September 20 2005, No.217
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     リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World   
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NLW ■
         *** http://scousehouse.net/ ***        


□■ INDEX ■□

 ▽フロム・エディター
 ▼リヴァプール・ニュース <2005年9月16日〜9月17日>
 ▽寄稿:「遠くて近い Anfield 」
 ▼特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
 ▽「利物浦日記(2005年夏)」
 ▼スカウスハウス・ニュース
 ▽今週のフォト


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▽フロム・エディター
―――――――――――――――――――――――――─ NLW □

今週より、僕のエッセイ「利物浦日記(2005年夏)」の連載がスタート
します。
先月の「ビートル・ウィーク」で、1週間とちょっと、リヴァプールに滞在し
たわけですが、その間に遭遇した出来事や、思ったことや感じたこと、
「スカウスハウス・ツアー」の裏話などを、つらつらと書き綴って行くつも
りです。
どうぞしばらくお付き合いください。

NLW読者キャリアの長いかたは、「利物浦日記」というタイトルに見覚
えがあるかもしれませんね。
そうです、ちょうど3年前、2002年の「ビートル・ウィーク」のレポート
を、このタイトルで連載しました。
「利物浦」というのは、ご想像どおり、「リヴァプール」のチャイナ式表記
です。
個人的には、和風に「りばのうら」と読んでいます。
つまりはこれ、「りばのうらにっき」です。
なんだかいい感じだと思いませんか?

 ● ● ●

earlybird さんの旅行記「遠くて近い Anfield 」が、今週号で最終回を迎
えます。
earlybird さん、素敵なエッセイを連載していただき、ありがとうござい
ました!
リヴァプールへの、そしてAnfield への想いがたっぷりと込められたエ
ンディングです。
どうぞじっくりお読みください。

                           ― Kaz (20/09/2005)


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▼リヴァプール・ニュース <2005年9月16日〜9月17日>
―――――――――――――――――――――――――─ NLW □

*** 9月16日(金) *******************************

【 UEFA チャンピオンズ・リーグ 05−06】
ヨーロッパ・チャンピオンズ・リーグの本選が開幕しました。
グループGのリヴァプールは、13日にスペインのレアル・ベティスと第
1節を戦いました。
アウェイでの試合でしたが、リヴァプールは1−2で勝利し、幸先の良
いスタートを切りました。
ゴール・スコアラーは、シナマ・ポンゴーユ(2分)、ルイス・ガルシア
(14分)でした。

レアル・ベティスの攻撃を1点に抑えたGKのホセ・レイナが、ジェイ
ミー・キャラガーを絶賛しています。
「僕にとっては、彼(キャラガー)は世界のベスト・ディフェンダーの1人
だね。うちのチームの中でものすごく重要なプレイヤーなんだ」
「ベティス戦でもすごかったよね。攻められっぱなしだったセカンド・
ハーフでは特にね」
「でもひとつだけ問題があって。それは、キャラの言ってることが僕に
はまるでわからないってことなんだけど」
「いや、サミ・ヒーピアとはほとんどだいじょうぶなんだよ。とにかくディ
フェンダーたちと、もっと意思疎通ができるようにコミュニケーション能
力を高めていかないとね」

今季よりリヴァプールに加入した23歳のスペイン人のレイナは、ほと
んどの試合に先発で起用され、未だ負け試合を経験していません。
「(ベティス戦での)自分のパフォーマンスには満足してる。ウチは立ち
上がりは良かったんだけど、その後はずっと相手に押されていた。で
も、僕自身はうまくやれたと思う。ディフェンス陣にもたくさん助けても
らってね」
「みんなこの結果がどれほど重要かってことをよくわかってるよ。行っ
て戦うには、あそこはタフなところだからね」
「ああいう形でスペインに戻れたのは良かったな。いいプレイができた
し、リヴァプールに入ってハッピーにがんばってるってところをみんな
に見てもらえたし」
「今のところウチのディフェンスはうまく行ってると思うけど、でももっと
レヴェルアップしないとね。僕の課題はまずコミュニケーション。英語を
もっとがんばらないと」
「サミとは問題ないんだよね、だいたいはね。でもキャラとは全然ダメ。
まあ2ヶ月か3ヶ月経ったらもっとマシになるかな」

