June 26 2007, No.303
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NLW ■ *** http://scousehouse.net/ *** □■ INDEX ■□ ▽フロム・エディター ▼リヴァプール・ニュース <2007年6月25日> ▽エッセイ:「英国・リヴァプールを歩く 〜愉快な『スカウサー』〜」 ▼スカウスハウス・ニュース ▽今週のフォト ―――――――――――――――――――――――――――――― ▽フロム・エディター ―――――――――――――――――――――――――─ NLW □ 今週の「ニュース」には、缶詰になったスカウスの話があります。 リヴァプールの伝統煮込み料理の「スカウス」です。 昔の船乗りたちによってもたらされたといわれるこのスカウス、地元の 人々にとってはごく普通のありふれた料理なのですが、 家庭料理であるが故に、わりと最近までは、旅行者にとっては「謎の料 理」でした。 「スカウサー」の語源にもなったリヴァプールを代表する料理なのに、 食べたいと思っても食べさせてくれるレストランがなかなかなかったの です。 地元の人にとっては、わざわざ外で食べる料理ではないんでしょうね。 それに、それぞれの家庭には独自のレシピがあり、味は千差万別とい われているので、自分の家のスカウス以外は食べる気にならない、と いうのもあるかもしれませんね。 それでも、ここ数年は、メニューに載せるレストランが少しづつ増えて いるようです。 「インターナショナル・スカウス・デイ」というイヴェントが毎年行われたり して、街をあげて「もっとスカウスを広めよう」という気運が高まっている のです。 スカウス・ハウスでは、毎年夏の「ビートル・ウィーク」期間中に「スカウ ス・ランチョン」を企画しています。 いつも“ジョン・レノンのパブ”イー・クラックで特別に作ってもらうんです けど、これが見事なくらいに、毎年ぜんぜん違うスカウスが出てくるん です。 まるで肉じゃがそのものみたいなときもあれば、どろどろに溶けてシ チューみたいなときもあったり、あるいは具がきっちり原型を保ってい てまるでポトフじゃん、というときもありました。 それは毎年コックさんが違うからなんですけど、でも、同じ料理が、作 る人によってこ〜んなに違うものになるなんて、もすごく不思議です。 もちろん、どれが正しいとか間違っているということはなくて、どのスカ ウスもスカウスなのです。面白いですよね。 さてさて、今年はどんなスカウスを食べられるんでしょうか。今からとて も楽しみです。 「スカウス・ランチョン」は、International Beatle Week 観光のための個 人パッケージ「スカウスハウス・ツアー2007」のオプションとしての実施 です。まだまだ参加者募集中です! http://scousehouse.net/beatleweek/scousetour2007.htm ● ● ● スカウスのことを書いていて、以前に『The S.H』という雑誌に書いた エッセイのことを思い出しました。 リヴァプールの街の人々(スカウサー)の魅力についてのエッセイです。 それに関連して、料理のスカウスについても触れています。 せっかくなので、メールマガジン用に編集して今週号に掲載することに しました。よかったら読んでみてください。 ― Kaz(26/06/2007) ―――――――――――――――――――――――――――――― ▼リヴァプール・ニュース <2007年6月25日> ―――――――――――――――――――――――――─ NLW □ *** 6月25日(月) ******************************* 【スカウス缶!】 缶詰になったリヴァプールの伝統料理「スカウス」が人気を呼んでいま す。 史上初めて缶詰のスカウスを販売したのは、ボールド・ストリートで「マ ギー・メイ・カフェ」を経営するジョン・リーさん。 53歳のジョンさんは、妻のスーさんと一緒に、13年前にこのカフェを オープンしました。 マギー・メイ・カフェのスカウスはオープン当初から人気がありました。 