January 31 2006, No.236
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     リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World   
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NLW ■
         *** http://scousehouse.net/ ***        


□■ INDEX ■□

 ▽フロム・エディター
 ▼リヴァプール・ニュース <2006年1月25日〜1月28日>
 ▽特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
 ▼「利物浦日記(2005年夏)」
 ▽スカウスハウス・ニュース
 ▼今週のフォト


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▽フロム・エディター
―――――――――――――――――――――――――─ NLW □

いやあもう、ほんとびっくりしましたね、ロビー・ファウラーのリヴァプー
ル復帰。無っ茶苦茶嬉しいです。
フリー・トランスファーっていうのには何となく引っ掛かりを覚えてしまい
ますが(な〜んでタダなの?)、まあいいでしょう。あのロビーの嬉しそ
うな顔を見たら、もう何だっていいやって気持ちになってしまいます。
「毎日がクリスマスの朝に目覚める子供の気分」なんてロビーもコメン
トしてましたけど、あんなに幸せそうなフットボール選手の顔って、見た
ことないような気がします。そう思いませんか? ほんとに、ほんとにヨ
カッタ。
4年ぶりの帰還。再びアンフィールドに立つ「ゴッド」の姿を観に行きた
いなあ、どうしようかなあと、ついつい考えてしまうこの数日間です。

さて、久しぶりに「利物浦日記」の続きを書きました。
えーと、正確に言うと8週間ぶりです。こんなにブランクが空くと、もは
や「連載」とは言えないかも知れませんね、どうもお待たせしました(誰
も待ってなかったりして…??)。

この連載は「インターナショナル・ビートル・ウィーク」のお話なのです
が、今回はビートルズの話も、フェスティヴァルの話も出てきません。
マイケル・オーウェンの話です。ちょっと長いですが、よかったら読ん
でみてください。

                           ― Kaz (31/01/2006)


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▼リヴァプール・ニュース <2006年1月25日〜1月28日>
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*** 1月25日(水) *******************************

【プレミアシップ 05−06】
イングランド・プレミアリーグの結果です。

21日にアーセナルをホームに迎えたエヴァトンは、1−0で勝ちまし
た。
ゴール・スコアラーは、ジェイムズ・ビーティー(13分)でした。

試合後のデイヴィッド・モイーズ監督の話です。
「トップ・パフォーマンスだったね。まだまだ続いてる。他より早く試合を
始めて、勝つことができた。この結果は大きいよ」
「いつもこんなプレイをしようとやってきたんだよ。でもいい時のアーセ
ナルならこんなにうまくは行かなかっただろうがね」
「しかし今日の我々は自分たちのゲームができた。ほとんど彼らに
チャンスらしいチャンスを与えなかったね」
「今日は選手全員が素晴らしかったと思う。ベンチにいる者も含めて
ね。アーセナルには全員で立ち向かって行かないといけない。彼らは
チャンピオン・チームだからね」
「で、今日の我々はそれができたというわけだ。選手たちはみんな
持ってるものをすべて出し尽くしてくれた」
「後は自信だね。それが大きい。ここのところずっといい調子が続いて
いるからね。勝ちが続いている時ってのは、監督の仕事はものすごく
楽なんだよ。負けが続いている時よりもずっとね」
「今日は楽しいサタディ・ナイトになりそうだよ」

リヴァプールは22日、マンチェスター・ユナイテッドとアウェイで対戦し、
後半ロスタイムの失点により、1−0で敗れました。

「ライヴァルチームを相手にラスト・ミニットでゴールを許したら、しかも
それが2位に上がれるチャンスをフイにするものだったら、誰だって
がっくりくるだろう」
「我々はゲームをコントロールしていた。実にうまくボールをキープし、
カウンターアタックもうまく行っていた。しかし最後の最後でフリーキッ
クから点を取られるとはね。非常に残念だよ。ほんの小さなことが明
暗を分ける。よくあることだがね」
「試合を決めるチャンスはいくつもあった。シセにはフリーでゴール前
の決定的なチャンスがあったし。自分たちが作り出したチャンスは確
実に決めないとね」
「だが今の我々に必要なのは、次のゲームに集中することだ。リーグ
の順位表には興味はない。私の興味は、自分のチームと、自分たち
がどうやって成長して行くかということだけだよ」

