December 6 2005, No.228
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     リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World   
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NLW ■
         *** http://scousehouse.net/ ***        


□■ INDEX ■□

 ▽フロム・エディター
 ▼リヴァプール・ニュース <2005年11月30日〜12月3日>
 ▽交換エッセイ:「旅で出会ったイギリス〜勝手によもやま話」
 ▼特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
 ▽「利物浦日記(2005年夏)」
 ▼スカウスハウス・ニュース
 ▽今週のフォト


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▽フロム・エディター
―――――――――――――――――――――――――─ NLW □

今週から、earlybird さんと僕の交換エッセイ『旅で出会ったイギリス〜
勝手によもやま話』がスタートします。

earlybird さんといえば、そうですね、『遠くて近いAnfield ― The Long
and Winding Road To Liverpool 』をこのNLWに連載していただきまし
た。
その後もメールのやり取りを続けているうちに、「ひとつのテーマにつ
いて、お互いに知ってること、感じたことを綴っていくと面白いかも」
という話になり、それを発展させた結果、この連載の運びとなりました。

連載第1回として、まずは earlybird さんがイギリスのホテルについて
書いてくださいました。
ご本人は、「この内容ではインパクトが弱いような気もしなくはないので
すが〜」と少し心配されていますが、いやいや、全然そんなことないで
す。
「あるあるある、こういうこと。実にイギリスだなあ」というエピソードが
満載で、それが分かりやすい文章で綴られています。イギリスに行っ
たことのある人はもちろん、ない人だってじゅうぶん楽しく読めるエッセ
イになっていると思います。ほんとに上手いなあ。

さあて、来週は僕の番です。
「交換エッセイ」というからには、ちゃんと2週間ごとに原稿を書いてい
かないといけません。
earlybird さんのエッセイに見合うようなものが書けるかどうか…う〜
ん、今ひとつ自信はありませんが、なんとかがんばって書いてみようと
思います。

というわけで、これからしばらくこの連載にお付き合いいただくことにな
ります。
どうぞお楽しみに!

                         ― Kaz (06/12/2005)


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▼リヴァプール・ニュース <2005年11月30日〜12月3日>
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*** 11月30日(水) *******************************

【プレミアシップ 05−06】
イングランド・プレミアリーグの結果です。

リヴァプールは26日、アウェイでマンチェスター・シティと対戦し、0−1
で勝ちました。
ゴール・スコアラーは、ヨン・アルネ・リーセ(61分)でした。

試合後ラファエル・ベニテス監督はこう話しています。
「私がここに来てから、今がいちばん安定しているね。去年はなかなか
理想どおりには行かなかった。アウェイで勝ちを続けることや、完封を
することが実に難しかった」
「でも今はいいバランスを保てているように思う。これからも、もっと安
定した結果を残せそうだね」

また、この試合でもゴールがなく、無得点が続いているピーター・クラウ
チについては、こう話しています。
「ピーターには試合前、ゴールのことは忘れるように言ったんだ。これ
までどおりのプレイをしてくれればいいんだとね。そのうち点は取れる
んだから。それが今日になるか、明日か来週かは分からないがね。で
も必ずやって来る」
「我々は50ゴールも取ってくれると思ってピーターと契約したわけでは
ない。ゴールだけじゃない能力を評価して契約したんだ。今のところ期
待通りの働きをしてくれているよ。私はとても満足している」

エヴァトンは27日、ニューカッスルを迎え、1−0で勝ちました。
ゴール・スコアラーは、ジョセフ・ヨボ(46分)でした。
前週の4−0の敗戦で降格ゾーンに逆戻りしていたエヴァトンですが、
この勝利で再び「ボトム3」から脱出しました。

