July 10 2007, No.305
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  リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World 
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□■ INDEX ■□

 ▽フロム・エディター
 ▼リヴァプール・ニュース <2007年7月7日>
 ▽特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
 ▼「利物浦日記2006」
 ▽スカウスハウス・ニュース
 ▼今週のフォト


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▽フロム・エディター
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2010年完成予定のリヴァプールFCの新しいホームは、イングランド最
大のフットボール・スタジアムになるようです。
現在のアンフィールドのすぐ近くに建てられるこのスタジアムは、元々
の計画では6万1000席になる予定で、シティ・カウンシルも承認済みで
した。
しかし新オーナー、ジレット&ヒックスさんのコンビはそれでは満足せ
ず、2万席も増やしたおよそ8万席のスタジアムにするよう、建設計画
をやり直したのだそうです。
そしてその新計画案は、今月25日にカウンシルに承認される見通しと
のことです。

ジレットさんはNHLのモントリオール・カナディアンズのオーナー、ヒック
スさんはMLBのテキサス・レンジャーズのオーナーでもあります。
スポーツ・ビジネスに精通するこの2人が、6万では足りないと言うので
すから、そうなのかもしれませんね。
シティ・カウンシルも、マージーレイルに新駅をつくるなど、巨大キャパ
シティに対応できるよう、インフラの整備を検討しているそうです。

でもですね、いきなり8万人収容のフットボール・スタジアムと言われて
も、身近にないのでなかなか想像しにくいですよね。
ちょっと調べてみました。

日本で一番大きいのは埼玉スタジアムで、6万3000人収容だそうです。
うん、これよりはずっと大きいことは確かですね。
現在のイングランド最大のスタジアムは、マンチェスター・ユナイテッド
のホーム、オールド・トラフォードで、約6万8000席です。あんな大きな
スタジアムでも、まだ1万席足りないとは…いったいどんなスタジアム
ができるんでしょうか。

ではスペインを見てみましょう。
いちばん大きいのは、フットボール・ファンにおなじみのカンプノウ、FC
バルセロナのホームですね。ここはでっかいです。9万8000席だそうで
す。ほとんど10万人! 参りました! さすがにここまで大きくはしない
ということですね。

では、大きなスタジアムがたくさんあるイタリアはどうでしょうか。
ナンバー1は、ACミランとインテルが使っているジュゼッペ・メアッツァ
です。こちらもフットボール・ファンにおなじみですね。収容人数は、
えーと、8万5000席。お、これは結構近いですね。ここより少し小さいと
思えばいいんじゃないですかね。もちろん僕は行ったことないんですけ
ど…。

現在のアンフィールドはというと、およそ4万5000席です。
レッズの人気からすると、確かにこのキャパシティではぜんぜん足りま
せん。マッチチケットはずっと前から超入手困難な状態ですものね。
でも…う〜ん、どうなんでしょう、8万というと倍近い数字です。ほんとう
にそこまでの需要はあるんでしょうか?

例えば仮に、5万人が入ったとすると、埼玉スタジアムでは「ほぼ満員」
という感じになるでしょうが、新アンフィールドでは空席が3万席もでき
てしまいます。ひょっとすると、「あれ? 今日ガラガラ?」みたいな印
象になるかもしれません。5万人が集まってもガラガラと言われては、
ファンとしては立場がないですよね。

でもスタジアムが大きくなることで、チケット不足は解消されそうです
ね。これは大きいと思います。
これまでは観に行きたくてもチケットが手に入らなくて、観戦をあきらめ
た人は、それこそ数えきれないほどいると思います。
座席がほとんど倍になるのなら、試合当日の窓口でもチケットが買え
るかもしれません。
もちろん我々日本のファンにとっても、これは嬉しいことですよね。期
待したいところです。

…などと喜んでいたところ、ちょっと気になる数字を目にしました。
なんでも、今現在のシーズンチケット・ホルダーは3万人いるんだそう
です。そして、シーズンチケットのウエイティング・リストというものが
あって(つまり順番待ちですね)、それにはなんと! 5万3000人が、
ずら〜〜〜〜っと並んでいるんだそうです。
これを合計すると、えーと、8万3000人……あれま、もうすでに新スタ
ジアムの収容人数を上回ってしまってる…。

ヒックスさん、ジレットさん、どうせなら10万人のカンプノウ級にしときま
す?

