April 18 2006, No.247
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     リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World   
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NLW ■
         *** http://scousehouse.net/ ***        


□■ INDEX ■□

 ▽フロム・エディター
 ▼リヴァプール・ニュース <2006年4月12日〜4月14日>
 ▽寄稿:「 Piki と Pikita のリヴァプール旅行記」
 ▼寄稿:「 Football の旅」
 ▽スカウスハウス・ニュース
 ▼今週のフォト


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▽フロム・エディター
―――――――――――――――――――――――――─ NLW □

今週から数週間、ミナコさんの「ゴールドフィッシュだより」はお休みで
す。
ミナコさんは今、さいたまの実家に滞在しているのですが、相変わらず
の「ミナコさんぶり」で、毎日超多忙な日々を送っているようです。
もうじっとしてることができない性分なんでしょうね、ほんとに元気です。

さて、ミナコさんの代わり、というわけではないのですが、同じくリヴァ
プール在住の下村えりさんからの寄稿をいただきました。
「 Footballの旅」の続編をお届けします。

久しぶりの「 Footballの旅」、今回は、グッディソンで行われたエヴァト
ン対スパーズ戦のレヴューです。
今季好調のスパーズには、元リヴァプールのダニー・マーフィー選手が
いるので、個人的にも気になる試合でした。
えりさんならではのアカデミックな分析つきのマッチ・レポートと、素晴ら
しい写真をお楽しみください!

この連載、これからも長く続けて行きたいなあと思っています。
えりさん、来シーズンもその次のシーズンも、そのまた次のシーズンも、
よろしくお願いしますね!
あ、それからビア・フェスティヴァルの連載の方もよろしくです!

                           ― Kaz (18/04/2006)


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▼リヴァプール・ニュース <2006年4月12日〜4月14日>
―――――――――――――――――――――――――─ NLW □

*** 4月12日(水) *******************************

【プレミアシップ 05−06】
イングランド・プレミアリーグの結果です。

9日、リヴァプールはボルトンをホームに迎え、1−0で勝ちました。
ゴール・スコアラーは、この日31歳の誕生日を迎えたロビー・ファウ
ラー(45分)でした。

ファウラーのゴールで6連勝を飾ったリヴァプールは、これでポイントを
70としました。
70ポイントに達したのは、過去10シーズンで2度目となり、ホームで
挙げたポイント数は過去6シーズンで最高です。
また、相手をクリーンシート(完封)に抑えた試合はこれで32試合目
で、クラブ史上4番目の記録となります。

来季の契約更新を熱望しながらいいプレイを続けるファウラーについ
て、ラファエル・ベニテス監督は試合後にこう話しています。
「ロビーにとってはいいバースディ・ゴールになったね。彼の契約につい
ても、早く答えを出してあげたいと思っている」
「今私が言えることは、私は彼がいいプレイをしたり、ゴールを決める
のをもっと見たいということだ。それはみんなが喜ぶことでもあるから」

ボルトンのサム・アラーダイス監督は、ファウラーについてこう話してい
ます。
「この調子で点を取り続けたら、彼ら(リヴァプール)が手放すはずはな
いよ」
「あのゴールはまさに彼そのものだ。なぜ彼がこれまでにあれほど多く
のゴールを決めてきたかを思い知らせるゴールだよ」
「彼はあのシュートをミスヒットした。しかしちゃんとゴールの枠をとらえ
ていたから、点になったんだ」
「あれはしっかり狙ってのことだ。ヒットしてもしなくても、ボールは枠内
に飛ぶ。我々にも前半に絶好のチャンスが2,3あったが、どれも枠を
外れていた」
「我々は彼を何とかしないといけなかったね。彼は時間やスペースを生
かしてああいったゴールを決めてしまう。前半はウチのペースだったは
ずなのに、ハーフタイム前には0−1で御の字という感じだった」
「あのゴールが命取りになったね。あれでウチの選手たちはがっくり来
てしまった。それでもハードに戦ってくれたが、後半立て直すことは出
来なかった」
「前半決めるところで決められなかったツケは大きかったということだ。
ヨーロッパ・レヴェルを目指すなら、トップ・ギアの時にきっちり点を取っ
ておかなければいけない。そうすれば、リヴァプールのような強豪が反
撃して来ても、気圧されずに戦い通せるはずだ」

