February 27 2007, No.287
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     リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World   
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NLW ■
         *** http://scousehouse.net/ ***        


□■ INDEX ■□

 ▽フロム・エディター
 ▼リヴァプール・ニュース <2007年2月25日>
 ▽寄稿:「リアルエールのすすめ」
 ▼特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
 ▽「利物浦日記2006」
 ▼スカウスハウス・ニュース
 ▽今週のフォト


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▽フロム・エディター
―――――――――――――――――――――――――─ NLW □

ビールファン、パブファンのみなさん、お待たせしました!
下村えりさんの連載「リアルエールのすすめ」の第4回をお届けします。
今月にリヴァプールで開催された「リヴァプール・ビア・フェスティヴァル
2007」のレポートです。
メトロポリタン大聖堂の地下聖堂というユニークな会場で行われるこの
ビール祭り、チケットの入手が難しいことで知られています。地元紙
「デイリー・ポスト」によると、5000枚以上の前売りチケットは、わずか2
時間で完売。オークションサイトの「eBay」にも出品されるほどの人気
ぶりだったということです。

ついでですから、「デイリー・ポスト」紙の記事からもう少し続けましょう。

CAMRAリヴァプール支部のチェアマン、ジェフ・エドワーズはこう話して
います。
「このビア・フェスティヴァルには、国じゅうからファンが集まって来るん
ですよ。カリフォルニアから毎年欠かさずやって来る男性もいますし
ね」
「今年は過去最大にして最高のものになりそうですね。地元のブリュワ
リーにたくさん参加してもらうようになってからは、前よりもずっとよくな
りました」

フェスティヴァルのスポンサーでもある地元のブリュワリー「ケインズ」
は、“Bock Continental” というラガービールの新作を発表しました。な
んとアルコール度数8%。共同オーナーの Ajmail Dusanj さんはこうコ
メントしています。
「すごく強いですから、できるだけハーフパイント・グラスで売ってもらう
ようにお願いしてるんです」

う〜む、僕もいつかこのフェスティヴァルに参加してみたいです。
それにしても、8%のラガーってすごいですよね!?

● ● ●

NLW読者のみなさんへ、下村えりさんからのプレゼントです!
「リアルエールのすすめ」で訪ねたフェスティヴァルの記念パイントグラ
スを、合計2個、プレゼントしていただくことになりました。
1つは今回の「リヴァプール・ビア・フェスティヴァル」、もうひとつは昨年
の「ウィラル・ビア・フェスティヴァル」の記念グラスです。

ご希望のかたは、えりさんの連載へのご感想や、ビール(リアルエー
ル)への思い、イギリスのパブでの思い出などを、できるだけ詳しくお
書きの上、info@scousehouse.net までお送りください。
件名は「パイントグラス応募」でお願いします。お名前は本名でなくても
構いません。

応募いただいた中から、2名さまを当選とさせていただきます(もちろ
ん、えりさんに選んでいただきます)。ご応募お待ちしています!

                           ― Kaz (27/02/2007)


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▼リヴァプール・ニュース <2007年2007年2月25日>
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*** 2月25日(日) *******************************

【ウールトン・シネマ復活!】
閉館したウールトンの映画館「ウールトン・シネマ」が、再び幕を上げよ
うとしています。
およそ80年の歴史を持ち、リヴァプール最古のインディペンデント・シ
ネマであった「ジ・ウールトン」は、経営者の死が原因となって昨年9月
に閉館しました。
このシネマを救おうと有志によるキャンペーンが展開されましたが、買
い取りに必要な資金を集めるまでには至らず、シネマは昨年11月に
オークションにかけられました。
新オーナーになったのは、リヴァプール南部のビジネスマンたちの共
同体でした。彼らは早速、従来どおりにシネマとして経営すると約束し
ました。

新しくマネージャーに任命されたポール・プライスは、こう話しています。
「このシネマの将来のことを考えると、ワクワクしますよ。ローカルの
人々にとって、ジ・ウールトンがどれほど愛着のあるものかということ
は、私たちにもよくわかっています。できるかぎり早く再オープンしたい
ですね」
「このシネマの存続のために戦ったキャンペイナーの人たちに会って、
話を聴こうと思っているんです。彼らは素晴らしいアイデアを持ってい
るでしょうからね」