監督のデイヴィッド・モイーズはこう話しています。
「いわゆるひとつのフットボールの試合、ってところかな。いくつかの
チャレンジは報われ、いくつかは報われない。だが今日の我々は3ポ
イントに値すると思うよ。選手たちはいいパフォーマンスを見せてくれ
た」
「先週のウエスト・ブロム戦が私をどれほどがっかりさせたか、選手た
ちは毎日肝に銘じて来たんだね。今日はその成果をしっかりと見させ
てもらった」
「ちゃんと軌道修正をしてくれたわけだし、ここ4試合で3勝なんだから
ね。プレミア・リーグの基準としては悪くないんじゃないかな」


*** 12月2日(金) *******************************

【プレミアシップ 05−06】
イングランド・プレミアリーグの結果です。

リヴァプールは30日、アウェイでサンダーランドと対戦し、0−2で勝ち
ました。
ゴール・スコアラーは、ルイス・ガルシア(30分)とスティーヴン・ジェ
ラード(45分)でした。

先発して79分間プレイしたピーター・クラウチには、この試合でも今季
初ゴールは生まれませんでした。
ペナルティ・エリア内での惜しいシュートと、それに続いてディフェン
ダーに倒されるシーンがありましたが、レフェリーの笛は鳴りませんで
した。
監督のラファエル・ベニテスは試合後、こう話しています。
「あれは入ったかと思ったけどね。あの次もペナルティだと思った。彼
にとっては不運だったね」
「彼はいいプレイをしている。PKのチャンスも作ったのに、レフェリーは
見てなかった。それともレフェリーは、あれはペナルティではないと判
断したのかな。だとすると、スタジアムで彼だけだろうね、あれがペナ
ルティに見えなかったのは」
「世間が騒ぎだしてから、私は彼に言ったんだ。気にしなくていい、得
点のことについていろいろ言われてることは全部忘れて、今のそのま
まのプレイを続けてくれたらいいんだとね」
「我々にとって彼は、とても、とても大事なプレイヤーだ。なぜなら、昨
シーズンは持ち得なかったいろんなオプションを我々にもたらしてくれ
ているんだから。ボールをキープすることもできるし、ヘディングもでき
る。常にセカンド・オプションをチームに与えてくれているんだよ。去年
はそれがなかったからね」

これでポイントを25に伸ばしたリヴァプールは、リーグ4位に浮上しま
した。3位のアーセナルとは1ポイント、2位のマンチェスター・ユナイ
テッドとは2ポイントの差に迫っています。
一方のサンダーランドは、これでリーグ戦7連敗。通算で1勝12敗2
分でわずか5ポイントと、苦しいシーズンが続いています。


*** 12月3日(土) *******************************

【あれから四半世紀】
ジョン・レノンの命日である12月8日に、マシュー・ストリートで追悼の
セレモニーが計画されています。

ニューヨークで凶弾に倒れて四半世紀となるこの日、主催するリヴァ
プール・ビートルズ・アプリシエイション・ソサエティは、何百人ものファ
ンに集まってもらいたいと望んでいます。
セレモニーが行われるのは、ビートルズの銅像があるキャヴァーン・デ
ザイナーズ・ショッピング・センターです。
追悼に集まったファンたちの手で、ジョン・レノンの銅像に花束やメッ
セージを捧げられます。

オーガナイザーのスージー・ムーアはこう話しています。
「キャヴァーン・デザイナーズ・ショッピング・センターのあの場所の趣
旨は、『イマジン』であり、『ギヴ・ピース・ア・チャンス』なの。セレモニー
は11時から始まります。2つのカセドラルから神父さんに来てもらっ
て、平和への祈りを捧げてもらうことになっています」

当日は、クレイトン・スクエアにあるビッグ・スクリーンでも、ジョン・レノ
ンの生涯や珍しいドキュメンタリーを映像で流すそうです。
しかし、メンローヴ・アヴェニューにある、ジョンが少年時代を過ごした
家「メンディップス」は、現在オフシーズンで、この日も特別にオープン
されることはなさそうです。


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▽交換エッセイ:「旅で出会ったイギリス〜勝手によもやま話」
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第1回 「エコノミーホテルの実態」 〜 from earlybird