8日にアウェイでチャールトンと対戦したエヴァトンは、0−0で引き分
けて1ポイントを獲得しています。


*** 4月14日(金) *******************************

【ジェリーは命の恩人】
2003年に心臓手術を受けたマージービートのスーパースター、ジェ
リー・マースデンが、同じ病気で苦しむ人を助けたという話です。

現在スペインのコスタ・デル・ソルに在住で71歳のビジネスマン、コリ
ン・ウィルソン氏は、心臓のバイパス手術を受けるにあたってジェリー
に助けを求めました。
手術の辛さをよく知るジェリーは、ウィルソン氏とは面識がなかったに
もかかわらず快諾し、毎日のように電話をかけて氏を励ましたのだそ
うです。

ウィルソン氏は、「リヴァプール・エコー」紙にこう語っています。
「60年代、私はリヴァプールに住んでいてね、ジェリーとはアデルフィ・
ホテルでのチャリティ・ディナーで会ったことがある」
「その時彼は大スターだったけれども、ほとんど全員に時間を取って話
をしていた姿が印象的だった」
「何年か前に彼が心臓の手術を受けたことは、新聞で読んで知ってい
た。それで、同じような病状だとドクターに言われた時に、できればアド
ヴァイスをもらえないだろうかと彼に手紙を書いたんだよ」

ウィルソン氏の動脈に異常があることを医者が発見したのは、昨年の
8月でした。
医者はウィルソン氏に、生死にも関わる大手術の必要があることを告
げました。

「おそろしい手術だよ。胸を5時間も切り開かれっぱなしで、患者の命
が持たない可能性もある」
「ジェリーは電話をくれて、私たちはお互いの体験を綴ったノートを交
換した。彼は私にとっての、素晴らしい勇気の源になってくれたんだ」
「アバディーンとかアデレードとか、ツアー中でもジェリーは、1日と空け
ずに電話をくれたんだよ。優しく、元気づける電話をね。私にとって
一番待ち遠しく、同じ苦しみを味わった人間からの貴重な電話だった」
「そればかりか、彼は、私の古い友人で大好きなフットボーラーである
イアン・セント・ジョンにも連絡して、病院の私に元気づける電話をかけ
るよう言ってくれた」
「私は、彼が私に見せてくれた優しさを、リヴァプールのみなさんにぜ
ひ知ってほしい。リヴァプールにはジェリー・マースデンという素晴らし
い男がいるということを」

大手術から5週間経って、ウィルソン氏は順調に快復しています。
数ヶ月のうちに、2人の子供たちの顔を見に英国に戻りたいというの
が今の願いだそうです。

「いくらかの副作用はあるがね、でも80%は快復しているよ」
「ジェリーは私に、絶え間のない勇気とグッド・アドヴァイスを与えてくれ
た。私がいちばん苦しい時にね」
「リヴァパドリアンは親切で思いやりがあるということで有名だけれど、
その素晴らしい見本がジェリー・マースデンさんなんだと私は言いたい。
リヴァプールには、彼を誇りに思ってほしいんだ」


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▽寄稿:「 Piki と Pikita のリヴァプール旅行記」
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「 Piki と Pikita のリヴァプール旅行記」 / Piki

 ― 第3回 ―

<2日目 〜 5 star heroes 〜>

カーテンの隙間から光が差し込んできた。
長旅の疲れから、かなりの時間寝てしまったが、そのおかげでずいぶ
ん疲れも取れた。
窓から外の景色を見てみると・・・なんと、少しではあるが、雪が積もっ
ているではないか。

朝食の時間に部屋へ降りていき、早速 English Breakfast とのご対面
だ。
事前に聞いてはいたが、凄いボリュームだ。朝からこの量がイギリス
の人々にとってはスタンダードなのだろうか・・・。
しかし、このボリュームたっぷりの朝食のおかげで、腹持ちが良く、昼
食はちょっとしたパンやサンドイッチを一個食べるぐらいで、事が足り
てしまう。思わぬ節約になるのでありがたい。