「共同オーナーはみんな地元の人間ですよ。ウールトンのコミュニティ
に何かを還元したいと思ってるんです」
「コミュニティの第一級の財産であると同時に、歴史もある。リヴァプー
ルにはまだまだブティック・シネマへの需要はあると私たちは考えてい
ます。インテリアが美しいですよね。ほんとうに特別なものがあります
よね」
「いろいろ意見を聴いてアイデアをまとめて行きたいですね。まず前
オーナーのデイヴィッド・ウッド氏がどのような経営をなさっていたのか
を知りたいです」
「現時点で何月何日に再オープンします、とは言えないです。でもでき
るだけ早くそうしたいですね」

存続キャンペーンの発起人のひとり、グレン・シンプソンはこう話してい
ます。
「とんでもなく素晴らしいニュースだ。もうみんな舞い上がってしまった
よ。このシネマがシネマとして残るんだからね。しかもローカルのオー
ナーシップの下でね」
「ジ・ウールトンを救うためにほんとうにたくさんのサポートがあったこと
も証明されたね」


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▽寄稿:「リアルエールのすすめ」
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「リアルエールのすすめ 4」 / 下村 えり (Eri Shimomura)

“Liverpool Beer Festival 2007” (14th-17th February)
≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo287.htm ≫

【まえがき】
リバプールもここの所春の兆しがちらほら、クロッカスの花は満開、ダ
フォデル(水仙)のつぼみも大きく膨らみ始めています。

ビールファンの皆様、お待たせしました。
今回お届けするのは、昨年秋に予告しておりました “Liverpool Beer
Festival 2007” の模様です。2月14日〜17日に、リバプールのカソリッ
ク大聖堂 Metropolitan Cathedral で行われました。

ビール祭りが大聖堂で行われるというのは、日本人の感覚で考えると
場違いの様な気はします。ですがヨーロッパのアルコールの歴史をた
どると、元々修道院や教会などで多くのアルコール(ビールやワインな
ど)が製造、貯蔵されていたと聞きますので、珍しいことではないのか
もしれません。

イギリス各地から大切に送られてきた、目の前に聳え立つ見事なビー
ル樽の数々。それらのバラエティーなお味、風味を何処まで皆様方へ
お届けできるか、ちょっと不安ですが...。

【 Metropolitan Cathedral 】
今年、2007年は、リバプールにとって特別な年である。リバプールが誕
生して800回目の誕生日を迎える年であるからだ。
しかも来年には2008年の文化都市祭りが控えている。ここの所何かと
お祭りムードが漂うリバプールである。

リバプールの繁華街、Lewis's デパートを背にすると、正面がかの有名
な Adelphi ホテル。その右横の Brownlow Hill をゆっくり登って3分、右
手にメトロポリタン大聖堂の頭が目に入ってくる。
Liverpool Beer Festival の会場である。すでに、正午の開場を待ち構
えた行列が200mにまで及んでいた。

今日は素晴らしい晴天に見舞われて、周りの人々からも屈託のない
笑顔が見える。
今日はこのフェスティバル最終日。しかも土曜日とあって、昼間っから
アルコールを飲んでも “なんのその” の笑顔であろうか。
チケットは半年以上前に売り出され、あっという間に売り切れた。当日
券は発売されない。ここに並んでいる人たちは、ほんもののビール好
きと言えるだろう。

12時の鐘の音と同時に、教会後方の重厚なドアが開く。警備員に上手
く誘導されながら、行列は少しづつ前に動いていった。
玄関口でチケット(5ポンド:約1,200円)を見せると、大聖堂地下へと丁
寧に案内される。
人垣が地下室の暗闇へと消えていく。心はビールへとまっしぐら、足早
に階段を駆け下りたい気持ちだが、ずっしりとした石造りの螺旋階段
が僅かな電球の灯りでクリアに見えず、少し戸惑ってしまった。
踏み外さないように用心しながら下っていくと、受付嬢がビールグラス
とフェスティバル用プログラムを忙しそうに配っているのがみえた。