<イントロダクション>

先の連載『遠くて近いAnfield ― The Long and Winding Road To
Liverpool 』では、つたない旅行記を読んでいただいてありがとうござい
ました。
今回のイギリス&リバプールへの旅は、私のなかではちょっとしたエ
ポックメイキングな出来事となって、いまだにそのインパクトを引きずっ
ている状態です。
そこで、道中印象に残ったことや、Kazさんや皆さんと『そうそう、そん
なこともあるよねー!』ってノリで分かち合ってみたいエピソードについ
て、これからつらつらおはなししていきたいと思います。
イギリスの旅をめぐるちょっとしたネタとして、お付き合いいただければ
幸いです。


<エコノミーホテルの実態>

お金に糸目をつけないセレブの方や、出張経費でバンバン落とせる方
ならいざ知らず、限られた資金をやりくりするしかない節約旅行者に
とって、何にお金をかけて、何にかけないかは大きな問題です。
エアチケットは時期や航空会社によって相当違うし、食事やエンタテイ
メント、お買い物にどれだけ比重を置くかによっても大分差がついてき
ますよね。

なかでも、最大の落としどころはホテル代ではないでしょうか。
特に、物価の高い大都市(パリ、ロンドンなど)ではホテル代もそれな
りですから、ヤリクリが大変です。いかにリーズナブルで、ほどよく快
適なホテルを見つけるか。私も、数少ない経験のなかで手探りしてき
ましたが、中にはあたりだったものから、ハズレだったものまでさまざ
までした。

あたりだったのは、約10年前ロンドンに来たときに泊まった『ドーセッ
ト・スクウェア・ホテル』というプチホテル。
ベイカー・ストリートとメリルボーンの2つの駅に近く、インテリアはほど
ほどにお洒落だし、アメニティグッズも充実していたし、イギリスには珍
しく水周りの設備は抜群! スタッフの対応も親切で、快適に過ごすこ
とが出来ました。
ところが今回調べてみたら、もう高嶺の花になっていたんですよ
ね…(涙)

大ハズレだったのは、その2年前パリに行ったときに、破格の安さに
目がくらんで友だちがとってくれたエコノミーホテル。
パリのサンジェルマン通りにほど近く、ロケーションのよさが唯一のと
りえだったのですが、夜中近くまで浮かれ騒ぐ人たちの声や車の騒音
で、ほとんど落ち着けませんでした。
おまけにエレベーターはないわ、部屋は薄暗くて狭いわ、共同のバス
は薄汚れていてほとんど水しか出ないし、トイレはなぜか和式みたい
なまたぐヤツ。従業員は英語で話しかけると知らんぷり…。
安くても二度と泊まりたくないと思ったものでした。林望さんの著書に
も、パリの安ホテルでさんざんな目にあったエピソードが出てくるので
すが、同じホテルかと思ったくらい特徴が似ていました(実際は違うよ
うですが)。

そんな過去の教訓もあり、今回のロンドンでの滞在先は、利用者に好
意的な評価をもらっているホテルを慎重に探したつもりでした。ああそ
れなのに…。リーズナブルなだけあって、さすがに難点がいくつかあり
ました。

まず、古いタウンハウスを改修してホテルとして使っているので、基礎
的な部分は相当な年数が経っているようでした。私が泊まった部屋は
2階(実質3階)でしたが、床を歩くたびにミシミシと音がするし、部屋の
真ん中を歩くと、床が下がっているのがハッキリ分かるんです…。
でもまあ、地震のないロンドンだし、潰れることはないだろうと割り切り
ました。おまけに窓枠もゆがんでいて、きちんと閉まらないのです。
もっと寒い時期だったら耐えられないし、第一安全上問題ありですよ
ね…(汗)。

バスルームは白く塗り替えられて、見た目はきれいでしたが、換気扇
の音が大きくて耳障りなうえに、スイッチをオフにしてから止まるまで
相当時間がかかって、隣室の人がうるさくないかとヒヤヒヤしました。
バスタブはなく、シャワーは高い位置に固定されていて取り外しがきか
ないため、身体を洗うのにひと苦労(なんせチビなもんで)。
そのうえ、お湯の蛇口をひねっても、待てど暮らせど水しか出てこない
のです。ずいーぶんたってから、ようやく温まってくる感じ。5月とはい
え、まだ寒かったので風邪をひきそうになりました。
イギリスでは、水周りの苦労はつきものなのでしょうか…。