リヴァプールのグループリーグ第2戦は、9月28日、ホームにチェル
シーを迎えて行われます。


*** 9月17日(土) *******************************

【30年ぶりに】
マシュー・ストリート名物の「ビートルズの彫像」が、30年ぶりにオリジ
ナルの形に戻されることになりました。
彫刻家アーサー・ドゥーリーの手になるこの像は、1973年に「キャ
ヴァーン・クラブ」が取り壊された翌年、その跡地の向かいの建物の壁
に設置されました。
“ BEATLE STREET ” “ FOUR LADS WHO SHOOK THE WORLD ”と
いう2つのプレートの間で、聖母マリアが、3人の天使、ジョン、ジョー
ジ、リンゴを抱きかかえています。
設置当初は「4人の天使」だったこの彫像ですが、1年後の75年に突
然、ポールの天使だけがいなくなってしまいます。盗難に遭ったので
す。以来、そのままの状態で30年が経ちました。

しかし今回、その「ポールの天使」が発見され、30年ぶりに元の場所
に戻されることになりました。

復元されたキャヴァーン・クラブを所有し、リヴァプールのビートルズ・
ツーリズムの中心となっている会社「キャヴァーン・シティ・ツアーズ」の
ダイレクターのひとり、ビル・へックルはこう話します。
「ビートルズ・ガイドたちはいつも、こんなジョークを言ってたんだけど
ね。『ポールには翼(ウィングス)がついてたから、飛んで行っちゃった
んだね。で、ウィングスってバンドを作ったんだ』って」

瞬く間に30年が経ったある日、ビルに、匿名の電話がかかってきまし
た。そしてその謎の人物が、行方不明の彫像を返却したい、とビルに
伝えたのです。

「まったく唐突な話でね。いきなりこう訊くんだ。ポールの天使像だけ
ずっと前に消えたことを知ってますかってね」
「電話の相手は、心から謝罪したいと言っていた。くだらないイタズラの
つもりだったそうだよ。その像はずっと彼のガレージに置いてあるとい
うことだった」
「で、キャヴァーンに行ってほしい、そこに彫像をビニール袋に入れて
置いておくから、と彼は私に言って、まったくそとおりだったというわけ
さ」

ビルは今、この「ポールの天使」を元通りに再設置するために、資金
提供を呼びかけています。
「そんなにたくさんはかからないと思うけどね」


【 UEFA カップ 05−06】
15日、UEFAカップが開幕し、ヨーロッパ各地で1回戦のファースト・レ
グが行われました。
エヴァトンは、ディナモ・ブカレスト(ルーマニア)とアウェイで対戦しまし
た。

先制された直後にジョセフ・ヨボのゴール(30分)で同点に追いつき、
1−1で前半を折り返したエヴァトンでしたが、後半に大量4点を奪わ
れ、5−1での大敗を喫してしまいました。

翌日、監督のデイヴィッド・モイーズはこう語っています。
「個々のプレイヤーについて公の場で非難するつもりはない。しかしも
ちろん、チーム内部ではみんなで話し合いを持って、立て直すつもり
だ」
「前半の我々はよかったと思う。前でプレイ出来ていたからね。しかし
後半はそれが出来なかった」
「前半は我々がゲームをコントロールしていた。しかい後半はあまりに
もイージーに点を取られ過ぎた」
「私にとっては、監督として最低の結果かもしれないね。最悪の夜だ
よ」
「ファンには申し訳ない。戦いの場でチームの士気を高められなかった
のは、私の責任だ」

1回戦・セカンドレグは、29日に行われます。


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▽寄稿:「遠くて近い Anfield 」
―――――――――――――――――――――――――─ NLW □

「遠くて近い Anfield − The Long and Winding Road To Liverpool 」
                                   / earlybird