【 Liverpool Beer Festival 2007 】
5ポンドの入場料には、ハーフパイントグラスとプログラムが含まれて
いる。
更に今回は、地元のブリュワリー Cains の作った新作“Cains 2008”が
1杯無料で飲めるときてる。プラス、もし貴方が『CAMRA(Campaign of
Real Ale)』のメンバーであれば、£1のビール券が頂けるゴージャスな
企画である。

CAMRAは、この『リアルエールのすすめ』の第1回(NWL No.216)でも
説明したが、その名の通りイギリスの伝統あるリアルエールを守ろうと
70年代に作られた団体である。全世界より集まった会員の数は、現在
約8万人にまで達してるそうだ。
年会費は1人だと20ポンド(約4,800円)、2人で入ると25ポンド(約6,000
円)と割安になる。
私自身は、CAMRAのメンバーになってかれこれ10年以上経っている
ような…? 月々の情報誌や各地のビール祭りの案内に加え、パブツ
アーやビール醸造地を訪れるツアー等など企画も盛りだくさんである。

今回は他のビール祭りとは違い、ビールの価格もほぼ定まっていて、
非常に判りやすかった。
殆どのビールはハーフパイントが£1で、濃厚なビール(7%以上くらい
か)は£1.50に統一されていた。

ビール、サイダー含めてナント約200種類(うちリアルエールは175種
類)。
ロンドンのオリンピアで毎夏開かれる “British Beer Festival” までとは
行かないが、十分のチョイスと言えよう。

もちろん、腹ごしらえのためのコーナーも設けてあり、Hope Street の
レストラン Everyman Bistro が腕を振るっていた。
べジタリアンの皆様にはファームチーズのコーナーも用意されており、
色々なタイプのチーズが美味しそうに並べられていた。

地下室といってもかなり広く、幾らかのセクションに区分けされている。
ビールが置いてある部屋は、長方形の奥深い所で、壁に沿って上手に
樽が3列に並べられていた。
今回フェスティバルは半年前から前売りを出して、人数を3日間に分配
してコントロールした為、混雑はかなり緩和されていた。3年前のよう
に、ビールが買えないということはまったくなかった(お見事!)。

奥に入っていくと、メインステージが設置されていて、バンドの演奏が
行われていた。
今日は Wigan からのトラッドジャズ・バンド 'The Lazy River Jazzmen'
のショー。だが耳に入ってきたのは、トラッドジャズというよりは、ポップ
フォーク系あり、ロックンロールありの幅広いジャンルであった。まあ、
その何でもありってのがいわばジャズの発端なんだろうけど…。

表の美しい光が大聖堂のステンドグラスに一気に吸収され、私達の
テーブルへも注がれた。周囲は和やかな雰囲気が漂い、6人がけの
テーブルを見知らぬ人たちとシェアーすることさえ苦にならない。私の
周りは毎年フェスティバルを訪れている人達の様で、“今年は初めて座
れた” と、とても満足気なビッグスマイルが伺えた。

さて、フェスティバル内を一応探索し終わったところでビールリストに集
中。
“さあ、どのビールを最初にご賞味しましょうか…”

【 Beer, Beer, Beer 】
人それぞれだろうが、私の場合は、酔いが早く回らない様に、何時も
なるべくアルコール度の低いマイルドから入っていく事にしている。
では、今回試したビールを順番にご説明しましょう。

Double Champion Wheat (4.0%)
 醸造会社:O'Hanlon's Brewing Company
 場所:Exeter (Devonshire)
 とっても爽やかでクリーンなお味。新鮮なシトラス&ホップの風味。

GSB (3.8%)
 醸造会社:Marble
 場所:Manchester
 ゴールデン色のホップを使ったビール。ドライでホップの利いたお味。  

Black Gold (3.7%)
 醸造会社:Copper Dragon
 場所:Skipton, North Yorkshire
 丹念にローストされたモルトが、コーヒーのような味をかもし出してい
 るビター。

Black Gold (3.5%)
 醸造会社:Castle Rock Brewery
 場所:Nottingham
 バランスの取れたモルトの程よいダークマイルド。

Moondance (4.2%)
 醸造会社:Triple fff Brewing
 場所:Hampshitre
 とてもフレッシュ、程よい甘さとちょっとパフューミー。

Cat Nap (3.6%)
 醸造会社:Barngates
 場所:Ambleside, Cumbria
 ストロー色(藁色)のシトラス味、ホップの利いたアロマビール。

