November 1 2005, No.223
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     リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World   
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NLW ■
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□■ INDEX ■□

 ▽フロム・エディター
 ▼リヴァプール・ニュース <2005年10月26日〜10月29日>
 ▽寄稿:「 Football の旅」
 ▼「利物浦日記(2005年夏)」
 ▽スカウスハウス・ニュース
 ▼今週のフォト


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▽フロム・エディター
―――――――――――――――――――――――――─ NLW □

11月になりました。
思えば昨年の今ごろは、ほんとうに胸の締め付けられる毎日でした。
山のドングリが大凶作で、飢えて食べ物を求めて人里に出てきた熊
が、毎日毎日、それこそ次から次へと、無残に殺されて行きました。
ただでさえ絶滅を危ぶまれている熊が、わかっているだけで2300頭
近くも射殺されたのだそうです。

にせんさんびゃく、です。途方もない数字ですよね。

熊を追い詰めているそもそもの原因は我々にあるというのに、人間と
いうものは、日本人というものは、なんと残酷で強欲でひとりよがりな
んだろうと、絶望的な気分になったものです。
あれから1年…。

先日、僕が会員になっている日本熊森協会さんから、会報「くまもり通
信」の最新号が届きました。
今年はブナが大豊作なので、熊が飢えることはまずなさそうだというこ
とですが、だからと言って決して喜る状況ではないようです。

大豊作の翌年はたくさんのブナが枯れるというデータがあり、豊作を
通り越して異常なほどの大豊作となった今年の翌年、2006年は大凶
作となる危険がかなり高いのだそうです。

また、ミズナラはすでに現在、かなりの範囲で虫にやられて枯れてい
るそうです。温暖化のせいで、以前では考えられなかった標高にまで、
被害が広がっているのです。

ブナとミズナラに頼って生きる熊たちとって、来年は、去年よりもさらに
厳しい状況になるかもしれません。ものすごく心配です。

しかしまあ、悲観的になっているばかりでは駄目ですよね。
僕自身が、少しずつでも何か行動を起こしたいと思っています。
熊を含めた生き物や自然環境を守ることの重要性や緊急性に、たくさ
んの人に気づいてもらえるようになればなあと思います。
そして、そのためにはどうすればいいのかを、ひとりひとりが主体的に
考えてゆくような世の中になれば、ほんとに理想的なのですが…。

● ● ●

さて、NLWの220号でお伝えした魚部資子さんの個展が、昨日から始
まっています。
ご覧になった方から早速、「すばらしい作品ばかりでした」との感想が
届きました。
インフォメーションを再度、お知らせしておきます。お近くの方は、ぜひ
ぜひ足を運んでみてください(ああ、僕も行きたいなあ…)。

 < 魚部資子 個展 インフォメーション >
  UOBE MOTOKO EXHIBITION
  期間:2005年10月31日(月)〜11月5日(土)
      11:30−19:00(最終日は16:00迄)
  会場:銀座 小野画廊2
      〒104-0061
      東京都中央区銀座1−9−8 奥野ビルB1
      (地下鉄有楽町線銀座一丁目駅10番出口)
     TEL; 03 3535 1185(事務所)
     TEL; 03 3535 1187(会場)
  作品ウェブページ:http://hermitageu.plala.jp/ 

                           ― Kaz (01/11/2005)


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▼リヴァプール・ニュース <2005年10月26日〜10月29日>
―――――――――――――――――――――――――─ NLW □