おまけにテレビが映らないのです。コードがなぜか途中で切れている
のを、セロテープで巻いて止めているだけ! これじゃ映るわけがな
い。フロントの兄ちゃんに『何とかしてください』と頼んだのですが、特に
何の手も打ってくれませんでした。私もこのときは英語に自信がなくて、
それ以上の文句は言えませんでした。
おかげさまで、チェルスキーがユナイテッドにバカ勝ちした試合を見な
いですみましたけど!(怒)

よかったのは、お部屋とクローゼットがゆったりしていたこと、骨董品
のような天蓋付きのベッドに寝られたこと、朝食がまあまあ充実してい
た(ベーコンやソーセージ、スクランブルエッグ、シリアルは取り放題)
こと、ドライヤーを続けて貸してくれたことぐらいでしょうか。

狭い部屋に押し込められるよりは、ゆったりできるスペースがあったし
(何の飾り気もないソファがデンと置いてあった)、テレビのない静かな
環境も悪くはないかと思うようになりました。
それと毎朝、ベーコンの焼けるなんともいい香りが3階まで漂ってくる
のです。これは、たまりませんでしたね。キッチンは地階なのに一体ど
こを伝わってきたのやら?? 
子どもの頃から憧れだった天蓋付きのベッドも、古ぼけていて、さすが
にお姫様気分とはいきませんでしたが、寝心地はなかなかのものでし
た。

まあ、都会のエコノミーホテルですから、こんなものかも知れません。
日本もしくは東京の同じ値段のホテルだったら、テレビが映らないと
か、お湯がなかなか出ないとか、あり得ないとは思いますけどね。

リバプールでお世話になったリズさんのゲストハウスは、周りの環境
から、部屋の設備やインテリアのセンス、おもてなしの心構えまで、す
べてが行き届いていて、値段もよっぽどリーズナブル(約半分)でした。
まあ、こういう発見も、ありえない経験も、旅の妙味のひとつなのでしょ
うね。

Kazさんは、大当たりもしくは、トンデモなホテルに泊まっちゃった経
験ってありますか?

earlybird


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▼特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
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「ゴールドフィッシュだより」 / ウエダミナコ
             〜 Goldfish Liverpool Update / minako ueda 〜

  ― 連載第32回 / 「 from past to present 」 ― 

みなさんこんにちは!
いろんな出来事やステキな出会いであふれた2週間でした。が、あまり
にもいろいろなことがありすぎた上に、その場でエキサイトしきって、消
化する前に忘れてしまうという性格なので、本当に困りました!
どこからお伝えするか悩むところですが、撮った写真をたよりに記憶を
たどってみたいと思います。

先週の火曜日に行われた、Site Sight 主催のパラダイス・ストリート・
ピクニック第2弾(編注:第1弾はゴールドフィッシュ第14号をご覧くださ
い。http://scousehouse.net/magazine/goldfish14_photo.htm )。
今回は午後6時にアルバート・ドック近くの Pump House Inn というパ
ブ前で待ち合わせし、そこから秘密の場所に移動するとのこと。冬に
ピクニックということ自体ナゾだった上、夕方から開始というので、どこ
に連れて行かれるのかと思ったら、Liverpool City Centre Fire Station
(消防署)でした。
参加者はホットワインでもてなされ、消防署長さん自らが点火する焚き
火(これも珍しい!)を囲んで、暖をとりました。
消防署の中にも案内され、2階に上がると、スタンバイの消防士たち
のための古いビリヤード台やサッカーゲームがあり、設立当初の1970
年タイムスリップしたようなレトロな雰囲気。
このビルも、再開発のあおりで来年10月に取り壊されるとのことです。