Stokers Stout (5.0%)
 醸造会社:Oakleaf Brewing Co
 場所:Hampshire
 ごく普通のスタウト ちょっとガッカリ。

Rite Flanker (4.3%)
 醸造会社:Wickwar
 場所:Wickwar, Glocestershire
 アンバ色でモルトの利いたフルーティーでホッピーなお味。

Hadda's Winter Solstice (4.1%)
 醸造会社:Vale
 場所:Haddenham, Buckinghamshire
 なんとも言えないコンプレックスな良いお味。パンフレットには『焚き
 火で炒った焼栗の味』なんて書いてある。ビターでモルトの利いた私
 の今フェスティバルNo.1チョイス。

Old Expensive (6.5%)
 醸造会社:Burton Bridge Brewery
 場所:Burton upon Trent, Staffordshire
 アンバ色のバーリーワイン、チョコレートモルトとペールモルトのミック
 ス味。

Bock (8.0%)
 醸造会社:Robert Cain & Co
 場所:Liverpool, Merseyside
 ドイツミュンヘンのモルトを使った、コンチネンタルスタイルのラガー
 ビール。甘みと濃縮された感じのお味だが…今ひとつ。

Dark Mild (3.2%)
 醸造会社:Robert Cain & Co
 場所:Liverpool, Merseyside
 ただで飲めるはずの “Cains 2008” がSold Outだったため、私の
 Cain's でのお気に入り “Dark Mild” を飲んだ。普段はスターターには
 持って来いのリフレッシュ・ダークモルト・テイスト。しかし最後に飲ん
 だら意外とお味が平坦、フラットで物足りなかった。
      
【おわりに】
長年の経験や失敗談から学んでいるのだろう、今回のフェスティバル
は本当に上手にオーガナイズされていて、感動した。来年もチケットが
取れたら、ぜひ訪れてみたい。

小春日和のリバプール。ウイークエンドの午後を上質なリアルエール
に囲まれ、吟味出来たのは、本当に贅沢な気分だった。

( Fin )

≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo287.htm ≫


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▼特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
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「ゴールドフィッシュだより」 / ミナコ・ジャクソン
          〜 Goldfish Liverpool Update / Minako Jackson 〜

  ― 第80号 / 「 Centre of the Creative Universe !! 」 ―
 ≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish80_photo.htm ≫

こんにちは。
2月もあっという間に終わりに近づいてしまいました。そして気が付い
たら「ゴールドフィッシュだより」も80号! 驚きです。引き続きよろしく
お願いいたします。

今週は、月曜日に Tate Liverpool に行ってきました。
月曜日は休館なのですが、翌日からスタートする展覧会を特別に見せ
てもらいました! しかも普段は撮影不可なのですが、クローズアップ
でない限りはOKがでましたので、写真もお送りします(クローズアップ
のものは、Tate Liverpool から使用許可を得た画像です)。

800年のバースデーを迎える今年のリヴァプールでは「ヘリテージ」を
テーマにさまざまな展覧会や催し物が企画されています。
Tate Liverpool では、Christoph Grunenberg (Tate Liverpool のディレ
クター) と Robert Knifton (Manchester Metropolitan University の博
士課程在籍中)の共同キューレーションによる、過去50年間のリヴァ
プールのアートシーンを総括した企画展が行われています。

その名も "Centre of the Creative Universe: Liverpool and the
Avant-Garde" 展。
それにしても 「センター・オブ・ザ・クリエイティヴ・ユニヴァース」だなん
てそこまで断言しちゃっていいの? と聞いているほうが照れてしまうよ
うな大袈裟なテーマですが、どうやらまんざらウソではないようです。
アメリカのビート詩人 Allen Ginsberg が、当時手紙のなかで、

「ビートルズの故郷、リヴァプールで丸々1週間過ごして、新しいバンド
をいっぱい観て、長髪の野郎たちと楽しい時を過ごした。 まるでサンフ
ランシスコみたいだった、天気がグレーなのを除けばね」

とその興奮ぶりをしたためていたくらいです。やっぱりメンタルなレベル
でクリエイターたちを惹きつける何かがあったんですね。

この展覧会は、リヴァプールという街が戦後、いかにさまざまなアー
ティストに影響を及ぼしたかを、中からの視点、外からの視点を含め
て、作品や当時の映像、ポスター、グッズなどを通じてドキュメンタリー
化しています。