                      ― Kaz(10/07/2007)


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▼リヴァプール・ニュース <2007年7月7日>
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*** 7月7日(土) *******************************

【ジョンとポールの50周年】
7月6日は、ジョン・レノンとポール・マッカートニーが初めて出会った日
からちょうど50年です。
運命の出会いの場所となったウールトンのSt. ピーターズ・チャーチで
は、6日から3日間にわたって特別イヴェントが開催されます。最終日
の日曜日には、「ウールトン・ミュージック・フェスティヴァル」と題された
音楽フェスティヴァルが予定されています。

50年前のこの日、15歳になったばかりのポール・マッカートニーは、友
人のアイヴァン・ヴォーンに誘われて、この教会で行われたガーデン・
パーティーにやって来ました。
アイヴァンは、スキッフル・バンド「クォリー・メン」のステージを見せた
いと思ってポールを誘ったのです。アイヴァンとポールは学校の同級
生で、クォリー・メンのリーダーのジョンとアイヴァンは幼いころからの
友だちでした。

ポールはまず、午後4時15分に教会の裏庭で始まったクォリー・メンの
ステージを観ました。
そしてその後、教会ホールでのダンス・パーティーで演奏するため準
備をしているクォリー・メンを訪ねます。ポピュラー・ミュージック史上最
高のパートナー、レノン&マッカートニーは、このとき初めて出会った
のです。

50周年記念の特別イヴェントでは、現在も活動を続けるクォリー・メン
が演奏をすることになっています。
リーダーのロッド・デイヴィスは、地元紙「リヴァプール・エコー」のイン
タヴューにこう答えています。
「ジョンがポールと出会って、我々の音楽はがらっと変わることになっ
たんだよ」
「たぶんあの時が、私がクォリー・メンでプレイしたほとんど最後だと思
う。ポールに追い出されたんだろうって言う人もいるけどね、はは」
「真面目な話、私は勉強を続けるために大学へ行きたかったんだよ。
それが理由さ。ジョンとポールはあの晩に会ったけど、2人が一緒の
ステージに立つことは10月までなかったんだからね」
「みんな知ってるとおり、ちょうど音楽のトレンドも変わる頃だった。ス
キッフルからロックンロールにね」

日曜学校からのジョンの友だちで、クォリー・バンク・スクールの同級
生でもあるロッドは続けます。
「あの日、何かが起きているってことに気がついてた人間なんて誰もい
ないよね」
「ロンドン近郊の自宅の壁に、あの日に撮られた写真を飾っているん
だ。大きく引き伸ばしたやつをね。誰かが家を訪ねて来るたびに、そ
の写真について話すんだよ」

その写真とは、ジョンを中心にしたクォリー・メンが、St. ピーターズ・
チャーチの裏庭のステージで演奏している有名なショットです。
写真を撮ったのは、ロッドの友人で同じクォリー・バンク・スクールのク
ラスメートだったジェフ・ラインドでした。
現在ダブリンに住むジェフは、リヴァプール・エコーのインタヴューにこ
う答えています。
「あの日は自分のカメラを持って行ったんだよ。写真を撮ってあげよう
と思ってね。バンドがステージに上がったのを見て、1枚だけ撮ったん
だ」
「その後でジョンが私のところにやって来た。『俺のバンドの写真撮っ
てたよな』って訊かれたよ」
「で、私は『イエー』と答えたんだが、それっきりだよ、私たちがその写
真について話したのは」
「ずっと後になってからだけど、ヨーコ・オノが、ジョンの写真の中でも
あの写真が特にお気に入りだって言ってくれたよね」
「当時の多くの人々と同じで、私は1本のフィルムにいろんな題材を詰
め込んでいた。後でネガを切り取るんだ。このケースでは、2.25インチ
(約3.175cm)四方だった」
「で、そのまま引き出しに放り込んで、それきり忘れてたんだ」

それから7年も経った1964年になって、ジェフはこのネガを発見しまし
た。そして、リヴァプール・エコーの「ノスタルジー・ページ」に送りまし
た。
フォトグラファー兼アーティストとして働いてきたジェフは、今回の記念
イヴェントに参加して、彼が撮影した歴史的写真のプリントにサインす
ることになっています。

ジェフは続けます。
「素晴らしい里帰りになるだろうね。ファンの人たちと話せるのも含めて
ね」
「50年代のカメラを持って行くつもりだ。eベイのオークションでやっとこ
さ手に入れたものだよ」
「またクォリー・メンを撮影するのもいいよね。そこにジョンがいないの
は寂しいけどね」

ロッド・デイヴィスは、クォリー・メン脱退後、レノンとマッカートニーの2
人に別々の場所で会ったことがあると言います。
「ジョンには1962年にオーウェン・オーウェン(訳注:クレイトン・スクエア
にあった百貨店)の前でばったり会ったんだ。ドラムを演奏できない
かって訊かれたよ。ハンブルグに行くことになったからって」
「無理だよって私は答えて、でまあ、ああいうことになった、と。もし私
が受けてたら全然違う展開になってたかもね」

