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▼特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」(特別編)
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「ゴールドフィッシュだより」 / ウエダミナコ

  ― 連載第9回 / 特別編:「LFC vs. Chelsea 観戦レポート」 ―

NLW読者のみなさん、こんにちは。
200号記念のお祝いの言葉を贈りそびれてしまいましたのでこの場を
借りまして、Kaz さんNLW200号おめでとうございました! これからも
パワーアップしていきましょう! 200号代最初の一歩をおめでたい
ニュースで飾れるのは本当にウレシイことであります。

今週はもちろん、アンフィールド・スタジアムで行われた、リヴァプール
VS チェルシー戦特集です!

今回は何かが違いました。まずは行きのバスから。乗客の90%がスタ
ジアムに向かう人々だったと思われますが、いきなり応援歌のメドレー
で盛りあがっていました。「チェルシーファンの人たち、何か歌わない
のお〜?」なんていうお茶目な一面も。

スタジアムに近づくとものすごい人と車で混雑していていて全くバスが
動かないので、数十メーター前で下車したのですが、パブの前、チッ
ピーの前、酒屋さんの前でファンたちがすでに出来上がっていて、ビー
ルを片手に大合唱! 正直なところそれまで、今回の試合観戦にたど
り着くまで不安だらけでだったんです。この試合のチケットは一般発売
もされなかったくらい超レアで、バスの運転手さんいわく、一部で1000
ポンド(編注:日本円にすると20万円以上!?)もの値がついたそうで
す。途中でひったくりに遭ったらどうしようとか、時間に間に合わなかっ
たらどうしようとか、カメラのバッテリーが切れたらどうしようとか、周り
の席が荒くれ者だったらどうしようとか…。
でもスタジアムまでの道のりで飲んだくれて陽気なサポーターを眺めて
いるうちに、不思議と私の心の底から喜びとエキサイトメントが湧き出
てきて、なんだか無敵な気分になってきました。 

スタジアムのゲートを入ると、やっぱり何かが違う! すでにサポー
ターたちが、まさに “When The Reds Go Marching In” の歌とともに勢
い勇みながら戦地に乗り込んでいきます。

スタジアムに入り、パドック席前から2番目のド真ん中の席に着きまし
た。目の前はピッチというプライムロケーション。後ろを見渡すと、サ
ポーターがすでに選手たちにエールを送っています。前回の LFC 対
Juventus のときとも十分熱かったですが、それとも比較にならないくら
いサポーターの気合が違う! 今回のレッズファンは間違いなく「本気」
です。

選手のウォーミングアップが終わり、開会式。左にチェルシー、右にリ
ヴァプール、真ん中に「Road to Istanbul」というバナーが掲げられ、両
チームの選手が子供たちと共にピッチに並びます。

キック・オフ。
サポーターたちは、コメンテーターか監督かのごとく、プレーヤーたち
の細かい動きに荒っぽい口調でゲキをとばしています。後ろのおじさ
んから私の鼻のあたまにツバがとんできたほどです。そんなことにも
不快な気分にならず、逆に私も気合が入ったりして。

4分でガルシアがゴ〜ル! あっという間のスコアで、ぎゃーっと盛り
上がったあと、あまりの速さとそのゴールのきわどさに「で、誰がゴー
ルしたの?」とか「本当に入ったの?」と顔を見合わせる場面もありま
した。ボールがゴールのラインを越したかどうかその後も議論の的に
なっていたようですが。。。その後も攻撃が続きます。

ハーフタイム。誰もがその興奮を伝えようと携帯電話で話す人、テキス
ト(日本でいうショートメール)を送る人だらけで、混みあっていたので
しょう、私の携帯は全く使えませんでした。

後半は誰が見てもチェルシーが断然有利で、ボールの所有率も流れ
もチェルシーよりだったにもかかわらず、リヴァプールの堅いディフェン
スで何度もピンチを免れました。レフリーがリヴァプールに対して公正
さを欠く場面が何度かうかがわれ、そのたびサポーターたちがレフ
リーを罵倒してペテン師呼ばわりしてました。

リヴァプールファンのチャントはますますボリュームアップし、気持ちも
ひとつになってきます。試合の行われている間、選手たちもサポーター
たちも緊迫感が一瞬たりとも途絶えることがなかったと思います。90分
にさしかかって、ロスタイムが6分! ときいたときは、信じられません
でしたが、それでも最後の一瞬まで、サポーターたちは勝利を信じて、
声援を送り続けました。
そのボリュームは時間の経過とともにギアーアップされていきます。

その6分が過ぎ、勝負が決まった瞬間、割れるような歓声が沸き、誰
もが誇らしげにスカーフをぴんと広げ、42000人のレッズファンによる
“You'll Never Walk Alone” の大、大合唱。私も一緒になって歌いなが
ら思いました。本当に何が違うって、クサイ言い方になりますけど、サ
ポーターのチームに対する「愛」が違う! その確固とした集団心理と
愛が、みんなが待ち望んだヴィクトリーを可能にした大きな要因のひと
つだったんじゃないかと絶対思います。
また今回の試合を通じて、決勝に向けて、レッズファンのチームに対
するきずながより強く深まったのではないでしょうか。翌日の地元紙
Echo の表紙のヘッドラインが、“MONEY CAN'T BUY YOU LOVE”。
巨額を投じてスタープレーヤーやコーチを揃えるチェルシーを皮肉っ
たものですが、「でもサポーターまでは買えないでしょ?」という的をつ
いたメッセージに妙に納得させられます。