入り口をはいると、リヴァプールをセンターに枝葉が分かれになった系
譜。これが面白い。
リヴァプールからスタート → 詩人、ミュージシャン、アーティスト Adrian
Henri → 彼のバンド The Liverpool Scene → 名物DJ John Peel → ア
メリカ・サンフランシスコ → ビートニクの発信地 City Lights Bookstore
→ ビート・ジェネレーションの中心人物である作家 William Burroughs
に辿り着きます。

別の枝葉を見てみると、リヴァプールからスタート → ビートルズ →
[右に行くと] オノ・ヨーコ → Bluecoat Arts Centre へ。
この展覧会では、1967年に Bluecoat で行われた "Concert of Music
for the Mind"(ハプニング・イベント)のコーナーも設けてあり、映像も
見られます。

ビートルズ → [左に行くと] Brian Epstein → Jeremy Deller & Paul
Ryan(アーティスト。この展覧会では 今回 Tate がコミッションした
Paul Ryan とのコラボレーション作 "Drawing for 'Brian Epstein's
Liverpool' from Sketchbook" が展示されてます) → Cream (言わず
と知れた、リヴァプールのクラブ) → ええ? Scouse House !?
(。。。一瞬びっくりですが、ダンス系音楽のハウスです。スカウス版ハ
ウス・ミュージックのことですね。。。)
 
この系図は、50ペンスの寄付をすればお持ち帰り可能ですが、Tate
Liverpool のホームページからもダウンロードできます。
http://www.tate.org.uk/liverpool/exhibitions/centreofthecreativeuniverse/pdfs/creativemap.pdf

この展覧会は、60年代のアート、詩、音楽に重点が置かれています
が、70年代のパンクシーンにも触れています。
パンク、ニューウェーブの中心地であった Eric's のチラシやバッジ、バ
ンド Big in Japan (紅一点のシンガー Jayne Casey 、Frankie Goes To
Hollywood の Holly Johnson 、Lightning Seeds の Ian Broudie 、KLF
の Bill Drummond 、そして Tear Drop Explodes に参加後 Food
Records 創設者となる David Balfe という、現在も活躍するゴールデン
メンバーでした)のサイン付きの写真も展示してあります。

70年代は、アートでいうとリアリズムの復活、 当時アート・スクールで教
鞭をとっていた John Baum 、Maurice Cockrill 、Sam Walsh など。
80年代は、Martin Parr や Tom Wood などの写真家が景気が降下し
たダークなリヴァプールを捉えた写真の数々。
最近のところでは、2007年 Bill Drummond 作の "I Challenge You" な
ど。このポスターは街中にも貼られてました! 写真は Seel Street に
て撮影したものです。

リヴァプールの人は、いい意味でも悪い意味でも、性格的に突飛な発
想の持ち主が多いです。そして議論好きで、よく喧嘩別れもします。
もうひとついうと地元意識が非常に強い。そして街が比較的小さいの
で、ミュージシャン、詩人、アーティストなどがカフェやパブでたむろして
語り合って、クロスカルチャーで既成概念にとらわれない新しいものが
自然発生的に生まれてくるんですね。そしてこのエネルギーが異国の
アーティストまでも巻き込んでいったのでしょうか。
今でもそういうところ、とっても強いので、分かる気がします。
Bill Drummond のポスターを見ながら、リヴァプールはもしかして
"Capital of Culture" なんて看板なしでも「文化の中心」として君臨し続
けるんだろうな、と少し納得してしまいました。

Liverpool University Press から同タイトルの書籍も出ています。50年
間のリヴァプールの文化が詰まった完全保存版とも言えます(アマゾン
でも売ってます)。

この展覧会は Tate Liverpool 2F にて。入場無料。9月9日まで開催
です。

 < Tate Liverpool >
  住所:Albert Dock, Liverpool L3 4BB
  電話:0151 702 7400
  Email:visiting.liverpool@tate.org.uk
  オープン:火〜日曜日 10:00〜17:50 最上階以外は入場無料
  ホームページ:http://www.tate.org.uk/liverpool/exhibitions/centreofthecreativeuniverse/default.shtm