Liz さんが、昨日の結果が一面にある新聞を用意してくれていた。それ
を見ながら食事を取る。
どうやら、Liverpool 戦でやたら点決めてくるので嫌いになったジョー・
コール選手が、終了間際に劇的な決勝点を入れてイングランドが勝利
したようだ。

最後のフルーツに手を出しているとき、
「二人ともリヴァプドリアンね?」
と Liz さん。
「もちろん」
と答えたら、Liz さんは今度はしかめっ面をして、
「マンチェスター・ユナイテッドはだめよね」
という。やっぱり相当対抗意識があるんだろう。かくいう私も Liverpool
関連の情報を見ているうちに、自然とマンチェスター・ユナイテッドは嫌
いになっていたので、三人の間に笑い声が響いた。

他にも、
「うちの父はあまりフットボールに興味を持っていないんですよ」
と Liz さんに言ったら
「そりゃだめだ、なんか感覚が欠如してるんじゃないの?」
みたいなことを冗談ぽく言われてしまった。
楽しくも、やっぱりフットボールが生活の一部に染み込んでいるなあと
しみじみ感じた一コマだ。


2日目のメインイベントは、なんと言っても Anfield のスタジアム&
ミュージアムツアーだ。
午前中に軽く、City Centre 内のショッピングモールを探索した。こっち
にも、99円ショップならぬ、99ペンスショップがあったのには Pikita と
二人で大笑いだ。
スタジアムにあるオフィシャルショップも探索するつもりだった( City
Centre 内にもL.F.Cのアウトレットショップがあると気付いたのは、実は
4日も経ってからだった)ので、早めに Anfield に向かうことにした。

朝と夕方のピーク時以外なら鉄道もバスも乗り放題という 'Saveaway'
チケットは、£2.10と異様に安いのでありがたい。
しかし問題点が1つ。イギリスのバス事情はというと、降りたいバス停
に着いたら出口付近に行って降りることをアピールし、運転手に停め
てもらうといった感じだ。誰も出口に近づかなければ、降りる人がいな
いと判断され、そのバス停は素通りされる。「つぎは○○」というアナウ
ンスもない。
もしこれから旅行に行かれる方は、バスに乗ったら、運転手に目的地
を知らせておくといい。着く頃にちゃんと知らせてくれる。
まあ、Anfield にいく場合は、その点は気にしないでもいい。スタジアム
の目の前にバス停があるから。あれだけでかい建造物ならば誰だって
気づくはずだ。

ちなみに Anfield 前のバス停の名前は「Liverpool FC」。これはもう、さ
すがといった感じだ。
City Centre の バスターミナル Queens Square からだと、17番のバス
に乗れば10〜15分で着く。

バスを降りたところが、Anfield だ。
この瞬間、Redsファン暦4年目にして、私たちは Anfield を経験できた。
さすがに涙は出なかったが、熱いものが体の中からこみ上げてくるの
は感じ取れた。
TVでしか見たことのない聖地に、自分が足を踏み入れた瞬間は感慨
深いものがある。各々が信仰している宗教の聖地に行ったときの心境
はこんな感じなのだろうか・・・。

シャンクリーの銅像(写真1)やペイズリーゲート(写真2)をしっかり写
真に撮り、いざオフィシャルショップへ。
まあ、さして書く内容はないが、様々な商品があって、見るだけでも楽
しかった。

続いて、メインイベントのミュージアム&スタジアムツアーだ。ミュージ
アムにはクラブの輝かしい歴史。偉大な選手のユニフォームやトロ
フィーなどが展示してある。数多くの品が展示してあるので、言い出し
たらきりがない。
そんななか、なんといっても目玉はビッグイヤーが置いてある一角であ
ろう。今までとってきた4つのビッグイヤーが眩いばかりに並んでいる。
そして、その一角の最後に置かれてある、「あれ」。

永久保有が許された5つ目のビッグイヤーだ。
さすがに興奮は隠し切れない。ちょうどいい時期にミュージアム見学を
したなぁ、としみじみ感じた。
そして、すっかり有名な話だが、バロシュが落としてできたといわれる、
「カップの耳の部分のへこみ」(写真3)もしっかりあった。もちろん写真
に撮っておいた。
去年のCLの奇跡の軌跡をVTRで流していたりもした。あの決勝は何回
見たかわからないという人は多いだろう。