*** 10月26日(水) *******************************

【プレミアシップ 05−06】
イングランド・プレミアリーグの結果です。

22日にフルアムとアウェイで対戦したリヴァプールは、2−0(前半:
1−0)で負けています。
試合終了後、ラファエル・ベニテス監督はこう話しています。
「今日のウチみたいにゲームをコントロールすれば、普通は負けるな
んてことはないだろう。説明できないな。点が入っていてもいいはずな
んだが」
「ファースト・ハーフはウチがゲームをコントロールしていた。向こうに
はいくつチャンスがあったかな。2つのフリー・キック、それと1つの
ゴールだけだ。あれだけボールを支配し、ほとんど相手に何もさせな
かった我々が、ファースト・ハーフが終わってみれば1−0で負けてい
る。そして我々はセカンド・ハーフでも攻め続けて、いいチャンスを作っ
た。だが、点が取れなかった」
「セカンド・ハーフのウチは本当に良かったと思う。点も入っていたは
ずだ。しかし後半は相手のゴールキーパーが良すぎたね。彼らのベス
ト・プレイヤーだった」
「ゲームに勝つためには、自分たちのパフォーマンスを上げて行く必
要がある。つまりはゴールを決められるようにね。今日だって、あれだ
けたくさんのチャンスを作りながら、点が入らなかった。点を取らない
と」

23日に首位チェルシーをホームに迎えたエヴァトンは、1−1(前半:
1−0)で引き分けました。
ゴール・スコアラーは、ジェイムズ・ビーティー(37分、PK)でした。

監督のデイヴィッド・モイーズは、試合終了後にこう話しています。
「2つ目のPKが認められていたら、3ポイント獲れてたところだね。向
こうにも言い分はあるだろうが、もらえるものは何でももらっておきた
いというのが我々の現状だからね」
「最初のは明らかにペナルティだ。タックルはエリアの中だったからね。
2番目のもペナルティのはずだよ。テリーが体を投げ出した時、腕に
ボールが当たると思った。ちょうどシュートコースに倒れて行ったから
ね」
「とはいえ、チェルシーは素晴らしかったね。ランパードは驚異だよ。あ
のゴールだけではなくて、とにかくボールを持った時すべてがそうだっ
た」
「だがそういったことは前からわかっていたことで、我々はなんとか対
処しようと試合に臨んだ。ギャップを全部埋めることは出来ないまでも、
ベストは尽くすことはできると信じてね」

10月23日現在のリーグ順位は、リヴァプールは10ポイントで13位、
エヴァトンは4ポイントで20位(最下位)です。


*** 10月28日(金) *******************************

【カーリング・カップ】
今週、イングランドのリーグ・カップ「カーリング・カップ」の3回戦が行
われました。
この3回戦からプレミアシップ勢の登場となりましたが、リヴァプール、
エヴァトンの両チームともに敗れ、ベスト16進出はなりませんでした。

リヴァプールは25日、リーグ・チャンピオンシップ(2部相当)所属のク
リスタル・パレスとアウェイで対戦し、2−1(前半:1−1)で敗れまし
た。

試合後、ラファエル・ベニテス監督はこう話しています。
「何て言えばいいんだろうね。ゲームを落としたのはわかっている。だ
がチームとしてはハードに戦ったし、チャンスも作っていた。一生懸命
プレイしている選手たちを責めることはできないからね」
「スタートは上々だったんだが、ディフェンスでいくつかミスを犯して、そ
れで試合に負けることになった。ウチもチャンスは作ったんだが、それ
をモノにできなかった」
「ウチのストライカーたちは、そのうち点を取るようになる。彼らにはそ
れだけの実力があるし、ハードに練習している。ハリー・キューウェル
とフェルナンド・モリエンテスはまだフィットネスが万全ではないが、
ゲームをこなすうちに戻って来るだろう」
「ダレン・ポッターやザック・ウィットブレッド、デイヴィッド・レイヴェンな
ど、経験の浅い選手を起用したのが間違いだと言われるかもしれない
ね。だが彼らは戦力なんだし、私はそれを生かそうとするだけだ」