♪ ♪ ♪

World Museum Liverpool では、ウォレスとグルミットなどのクレイ・アニ
メーションで知られる Aardman の "Animated Adventures" 展が行わ
れています。
12月に帰国したときに東京三鷹のジブリ美術館に見に行ったときも感
じましたが、宮崎駿にしろ Aardman にしろ、ここまでするか〜?! と
思わず感嘆してしまう、シゴトの細かさとこだわりが見られます。
映画制作には250名ものクルーが関わり、完成までに5年かかるそう
です。キャラクターのデザイン、背景になるセット、小道具などのデザイ
ンや制作に多くの時間が割かれ、撮影に18ヶ月が費やされます。
キャラクターは、プラスティシーンという粘土でできているのですが、口
パク用に発音ごとに異なる口の模型が作られ、髪型から衣服まで作り
こまれていています。
セットは本物の家の内装とおそらく変わらないプロセスで作られている
のではないかと思うほどです。家具や柱のミニチュアには非常にデコラ
ティブな彫刻が施されていて、そのほか布張りされた椅子、床材、タイ
ル、壁紙、壁に架かった絵画どれをとっても溜息もの。Anti-Pesto バ
ンの模型などは、本物のオースチンA35よりも高いそうです!

この展覧会に行ってから映画 「ウォレスとグルミット」シリーズを観てみ
てほしいです。
こちらは8月26日まで開催されます。

 < World Museum Liverpool >
  住所:William Brown Street, Liverpool L3 8EN
  電話:0151 478 4393
  Email:visiting.liverpool@tate.org.uk
  オープン:毎日 10:00〜17:00 入場無料
  ホームページ:http://www.liverpoolmuseums.org.uk/wml/exhibitions/adventures

♪ ♪ ♪

アニメーションものでもう一つ。
Town Hall から程近い Artfinder's Gallery にて、昔ながらの漫画、子
供向けの絵本の原画やアニメのセル画が展示されています。
くまのプーさん、機関車トーマス、ピンクパンサー、ポパイ、シンプソン
ズなど日本でも知られるアニメから、イギリス人たちが思わずノスタル
ジーに浸ってしまう Captain Pugwash 、Rupert Bear 、Dr. Who など。
イラストレーター、グラフィック・デザイナーを長年している友人たち3人
と一緒に見に行ったのですが、そのうちの一人ジョージが回顧モードに
入っていました。

「昔は、みんな手作業だったんだよ。漫画の吹き出しの文字専門の担
当なんかもいたしね。今じゃパソコンで入力できちゃうけど」
「吹き出しの部分は上から貼り付けてあるね。Cow Gum っていう糊を
使うんだよ」

当時は手で描いて、切り貼りしてたんですね。テクノロジーの発達で便
利になった分、人間が本来もつ手の技術が退化していくのかなあ、と
思うと少しさみしい気がします。
この展覧会は3月31日まで。

 < Artfinder's Gallery >
  住所:6 Queen Avenue, Liverpool L2 4TG
      (Castle Street を一本入ったアーケード内)
  電話:08452570357
  オープン:11:00〜18:00(火〜金) 10:00〜13:30(土)
  ホームページ:http://www.lydiabates.com/artfinders-gallery.html

♪ ♪ ♪

【今週の告知】
その1;
Anthony Brown の "100 Heads Thinking As One" 展が、3月3日(土
曜日)から場所を移して、メトロポリタン大聖堂で行われます。期間は
3月30日まで。
公式ホームページ: http://www.100heads.co.uk 

その2;
3月9日は "39 Art Day"!
ドイツで活躍中の日本人アーティスト、開発好明氏が提唱した「サン
キューアートの日( www.39art.com )」。日本をはじめ、今年は、ニュー
ヨーク、ベルリン、香港などのギャラリーが参加していて、「文化の中
心」リヴァプール(?!)も黙ってはいられないでしょう!
…という勢いで、私と旦那でこちらのギャラリーやアーティストに声をか
けたところ、「それは素晴らしいアイディアだ!」と思いのほか反応よく、
参加者が続々増えています。

この日は、ギャラリーやアート系のショップでさまざまな特典やMSNメッ
センジャー上でのパフォーマンスなどもありますので、是非是非アート
に浸ってみる一日にしてください! 日本にお住まいの方も、北は北海
道から南は沖縄まで各地くまなく行われていますので、おもしろそうな
企画を探してみてはいかがでしょうか?