ポールとの再会は、もっとずっと後のことでした。
「今ウインドサーフィンをやってるんだけど、2,3年前にサウス・コース
トに行ってね。その時にある人が僕をポールに紹介してくれたんだよ。
ポールはそのビーチにバンガローを持ってて、ちょうど犬を散歩させて
るところだった」
「その人がポールに僕のことを話すと、彼は『おお、クォリー・メン…。
僕が君をバンドから追い出したんだっけ?』って言って、いたずらっぽ
く笑った。それから我々は少し話して、彼は散歩に戻った」
「でもよかったよ。これで俺の後釜はポール・マッカートニーだぜって
堂々と自慢できるかな」

「今あの写真を見るとね、そこに写っているみんなのことを考えちゃう
ね。あれからどんな人生を送ったんだろうって」
「あの写真は、私をあのスペシャルな夏の日に連れ戻してくれるんだ。
50年前のあの日にね」


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▽特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
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「ゴールドフィッシュだより」 / ミナコ・ジャクソン
       〜 Goldfish Liverpool Update / Minako Jackson 〜

  ― 第96号 / 「ストリート・ライフ」 ―
 ≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish96_photo.html ≫

こんにちは。
陽が出れば暑く、日陰に行くと肌寒い。雨も降ったりやんだりで、何を
着ていいのか悩む困った天気の続く今日この頃のリヴァプールです。

まずは、FACTでの "The Bold Street Project" 展。
オープニングはちょっとさかのぼって、先週の金曜日に行われました。
FACTの前にテントが張られ、ボールド・ストリートのアフロ・カリビアン
レストラン <Quynny's> や比較的新しいイタリアンカフェ <The Italian
Club> 、オルタナティブ・ブックショップ <News from Nowhere> がストー
ルを出していて、ちょっとしたお祭り気分。

これまでのFACTのエッジーなマルチメディアアートとは異なり、テーマ
が「ボールド・ストリート」というリヴァプールに生活する人、旅行でリ
ヴァプールを訪れた人なら必ず接点のあるだろうこの通りに焦点が当
てられていて、おなじみの風景や人物が登場するので、自然と愛着を
持って見入ってしまう、そんな展示です。

大資本のチェーン店が集まる他のハイストリートとは対照的に、ボール
ド・ストリートは八百屋さん、フードショップ、喫茶店、レストラン、ブティッ
ク、雑貨屋さん、画材屋さん、レコード屋など新旧、中小のユニークな
ショップが並ぶ、まさにシティセンターの「商店街」。しかも国際色も豊
かで、歴史も沢山隠されています。

再開発中のパラダイス・ストリート地域のショッピング・エリアが完成し
たら客足がボールド・ストリートから離れてしまうのでは? とか、ボール
ド・ストリートも個人経営のお店が外に追いやられて画一化されちゃう
んじゃないか、という懸念もありますが、こうした展示を通してリヴァ
プールらしさを持つエリアをより身近に感じ、コミュニティーを守ってい
こう、という意識が高まるといいと思います。

"The Bold Street Project" は、FACTが主催しているインターネットTV
制作プロジェクトTenantspinによるインタビュービデオ、アーティスト
Michelle Wrenが立体フォトコラージュで再現するミニチュアのボール
ド・ストリートと、自称「ソーシャル・メディア・エヴァンゲリスト」Kate Lips
の立ち上げた "Bold Street Blog" で成り立ちます。
ブログには、一般から寄せられたボールド・ストリートの歴史や写真、
ショートビデオなどもアップされています。 
Bold Streetブログ→ http://www.boldstreet.org.uk/blog/

ボールド・ストリートの発祥は1770年、その名前は商人、銀行家であり、
奴隷所有者であったJonas Boldから名づけられたとのこと。
最初は住宅街だったこの通りは、かつて「北イングランドのボンド・スト
リート」と称されるほど華やかな高級ショッピングエリアだったこともあ
るそうです。
また、多くのバンドがボールド・ストリート界隈で演奏しています。最近
では、HMVの仮店舗のオープニングで、Maximo Parkのインストアライ
ブがありました。過去には、The Beatles、The Smiths、The Stone
Roses、New Order、Echo & The Bunnymenなどもこの通りのどこかで
プレイしていたとのことです。

日本では「ビクター犬」として知られている、蓄音機を眺めて聴き入る
ワンちゃん「ニッパー」の絵のもとになった写真は、実は19世紀末に
ボールド・ストリートにて撮影されたそうです。
この絵は、リヴァプールに住んでいた画家Francis Barraudが、ニッ
パーの飼い主であった兄Markの死後、ニッパーを引き取り、リヴァプー
ルに連れてきた後に描かれました。
蓄音機から流れる元飼い主の生前に録音された声を聞きながら不思
議そうにしているニッパーが印象的だったようです。だから
"HMV=His Master's Voice" だったんですね。
http://www.boldstreet.org.uk/blog/2007/06/07/bold-street-and-the-historic-story-of-nipper/