エヴァトンは26日、ホームでミドルスブラと対戦し、0−1(前半:
0−1)で敗れました。
試合後、デイヴィッド・モイーズ監督はこう話しています。

「より良い結果が出せなかったこと、勝ち抜けなかったことは、とても
残念だ」
「たくさんクロスを入れて、どれも点につなげられなかったことが惜しま
れる。あれだけボックスの中に攻め込んだのに、ボロにうまく守られて
しまった。たいしたものだった」
「彼らはここ数年、カップ戦やヨーロッパの試合ではいい成績を残して
いる。アウェイでのカップ戦の経験が豊富で、それが今日のような試
合で生きてくるんだろうね」
「我々の方は、どうしても最後のツメのところでうまく行かなかった。後
半修正はしたんだが、ついに同点ゴールは生まれなかったね」


*** 10月29日(土) *******************************

【礼儀の街】
最新の調査結果によると、リヴァプールは、全国で2番目に「礼儀正し
い街」なのだそうです。

調査のポイントとなったのは、「どのくらいの店員が『プリーズ』や『サン
キュー』を言うか」「ビルの中に入る際にどのくらいの人が後ろの人の
ためにドアを押さえて待ってあげるか」「買い物袋を落としてしまった人
にどのくらいの通行人が手を貸そうとするか」といったことでした。

また、「ラッシュ・アワーで車線を移った後で、どのくらいのドライヴァー
が譲ってくれた車にお礼の合図をしているか」といった、運転マナーに
ついての調査も行われました。

調査の結果、リヴァプールの人々の「礼儀正しい度」は70%でした。
これは、77%を記録したニューカッスルに次いで、全国2位にランクさ
れる素晴らしい成績です。

「シティ・センター・ストアズ・コミッティー」のエド・オリヴァーはこう話して
います。
「リヴァプール人の特徴がそのまま表れてますよね、この調査結果に
は。基本的にみんなすごく親切ですからね。頼まれもしないのに、他
人に何か教えたりサーヴィスしたりってこと、ホイホイやってしまいます
もんね」
「そういうところがリヴァプール人らしさなんですよ。ニューカッスルの
人にも似たところがありますよね」

地元紙「リヴァプール・エコー」も、礼儀正しさや親切さを向上させる
キャンペーン「キャピタル・オブ・コーテシー」を実施し、定期的に調査
を行っています。
その調査で、いつもトップ2に入っているのが、「マージー・フェリーズ」
と、ファッション・ストアの「カレン・ミラン」です。

ボールド・ストリートにある「カレン・ミラン」のマネージャー、ジェニ
ファー・ブレイディはこう話しています。
「スタッフにいつも言ってるのは、『明るく、元気で、その日一日を楽し
みなさい』ってことだけなんですよ」
「私たち、お客さんみんなに最高の店だって思ってもらいたいんです。
私たちが横柄な態度をしたら、また来てもらえないですよね」

「マージー・フェリーズ」を運営する「マージートラヴェル」のチェアマン、
マーク・ドウドはこう話しています。
「すべての人が、お互いのことを理解し合えたらいいですよね。うちの
スタッフたちはその素晴らしい一例だと思いますよ」


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▽寄稿:「 Football の旅」
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「 Football の旅」

 〜Vol.3 English Premiership - Everton VS Chelsea,
      at Goodison Park, 23.10.2005 / 下村 えり(Eri Shimomura)


【 まえがき 】
NLWをご覧の皆様こんにちは!
プレミアリーグ、今シーズンが始まって、早くも3ヶ月が経ちました。
今回のレポートは、エバトン対チェルシー戦です。
昨シーズンからの波に乗ってダントツ首位のチェルシーが、またもや
マージーサイドへ乗り込み、今度は現在最下位のエバトンとの試合に
臨みます。

先シーズンまで、『チェルシーの試合タクティクスは面白くない!』
“Boring Boring Chelsea!” とアンチ応援歌でも歌われていましたが、最
近のチェルシーはその言葉を全く忘れさせてくれる様な、素晴らしい攻
撃力を見せ付けています。開幕から9連勝。一体誰が、どのチームが、
彼らの笑みを止められるのか?
最下位のエバトンではありますが、昨年の勢いを考えると、(ひょっと
すると…)という期待も持てそうなのですが…。