これからスタジアム・ツアーの方へと向かいますが、長くなったのでここ
らでいったん一区切り、続きは次回で。

(つづく)


(この連載に関連する写真を、ウェブサイトの今週の「NLW フォト・アル
バム」ページに掲載しています。どうぞご覧ください。
http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo247.htm 


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▼寄稿:「 Football の旅」
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「 Football の旅」

 〜Vol.6 Premiership - Everton VS Tottenham Hotspur,
      at Goodison Park, 15.04. 2006 / 下村 えり(Eri Shimomura)


【 まえがき 】
NLWを御覧の皆様、お久しぶりです。
シーズンの終盤に入って、ますます白熱したゲームを展開しているプレ
ミアリーグは、今まさに眼を離せない状態です。
リーグ降格圏争いもこれから秒読み、一戦一戦が物を言う接戦状態
で、ニュートラルなフットボールファンにとっては一番面白い時期に来
ているのではないでしょうか。
片や、下から3〜4チームのファンにとっては、毎週冷や汗ものでしょ
うが…。

今夏ドイツで開催されるワールドカップの影響もあってか、今シーズン
は通常より早い展開のスケジュールが組まれており、終盤かなり集中
したスケジュールになるチームもあります。
イースターのこの時期は、クリスマス、ニューイヤーと同様、Good
Friday から Easter Monday の間の4日間に2試合が繰り広げられま
す。
シーズン終盤で怪我人や選手達の疲れも出だす頃で、益々監督の
手腕が試される時期とも言えましょうか。


【 Goodison Park 】
本日も晴天なり!
毎度の事ながら、トフィーズホームの試合ではお天気にツキがあるら
しい。春特有の雲交じりの晴天ではあるものの、雨の多いこの時期に
は珍しく、お天道様も見方についてくれた。

気分も爽快、今回は地元の電車と、「サッカーバス」という特別なサー
ビスを利用してみた。
まず、丸一日使えるデイパス Saveaway Ticket を購入し(£2.10)、
Liverpool Central 駅より Merseyrail に乗る。
2駅目の Sandhills で降りると、駅を出て直ぐ右手でフットボール・ファ
ンを待ち構えているのが、サッカーバス(ダブルデッカーバス)だ。
Everton 、Liverpool のホーム・ゲームがある日限定で運行する、スタ
ジアムへのシャトルバスだ。パスを見せて乗り込めば、そのままスタジ
アムの前まで連れてってくれる。

リバプールはロンドンの交通事情に比べると実にシンプルなので、初
めてスタジアム入りする方でも、公共交通機関で結構簡単にたどり着
ける。

サッカーバスを降り、スタジアムに沿って商店街の方向へと歩いていく
と、丁度トテナム・ホットスパーの選手を乗せたバスが到着していた。
商店街のど真ん中の路上に止められたバスは、一瞬にして人目を集
め、狭い歩道は野次馬の集団が埋め尽くされてしまった。
窓ガラスが黒くコーティングされているため、外から選手たちを見るこ
とは出来ないばかりか、バスの回りは騎馬警察官にぐるっと囲まれて
いて、野次馬を寄せ付けないようにウマく警備されていた(おやじ並み
の駄洒落ですみません…)。

ラッキーにも、バスの降り口からわずかに選手の顔が一瞬見えた。
ダビッツ、ロビー・キーン、キング、デフォー、ヨル監督…。うーん、しか
しミドの姿が見えなかった。彼のトリッキーなプレイが見たくって楽しみ
にしていたのに、残念! 後で判ったのだが、彼は怪我で出場出来な
かったそうだ。
人垣のなかでカメラを向ける。巨人(イギリス人)の壁が邪魔なのと、
一瞬のショットテクニックが必要なのとで、ど素人のわたくしには至難
の技だったが、たった一枚、イングランド代表のカリックを収めること
ができた。

ホッとしたところで、いつもの様にチッピー( Fish & Chips 屋さん)で腹
ごしらえ。
今日の試合は定時の15時始まりなので、チッピーの列にも動じない!

