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▽特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
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「ゴールドフィッシュだより」 / ウエダミナコ
             〜 Goldfish Liverpool Update / minako ueda 〜

  ― 連載第31回 / 「CL LFC vs. Betis 観戦レポート」 ― 


みなさんこんにちは!
今週は今まで以上にばたばたとしております。
今回のゴールドフィッシュだよりは、11月23日(水曜日)に行なわれた、
チャンピオンズ・リーグ、リヴァプール対ベティスの試合の模様をお伝
えします。
当初私が行ってみてくる予定でしたが、残念ながら行けなくなってし
まったので、強力な代打を用意しました。
赤のニット帽と1977年のシャツを着た生っ粋のスカウサー、Tom
Calderbank さんの観戦レポートをお送りします!
敵チームであっても、ホームへ暖かく迎え、リスぺクトを忘れないレッ
ズファンの典型です。ちなみに、試合当日の午後も、見ず知らずのベ
ティス・サポーターの旅行者に歓迎のハグをしていましたよ!

トムさんはリヴァプールの名物男です。
2児の父で、レッズを誰よりも愛するスカウサーの中のスカウサー。リ
ヴァプールで唯一、公共の場で素っ裸でパフォーマンスをする詩人とし
て知られていますが、実は Save The Florrie という歴史的な建物であ
りながら廃墟となりつつあったディングルの歴史的な文化遺産、The
Florence Institute の保護と修復を呼び掛ける活動の中心人物であり
ます。 (ホームページ: www.savetheflorrie.org.uk )

それでは、トムさんの観戦レポートをどうぞ!

ウエダミナコ


Scouse House Review ************************************
    〜 LIVERPOOL vs REAL BETIS 23rd November 2005 〜
            text; Tom Calderbank translation; minako & Kaz

人生奇妙なことがあるものだ。
実はこの日のチャンピオンズ・リーグのKOP席のチケットを持っていた
んだけど、弟の誕生日プレゼントにあげてしまった。まあ仕方がないの
で地元のパブかどこかで観るかあ、と思っているところにミナコから電
話がかかってきた。

「23日のアンフィールドのチケットがあるんだけど、代わりに見に行って
スカウスハウス用にレポートを書いてくれない?」

もちろん即引き受けたよ。ほとんど考えたりしなかった。0.123秒くらい
かな。

世界中どこを旅しても、サッカーは “Lingua Franca (世界共通語)” だ
と実感する。
サッカーファンが祈りを捧げる聖地はオールド・トラフォード、ハイバ
リー、スタンフォード・ブリッジなどいろいろあるけど、アンフィールドほ
ど神聖な場所はない。
そんなわけで僕は、ヨーロピアン・チャンピオンのホームであるアン
フィールドにいる。Our Kid(選手たち)と一緒にね。このウンパルンパ
にウィリー・ウォンカがゴールデン・チケットを恵んでくれたおかげだ(訳
注:映画『チャーリーとチョコレート工場』ネタ)。ミナコ、ありがとう!

ヨーロピアン・マッチの夜のアンフィールドの雰囲気は、なんて表現した
らいいんだろう。今夜の試合はとりわけ特別、なんていったって決勝
トーナメントのノックアウト・ステージに上がれるかどうかのチャンスが
かかっている。
結果的に突破はしたが、決して容易ではなかった。ベティスにとっては
これが初のチャンピオンズ・リーグだが、意気込みは同じ。彼らが今月
初旬にチェルシーを下したことがそれを証明している。
我らが守護神スティーヴィーG(ジェラード)は、“クレージー・ホース”
故エムリン・ヒューズに次いで2人目の、ヨーロピアン・カップを2度掲
げたLFCキャプテンになりたいと言っている。
今夜の結果で、彼の、そして僕らの夢は、実現に大きく近づいたわけ
だ。