【 グディソンパーク 】
先々週に観戦した、CLのリバプール対チェルシー戦とはうってかわっ
て、秋晴れのお天気に恵まれたこの日、グディソンパークは3万6千の
観戦者で賑わった。
足取りが重かろうと思われたエバトンファンも、トップを独走するチャン
ピオンを相手に、胸を借りるかの如く、とてもリラックスした雰囲気が
漂っていた。

エバトンのグディソンパーク・スタジアムも、リバプールのアンフィール
ド・スタジアム同様、リバプール北部の住宅街の中心部に位置する(住
宅地のど真ん中というのは、イギリスでは典型的なスタジアムのポジ
ションでもある)。
又グディソンとアンフィールドは、大きな道路と公園を挟んで、向かい合
わせになっている。ロンドンで言うならば、テムズ河沿いのチェルシー
とフルハムといったところだろうか。

今回で3度目のグディソンだが、個人的な印象ではアンフィールドより
も周りの商店街に活気があり、家庭的なホンワカムードが漂っている。
かき入れ時のチッピー( Fish &Chips のテイクアウト店)には、店の表
までKew(行列)が出来ていた。
グディソンを囲むこの商店街は全てエバトンカラーのロイヤルブルー
で、これには私も思わず微笑んでしまった。


【 Everton FCの歴史 】
エバトンのスタジアムは、珍しい事に、メインゲートの左側に教会が隣
接している。
これはエバトンの誕生とも深く関係するもので、1878年、この教会“聖
ドミンゴ教会”の有志達により、エバトンFCが創立される。
しかしエバトンFCがスタートしたのはこの場所ではない。最初の拠点
地はなんとあのアンフィールド(現在リバプールFCが使用)。創設から
14年後の1892年に現在のグディソンパークに移るまで、エバトンはア
ンフィールドをホーム・グラウンドとしてプレイした。
クラブの名前は、この教会がある地区の名にちなんで、最初からエバ
トンと名乗ったらしい。

1982年に完成したグディソンパーク・スタジアムは、当時としては最先
端のスタジアムだった。しかしここへ移って初めての試合では、4−2
でボルトンとの試合を落としている。

忘れてならないのは、フットボール史において、エバトンFCは最初の
リーグの輝かしい一員である事だ。
世界初のフットボールリーグは、ここイギリスで1888年に創設された。
12チームという小規模なリーグではあったが、その1つがエバトンで
あった。

設立から125年の間にエバトンは、リーグ優勝9回、FAカップ優勝5回、
カップウイナーズカップ1回という堂々たる成績を残している。また、イ
ングランド・リーグの歴史において、合計4シーズンしかトップリーグか
ら落ちた事がないという、最小の記録も持っている。

先シーズンは、2003年より指揮してきたスコットランド人のデイビッド・
モイーズ監督が手腕を発揮し、リーグ4位という成績を残す。
これは、ライバルのリバプールFC(6位)を引き離しての上位浮上だっ
た。
しかし残念な事に、今シーズンは未だに1勝のみ。現在なんと最下位
に位置しており、チームは過酷なジレンマに立たされている。今後い
かにしてこの過渡期を切り抜けるかが、モイーズ監督の腕の見せ所
かもしれない。


【 Chelsea FCの歴史 】
一方、チェルシーと言えば、ご存知のとおり先シーズンは50年ぶりの
リーグ優勝を果たし、長年待ち続けたチェルシー・ファンを狂喜させた。
今シーズンも只今猛進中という感じで、抜群の守備力に加え、集中力
と瞬発力を備えた見事な前線プレイに、どのチームもお手上げ状態。
未だ彼らは、黒星どころか引き分けすらつけられていない。