23日現在のリーグ順位は、リヴァプールが44ポイントで3位、エヴァ
トンが29ポイントで12位です。


*** 1月28日(土) *******************************

【ゴッド・イズ・バック!】
1月27日、ロビー・ファウラーのリヴァプール復帰が電撃的に発表さ
れました。
マンチェスター・シティからのフリー・トランスファーで、契約は今季終了
まで。来季へのオプションもついています。
ロビーは現在30歳。1993年のデビュー以来、330試合で171の
ゴールを挙げたリヴァプールでは、サポーターからは “God” の愛称
で呼ばれる圧倒的な人気プレイヤーでした。しかし2001年11月に
電撃的にリーズへ放出され、翌シーズンからはマンチェスター・シティ
でプレイしていました。

4年ぶりの復帰を果たしたロビーのファースト・インタヴューが、LFCオ
フィシャル・サイトに掲載されました。

― おかえり、ロビー。

「サンキュー」

― 今の気持ちを一言で表現できる?

「う〜ん…正直に答えるとノーかな。だってまだ実感がね。でもこのア
ンフィールドに戻って来れたのはグレイトな気分だったよ。オフィスに
入ってペンを持って紙にサインしてって…そうなったらいいなって僕が
ずっと思ってたことが現実になるなんてね」

― 再びここのドアを通り抜けて階段を上がって…戻って来れて最高
  の気分?

「まったくそう。すっごくハッピーだよ、コワイくらいに! ゾクゾクしてる
し…それしか言いようがないね」

― リーズへの移籍が決まって行ってしまう時の、車の中で君がものす
  ごく悲しそうな顔をしてる写真を思い出すけれども、あの時またリ
  ヴァプールでプレイするチャンスがあるって思ってた?

「たぶんノーかな、正直に言って。でもここを出てからすごく落ち込んだ
し、いつも戻りたいと思ってた。ちょっと長いことかかったけど、『ただ
いま』って言えるのがほんと嬉しい」

― 君は本の中で、アンフィールドでやり残した仕事があるから復帰し
  たいって書いてたよね。君はファンにさよならを言う機会もないまま
  行かなければならなかったけれども、今は帰って来てファンにハ
  ローって言おうとしている…。

「そうそう、あれはいちばんの後悔かもね、僕のフットボール人生で。
事実を言っておくと、移籍が決まったのはサンダーランドとの試合中
だったんだ。ハーフタイムに荷物をまとめてね。だからきちんとさよな
らを言うチャンスなんてまったくなかった。赤いユニフォームでアン
フィールドに戻って来るのはいい気分だろうね。あのトンネルをくぐっ
て出て行って…アメイジングだろうな」

― そろそろ電話のベルは鳴り止んだかな?

「いや、ずっとスイッチ切ってるよ! たぶん100個くらいメッセージが
入ってるんじゃないかな、少なくてもね!」

― マンチェスター・シティやリーズでも楽しんでプレイしてたと思うけど、
  リヴァプールへの愛情は失ってなかったんだよね?

「最愛のクラブだからね、ずっと。小さい頃応援してたのはもういっこ
の方だけど、11歳でリヴァプールに入ってからは、このクラブに係
わってるみんなとずっと一緒にやって来たんだから。また赤いユニ
フォームを着れるなんてアメイジングな気持ちだよ。こんなチャンスを
もらえるなんてホントに嬉しい」

― この移籍は、いきなり話が持ち上がってあっという間に決まったみ
  たいな感じだったね。スチュアート・ピアース(マンチェスター・シティ
  監督)がすごく協力的だったってことなのかな?