あまりにも人気があるので、ジョンさんたちは、持ち帰り用のスカウス を作ることにしました。 その缶詰のスカウスも人気を呼び、自分たちのお店でしか販売してい ないにも関わらず、すでに4000個が売れたそうです。 ジョンさんの話です。 「マーケット・リサーチをしたら、缶詰のスカウスって存在しないってこと がわかったんです。で、このキャピタル・オブ・カルチャーの街のため に、何か役に立てればと思って始めたんです。でもこんなにあっという 間に口コミで広まるなんて」 「うちの親父はスカウスには並々ならぬパッションを持ってたんですよ。 私たちもそうありたいって思ってます。じゅうぶんな需要を喚起できた ら、地元のお店やスーパーマーケットにも置いてもらえるかもしれませ んね。他にもローカルな料理をそろえて、ゆくゆくはブランドみたいに なったらいいな、なんてことも考えてます」 リヴァパドリアンにとって皮肉なことに、この缶詰「マギー・メイズ・オリジ ナル・スカウス」は、リヴァプールではなくマンチェスターの食品会社「ミ ナラ・フーズ」で製造されています。 ジョンさんの息子でマギー・メイ・カフェの共同経営者、アンディさんはこ う話しています。 「リヴァプールではどこもやってもらえなくて、仕方なくマンチェスターで つくっているんです」 しかし、にっくきライヴァル・シティーで作られていることは、セールスに はほとんど影響していないようです。 ジョンさんが続けます。 「始めた途端、すごいことになっちゃいました。もう4000缶ほど売れてま すからね。評判も上々ですよ。リピーターもたくさんいらっしゃいます」 「スカウスってのは、それぞれの家庭で違うもの。だからこのスカウス は我が家のスカウスなんですよ。うちの母親のレシピがベースになって るんです」 ―――――――――――――――――――――――――――――― ▽エッセイ:「英国・リヴァプールを歩く 〜愉快な『スカウサー』〜」 ―――――――――――――――――――――――――─ NLW □ 「英国・リヴァプールを歩く 〜愉快な『スカウサー』〜」 / 山本 和雄 <活気あふれる街> かつては大英帝国を牽引し、その繁栄を支えたリヴァプールだが、第 二次大戦以後は貿易や造船といった伝統的な産業が急速に衰退し、 斜陽の代名詞のように言われた時期もあった。 しかしそれも過去の話。現在のリヴァプールは、文化やエンターテイメ ント、観光といった平和産業を根幹とした近代的な都市に生まれ変わ り、街じゅうに活気があふれている。 街のあちこちで再開発が急ピッチで進められる一方、訪れる観光客や カレッジで学ぶ学生の数は、ぐんぐん伸び続けている。 音楽やスポーツは相変わらず盛んだが、近年は「映画の街」としても 新たにスポットライトを浴びている。 今では珍しくなった石畳や古い街並みが多く残っている上に、大きな 映画スタジオが新しくオープンしたため、毎年200本近くもの映画やドラ マがこの街で撮影・制作されているのだ。これはロンドンに次ぐ多さだ という。 実を言うと、「シャーロック・ホームズ」も何度かこの街のお世話になっ ている。 最近では2002年に、BBC制作のドラマ『The Hound of the Baskervilles (邦題:バスカビル家の犬)』がこの街で撮影された。リヴァプール大聖 堂のすぐそばにあるカニング・ストリートが、1910年のロンドンのベイ カー・ストリートとして使われたのだ。 周辺の住民たちは、衛星放送のパラボナアンテナを外すなどして快く 協力した。ちなみにワトソン博士を演じたのは、リヴァプール出身の個 性派俳優Ian Hartだ。 <リヴァプールの魅力> リヴァプールの名所や見どころといえば、それこそいくらでも挙げられ る。 荘厳で美しい2つの大聖堂や、3日間で14万人近くの競馬ファンが集 まる世界最大の障害競馬レース『Grand National Meeting』(4月)、50 万人もの音楽ファンを動員する世界最大のビートルズ祭り 『International Beatle Week』(8月)、同じく50万人規模の観光客が集 まる『Mersey River Festival』(6月)、およそ1ヶ月の長期にわたり、日 替わりでビッグスターのコンサートが行われる『Liverpool Summer Pops』(6月)、プレミアリーグの強豪で世界的な人気チーム「リヴァ プールFC」と伝統の「エヴァトンFC」、英国有数の博物館やギャラリー、 ヨーロッパ最古のチャイナタウン、華やかなナイトライフ、Gerry and the Pacemakersのヒット曲ですっかり有名になった「マージー・フェ リー」、ドラマティックなスカイライン、歴史的な建築物、などなどだ。