“いったい誰がチェルシーの暴走を止められるのか?”
これが、今シーズンのプレミアリーグの見所と言えようか。

ここで、簡単にチェルシーFCの歴史にも触れてみることにしよう。
彼らの誕生は1905年。当時陸上競技場だったスタンフォード・ブリッジ
のオーナーによってスタートした。
リーグ優勝は昨シーズンを入れて2回、そしてFAカップ優勝3回、リー
グカップ優勝3回、カップウイナーズカップ2回の成績を収めている。
2003年にロシア人の富豪ロマン・アブラモビッチがオーナーに就いて
以来、世界のあらゆる国より選りすぐった選手を大補強し、一軍チー
ムが2つ作れるのではないかと言われる程の、万全なサブの顔ぶれと
なった。むろんこれは大きな反感もかっているのだが。

マネーマーケットの大きな支配下にある現在のフットボールも、それに
反発して良き伝統を頑なに守り続けようとする、イギリス人達のある意
味では保守的な見方も、どちらもとても理解は出来る。
しかし実際の所、今のチェルシーの強さはお金だけでは語れないだろ
う。
事実、アブラモビッチ・オーナーから莫大な資金を貰い、イタリアを始
め世界のあちこちから選手をかき集めてきた前監督ラニエリは、チェ
ルシーファンの夢を叶えることはできなかったのだから。
やはり、監督の持つ力は大きい。いかに上手くバランスの取れた良い
チームを作り上げるか。それを一番よく理解しているのが、モウリー
ニョ監督なのではないだろうか。
彼は簡単な3つの言葉で、チェルシーのチームをこう表現する。
効率、団結、そして華麗! 
チェルシーの一人一人の選手を愛し、プライベートも充実している脂の
乗り切った42歳。彼の勢いは、チェルシーFCと共に何処まで続くのだ
ろうか?


【 今回の見所 】
先ほどチェルシーの金銭的な面に触れたのだが、先シーズンのエバト
ンは対照的だった。
攻撃の中心で一番のスタープレーヤー Wayne Rooney をマンチェス
ターユナイティッドに取られたあげく、守備的MFとしてチームの要の役
割を果たしていた Thomas Gravesen までもがレアル・マドリッドに移
籍してしまった。その後、最小限の金額で James Beattie をサウサン
プトンより獲得したものの、彼は怪我で殆ど出場できずにシーズンは
終わってしまう。
しかしこの最悪の状態がエバトンの選手達には精神的にプラスに動い
たのだろうか、プレミアリーグ4位という、この数年間の彼らとしては素
晴らしい成績を残したのである。
昨シーズンのエバトンは、リーグでの38試合のうち、4分の1は1−0
のスコアで3ポイントを確保して来た。
それが今シーズンは、反対にほとんどの試合を1−0で落としている。

昨シーズンは、何も無い所からのハングリーな挑戦が、エバトンの選
手たちに不思議な力を与えたのかもしれない。
今は逆に、前シーズン4位のプレッシャーに押され気味のエバトンなん
だろうか。

スター選手を揃えた富豪チームと、スター選手を全て手放したどん底
チームの戦いと言ったら、言いすぎだろうか。
正直な所、チェルシーを下す力は、今のエバトンの勢いからすると期
待薄だが、少しでも、希望の見えるプレーをして私達の前で披露してく
れる事を願いたい。


【 試合開始 】
試合は午後4時のキックオフで始まった。
エバトンは4−4−2のポジションをとり、前線に大柄の Ferguson と俊
足の Beattie を持ってきた。大抵今までの試合だと Ferguson は終了
前の10分間に起用される切り札だが、これは最初から勝負に出たの
か。