第11回 <いつかまた、訪れる日まで>

リバプールを発つ日は、朝から雨模様でした。
昨日までの好天とはうってかわって、灰色の空から細かい雨が落ちて
きます。雲が切れる気配はまったくありません。まるで『ここにいても
しょうがないから、早く東京に帰りなよ』と背中を押されているような雰
囲気です。
気持ちは離れがたいのですが、私を送り出してくれた職場の仲間のた
めにも、帰らないわけにはいきません。思い出やら記念品やらを詰め
込んだキャリーケースが、余計に重たく感じられました。

ご近所だというスティーヴィーの家を、遠くからでもいいから、ひと目見
てみたい気がしました。
リズさんに聞いてみると、歩いて20分ほどの距離だといいます。『でも
敷地が広くて建物は見えないわよ』『また別の日にね』と、釘を刺され
てしまいました。残念。
でもまあ、20分もお散歩するのにふさわしい日ではないし、お行儀の
悪いファンとも思われたくないので、忘れることにしました。

最後に、ステキな出窓のあるリビングルームと、玄関ホールを写真に
撮らせてもらいました。リズさんのお好みなのか、かわいらしい陶器性
の人形がそこかしこに飾られています。ダイニングにも玄関にも、い
つもお花がたえることはありませんでした。

このステキなゲストハウスを1人で切り盛りしていくのは本当に大変だ
ろうなあと、余計な心配をしてしまいました。最高に居心地のよかった
このゲストハウスとも今日でお別れ。いつまでもいたいのはヤマヤマ
ですが、もう行かなくては…。お名残惜しかったけど、リズさんとハグし
てお別れしました。いつか再びリバプールを訪れることがあったら、必
ずまたここに戻って来たいし、何としてでもその機会を作らなくてはと
思いました。

そうして、雨のそぼ降るなかを、重たいキャリーケースを引いて帰途に
つきました。駅までの道は、来た時と同じように静かです。2日間、
Anfieldに通うために利用した Blundellsands の駅とも、しばしのお別れ
です。この小ぢんまり感と静かな佇まいにすっかり愛着がわいてしまい
ました。Central へ向かうマージーレイル、いつも満員でせわしないJR
にはないゆったり感が気に入っていました。

もう一度、オフィシャル・ショップに足を運んで、ひとしきり店内をひや
かして回りました。平日の午前中なのに、結構お客さんが入っていま
す。10日後には、優勝記念グッズで溢れることになるのでしょうか。

最後に、本当に重たい体をライムストリートの駅まで運びました。ガラ
ス張りの自然採光と、壁を彩るペインティングもお気に入りでした。ま
たまた列車の到着が遅れていて、ロンドンへ向かうお客さんたちが
ホームにたまっていました。
さすがに月曜日とあって、来た時ほどの賑わいはないようです。Dave
さんは、今頃もう職場でしょうか。あとはいやおうなしに、列車と飛行機
が私を東京まで運んでいってくれることでしょう。

ゆっくりと、Virgin Train はホームを滑り出し、見慣れた Anglican と
Metropolitan の2つの大聖堂の姿が、車窓の後ろに流れていきます。
この2つのランドマークが、ものすごく懐かしいもののように思えまし
た。
今頃、ラファは、スティーヴィーは、アロンソは…他のみんなは、どうし
ているのでしょう。決勝に向けて準備に余念がないのか、それともつ
かの間のオフを過ごしているのか。身体はロンドンに向けて運ばれて
いくのに、心はリバプールにおいてけぼりになっているような、妙な感
覚になりました。

この列車の窓から、初めてリバプールを目にしたとき、どこか寂しげ
な地方の街という印象を受けたものでした。
でも、短い滞在のうちに、この街のいろいろな面に触れて、Anfield も
体験して、少しずつ印象が変わっていきました。
遠くておぼろげで、くすんでいたこの街のイメージですが、だんだんと
輪郭がクリアになり、明るくイキイキした色に変わってきたような気がし
ます。
それでもまだ私の知らない別の面が、たくさんあることでしょう。それを
確かめるのは、次回のお楽しみに取っておきたいと思います。次がそ
う遠くない将来であることを願って。