水曜日は、マージー川を渡ったポートサンライトにある、Lady Lever
Art Gallery でパジャマ・パーティー?!
実際のパーティーは日曜日で、しかも7歳以下対象です。さすがに年
齢をごまかしようがないので、せめてプレス向けのフォトセッションだけ
でも、ということで見に行ってきました。
ナショナルミュージアムのスタッフと、小学生の子供たちが、パジャマ
姿で駆ずりまわっていて微笑ましい光景でした。

現在ここでは、Peter Ellis によるオブジェや巨大なソックスの展覧会が
開催されています。
通常は特別展コーナーが設けられるのですが、今回は、エドワード時
代やヴィクトリア時代の絵画、調度品の常設展にまぎれて Peter Ellis
の作品が点在していて、地図を片手にオリエンテーリングのように作
品を探し当てながら鑑賞することができます。
Peter Ellis 展は1月8日まで開催です。

この Lady Lever Art Gallery は National Museums Liverpool
( http://www.liverpoolmuseums.org.uk/ )のひとつです。
元々は、ユニリーバ(編注: Unilever 。世界的な企業です。日本では
おなじみ「日本リーバ」ですね)の前身である Sunlight Soapを築き上
げた Leverhulme 卿の邸宅だったそうです。
ギャラリーの周辺には、かつての従業員の宿舎が立ち並んでいるの
ですが、いわゆる単なる社宅ではなく、本当に可愛らしい家々で、しか
も重要建築物として指定されていて一見の価値ありです。

< Lady Lever Art Gallery インフォメーション>
 Port Sunlight Village, Wirral CH62 5EQ
 Tel: 0151 478 4136
 http://www.liverpoolmuseums.org.uk/ladylever/index.asp


他にもいろいろ展覧会やパフォーマンスなどがあったのですが、今回
は、先々週にお約束していた、Liverpool Music Week についてお伝え
します! ( http://www.liverpoolmusicweek.co.uk )
昨年 T-Rocks という名前で Tea Factory で行なわれたフリー・ミュー
ジック・イベントが、今年は名前を改め、すっかりグレードアップして開
催されました。
8ヶ所の会場で、150組のバンドやミュージシャンによる、9日間にわ
たってのライブ。私が個人的に目をつけたバンドは、ウィガン出身の
VCs 。メンバーそれぞれのキャラが強くてビジュアル的にも面白く、音
はギター、ベース、ドラム、シンセにときどきテルミンまで登場して、ス
ペーシーでひねりのはいったギターポップ。メインアクトに負けない観
客の反応の良さも将来性の高さを示していました。
それと、4日目の The Wombats 。第7号でお伝えした、One Music at
Cavern にも出演していましたが、あれからびっくりするほど上手くなっ
ていました! CDが近々出るらしいので楽しみです。

そしてやはり凄かったのは、言うまでもなく、Liverpool Music Week
Finale …なのですが、その前に…。

話はそれますが、その日はひょんなことから、先にキャバーン・クラブ
に寄ることになりました。Sound of 60's という、マージービートの時代
のミュージシャンによる演奏が聞けるとのこと。
でもそこに着いたらそれらしい音が聞こえてこなかったので、バーのス
タッフに尋ねにいこうとしたら、どっかで見た顔が。
マシュー・ストリート・フェスティバルで会った(というか、ステージまでご
案内させていただきました)Kingsize Taylor さんが飲んでいたので、話
しかけてみました。
毎週日曜日に、60年代にキャバーンで演奏したミュージシャン達が集
まって、ジャムセッションを行なっているそうです。また、キャバーンの
ステージの奥の壁には、60年代当時にキャバーンで演奏したバンドの
名前が書かれているとのことですが、そこには勿論、Kingsize Taylor
さんの名前も確認できます。

ここでは、マージービートやロックンロールのスタンダードナンバー、そ
してスキッフルが演奏されました。
スキッフルについては話ではきいていましたが、実際に洗濯板が楽器
として使われているのを初めて見て少し感動。そしてトリで Kingsize
Taylor さんが登場、貫禄ありました。