これが、前半のエバトンの総攻撃に、大きくプラスに働いた。
試合開始2,3分はチェルシーがゴール前でシュートを放つが、それ以
降はエバトンの攻撃が続いていった。

エバトンの Cahill にボールを奪われたチェルシー Wright-Phillips は、
それを取り返そうと後方よりペナルティーエリアまで食い込んでくるが、
それが仇となった。
Cahill が足をとられて倒れる。左後方から見ていたレフリーの目にも
明らかで、即PKの指示が出される。

この37分のペナルティのキッカーに、エバトンはストライカー Beattie を
送る。Beattie の鋭い右足シュートが見事に決まると、グディソン全体
が歓声の渦に包み込まれる。Beattie にとっては、今シーズン2つ目の
ゴールとなる。

ブレイクを終え、後半が始まるや否や、待ち構えていたかのようにチェ
ルシーの反撃が始まった。
開始5分、チェルシーの Lampard が、ゴール前24ヤード(22m)から矢
のようなシュートをゴールに突き刺す。1−1。
チェルシー側スタンドは一斉に湧き上がり、エバトン側からはため息
がもれる。『やはり、こーなってしまったかー』と言う、なんとも無念なた
め息に聞こえた。

それからは、精神的な動揺からかエバトンは攻撃を作ることが出来な
くなり、パスミスも多くなる。
反対に勢いにのって逆転したいチェルシーは、チャンピオンの意地を
見せるかの様に、じりじりと攻め寄って来る。

後半62分、チェルシー Drogba がインサイドボックスでボールを受け取
り、豪快なシュートを放つが、オフサイドの判定。しかしこれは、チーム
メイトの Gudjhonsen は確かにオフサイドエリアだったが、ボールを受
けた Drobga 自身はオンサイドだった。2−1になったかと思われたが、
今回はチャンピオンにツキがなかったとみえる。

チェルシーのモリーニョ監督は、後半はパワープレーを選択した。
10分過ぎに Wright-Phillips を下げて Gudjhonsen 、その10分後には
Cole に代えて Robben を起用。そして72分、Drogba に代わって切り
札ストライカー Crespo が登場。万全の攻撃態勢をとってきた。

一方のエバトンも79分、足を引きずる Ferguson を下げて Bent を起
用し、持ち直す。
その Bent のペナルティーエリア右前でのシュートが、両腕を大きく広
げたチェルシーの Terry の腕に当たりボールが跳ね返る。
選手たちは大きな声で『ハンドボール、ペナルティー!』とアピールす
るが、レフリーは首を横に振る。

結果、1−1の Draw に終わった。
チェルシーとしては今シーズン初のドローゲームで、彼らにしてみれ
ば、取れるべき2ポイントを失う結果となった。又エバトンとしては1−1
に追いつかれたものの、チャンピオンを相手にドローで納まったのは、
まずまずのリゾートだったか、これは良い転機になるかもしれない。
未だにリーグのボトムを脱してはいないのだが、これを期にポジティブ
ムードになって欲しいグディソンの一日だった。

(おわり)


<マッチ・データ>

 Premiership 05-06 Everton Vs Chelsea 23 Oct 2005, 4pm Kick Off

 スコア    フルタイム結果 1−1
 ターゲットショット     エバトン 3    チェルシー 3
 オフターゲットショット   エバトン 1    チェルシー 15
 コーナーキック      エバトン 3    チェルシー 11
 ファウル          エバトン 14   チェルシー 15
 オフサイド          エバトン 1    チェルシー 1
 イエローカード       エバトン 2    チェルシー 2
 レッドカード        エバトン 0    チェルシー 0
 ポゼッション        エバトン 37.5  チェルシー 62.5

 Everton
  Martyn, Hibbert, Yobo, Weir, Valente (Ferrari 45), Arteta,
  Cahill (Davies 70), Neville, Kilbane, Ferguson (Bent 79), Beattie

 Chelsea
  Cech, Gallas, Huth, Terry, Del Horno,
  Wright-Phillips (Gudjohnsen 58), Essien, Makelele, Lampard,
  Cole (Robben 68), Drogba (Crespo 72)