「その通り。すごく、すごくいい人でね。リヴァプールが僕にちょっと興
味を示してくれてるって聞いて、ぜひとも実現させたいって思った。ス
チュアート・ピアースはすごくよくしてくれたよ。僕の気持ちをよく理解し
てくれて、リヴァプールへ戻れる手助けをしてくれたんだ」

― リック・パリーとラファエル・ベニテスが君を呼び戻そうと尽力したわ
  けだけど、どうかな、ラファ・ベニテスの新生リヴァプールでプレイ
  するのは。楽しみなんじゃない?

「そうだね、今まで彼の元でプレイしたことはないけど、この1年の成
績はファンタスティックだよね。直接はまだ何も聞いてないけど、選手
やサポーターも含めて、クラブの関係者からはいいことばかり聞いて
るよ。ワクワクするな」

― ラファは、君の持ってるクラブへの愛情とかリヴァプールへのパッ
  ションが、今の他のプレイヤーたちの士気を高めてくれるだろうっ
  て言ってたよね。自分ではそうなると思う?

「うーん、そうなるといいけどね。さっきも言ったように、ここは僕の最
愛のクラブで、だからどんな形でも役に立ったり、他のプレイヤーにい
い影響を与えられるなら、そりゃあグレイトだと思う」

― いちばん早くて水曜日のバーミンガム戦でデビュー、もしくはベンチ
  入りの可能性があるわけだけども、自分ではどう思う?

「いやあ、先のことはわからないよ。僕が決めることじゃないしね。でも
そうなったらいいね」

― KOPの前で、再びリヴァプールのプレイヤーとして走って出て行く
  のって、どんな気持ちになるだろうね?
「いやほんと、考えただけでビリビリくるなあ。正直言って、今でもまだ
ちょっと信じられないって感じもあるんだから。ほんと夢みたいだ」


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▽特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
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「ゴールドフィッシュだより」 / ウエダミナコ
             〜 Goldfish Liverpool Update / minako ueda 〜

  ― 連載第38回  「 Out of the Pool 〜 北西イングランドの旅」 ― 

恭喜發財(コンヘイファッチョイ)!
この日曜日は旧正月でした。
チャイナタウンでのチャイニーズ・ニューイヤーの盛り上がりは年々大
きくなっているようですね。この週末はマンチェスターで過ごしたのです
が、そこでもドラゴンダンスを見物する市民や観光客でごった返してい
ました。
おそらくリヴァプールも凄かったことと思います。

というわけで突然ミニ・リヴァプール語講座!
「チョッカ」=満員、すし詰め


さて今週は、マージーサイドから飛びだして、ビートルズの "A Day In
The Life" の中で「4000個の穴がある!?」と歌われた、ランカシャー
はブラックバーンに行ってきました。
リヴァプール・ライムストリート駅からプレストン乗り換えで約一時間半
のところにあります。

ブラックバーンでは、火曜日から "Parallel Realities - Asian Art Now"
という展覧会が開催されています。これは昨年、アジア21か国、50名
のアーティストが参加した「福岡アジア美術トリエンナーレ」の巡回展
で、欧米では初の開催です。ブラックバーン&ダーウェン市の共同文
化事業である "C21" の一環として招聘されたとのことです。

リヴァプール代表として、「アート・イン・リヴァプール」のイアン・ジャク
ソン氏と一緒に、気合いを入れて午前10時半に到着したものの、オー
プニング・セレモニーは午後5時半からと知らされて、一日どうしよう! 
と一瞬不安になりましたが、市内10ヶ所に点在する作品をゆっくり鑑
賞したり、ビジターセンターの雰囲気のいいカフェ Rhubarb でのんびり
とランチをしたり、ひょんなことから、滞在して制作活動をしている日本
人アーティスト、山口啓介さんのお手伝いさせてもらったりして、思い
掛けなく非日常から離れた楽しい日帰り旅行となりました。