弾けそうな期待とかすかな不安をかかえて始まった私の旅は、こうし
てつつがなく終わりました。
この国に降りたった日に比べれば、ほんのわずかですが、言葉にも
慣れ、人々の対応に戸惑うことも少なくなり、愛着すら感じるようになっ
ていました。もう少し時間があれば、もっと色々出来たかも…とも思っ
たのですが、惜しいぐらいが潮時なのでしょう。いつかまた訪れるとき
には、もう少し肩の力をぬいて、旅そのものを楽しめるといいなあ…と
思っています。


さて、私のつたない旅行記に、ここまでお付き合いいただきまして、本
当にありがとうございました。

このエッセイは、イギリス旅行のノウハウや、詳しい観戦レポートを意
図したものではなく、海外旅行も試合観戦にも慣れない私が、初めて
のリバプールと Anfield で見聞したこと、感じたこと、考えたことを綴っ
たものです。
まだ戦術的な見方ができないので、最終戦の部分は表面的な記述に
とどまってしまいました。物足りなく感じられた方もおられると思います
が、あくまで初心者の印象記ですので、その辺ご了承ください。

それにしても、ウッカリやお間抜けが多く、もう少し何とかならなかった
のかと、後悔したことも多々あります。スタジアムツアーを逃したことと、
ビラ戦のメンバーを控え忘れたことは、その最たる例です。かえすが
えすも残念。

それでも私なりに色々チャレンジをして、いくつかの忘れがたい出会い
も経験しました。何よりもあの Anfield に足を踏み入れて、あの場の
空気とひとつになる経験は、なにものにも代えがたいものでした。
そんなかけがえのない旅に、私を快く送り出してくれた職場の仲間た
ちには、心から感謝しています。
そして、あの時間をもう一度振り返る機会を提供してくださり、ときに
冷静な読者として、ときには立場を同じくするファンとして、的確なアド
バイスと温かい励ましをくださったKazさんにも、厚く感謝しております。

最終戦から10日後、レッズはイスタンブールでミランを相手に奇跡の
逆転劇を演じ、みごとヨーロッパ・チャンピオンに輝きました。
ビッグイヤーを掲げ、喜びを爆発させるイレブンの表情や、勝利に沸く
リバプールの熱狂ぶりは、まだ記憶に新しいところだと思います。

その興奮も冷めやらぬうちに、彼らの新シーズンは始まっています。
予備予選の順調な勝ち上がりとともに、私の早朝覚醒の日々も戻って
きました。チャンピオンズ・リーグの試合の朝は、必ずキックオフ前に
目が覚めてしまうから不思議です。レッズのスケジュールに合わせて
いるうちに、そういう体質になってしまったのかも知れません(笑)。

そう、私が “early bird” でいられるのは、レッズのお蔭でもあるので
す。
とりわけ今シーズンは長く厳しい闘いになりそうですが、彼らが果たし
てどこまで勝ち抜いていけるのか、幾つタイトルを獲ることができるの
か、そして Anfield は新たな栄光の歴史の始まりとともに使命を終える
ことになるのか、しっかり見届けたいと思っています。

(リバプールに、Anfield に行ってみたい、でも自信がない、どうしよ
う…)
と迷っている方には、ぜひ一度チャレンジしてみることをお勧めします。
いま、この時にしか出来ないこともあるのです。Anfield を体験できる
のも、あと2シーズン限りです。そして、ヨーロッパの頂点に立った
レッズは、新戦力を迎え、さらなる高みを目指して成長しつつあります。
現地に赴けば、私が行ったときとはまた違う熱気や期待感、タイトル・
ホルダーの誇りを賭けた闘いぶりを目の当たりにできるかも知れませ
ん。

東京から見た Anfield は、遠い憧れの地、映像のなかだけのイメージ
でした。今回、実際に足を運んでみることで、現実の遠さを知るととも
に、この街の日常に溶け込んだ、身近な姿も見ることができました。

私にとっての Anfield は、遠いけれども身近な存在です。でも、あなた
にとっての Anfield は、また違うと思います。イメージではない、ほんも
のの Anfield とリバプールの姿を、ぜひあなた自身の目で、確かめて
みてください。
いつかまた私も、遠くて近い Anfield への道を、もう一度たどり始める
と思います。

ひとまず、終わり。


(「遠くて近い Anfield / earlybird 」:おわり)