いつもこのスタジアムを訪れると何故か良いフィーリングにかられるの
だが、今日のグディソン周辺は何時もより増して活気が感じられた。
イースター休みというのもあるのだろう、家族連れの姿も多く見られた。


【 Tottenham Hotspur の歴史 】
いつもの様に、アウェーサイドのクラブの歴史に触れてみることにしよ
う。
Spurs(スパーズ)の愛称で知られている Tottenham Hotspur FC は、
Arsenal FC と同じくロンドン北部のクラブで、多くのロンドンっ子に愛着
を持たれている歴史あるチームである。

始まりは1882年、地元のクリケットクラブ Hotspur Cricket Club やグラ
マースクールの少年達により、Hotspur Football Club として創設され
た。
最初の5年間は公共のローカルピッチでプレーしていたそうだが、
1888年に初めて、囲いのついた専用グランド Northumberland Park
( Trulock Road )に移ることになる。

現在の White Hart Lane へ移転したのは1899年で、1901年と1921年
には早くもFAカップの優勝を飾る。
その後はリーグ降格・昇格を繰り返すことになるが、1950-51年に初の
リーグ優勝を果たし、1960-61年に初めてリーグとFAカップのダブル優
勝(史上3チーム目)を達成する。

1970年代から80年代にかけては、グレン・ホドル、オジー・アルディレ
ス、クリス・ワドル等のビッグネームが在籍し、FAカップ、リーグカップ、
UEFAカップを二度づつ獲得する。

一番記憶に新しいのは、1990年代初期に、日本人にも馴染みの深い
ガリー・リネカーやポール・ガスコインなどのスターが大活躍し、FAカッ
プ優勝を成し遂げ、再びスパーズファンを盛り上げた。

その後、リーグカップ優勝を1999年に、2002年は同カップ準優勝を勝
ち取るが、リーグ優勝からは45年も遠ざかっている。


【 マルティン・ヨル監督 】
次々と監督を代えては解雇してきたスパーズだが、2004年よりオラン
ダ人のマルティン・ヨルを迎え、長年の夢である「リーグ優勝」を目指し
ている。
今季は現在リーグ4位につけ、来季のヨーロッパ・チャンピオンズ・
リーグ出場獲得権争いに同じロンドン北部のライバルチーム Arsenal
と火花を散らしている。

ヨルの監督としての経歴は、1998年より6シーズン、RKC(オランダ)を
指揮し、最優秀監督の名誉にも輝いた。選手育成等にも定評がある。
スパーズへの就任は、彼の監督人生で外国での最初の一歩であり、
世界に名を残す大きなチャンスでもあるだろう。
選手時代にプレーした地という事もあってか、英国への尊敬の念もた
だならぬものを感じる。
選手売買におけるお金の使い方もかなりワイズで、経験豊富な優れた
プレーヤーなどを移籍金無しやレンタルなどで獲得し、様々な国籍の
選手達を一つのチームにまとめ上げている。

このチームのキーポイントは、FWのバラエティーさと安定した守りであ
ろうか。
FWには、力強さと巧みな技を持つアイルランド代表のロビー・キーン、
イングランド代表の俊足デフォー、それとトリッキーな技と巧みなヘディ
ングを持つエジプト代表のミド。ディフェンスでは、スピード感溢れる攻
撃力を持つイングランド代表DFレドリー・キングや、こちらもイングラン
ド代表GKポール・ロビンソンが要となっている。


【 Before Kick Off 】
スタジアムの中に入ると、もうすでに両チーム選手のウォーミングアッ
プが始まっていた。
今回チケット入手が遅かったせいか、わたしの席は Restricted View
(一部視界が障害物で遮られるシート)ということであった。しかし実際
に座ってみると、ホーム側ゴールが、柱で一部視野が遮られる程度で、
大した事ではなかった。
それよりか、直ぐ左にある柵の向こう側が、スパーズファンで埋まって
いることの方が問題だった。
別にわたしは構わないんだが、周りのエバトンファンの中には異常に
中傷したり、野次を送る者がいて、それが観戦の邪魔になるのが、
ちょっと…。