山口さんは2作品、木版による『DU チャイルド』と生花と樹脂の入った
カセットケース「カセットプラント」で作る『ミュージアム・ガーデン』という
オブジェを出展していました。
『ミュージアム・ガーデン』は、Waterloo Pavillions という会場のガラス
張りの壁をカセットプラントで埋めつくすというものです。
この作品は、ノアの箱舟の植物版、そして映画『ジュラシック・パーク』
で琥珀に封印された蚊からアイデアを得て作られたもの。石造りでガ
ラス張りの建物に小さな庭を持ち込むことで、無機質な空間がオーガ
ニックに変化していくのを感じてもらい、また人々を閉塞感から解放で
きれば、という思いが込められています。
制作は月曜日からスタートし、これから一ヶ月間かけて完成させるとの
ことです。その間プロセスが見れるのがおもしろいですし、また完成品
を見るのが楽しみです。


メインの会場となったブラックバーンの美術館ですが、驚いたことに、
日本の浮世絵や着物などが数多く展示されています。
「なぜブラックバーンに?」ときいてみたところ、ブラックバーンはかつ
てより綿業が盛んで、日本の浮世絵に描かれた着物の柄などに深い
関心をもったことから、コレクションが始まったとのことでした。
夕方のオープニング・セレモニーには、福岡アジア美術館の顧問、安
永幸一氏も出席され、今回の展覧会もブラックバーンからの熱心な呼
びかけにより実現したとおっしゃっていました。

アジアとひとくちにいっても、東は日本から西はインドやパキスタンま
で広範囲で、作品のカラーも多岐にわたります。
Blackburn Museum & Art Gallery に入ってまず目に止まるのが、タイ
人アーティスト、タウィーサック・シートンディーの "Hero" 。
そして、思わず20分程しゃがんで見入ってしまった韓国人アーティスト、
ハム・ジンの作品 "Encounter" 。一見単なる白い部屋に虫メガネが
ひとつ置いてあるだけで、まだ準備中なのかなあ、と思って退散しよう
としたら、なんと壁の下部をぐるっと囲うように展示された極小のミニ
チュアの数々。今にも動きだしそうです。

そして、会場を移して、Old Halifax Building で展示されていた、中国広
州出身のツァオ・フェイの "Public Space; Give Me a Kiss" 、Fat Boy
Slim の "Praise You" を彷佛させるようなちょっと宗教的なほどにハッ
ピーなおじさんのダンスがツボにはまってしまいました。ホームページ
でも見れます。http://www.caofei.com/caofei/videos.htm  

パキスタンのアーティスト、ラシッド・アーラ作品、"Identical Views" は、
遠目に見ると、群集が上を眺めているシーンを部屋の角を境に左右
対称に置いた写真のようですが、近づいて見ると、色の異なる映画の
フィルムが、気が遠くなるほど細かくモザイク状に敷き詰められてでき
ています。

他にもいい作品が沢山展示されています。詳しくは、C21の情報サイ
ト、 http://www.c21.tv/(英語のみ)と福岡アジア美術トリエンナーレの
公式サイト、http://faam.city.fukuoka.jp/ をご覧下さい。

2008年の Capital of Culture の年あたりに、リヴァプールにも巡回し
てほしいですね。
「福岡=日本のリヴァプール」的なつながりもありますし。。。(こじつけ
が苦しい?!)
この展覧会は、4月9日まで。山口啓介さんの滞在制作は2月の半ば
まで続きます。

 < Blackburn Museum and Art Gallery >
  Museum Street, Blackburn BB1 7AJ
  電話: 01254 667130
  開館時間: 火曜日〜土曜日 午前10時〜午後4時45分
                (会場によって時間が異なりますので注意)


話はリヴァプールに戻って、水曜日に、 3345にて新しい隔月発行のフ
リーマガジン、"Just Liverpool" の創刊パーティーがありました。
4月からはウェブ上( http://justliverpool.co.uk/ )でも見れるようにな
るそうです。パーティーでは、創刊号にも特集されているリヴァプール
のバンド The Strawl が演奏しました。

30日の月曜日にはリヴァプールで超目玉イベントがあります。今は秘
密ですが、来週号で。

それではまた! 