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▼特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
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「ゴールドフィッシュだより」 / ウエダミナコ
             〜 Goldfish Liverpool Update / minako ueda 〜

  ― 連載第24回 / 「怒涛のバンクホリデーウィークエンド」(2) ― 

FACTで行われた、5人の日本人アーティストによる『 Rock The
Future 』展のオープニング。
この展覧会に向けて、FACTから「できるだけ多くの日本人の人たちに
観てもらえるように協力してほしい!」という依頼を受けて、マーケティ
ング部のお手伝いをしたのですが、これをきっかけに、参加したアー
ティストだけでなく、多くの在リヴァプールの日本人の方、旅行者の方
に会うことがことができました。

前日にお会いした「ジャパン・ソサイエティ」の方々はじめ、ロンドンか
らは、『フォグレス』という数少ないイギリス発日本語アートメディアを
運営しているアート・ライターのトコさんも駆けつけてくださいました。
(とっても充実したウェブサイトです。要チェック!
http://www.fogless.net/ )

さて、オープニングの始まる前に、アーティストとのインタビュー。
15分の限られた時間の中でコーヒーをすすりながら、クワクボ・リョウ
タさんと、エキソニモの千房さんと赤岩さんから作品について伺いまし
た。
このインタビューは、Art in Liverpool のホームページに掲載される予
定です。アップされたら逆和訳しなきゃですね。

クワクボ・リョウタさんは、私も個人的に大好きな明和電機のビットマン
にも関わっていた人で、普段はデバイスアーティストとして、メカを駆使
した作品が多いとのことですが、グランド・フロアの Media Lounge で
展開されている今回の作品は、靴を脱いで(これが日本的でウケがい
い)青い部屋に入ると、定期的に天井からぱらりと一枚ずつ小さな紙
がぱらりと落ちてくるというもの。
この紙きれには、ネット上のニュースのヘッドラインが印刷されていて、
中にいる人はそれを、拾うもよし、読むもよし、捨てるもよし、踏みつけ
るもよし、ポケットにしまうもよし。

クワクボさん曰く、これは通常私たちがニュースや情報にふれるとき
の頭の中で行われる動作を、この部屋では、情報という紙を手にする
ことにより、自然と身体で体験している、とのことです。この紙は展覧
会開催期間中は片付けられることなく2ヶ月間蓄積されるそうですが、
これを機会にニュースの紙きれに埋もれながら情報との付き合い方を
考えてみるのもいいかも知れません。

Gallery 1 では、るさんちまんによる ikisyon 15 というインスタレーショ
ン。
リヴァプールの現地の人々に呼びかけて集められた日用品やオブ
ジェで構成され、設置された2つの回転するカメラが物体とオーディエ
ンスの映像と音を捉え、別室のスクリーンにビデオクリップのように映
し出されるという、インタラクティブな作品です。

上の階の Gallery 2 で展示されているのが、エキソニモの作品
「 Shikaku no mukou 」 という、「向こう」と「無効」をひっかけたテーマ
で、独自に開発したドローイングのソフトウェアとペンタブレットを使っ
たもの。
黒白の斜めのストライプに塗られた部屋の中央に置かれたパソコン
で、線を描きなぐると、その動きに反応した落雷のような音がとどろき
ます。描いたラインは画面から瞬時に消えてしまうのですが、隣の部
屋のスクリーンに、描かれた線が映し出されます。全てのラインは時
系列に記憶されていて、これはインターネットでも見ることができます。
ちなみに、9月3日午後12時9分43秒を見たら、私が走り描きした絵
が残ってました!( http://exonemo.com/MUKOU/drawings/index.html )

遊び心のあふれる作品の数々が展示されたこの『ロック・ザ・フュー
チャー』展は、10月30日まで続きます。

< FACT インフォメーション>
 88 Wood Street, Liverpool, L14DQ
 T: +44 (0)151 7074444
 E: info@fact.co.uk
 url: http://www.fact.co.uk

次回は、いよいよマシュー・ストリート・フェスティバルのお話です!