選手が入場し、お互いに握手を交わす。
選手全員の腕には黒いアームバンドが巻かれていた。構内アナウン
スで、1989年4月15日の Hillsborough の惨事を追悼する意味でとの説
明がされる。
Liverpool 戦の「フットボールの旅 Vol.1」でも説明したが、1989年のこ
の日、Liverpool ファンがFAカップの試合でシェフィールドの
Hillsborough へ応援に行った際、試合直前に押し倒しになり96人が帰
らぬ人となった悲惨な出来事である。
この日行われた、他の全てのプレミアシップの試合でも追悼された。


【 Kick Off 】
試合は3時ちょうどに始まった。
最初のショットはエバトンの James McFadden によるもので、相手
チームのゴーリー Robinson の左頭上に大きく外れて行った。

エバトンサイドのプレッシャーに耐えた後、スパーズの反撃が始まっ
た。
元 Leeds Utd の Lennon(MF)のプレゼンによる数々のチャンス。最
初のターゲットショットは Lennon のアシストによるゴール前の Keane
の鋭いショットであったが、エバトンゴーリー Wright によってセーブさ
れる。
その後さらに、Lennon から素晴らしいボールを右サイドポスト前の
Tainio(MF)がへダーに?げるが、またしても Wright にブロックされた。

全体的に両チームとも守りが堅く、なかなか積極的に前に出ようという
意志がうかがえない前半だったが、30分過ぎ、スパーズの Keane が
何時もの如く器用なドリブルさばきで前に出ようとしたところ、エバトン
の Stubbs(DF)にゴール前で引っ張られる。
このプレイに審判のホイッスルが響き渡るが、Keane のボールはゴー
ルに収まっていた。
しかし彼のゴールが決まる前にホイッスルが鳴っていたので、ゴール
は認められず、ペナルティー・キックが与えられることになった。

もちろん、PKを打つのも Keane 。左狙いと思われたシュートは、右隅
のネットへと綺麗に収まった。1−0。
わたしの左隣のスパーズファン達から、歓声が一気に沸き上がった。

前半もほぼ終盤に差し掛かった38分、エバトンのキャプテン Neville
(DF)のタックルに腹を立てた Gardner(DF)が食ってかかる一幕があ
り、両者とも仲良くイエローカードを戴く羽目になる。

何度かのターゲットショットはあったものの、全体的につかみ所の無い
前半のゲームだった。
左右へと秒読みで移動するボールは高く上がりすぎで、パスワークも
中盤でブレイクされ、クリエイティブなボールの動きとは程遠かった。ま
してや、エバトンの動きにはがっかりさせられるものが多く、最近特に
活気のある攻撃をみせてくれる Beattie(FW)の存在感も全く感じられ
なかった。

ハーフタイムを終えて後半に入る、両チームとも少しエンジンが掛かっ
てきたか、新たな動きが見え出した。
後半のスパーズサイドは、イングランド代表でもある Defoe(FW)の動
きがチームに好影響与えていた。
エバトンの Box Corner にいた Jenas(MF)へ、Defoe から素晴らしい
ボールが渡る。しかし Jenas の切れの良いショットは、またもや
Wright が見事なスライディングカバーを見せ、弾き飛ばす。

スパーズサイドのコーナーキックでも、エバトンのディフェンダー
Naysmith のエラーから Defoe にチャンスが渡るが、Wright のカバー
により、ここでも2点目を免れた。
ホームサイドのスタンドからは、なんとも言えないため息がもれる。

スパーズの連続攻撃に振り回されている感じもあったエバトンだが、
Cahill (MF)のハーフボレーシュートが Robinson の頭上をかすったのを
皮切りに、反撃に出る。
Osman(MF)からのパスが前へ前へと出ようとする Beattie に渡り、
ゴールが決まった。グディソンに歓声が響き渡るが、直ぐにどよめきに
変わった。オフサイドの旗が揚がっていた。同点ならず。残念!