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▼「利物浦日記(2005年夏)」6
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「利物浦日記(2005年夏)」 / Kaz

第6話 <ビートルズ・コンヴェンション>

8月28日、日曜日。
「ビートル・ウィーク」の日曜日は、毎年「コンヴェンション・デイ」と決
まっている。
会場のアデルフィ・ホテルは、1826年オープンというリヴァプールい
ちばんの伝統があり、格式も高いホテルだが、この日ばかりは朝から
深夜までビートルズ一色、世界中からやって来たビートルズ・ファンに
ハイジャックされてしまう。

「コンヴェンション」では、ビートルズ関係者を招いてのインタヴュー、ト
リビュート・バンドによるライヴ・コンサート、あらゆるコレクションが集
まるディーラーズ・マーケット、フィルム・ショウなど、さまざまなイヴェン
トが同時に開催される。この日一日、ビートルズ・ファンたちは、ビート
ルズだらけの会場で思う存分、好きなように楽しむことが出来る。

さて、「スカウス・ランチョン」の後でアデルフィ・ホテルに向かった僕は、
玄関の前でいきなりアランの姿を発見した。新聞社の撮影中のようで、
カメラマンのリクエストに応えて、風船のギターを抱えたり、パラソルを
持ったりしてポーズを取っている。

アランというのは、ビートルズの最初のマネージャーとして有名なアラ
ン・ウィリアムズさんのことだ。
考えてみると、アランももう75歳(のはず)。心臓のバイパス手術を受
けたり、キャヴァーン・パブの階段から落ちて頭蓋骨を骨折したり、長
年のパートナーのベリルさんを失ったりと、ここ数年のアランは災難続
きだった。
撮影の後で少しだけ話す時間があったのだが、元気そうで安心した。
毒舌と酒癖は相変わらずみたいだったけど…。

アデルフィ・ホテルの奥にあるメイン・ホールは、昼間はインタヴューの
会場となり、ビートルズ関係者が続々登場する。聞き手はおなじみの
ビートルズ研究家、マーク・ルイソンだ。
今年ゲストとして登場したのは、アラン、ウィル・リー(ミュージシャン)、
ビリー・キンズリー(ミュージシャン)、ジュリア・ベアード(ジョン・レノン
の妹)、トニー・ブラムウェル(ビートルズのローディー)、ジョー・フラナ
リー(ブライアン・エプスタインの友人で業界仲間)、トニー・バーロウ
(ビートルズの広報担当)だった。

お宝グッズを探してディーラーズ・ルームをうろうろしていると、インタ
ヴューを終えたウィルに遭遇!
The Fab Faux のリーダー、ウィル・リーは、彼自身ソロとしても活躍す
るニューヨークのバリバリのベーシストだ。しかも、ジョージ、リンゴ、
ポールのレコーディングやステージにも参加したことがあるという恐る
べき経歴を持つ。そのウィルが率いる「ファブ・フォー」は、超一流プレ
イヤーの集合体からなる世界最強のビートルズ・バンドだ。彼らのス
テージはまさに極上のエンターテイメントで、初登場した99年以来、
「ビートル・ウィーク」ではずっとセンセーショナルな存在であり続けてい
る。

前夜、カーリング・アカデミーで行われた「ファブ・フォー」のコンサート
も、やはり素晴らしかった。
ビートルズ解散後のジョン、ポール、ジョージ、リンゴのソロ・ナンバー
ばかりで構成され、「What You Got」、「Uncle Albert / Admiral
Halsey」、「What Is Life」などなど、普通ではなかなか生で聴けないナ
ンバーが、次々と怒涛のように披露された。もちろん想像を絶するほ
どの正確さと、熱気あふれる演奏で。
そしてラストに演奏された「Free As A Bird」が終わる頃には、会場の
全員が感動の渦に呑み込まれていた…ように僕には思えた。

というわけで、早速ウィルに昨日のコンサートの感動を伝えて、一緒に
写真を撮らせてもらった。スターとしての風格はあるけど全然エラそう
じゃないウィルは、いつも喜んで応じてくれる。ウィルは僕の「フォトグラ
フを」という言葉に反応して、リンゴのヒット「Photograph」を上機嫌で歌
いだした。もちろん僕も一緒に歌って、結局サビの部分をまるまる2人
でデュエットしてしまった。
ウ、ウィル・リーとデュエット!? ウェヘヘ〜イッ!!