(つづく)


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▽「利物浦日記(2005年夏)」1
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「利物浦日記(2005年夏)」 / Kaz

第1話 <リヴァプールの新ビートルズ・スポット>

2005年8月26日、リヴァプールのケンジントンで、小さなセレモニー
が行われた。
ロイヤル・リヴァプール・ホスピタルにほど近い小さなテラス・ハウスが、
新たにリヴァプールの「ビートルズ・マップ」に書き加えられることになっ
たのだ。

これまでは「知る人ぞのみ知る」存在だった、ケンジントンの38番地。
この場所には、パーシー・フィリップスという男が経営するレコーディン
グ・スタジオがあった。
スタジオではバンドの練習が出来るほか、テープに録音したり、レコー
ドを作ることができた。
1958年、後にビートルズとなる「クォリーメン」が、ここで2曲の演奏を
吹き込んだ。バディ・ホリーの「ザットル・ビー・ザ・デイ」と、ポール&
ジョージの共作「インスパイト・オブ・オール・ザ・デインジャー」。
お金がなかったので、テープには録音せず、レコード盤に直接、演奏
を刻んだ。

この日演奏したクォリーメンのメンバーは、ジョン・レノン、ポール・マッ
カートニー、ジョージ・ハリスン、コリン・ハントン(ドラムス)、ジョン・
“ダフ”・ロウ(ピアノ)の5人だった。
この時に作られたデモ・レコードは、メンバーの間で回し聴きされた後
に忘れ去られ、80年代になってジョン・ロウがその存在を明らかにし
た。
この世にたった1枚だけ存在するクォリーメンのレコード。現在はポー
ルが所有している。

「幻のレコーディング」だったこの2曲だが、1995年にリリースされた
アルバム『ビートルズ・アンソロジー1』に収録され、今ではファンの誰
もが「クォリーメン=未来のビートルズ」の歴史的な音源を聴くことがで
きる。
僕は、『ビートルズ・アンソロジー』シリーズの中では、『1』がいちばん
好きだ。圧倒的に。
それはやはり、リヴァプールを感じることができるからだと思う。中でも
このクォリーメンの2曲は、「フリー・アズ・ア・バード」にも匹敵する、特
別なトラックだと思う。

17歳のジョン・レノンの声。
「ジョン・レノンは産まれた時からジョン・レノンだったんだなあ」
と、聴くたびに感動してしまう。

 ● ● ●

さて、セレモニーの話。
クォリーメンのレコーディングが行われたことを記念したプラーク(記念
プレート)がケンジントンの38番地に設置され、8月26日に除幕式が
行われた。
残念ながら僕は別の用事があってセレモニーには参加できなかった
が、翌日の新聞「デイリー・ポスト」と「リヴァプール・エコー」に、その模
様が写真つきで伝えられた。
除幕式に出席したのは、ケンジントン生まれのラジオ・プレゼンター、
ビリー・バトラー、レコーディングに参加したコリン・ハントンとジョン・ロ
ウ、そしてジョン・レノンの妹ジュリア・ベアードだった。

コリンは、「デイリー・ポスト」紙に当時のことをこう回想している。
「私たちみんな、3シリング6ペンスを出し合ったのを憶えてるよ。でも
その時フィリップスさんに、(直接レコードに音を入れるより)まずテー
プに入れるのがベストだぞって言われたんだよね」
「それにはいくらかかるんだってジョン(レノン)が訊いて、フィリップスさ
んは1ポンドだって答えた」
「そしたらジョンもポールも真っ青になっちゃってね。で、結局レコード
にダイレクトに吹き込むことになったんだよ」
「アップルが『ビートルズ・アンソロジー』にあれを収録してくれて、最終
的にはめでたしめでたしってことになったよね。私たちみんながあの音
源をシェアできるし、3シリング6ペンスどころか、それ以上を還元して
もらったよ。印税でね」

ジョン・ロウはこう話している。
「20年前にやるべきだったな。だってここからすべてが始まったんだ
から」

 ● ● ●

セレモニーから4日後、やっと時間ができたので、ケンジントン38番地
を訪ねてみた。
家の壁や玄関ドアのペンキは、キレイに塗り替えられている。玄関の
上のガラス窓には、演奏しているビートルズのシルエットに
“BIRTHPLACE OF THE BEATLES” の文字が添えられている。そして
その上のスペースに、素敵なデザインのプラークが居心地よさそうに
収まっている。