ウエダミナコ
( Special thanks to Atsuko-san!! )


(この連載に関連する写真は、ウェブサイトの「NLW ゴールドフィッシュ
だより」ページに掲載しています。
http://scousehouse.net/magazine/goldfish38_photo.htm )


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▼「利物浦日記(2005年夏)」9
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「利物浦日記(2005年夏)」 / Kaz

第9話 <マイケル!?>

8月30日、火曜日。ビートル・ウィークの最終日。
最終日とはいっても、大きなイヴェントは昨日までにすべて終了してい
る。観光客のほとんどは、最終日のイヴェントをパスして、この日の朝
リヴァプールを後にする。
「マシュー・ストリート・フェスティヴァル」という大きな祭りが終わり、夏
の3連休が終わったこの日のリヴァプールは、あっけないほどに普通
モードだ。

スカウスハウス・ツアーのお客さんたちを駅で見送った後、宿で洗濯を
済ませて街に出た。
空模様も、僕の気分もからりと爽快。嵐のような数日間を経た後では、
この普通モードがやけに新鮮だ。ツアーの仕事を無事に終えた安堵
感も心地いい。

そんな気分でクレイトン・スクエアを通りかかり、ビッグ・スクリーンに目
をやると、マイケル・オーウェンが大写しになっていた。
(お、ついに決まったか、マイケルのカムバック!)

てっきり、レッズ復帰が決まったと思ったのだ。プレミア復帰を望むマ
イケルに一番最初にオファーを出したのはニューカッスルだったが、
レッズもぎりぎりのところでよいしょっと腰を挙げた。マイケルの第一希
望はレッズだと本人はいつも言っているし、チームメイトも、多くのファ
ンもそれを望んでいる。よほどレッズがヘマをしない限り、すんなりと
復帰が決まるはずだ。

しかし、あに図らんや、画面のBBCニュースが伝えているチームはリ
ヴァプールではなく、ニューカッスルだった。

「うっそぉーーーっ!?」
思わず大声で叫んでしまった。
階段を駆け下りながら、「!」マークや「?」マークが頭の中をぐるぐる
と旋回するのを感じた。
(!!マイケル・オーウェンがニューカッスル??)

マイケルは、昨シーズンの開幕直後にレアル・マドリーへ移籍した。
ジリ貧ぎみのチーム状態、監督の交代、プレイヤーとしての焦りと危
機感、そこへ世界一の面子を揃えることに執念を燃やすチームからの
オファー…。これだけの条件が揃えば、移籍は必然だと僕は思った。
そしてスペインに行ったマイケルは、慣れない環境と不安定な起用に
耐えながら、13のゴールを挙げた。13というと少ないように感じるか
もしれないが、先発した試合数はたったの10。さすがマイケルとしか
言いようがない立派な成績じゃあないか。

しかし、プレミアに戻って来るマイケルが着るユニフォームは、赤では
なくて白黒なのだ。
ゼブラ模様のマイケル・オーウェン…なんだか取り返しのつかないこと
が起きているような気がした。
レッズは本気でマイケルを獲得しようとしたんだろうか。どうしてもそう
は思えない。1年前のことを根に持って貧弱な契約内容しか提示しな
かったのではないか。当初の言葉どおり、ストライカーの補強は二の
次だったのかもしれないが…しかしちょっと待て、マイケルは「ストライ
カー」じゃないぞ、「マイケル・オーウェン」だぞ…。


そんなことをぐちゃぐちゃ考えながら歩を進め、ウィリアムソン・スクエ
アにさしかかったところで、奇妙な光景に出くわした。
昼間はよく子供たちの遊び場になっている噴水のアーチ。そこで海坊
主のような大男が、じっと下を向いて噴水に打たれているのだ。上半
身裸、下は半ズボン、頭は丸坊主。僕にはまるで僧侶が滝に打たれ
て修行しているように見えた。もちろんここは日本の山奥ではなくてリ
ヴァプールの街中だし、滝ではなくて可愛らしい噴水の水なんだけど、
その周りには問答無用の厳しさが漂っていたのだ。

(もしかしてこのおじさん、マイケルのことを…)
古巣の冷たい対応をマイケルに詫びているのかもしれない。同時に、
愛するチームの不甲斐なさ、情けなさに対する憤怒を静めようとして
いるのかもしれない。そういう気がしたのだ。