サム・リーチのストールでは、ハレルヤ洋子さんが捉まっていた。
「どうしたの?」と訊くと、「いや、なんだかわからないけど強引に呼び
止められたんです…」。
サムに確認すると、「この娘の電話番号を教えてほしいんだよ。メール
アドレスでもいいんだけど。ね、いいだろ?」。

最初はまさか冗談だろうと思ったが、どうも本気みたいだ。
「じゃあサム、僕の電話番号を教えてあげるよ」
「いや、君のはいらん」
「……」

サムはまったく悪びれる様子もなく、「これが終わるのが7時半なんだ
よ。だからその頃にここで待ち合わせってのはどうかな?」などとしき
りに誘っている。困った顔のハレルヤさん。

サム・リーチは、昔のリヴァプールの音楽プロモーターで、ブライアン・
エプスタイン以前にビートルズのギグを世話してやっていた人だ。
1980年のジョン・レノン追悼集会での感動的なスピーチは今でも語り
草になっているし、1984年にはポールとの再会を果たしている。
当時のことを綴った本も2冊、出版している。

そのサム・リーチが、自分の娘よりもずっと、ず〜っと若いハレルヤさ
んをデートに誘おうと、一生懸命なのだった。
やれやれ、まったくもう…。

(利物浦日記6・おわり)


(この原稿に関連する写真は、ウェブサイトの「NLW フォト・アルバム」
ページに掲載しています。
http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo223.htm )


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▽スカウスハウス・ニュース
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を追加しました。
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プールFC・ファンブログ。プロ野球の話題も豊富です。まだスタートし
たばかりだそうですが、これからが楽しみです。
http://merseyside.blog.ocn.ne.jp/


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「スカウス・ハウス」では、リヴァプールFCおよびエヴァトンFCの、ホー
ムゲーム観戦チケットの予約を承っています。観戦をご希望の方に
は、詳細をご案内いたします。希望カード&必要枚数にお名前を添え
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近人気のホームステイ留学など、幅広く対応しています。
詳細については、ウェブサイトの「語学留学案内」ページをご覧くださ
い。
http://scousehouse.net/study/index.htm


*** ビートルズ・ガイドツアー ******

「スカウス・ハウス」では、リヴァプール&ロンドンのビートルズゆかりの
地を訪ねるガイドツアーをアレンジします。
ガイドはもちろん現地在住の日本人。レギュラー・ツアーのほか、
ちょっとマニアックなツアーも用意しています。また、ご希望により、プ
ライヴェート・ツアーのアレンジも承ります。
ツアーの詳細は、ウェブサイトの「ガイドツアー」ページをご覧ください。
http://scousehouse.net/beatles/info.htm


*** 原稿募集中 ******

「リヴァプール・ニュース」では、読者のみなさんからの投稿を募集して
います。
旅行記、レポート、研究、エッセイ、写真などなど、リヴァプール、ある
いは英国に関するものなら何でも歓迎です。
お気軽にお寄せください。楽しい作品をお待ちしています。


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▼今週のフォト
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*** 今週のフォト・アルバム ******

「Football の旅」、「利物浦日記(2005年夏)」にちなんだ写真を、
「NLW フォト・アルバム」ページに掲載しています。どうぞご覧ください。
http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo223.htm 


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     リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World   
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□■ 第223号 ■□

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