そしてその後、Liverpool Music Week をキャッチするため、
Tea Factory に向かい、一杯飲み終わった丁度その頃に、このイベン
トのヘッドライナーである、John Power が登場。
John Power は 80年代末から90年代初頭にかけて、高い評価を受け
ていたにもかかわらず、一枚のアルバムを残して消滅してしまった伝
説のバンド、La's のギタリスト。そしてその後、Cast を結成しボーカル
をとり、ソロ活動も行なっています。

そんなビッグネームがこのフリー・ミュージック・イベントに参加するだ
けでも驚きなのに、ステージが始まってまたビックリしたのが、La's の
ボーカリスト Lee Mavers がドラマーとして登場! 
Lee Mavers は La's を去り、公式の場から一切身を隠してしまい、バ
ンド存続に危機をもたらしましたが、そんな彼が再び姿を表し、10年以
上たった今年の夏に奇跡とも思える La's の復活が果たされ、夢の来
日公演が行なわれて話題になりました。
シークレット・ゲストがいるはきいてましたが、まさかこんな秘密兵器を
用意していたとは!
(ベーシストがかがんだ隙に撮った写真に Lee が奥の方に写ってます)

入場制限にあうほど会場は超満員。こんなに熱気にあふれてしかも至
福な日曜の夜はなかった気がします。そして、60年代から2005年まで
のマージーサウンドという音のトンネルを体験としてくぐり抜けたような
一日でした。

今回のミュージック・ウィークでは、John Power, Ian McNabb,
The Kooks などの名の知れたアクトから( The Stands は解散してし
まったため残念ながらキャンセル)、インディ・バンド、アコースティック、
エレクトロニカ、レゲエ、ヒップホップ、ジャズ、ワールドミュージックなど
幅広く、しかもほとんどが、リヴァプールを拠点として活動するバンドで
構成されていることから、今のリヴァプールの音楽シーンの多様性を
表しています。
ローカルエリアに留まらずに、今度はイギリス国内や海外で(もちろん
日本でも!)リヴァプールのバンドに触れることのできるイベントが展
開されたらいいと思います。

またこの時期に、ジェネレーションもバックグランドも全く異なる3組の
日本人の方々とお会いする機会がありました。興味深いのは、この時
期に共通して、リヴァプールのバンドの足跡をたどるというテーマと、
並ならない情熱をもって渡英し、しかもほぼ同時期にこの場所に集
まったことです。皆さん素敵な方々でした。

改めてこの街が、本気で何かを求める人達を絶妙なタイミングで呼び
寄せてしまう不思議な磁力のある場所であることを再確認しました。本
当なんですよ。

それではまた来週! 

ウエダミナコ


(この連載に関連する写真は、ウェブサイトの「NLW ゴールドフィッシュ
だより」ページに掲載しています。
http://scousehouse.net/magazine/goldfish32_photo.htm )


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▽「利物浦日記(2005年夏)」8
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「利物浦日記(2005年夏)」 / Kaz

第8話 <フェスティヴァル・デイ>

コンヴェンションの翌日は、“音楽の祭典”「マシュー・ストリート・フェス
ティヴァル(以下MSF)」の日だ。
正確に言うとMSFは土・日・月と3日間にわたって開催されるのだが、
当然ながら、このバンク・ホリデイの月曜日に行われる最終日がメイン
の日だ。

この日のリヴァプールは、まさにお祭りムード一色となる。
およそ20ヶ国から、200を超える数のバンドが、このフェスティヴァル
のためにやって来る。
演奏会場は、6つの野外ステージと、市内のパブやクラブ数十箇所。
移動遊園地もあちこちににセットされ、にぎやかなことこの上ない。

朝から晩まで、どこへ行っても人、人、人。およそ30万人の人々が、
シティ・センターの広い広いイヴェント・エリアにひしめき合う。おいじい
ちゃんおばあちゃんからヨチヨチ歩きの幼児まで、ジェネレーションの
幅は驚くほど広い。
もちろん観光でやって来る人は数万人はいるだろう。しかしそれ以外
の20数万人は、地元や周辺の街からやって来る人たちだ。