しっかり Good ムードになってきたスパーズサイドの応援歌は、“僕ら
はアーセナルの上を走ってる〜”(リーグテーブルの4位争いを意味し
ている)などといった歌に代わり、益々力強良くなる。

後半サブで入ったスパーズの Murphy(MF)が、次々に Defoe や
Keane らの前線に素晴らしいパスを投げ、スパーズの動きにまたもや
色を添えるが、エバトンのディフェンスも頑なに守りきった。

66分にはエバトンのモイーズ監督が、Simon Davis に代えて “最後の
爆弾” Ferguson(FW)を送り込むが、残念ながら不発に終わってしま
う。エバトンの選手として、あるいはフットボーラーとして、今シーズンが
彼にとって最後のシーズンになるかもしれない。

試合終了間際、Defoe と Lee(DF)のセットアップにより、Keane の駄
目押しのショットが放たれる。しかし力強さに欠けていて、簡単に
Wright にセーブされた。
するともう1本、今度は Defoe が今度こそと駄目押しの鋭いシュートを
放つが、右のクロスバーに当たり、大きく跳ね返った。

後半の Defoe の動きには、目を見張るものがあった。
もしかすると、スタンドにイングランド代表監督エリクソンの姿があった
からかもしれない。
ワールドカップ出場選手の選出まで秒読みである今、イングランドの
前線選びは特に緊迫している。Rooney( Man Utd )、Owen
( Newcastle Utd )のレギュラー入りは誰もが予想出来るのだが、
Owen の怪我もあり、Sub 選びは特に重要課題となっている。
現在のところ Crouch( Liverpool )、Bent( Charlton )、そして Defoe
が有力候補であるが、この中の一人が涙を飲まなくてはならない。

結局、Keane のPKで試合が決まった。
後半は両チームともに攻撃態勢になったせいでフィールドにスペース
が出来、特にスパーズのボールの動きが良くなった。
これによってクリエイティブな攻めを次々に繰り出したスパーズだった
が、エバトンの Wright(GK)の素晴らしい守りが追加点を許さなかった
のだ。

エバトンのモイーズ監督は、試合後こんなコメントを残している。
「文句なし、トテナムの方が断然良いプレイだった。うちの選手もすべ
き事は全て行ったが、歯が立たなかった。トテナムは最近の好調ぶり
を全て見せ付けてくれたよ」と語った。

一方のヨル監督は、
「残り少ない試合の中で、難しいと思われていたこの場所で勝てたとい
うことは本当に素晴らしい。クリエイテイブなチャンスが掴めたのが勝
因だったみたいだ。少し残念だったのは、追加点が取れなかったこと」
と、アーセナルとの4位争いに意欲的な態度を見せてくれた。

(おわり)


<マッチ・データ>

 Premiership 05-06 Everton Vs Tottenham Hotspur
           15 Apr 2006, Kick off: 15:00, Full Time Score: 0 - 1

              Everton     Spurs
 ゴール           0       1(Robbie Keane: 33 PK)
 ターゲットショット     0       5
 コーナーキック      7       9
 ファール          16       9
 オフサイド         2       2
 イエローカード       2       1
 レッドカード         0       0
 ポゼション         44%      56%

 Team Line-ups:
  Everton
   Wright, Neville, Yobo, Stubbs (Ferrari 59), Naysmith (Kilbane 84),
   Osman, Carsley, Cahill, Davies (Ferguson 66), McFadden, Beattie.
   (Subs Not Used)Turner, Weir.

  Tottenham
   Robinson, Stalteri, Gardner, King (Davids 90), Lee,
   Lennon (Davenport 82), Carrick, Jenas, Tainio (Murphy 45),
   Keane, Defoe.
   (Subs Not Used)Cerny, Barnard.

 Attendance: 36,920


(この連載に関連する写真を、ウェブサイトの今週の「NLW フォト・アル
バム」ページに掲載しています。どうぞご覧ください。
http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo247.htm 


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*** 今週のフォト・アルバム ******

「 Piki と Pikita のリヴァプール旅行記」と「 Football の旅」にちなんだ
写真を、「NLW フォト・アルバム」ページに掲載しています。
どうぞご覧ください。
http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo247.htm 


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□■ 第247号 ■□

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 ◇編集 山本 和雄
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