実は僕は、ちょうど2年前に、このプラークのデザインを見ている。
見ただけでなく、このプラークの原画のコピーを持っている。
プラーク・デザイナーのフレッド・オブライエンさんと偶然に知り合って、
彼から気前良くプレゼントしてもらったのだ。もちろん、今も手元に大
切にとってある。

その原画と今回の完成版とを比べると、ポールとジョージ以外のメン
バーの写真は差し替えられ、文字のフォントや文言にも修正が施され
ていることがわかる。
しかし、いちばん決定的な違いは、“ SUPPORTED BY kensington
regeneration ”というクレジットだ。
おそらくは、このスポンサーを見つけ、実際の設置にこぎつけるまで
に、2年の月日を要したということなのだろう。

「ケンジントン・リジェネレーション」は、ケンジントン地区の再生を目的
に活動する公的機関のようだ。
ケンジントン地区に埋もれている歴史的・文化的なスポットにライトを
当て、対外的にPRして行くことは、彼らの重要な仕事のひとつである
に違いない。
それが、「ビートルズのファースト・レコーディングが行われた場所」で
あれば、まさに願ったり叶ったりというところではないだろうか。
海外からも観光客を呼べるポイントが出来たことで、ケンジントン地区
の活性化に、大きな弾みがつくかもしれない。
もちろんビートルズ・ファンにとっても、ありがたい話だ。

この「パーシー・フィリップス・レコーディング・スタジオ跡」は、リヴァ
プールの中心部からは少しだけ離れたところにある。
ライム・ストリート駅からだと、歩いておよそ15分というところだろうか。

何かのついでにひょいと立ち寄れるようなロケーションではないけれど
も、これからリヴァプールでビートルズの足跡を辿るファンには、ぜひ
とも訪れてほしいと思う。
ビートルズのためにも、クォリーメンのためにも、そしてケンジントン地
区のためにも…。

心からそう願いながら、ケンジントン38番地を後にした。

(利物浦日記1・おわり)


(この原稿に関連する写真は、ウェブサイトの「NLW フォト・アルバム」
ページに掲載しています。
http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo217.htm )


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▼スカウスハウス・ニュース
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*** 語学留学生募集中 ******

「スカウス・ハウス」では、リヴァプールへの語学留学をサポートしてい
ます。
最短で1週間の短期留学から長期留学、夏期休暇コース、さらには最
近人気のホームステイ留学など、幅広く対応しています。
詳細については、ウェブサイトの「語学留学案内」ページをご覧くださ
い。
http://scousehouse.net/study/index.htm


*** ビートルズ・ガイドツアー ******

「スカウス・ハウス」では、リヴァプール&ロンドンのビートルズゆかりの
地を訪ねるガイドツアーをアレンジします。
ガイドはもちろん現地在住の日本人。レギュラー・ツアーのほか、
ちょっとマニアックなツアーも用意しています。また、ご希望により、プ
ライヴェート・ツアーのアレンジも承ります。
ツアーの詳細は、ウェブサイトの「ガイドツアー」ページをご覧ください。
http://scousehouse.net/beatles/info.htm


*** 原稿募集中 ******

「リヴァプール・ニュース」では、読者のみなさんからの投稿を募集して
います。
旅行記、レポート、研究、エッセイ、写真などなど、リヴァプール、ある
いは英国に関するものなら何でも歓迎です。
お気軽にお寄せください。楽しい作品をお待ちしています。


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▽今週のフォト
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*** 今週の「ゴールドフィッシュ」フォト ******

今週も、ミナコさんから素敵な写真が届いています。
ウェブサイトの「NLW ゴールドフィッシュだより」ページをご覧ください。
http://scousehouse.net/magazine/goldfish24_photo.htm


*** 今週のフォト・アルバム ******

「ゴールドフィッシュ」以外の原稿にちなんだ写真は、「NLW フォト・アル
バム」ページをご覧ください。
http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo217.htm 


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□■ 第217号 ■□

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