夏休み最後の休日。数日後には新学期が始まる。大人も子供も、去
りゆく夏を惜しむかのように、一日中、家族や友人たちとゆっくり街を
練り歩き、ライヴ・ミュージックや移動遊園地やひなたぼっこを楽しむ
のだ。
つまりMSFは、地元の人々が毎年心待ちにしているフェスティヴァルな
のだ。だからこそ、これだけ盛り上がるのだろう。


さて、今年の8月29日。
午前中はしとしとと雨が降り続き、「ぶらぶらウォーク・ツアー」では少し
難儀した。
しかし午後になると、リヴァプールの空は一転して目の覚めるような快
晴となった。「MSFでは雨は降らない」というジンクスは今年もしっかり
健在で、あらためて感心してしまった。僕は雨は嫌いではないけれど、
やはりこの日だけは晴れてほしい。

スカウスハウス・ツアーのお客さん5人と、まずマシュー・ストリートを歩
く。
今年もぎっしりと人が集まっているが、例年ほどの密度ではない。まあ
まあスムーズに流れている。そういえば昨日、一昨日は、もっとぎゅう
ぎゅうしていて、我々は通り抜けるのをあきらめたほどだ。MSFの楽し
み方も、分散型になりつつあるのかもしれない。

キャヴァーンクラブをはじめ、キャヴァーン・パブ、フラナガンズ・アップ
ル、ラバーソウル、フレアーズなどはアツいライヴの真っ最中で、それ
ぞれの入り口には、入場制限で順番を待つ人々の長い列が出来てい
た。
そういうサウナ状態のライヴは体に悪いので(まず体力が要るし、外に
出るとすぐに湯冷めしてしまう!)、我々はパスすることにしてピア・
ヘッドに向かった。

今年の野外ステージは、ピア・ヘッドを中心にセッティングされていた。
ライヴァー・ビルディングの前に巨大なメイン・ステージ。そしてその真
向かい(といっても数百メートル離れているが)にもうひとつ。そこから
ジェームズ・ストリートを上がったところにあるダービー・スクエアにひと
つ。さらに、ライヴァー・ビルディングの裏手にひとつ。そこからウォー
ター・ストリートを上がったところにひとつ。そして今年初めての試みで、
マージー河の向こう岸、バーケンヘッドにひとつ。

それぞれのステージがとても近く、どの会場にもイージーにアクセスで
きる。無料で配られるプログラムを吟味して、聴きたいバンドや音楽を
選んで気軽に「ライヴはしご」をすることができる。
途中疲れたら、パブやカフェでひと休みしてもいいし、子供連れなら移
動遊園地は素通りできないだろう。
そうそう、エリア内はすべて歩行者天国で、のんびりと自分たちのペー
スでお祭りを楽しむことができる。

メイン・ステージの Maximum Who(素晴らしい演奏だった)を観た後で、
次のパフォーマー Jean Genie(デイヴィッド・ボウイのコピーバンドだ)
の演奏を聴きながら、フェリーに乗ってバーケンヘッドに向かう。
驚いたことに、フェリーの中でもライヴ演奏があった。行きはオランダ
の2人組トゥ・オブ・アス、帰りは甲板に座っていたので確かではない
けれど、ロウレンス・ギルモアさん。
わずか10分ほどの時間、しかも移動中の乗客のためにエンターテイ
メントを用意するなんて、粋だなあ、お祭りらしいなあと感心してしまっ
た。

バーケンヘッドのステージでは、ローリング・ストーンズのコピーバンド
Rocks Off が熱演中だった。
僕はこのバンドが大好きだ。スウェーデンのバンドなのだが、毎年やっ
て来てはこの数日間、次から次へとほとんど休む間もなしに演奏して
帰って行く。あのワイルドなパフォーマンスをキープするのは並大抵の
ことではないはずだけど、いつも手抜きなしの全力投球のステージを
見せてくれる。メンバー全員、実に謙虚で律儀な性格なのだ。もちろん
演奏のクォリティは文句なしにエクセレントで、当然固定ファンも多い。