<"39 Art Day" 参加団体リスト> http://www.39art.com/2007/list2007.htm
<リヴァプールの部> http://www.artinliverpool.com/list/39artday.htm

それではまた来週!

ミナコ・ジャクソン♪

≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish80_photo.htm ≫


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▽「利物浦日記2006」
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「利物浦日記2006」4 / Kaz
 ≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo287.htm ≫

【8月26日(土)】
8時30分にアデルフィ・ホテルのロビーへ。McCさんと打ち合わせ。9時
半に全員集合。今日はジョンとポールの家の観光「ナショナル・トラス
ト・ツアー」を予約している。我々が用意した20枚近くのチケットは、き
れいに完売した。よかったよかった。

お客さんをツアーバスの発車ポイントに引率して行くと、ジョン・レノンの
家の管理人コリン・ホールさんが待っていた。全員が乗り込むと、うち
のお客さんだけでバスは一杯。貸し切り状態だ。気がつくとコリンさん
が不安げな顔をしている。

「君たちは乗らないの?」
うん、チケットもないしね。
「そうか。ええと、この人たちは英語をしゃべれるかい?」
う〜ん、どうかな。よくわからない。
「そうか、あと1人2人ならなんとか座れる。君らのうちひとりでも同行し
てくれないか?」

…顔を見合わせる僕とミナコさん。
悪いけど、僕らどっちもこれから用事があるんだ、ごめんね。でも心配
することないよ、だいじょうぶ、何人かは英語話せるはずだから、と答
える。コリンさんはあきらめたような、覚悟を決めたような顔で運転席
に乗り込んで行った。グッドラック!

ミナコさんには、ツアーの終わるころにまたこの場所に戻って来てもら
うことにした。今日は昼から、「08 Place」でマイク・マッカートニーさんの
サイン会がある。マイクさんと面識のあるミナコさんに、お客さんたちを
案内してもらうことにしたのだ。

そして僕はローカル・バスに乗ってアンフィールド・スタジアムへ。レッズ
の今季ホーム開幕戦を観るのだ。カモン・リヴァプール!

4年ぶりのアンフィールド。ここはほんとうに素晴らしい。今日は偶然に
もKOP100周年の記念ゲームだった。『KOP 100』と、KOPスタンドにき
れいな人文字ができた。ここは当然ジェリー・マースデンを呼んで
“You'll Never Walk Alone” を歌ってもらうべきだろうと思ったが、しか
しジェリーは今まさにこの時間、ピア・ヘッドの野外特設ステージで歌っ
ている。おいおいジェリーさん、何か間違ってないかい?

レッズの相手は数ヶ月前のFAカップ決勝で対戦したウエスト・ハム。あ
の試合は死闘になったが、今日は2−1で見事な勝利。めでたしめで
たし。

4時。集合時間ギリギリにアデルフィ・ホテルのロビーへすべり込む。こ
れから「ぶらぶらウォーク〜ウールトン&ペニーレーン編」の出発だ。

(つづく)

≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo287.htm ≫


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▼スカウスハウス・ニュース
―――――――――――――――――――――――――─ NLW □

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オールドトラフォード・1枚)の観戦チケットがあります。
ご希望の方は、info@scousehouse.net までお問い合わせください。チ
ケット価格や手渡し方法などをご案内いたします。お早めに!


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リヴァプールFCおよびエヴァトンFCの、ホームゲーム観戦チケットの
手配を承っています。
詳細は、ウェブサイトの「スタジアムへ行こう!」ページをご覧ください。
http://scousehouse.net/football/stadium.htm


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リヴァプールへの語学留学をサポートしています。
詳細については、ウェブサイトの「語学留学案内」ページをご覧くださ
い。
http://scousehouse.net/study/index.htm


*** ビートルズ・ガイドツアー ******

リヴァプール&ロンドンのビートルズゆかりの地を訪ねるガイドツアー
をアレンジしています。
ツアーの詳細は、ウェブサイトの「ガイドツアー」ページをご覧ください。
http://scousehouse.net/beatles/guide_london.htm
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