この日の試合はというと、もう知ってのとおり結果は0対0の引き分け
で、特筆すべきことは何も起こらなかった。
ピーター・クラウチは今回も得点できず(きっともうすぐハット・トリックす
るよ!)、スティーヴィー・Gは今夜はさっぱりで、シャビ・アロンソは怪
我で欠場だったのかな。後半にシセが投入されてからはいいペースに
なって、いくつかチャンスは作ったけど、でもゴールにはつなげられな
かった。
つまり、ウチはディフェンスで勝ったんだ。サミとキャラはベストを尽くし
てたし、レイナもまったく危なげなかった。それで今夜も完封することが
できたんだ。

レアル(Real)・ベティスは本当に(Real)素晴らしかった。スター・ストラ
イカーのリカルド・オリベイラなど主要選手が何人も欠場していたにも
かかわらず、ホームで僕らを勝たせなかったんだからね。
ウチに思うようなプレイをさせなかったし、予想以上にポゼッションを
持って行かれた。終了間際にスティーヴィーが外した後は肝を冷やし
たよ。ペナルティエリアのすぐ外からのフリーキック、そしてコーナー
キックと続いたからね。
もしあそこでベティスに点が入ってウチがやられていたら、きっとまった
く違った順位になってるね(訳注:チェルシー、リヴァプール、ベティス
の3チームが10ポイントで並び、得失点差でリヴァプールは2位に転
落)。
そして読者の皆さんも、最悪な言葉で罵る僕のレポートを読むはめに
なったかもしれない!

レアル・ベルティス・ファンについても特記しておきたい。
初めてのアンフィールドでの試合だったにもかかわらず、彼らは実に
素晴らしかった。彼らは来て、観て、そして踊って拍手し続けた。90分
間。
彼等の拍手がこれまたすごくて、どんなだったかというと、彼らの席の
下の地面から湧き出てくるような、リズム感溢れる波のような拍手の
音だったんだ。
彼らは、モリエンテスが交代で出場すると、まるで自分のチームの選
手のように迎えた(ある意味ではそうなんだけれども)。ガルシアとアロ
ンソを彼らに見せてあげられなかったのがただただ申し訳ない。この
3人のスパニアード(スペイン人)が、スペイン・チームをワールドカップ
本選へと導いたんだからね。
ハーフタイムでは、レッズのレジェンド、フィル・ニール、ケニー・ダルグ
リシュ、そしてボブ・ペイズリーの2人の息子たちが登場した。UEFAか
ら、ヨーロッパのクラブ・フットボールにおけるこの50年間の功績への
表彰を受けたんだ。べティス・ファンも一緒になって拍手喝采を送って
くれて、最後には、僕らの(チームの)名前を心から熱っぽく歌ってくれ
たんだ。
最高の振る舞いだったよ、ムーチョ・グラシアス。

というわけで僕らは、リーグ戦を突破してノックアウト・ステージへと駒
を進めることができた。去年の12月のオリンピアコスとの試合で味
わった、あの胃が痛くなるようなプレッシャーは、今回は経験しなくて済
んだわけだ。
次の対戦は同じく予選を通過したチェルシー。どっちも予選通過を決
めてるから、必ずしも勝ちは必要ない。
けれども僕は、両チームとも容赦なく相手を削ってくるんじゃないかと
いう気がする。このところのリヴァプールとチェルシーって、因縁の対
決だからね。
確かに僕らには、ビルコ・アブラモヴィッチの財力やモウリーニョみた
いなターミネーターは持ち合わせていない。けれども僕らには、彼らが
絶対に持っていない何かがあるんだよ。

とにかく僕らは、ヨーロピアン・チャンピオンシップに残ったよ、マイ・フ
レンズ。日本の真のレッズファンに愛をこめて。いつか近いうちに、君
たちと楽しいひとときを分ちあいたいもんだね。

そして、ワールド・チャンピオンとして東京からホームに帰って来たい
な! Sayonara!

( Scouse House Review
    〜 LIVERPOOL vs REAL BETIS 23rd November 2005 〜
        text by; Tom Calderbank translation by; minako & Kaz )


(この連載に関連する写真は、ウェブサイトの「NLW ゴールドフィッシュ
だより」ページに掲載しています。
http://scousehouse.net/magazine/goldfish31_photo.htm )


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