お そろしく名所や見どころの多い街なのである。 しかし、最大の魅力をひとつだけ挙げるならば、ビートルズでもフット ボールでも大聖堂でも歴史でもなく、やはり「この街に住む人々」という ことになるだろう。 <愉快なスカウサー> 学問的に言うと「リヴァパドリアン(Liverpudlian)」、くだけた言い方をす るならば「スカウサー(scouser)」。彼ら、彼女らのキャラクターは、世界 の天然記念物にしたいくらいユニークだ。 アイリッシュの血が多く入っていることや、英国最大の港町であったこ とが関係しているのだろうと思う。素朴で頑固で義理堅く、おおらかで、 独特のユーモアセンスを持ち、すぐに誰とでも「メイト(友だち)」になっ てしまう。それがスカウサーの気質だ。 例えば、あなたがパブで一人静かに飲んでいるとする。しかし気がつ けばいつの間にか、その場に居合わせた常連と一緒に乾杯している はずだ。「イエ〜イ!」とか「チア〜ズ!」とか言いながら。 僕の体験では、ほぼ100%そうなる。旅人を退屈させまいとする気遣い からか、あるいは彼ら自身が退屈しているからなのか、とにかくそっと 放っておいてはくれないのだ。 タクシーに乗れば、頼みもしないのに運ちゃんが「即席ツアーガイド」に なってくれたり、道端で地図を広げれば、必ず通りがかりの人から「だ いじょうぶ?」「どこへ行くの?」という声が掛かる。 まあ要するに、親切でお節介で、馴れ馴れしい人たちなのだ。決してス マートじゃないけれど、「グッド・ハート」を持った人たちなのだ。 よく知られているように、リヴァプールの方言は強烈だ。 「スカウス・アクセント」と呼ばれるそれは、同じ英国人にさえ「違う言 語」と言われてしまうほどなのだが、その独特のリズムとイントネーショ ンは実にユーモラスで、僕は大好きだ。 たとえ理解できなくても、聴いているだけで嬉しくなってくる。「キューズ ミー?」「ター」「アーライッ!」「チァズメイッ!」「ワァ?」…。 どうだろうこの軽さ。屈託のなさ。英国的スノビズムのまさに対極であ る。スカウサーは、「気取ったもの」や「偉そうなもの」が大嫌いなのだ。 そして誰もが、この街をこよなく愛し、スカウサーであることを誇りにし て生きている。 <スカウサーの「心の味」> リヴァプールには、「スカウス(scouse)」という伝統料理がある。じゃが いもと玉ねぎをメインに、ありあわせの野菜や肉をひたすら煮込むだ けというシンプルな家庭料理なのだが、これがほんとうに美味しい。名 前から想像できる通り、「スカウサー」という呼び名はここから来ている。 このスカウス、元々はスカンジナビアの船乗りたちの料理で、 Labskauseという名前だったのだそうだ。それがリヴァプールに伝わっ たのちに年月とともに縮まり、スペルも変化してscouseになったと言わ れている。 僕にはこの料理が、リヴァプールを象徴しているように思える。激動の 歴史の中で、人や物や文化などあらゆるものを受け入れ、融合させ、 独自のものに育んできたこの街と、絶妙にオーヴァーラップしているで はないか。 スカウサーの「心の味」、スカウス。もしあなたがリヴァプールを訪れる ことがあれば、ぜひ味わってみてほしい。できればローカル・ビターの 『Cains』と一緒に…。 (おわり) ―― 初出:『The S.H』(ミスト・パブリッシング) 2004 Vol.06―― ―――――――――――――――――――――――――――――― ▼スカウスハウス・ニュース ―――――――――――――――――――――――――─ NLW □ *** LFCグッズ通販 No.7:On Sale Now!! 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