」そうなのですが、
たまたま時を同じくして、急ぎでパスポートの切り替えをする用事が
あって調べてみると、リヴァプールのパスポート・オフィスにいかなけれ
ばならないが分かり、「これも何かの運命だ」と理解し、テート・リヴァ
プールと会って話をすることを決めたそうです。

その結果できあがったのが、こちらもゴールドフィッシュ 80号で紹介し
た、" I Challenge You (2006 (C)Penkiln Burn 2007)" 。
このポスターは100枚印刷され、テート・リヴァプールに展示されただけ
でなく、街中のあちこちにも貼られ、50枚は折り紙の船にしてマージー
川に放しました(途中で水上警察に止められたそうですが)。

最後に、ボロボロになったポスターを広げて、その宣言文を読み上げ
て締めくくり。
これがBill Drummond氏から巣立っていく学生さんたちへの熱いメッ
セージとなりました。強烈に面白かったです!

♪ ♪ ♪

スピーチの後は、シティーセンターまで戻り、写真専門ギャラリーOpen
Eye Galleryへ。
この日から、"Shoot Liverpool" がスタート。
これは、ロンドンを拠点として活動する、Shoot Experienceがロンドン
各地、カナダのトロントと巡回した後にリヴァプールで開催したもので
す。

5月26日に、一般から募った100名以上がテート・リヴァプールで集合
し、1組最大4名のチームを組んで参加。
午後12時にヒントを渡されて、街中を駆けずり回ってヒントに託された
場所やテーマを探し出してデジタル・カメラで写真撮影をし、午後5時
にメモリースティックを提出して、審査員によって賞が授与されました。
私の旦那も審査員の一人だったのですが、面白い作品が多かったの
と、テーマが被るものがあったりして、選ぶのがとても大変だったとの
ことです。

ヒントは、特定の場所を探し出す 'Fixed Clues' と、言葉の解釈次第で
何でもOKの 'Open Clues' の2種類。
特定された場所は、Mersey Ferry, Albert Dock, テートのチャイニー
ズ・アート展のひとつであるGu Dexin's Funnel, マリタイム・ミュージア
ム、Water Street, 船がシアターになっているWalk The Plank。
オープン・ヒントは、「スカウスの方言で水とは何?」、「イエロー・サブ
マリン」、「Holy Water (聖水)」。

5時間という制限時間の中で、参加者それぞれアイディアをひねり出
し、小道具なども用意して楽しい作品が集まりました。
そこから選ばれた写真が、Open Eye Galleryにて展示されました。

どれも本当にユーモアたっぷりで素晴らしいのですが、中でもファスト
フードのSubwayの前で、黄色いベストを着てMarine(海軍)の格好をし
たお兄さんの写真が笑えました(言うまでもなくイエロー・サブ・マリン)。
モデル本人もその場に来ていたので、記念撮影。

アルバート・ドックで水にひれ伏して拝む 'Holy Water' やSeel Streetに
あるバーAlma de Cubaでお客さんを巻き込んで撮られた版の 'Holy
Water' も素晴らしいチームワーク。

「スカウスの方言で水とは?」のテーマでスカウス方言のフレーズ・ブッ
クを片手にアタマを捻る女の子の写真もクリエイティブで可笑しかった
です。

この展覧会は残念ながら終わってしまいましたが、展示作品はホーム
ページからご覧になれます。
http://www.shootexperience.com/photos_new/thumbnails/8

そして、このギャラリーオープニングの日の様子のなかで、私とMariko
さんが爆笑してるの図もしっかり収められていてビックリ。
http://www.shootexperience.com/photos_new/large/8/181/private_view

是非日本でも展開したい! と意気込んでいましたので、実現するとい
いですね。

展覧会の後は、Alma de Cubaで一杯飲んでから帰宅しました。。。

♪ ♪ ♪

木曜日は、Slater StreetのInternational Galleryで、Emma Simcock
Toothの個展のオープニング。
Emmaは油絵で非常に写実的なポートレートを描くアーティストで、イギ
リス全土から引っ張り凧、注目株であること間違いなしです。
顔の表情、肌の質感、透明感までが描かれ、髪の毛の一本一本まで
緻密で息を呑みます。

彼女は、映像作家をしているOwenと2年前に結婚し、ハネムーンは日
本に行ったそうです。
原宿のゴスの女の子たちと交流をしたり、京都では芸者姿に変身して
みたりと2週間の滞在を満喫したそうです!
彼女の作品とハネムーンの様子は、ホームページに掲載されています
ので、是非見てみて下さい。
この展覧会は、6月20日まで。

 < International Gallery >
  住所: 34A Slater Street, Liverpool, L1

Emma Toothホームページ: http://www.emmatooth.co.uk

♪ ♪ ♪

土曜日の午後は、世界最古の旅客用鉄道駅Edge Hillで行われた、
"Truck Stop International Festival" に行ってきました。
着いたのは午後3時くらいだったのですが、沢山の人がアートやクラフ
ト、フェイスペインティング、代替治療のコンサルテーション、各種ワー
クショップ、エスニックフードなどのストールのほかに、奥のメインのラ
イブステージとトラックの荷台がステージになってライブパフォーマンス
も行われていました。

大掛かりなフェスティバルではありませんでしたが、リヴァプール焼け
するほどにギンギンに暑いなか、ピースフルにまったりとするもあり、
ワークショップでものづくりに参加して楽しむもありで、子供も楽しめて、
大人も童心に返れるいいイベントでした!

♪ ♪ ♪

【今週の告知】
6月21日午後7時から、Philharmonic Hallにて、映画 "Cunard Yanks"
がプレミア上映されます。
Cunard Yanksとは、50〜60年代にリヴァプール−ニューヨーク間の船
で給仕した船乗りのこと。誰よりも先にアメリカのスタイル、ファッショ
ン、音楽をイギリスに持ち込み、後にロックンロールを巻き起こすきっ
かけとなります。
ビートルズのジョージ・ハリスンにグレッチ・ギターを売った船乗りの
Ivan Haywoodのインタビューも見られます。
音楽や文化と海運との意外な関係が明かされる?!

予告編はこちらから: http://www.youtube.com/watch?v=X5xjcGcCkBk

チケットは、Philharmonic Hallボックスオフィスにて。普通席£5、ボック
ス席£6。詳細はこちらから。
Souled Out Filmsのホームページ: http://www.souledoutfilms.co.uk 

それではまた来週!

ミナコ・ジャクソン♪

≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish93_photo.html ≫


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