次に登場したのは、Bryan Adams Experience だった。僕はブライア
ン・アダムスはあんまり知らないけれど、びっくりするほどそっくりだと
思った。ホンモノだよと言われても信じてしまいそうなくらいだ。

他にも魅力的なバンドのステージはたくさんあったけれど、我々がちゃ
んと観たのは、結局この3組のステージだけだった。でもそれでじゅう
ぶんという気はする。クォリティの高いグッド・ミュージックを堪能しただ
けでなく、何万人もの人々の笑顔を見ることができた。まさに絵に描い
たような「フェスティヴァル・デイ」だ。
それにフェスティヴァルはまだ続いている。夜には世界最強のビートル
ズ・バンド、Fab Faux のコンサートが待っているのだ。

毎年しみじみと感じるんだけど、つくづく、音楽って素晴らしい。
何年か前のタワー・レコードのキャッチ・コピーに、こんなのがあった。
“No Music, No Life ”
まさにその通りだと思う。音楽のない人生なんて、ちょっと考えられな
い。
自分にとって、音楽は切実で大切なものなのだ。これまでもそうだった
し、これからもずっとそうだ。
そういうことをさりげなく、MSFは僕に思い知らせてくれる。

今年も、マシュー・ストリート・フェスティヴァルはハッピーでピースフル
なアトモスフィアでいっぱいだった。
この街と、この街の人々と、そしてグッド・ミュージックによって奏でられ
るハーモニー。
このフェスティヴァルが終わると同時に、リヴァプールは秋の訪れを迎
える。

(利物浦日記8・おわり)


(この原稿に関連する写真は、ウェブサイトの「NLW フォト・アルバム」
ページに掲載しています。
http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo228.htm )


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▼スカウスハウス・ニュース
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*** フットボール・チケット手配 ******

「スカウス・ハウス」では、リヴァプールFCおよびエヴァトンFCの、ホー
ムゲーム観戦チケットの手配を承っています。詳細は、ウェブサイトの
「スタジアムへ行こう!」ページをご覧ください。
http://scousehouse.net/football/stadium.htm


*** 語学留学生募集中 ******

「スカウス・ハウス」では、リヴァプールへの語学留学をサポートしてい
ます。
最短で1週間の短期留学から長期留学、夏期休暇コース、さらには最
近人気のホームステイ留学など、幅広く対応しています。
詳細については、ウェブサイトの「語学留学案内」ページをご覧くださ
い。
http://scousehouse.net/study/index.htm


*** ビートルズ・ガイドツアー ******

「スカウス・ハウス」では、リヴァプール&ロンドンのビートルズゆかりの
地を訪ねるガイドツアーをアレンジします。
ガイドはもちろん現地在住の日本人。レギュラー・ツアーのほか、
ちょっとマニアックなツアーも用意しています。また、ご希望により、プ
ライヴェート・ツアーのアレンジも承ります。
ツアーの詳細は、ウェブサイトの「ガイドツアー」ページをご覧ください。
http://scousehouse.net/beatles/info.htm


*** 原稿募集中 ******

「リヴァプール・ニュース」では、読者のみなさんからの投稿を募集して
います。
旅行記、レポート、研究、エッセイ、写真などなど、リヴァプール、ある
いは英国に関するものなら何でも歓迎です。
お気軽にお寄せください。楽しい作品をお待ちしています。


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▽今週のフォト
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*** 今週の「ゴールドフィッシュ」フォト ******

今週も、ミナコさんから素敵な写真が届いています。
ウェブサイトの「NLW ゴールドフィッシュだより」ページをご覧ください。
http://scousehouse.net/magazine/goldfish32_photo.htm


*** 今週のフォト・アルバム ******

「ゴールドフィッシュ」以外の原稿にちなんだ写真は、「NLW フォト・アル
バム」ページをご覧ください。
http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo228.htm 


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□■ 第228号 ■□

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