(いや、いくらなんでも…。ただの健康法か何かかも)
と一旦はその考えを否定しようとしてみたのだが、おじさんの手首を見
て、やっぱりこれは「マイケル勤行」なんだと確信した。そこには、リ
ヴァプールのチャンピオンズ・リーグ優勝記念のリストバンドがしっかり
と巻かれていたのだ。


海坊主修行僧の迫力に圧倒されながらウィリアムソン・スクエアの前
の道を下り、突き当りの角を左に折れ、ホワイトチャペルに入った。
実は僕は先を急いでいた。目的地はバークレーズ・バンク。早いとこ
小切手を換金しないといけないのだ。

しかし 08 Place の前あたりで、いかにも一癖ありそうなおやじさんが、
険しい目で僕を凝視しながらこっちに歩いて来るのに気づいた。やば
いなーと思っていたら案の定、僕の正面で立ち止まって、ひと言。

「ユー・レッド?」

(き、きたあ〜)
うろたえる僕。もしかしてこのおやじさんはエヴァトニアンで、レッズの
スエットシャツを着ている僕を見つけて厭味を言おうとしているのかも
しれない。僕はエヴァトンも好きだし、エヴァトン・ファンの知り合いも何
人かいるし、だからいつもはできるだけレッズのシャツを着てリヴァ
プールの街は歩かないようにしてるんだけど、今日は洗濯したせいで
これしかなくて、パジャマにしてるのを仕方なく着てるわけで、でもエ
ヴァトニアンを刺激しないようにと思って、上にベストを重ねてレッズの
エンブレムが見えないようにしてるんだけどな、なんでこのおじさんは
レッズのスエットだってわかったんだろう…??

「え? えっと…」
「お前は赤かと聞いてるんだよ」
「え、ええまあそうです。でも…」
「おい、マイケル・オーウェンがニューカッスルだってよ」
「…? あ、ああ、そうですね、はい、さっき見ました」
「ノー…テリブルだよな」
「いやもうほんとに! もうトゥー・バッドですよね」
「やれやれだよな、まったくもう…」
「ねえ〜」

やれやれ、このおやじさんもレッドだったんだ。
ほっとしながらも、見ず知らずの人間と路上で分かち合わずにいられ
ないほどやりきれない気持ちなんだろうなあと、ちょっと健気に思えた。


やっと銀行に着いた。
キューの最後に並んで、順番を待つ。エントランス・ホールにはTVが
置かれていて、ここでもマイケルのニュースが続いている。何を言って
いるのかほとんどわからないが、画面を見てぼんやりマイケルのこと
を考えながら順番を待つ。

あとひとりで僕の番というところで、ふと我に返った。今僕が並んでい
る銀行は…HSBCだ。僕が手に持っている小切手は…バークレーズ。
やれやれ、名前も看板の色もぜーんぜん違う銀行じゃあないか。うっ
かりするにも程がある…。

もしかしてマイケル、君もそうなんじゃないのか? 君も、うっかり行き
先を間違えただけなんじゃないのか??

(利物浦日記9・おわり)


(この原稿に関連する写真は、ウェブサイトの「NLW フォト・アルバム」
ページに掲載しています。
http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo236.htm )


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▽スカウスハウス・ニュース
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「リヴァプール・ニュース」では、読者のみなさんからの投稿を募集して
います。
旅行記、レポート、研究、エッセイ、写真などなど、リヴァプール、ある
いは英国に関するものなら何でも歓迎です。
お気軽にお寄せください。楽しい作品をお待ちしています。


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▼今週のフォト
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*** 今週の「ゴールドフィッシュ」フォト ******

今週も、ミナコさんから素敵な写真が届いています。
ウェブサイトの「NLW ゴールドフィッシュだより」ページをご覧ください。
http://scousehouse.net/magazine/goldfish38_photo.htm


*** 今週のフォト・アルバム ******

「ゴールドフィッシュ」以外の原稿にちなんだ写真は、「NLW フォト・ア
ルバム」ページをご覧ください。
http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo236.htm 


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□■ 第236号 ■□

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