試合終了後の20分間、警備員に追い出されるまでほとんど誰もスタジ
アムから離れることなく、赤いスカーフを広げて勝利を祝う歌声がスタ
ジアム中に響きわたっていました。夢のような魔法のような空気が広
がっていました。スタジアムを出てビル・シャンクリーの銅像の前でも、
ゲートの外のアンフィールド・ロードからも、パブの外でも中からも、走
り過ぎる車のステレオからも、“You'll Never Walk Alone” が聞こえてき
ます。まるで映画かドラマの中にいるようでした。

最後はカメラのバッテリーもメモリーも、自分自身のエネルギーもすっ
かり使い果たしてましたが、心地のよい疲労感のなか、それでも余韻
を楽しみたくて、小雨の降るなかこの余韻に浸りながら、押さえきれな
い喜びと興奮を書き留めるように、携帯に打ち込みながら、シティーセ
ンターまで歩いてしまいました。

本当に、「感動」の二文字に尽きます。地上の楽園があるとしたらこ
んなところなのかな、と思うような高揚感でした。マッチのあと日数が
経ってますが、まだ気持ちの高まりが醒めることがありません。次はイ
スタンブールですね。気持ちをリフレッシュして、ターキッシュ・ディライ
トとか食べて(?)、あらゆるポジティブなジンクスと可能性を信じて、決
勝での勝利を祈りましょう!

今回の試合観戦と取材にあたり、まずこんな素晴らしい機会を下さっ
た Kaz さん、本当に本当にありがとうございました。そして、予備用に
デジカメを貸してくれた竹嶋亜希さん、このカメラがなかったら不安で
試合前に倒れていたかもしれません。そして何より、リヴァプールを中
心に世界中で感動をよぶドラマを繰り広げてくれたリヴァプール・フット
ボール・クラブ、Liverpool We Love You です!


  ― 観戦レポート番外編:現地座談会 ―

Liverpool John Moores University の留学生の中川道雄君(以下MN)
と竹嶋亜希さん(以下AT)と、私、ウエダミナコ(以下MU)で「火曜日のリ
ヴァプールの勝ち試合を回顧する会」を開催し、試合当日の Student
pub での様子と感想について話を聞きました。
(場所:Hardman Street のプシュカ・カフェにて)

MU:パブの客層はどんな割合でしたか?
AT:80%が男子、10%がシリアスな女子サポーター、10%が彼氏や友
  達についてきた女子たちという構成で、パブは満員。ほとんどの人
  たちが会話をすることなく、画面に血眼になって釘付けでした。男
  女問わず、きたない言葉が連発していて、へまをしようものなら激
  しく攻撃し、好プレーをすれば拍手をしていて、わが子を思うような
  応援ぶりでした。

MU:試合の流れですが、前半はリヴァプールが押し気味だったけど、
  後半はチェルシー優勢だったよね。
MN:前半は、スコアしてからまだまだいけるんじゃないかという勢いと
  期待感があって前がかりだったけど、後半チェルシーのロッベンが
  投入されてからチェルシーにチャンスが増えて、リヴァプールもカウ
  ンター狙いに転じてましたね。

AT:シセが入ったときは大きな歓声が上がってました!
MN:シセはがたいが大きいから、ボールも当てやすくて、カウンターも
  機能していました。髪の毛の色がすごかったですけど、実際はどう
  だったんですか?
MU:え? すごいジンジャーってかんじ(笑)。(=とってもオレンジでし
  た)

AT:それと、それぞれの選手に応援歌があるのがすごい。これ歌えた
  らまた楽しんだろうなあと思った。
MU:あのアンセムっていうのは本当にパワフルだよね。特に “You'll
  Never Walk Alone” なんかは、国歌斉唱みたいだし。
MN:ホント、「聖歌」といったかんじですね。

MU:試合終了後はどんな雰囲気でしたか?
AT: 30分くらいずっと大合唱が続いてました。それと、試合が終わって
  からも大画面で流れていた、リプレーを見て再熱狂してた(笑)。ま
  た、チェルシーのテリー が男泣きするシーンを見て、ざまあみろと
  いわんとばかりに大喜びしていました。

MU:今回の試合の観戦を通じて、何が一番印象的でしたか?
MN:ピッチ上の中盤のプレスがきいていたのが印象的でした。キャラ
  ガーがディフェンスの中心的存在となって、ヒピアと共にチェルシー
  のフォワードのドログバをマークして、徹底してチャンスを作らせな
  かったのがチェルシーを0点に抑えた決め手だったと思います。ま
  た、守備一辺倒でなく、前方にフォワードを残してカウンターを狙っ
  てたのもよかったと思います。
AT:勝利が決まった瞬間、みんな回りの人たちと、知らない人同士も
  かまわず抱き合ったりして、パブじゅうに、一体感が生まれている
  のが印象的でした。

それぞれの場所で、それぞれの観戦ドラマがあったかと思います。み
なさんはいかがでしたか?

ウエダミナコ


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