ブログのVideoのカテゴリーから、インターナショナル・フード・ショップ
<Matta's> のMatta氏や、毎日5〜6時間、ボールド・ストリートの定位
置でアコーディオンを弾くおじいちゃん、Billさんのインタビューも見られ
ます。Billのインタヴュアーは、Tenantspinの名物プレゼンター&スプー
ン弾きのおじいちゃん、Johnさんです。
http://www.boldstreet.org.uk/blog/category/video/

また、現在のHMV仮店舗と <Argos> の場所にあった <Radiant House>
というガス用製品ショールームにて、1940-50年代あたりに撮影された
というベジタブルパイの作り方ビデオも最高にキッチュでいいです。
http://www.boldstreet.org.uk/blog/2007/06/29/tastes-like-happy/

"The Bold Street Project" は、Fact Media Loungeにて8月19日まで。

 < FACT >
  住所: FACT, 88 Wood Street, Liverpool, L1 4DQ
  電話: 01517074444
  ギャラリーオープン: 11:00〜18:00 月曜休み
  FACTホームページ: http://www.fact.co.uk/whatson/detail/?infoID=6075162433762086244     
  BOLDホームページ: http://boldstreet.renegadepixel.co.uk

♪ ♪ ♪

日曜日には、Williamson Squareにて、"Sugar" というアウトドア・イベン
トがありました。
これは、「かつて砂糖と奴隷を引き換えに三角貿易をして栄えた歴史
のある港街」という共通点をもつ、リヴァプールとフランスはマルセイユ
のコラボレーション・パフォーマンス。
音楽はリヴァプール出身のThe Mak of Tradesが担当、それぞれの土
地から選ばれた6人のダンサーと2人のラッパー、DJ1名の構成。
叙情的なメロディーの見え隠れするラップ・ヒップホップ、時にコンテン
ポラリー・ダンスのような流れるような動きを取り入れたブレイクダンス
は、とっても新鮮でした。
フレンチ&スカウス・ラップの半々でしたので、言葉が理解できればい
いなと思いましたが、素晴らしいストリートパフォーマンスでした。
"Sugar" は、来週の "HUB Festival" でも登場します。
Sugarマイスペース: http://www.myspace.com/sugarproject
Sugarイベント情報: http://www.liverpool08.com/News/SweetMovesFromMarseillesAndLiverpool.asp

♪ ♪ ♪

【今週の告知】
ストリートフェスティバルの予定をいくつか。

その1;
"HUB Festival"
7月14日(土)&15日(日) 12:00〜17:30 入場無料
Otterspool Promenade (Aigburth マージー川沿い)にて。
ライブ、スケートボード、BMX、インライン・スケート、ストリートアート、イ
ンターナショナル・フードなど。
HUBマイスペース: http://www.myspace.com/hubfestival  
HUB Festivalイベント情報: http://www.liverpool08.com/Hub/

その2;
"Brouhaha International Street Festival"
7月16日から3週間に渡って、リヴァプール内外で行われます。
メインのストリート・カーニバルは、8月4日(土)、Liverpool Community
College (Myrtle Street)前から午後12時スタート、Princes Parkにてフェ
スティバルは午後6時まで続きます。
イベントの日程はこちらから。
http://www.artinliverpool.com/blog/blogarch/2007/07/brouhaha_2007_starts_soon.php

それではまた来週!

ミナコ・ジャクソン♪

≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish96_photo.html ≫


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▼「利物浦日記2006」
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「利物浦日記2006」 12 / Kaz
≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo305.htm ≫

【8月28日(月)】

最終日の「マシュー・ストリート・フェスティヴァル」は、6ヶ所の野外特設
ステージと、80カ所以上のインドア・ヴェニューで8時間延々とライヴ演
奏が繰り広げられる。

しかし我々がまず向かったのはライヴ会場ではなく、マシュー・ストリー
トのビートルズ・ショップ階上にあるギャラリーだ。
ここは以前、ビートルズ関係の作品を専門に扱う「マシュー・ストリート・
ギャラリー」だったところだ。残念ながら去年の春にクローズして今は
違うギャラリーになってしまっているのだが、「ビートル・ウィーク」期間
中に限って、“ビートルズ・ギャラリー”として復活するのだ。

今年の展示の目玉は、1969年のビートルズを撮影したフォトグラ
ファー、ビル・ジグマントの作品群だった。ビルさん本人も土曜日の午
後にギャラリーに来てサイン会をした。事前にギャラリーのスタッフから
教えてもらっていて、ぜひ行きたかったのだが、残念ながら行けなかっ
た(…だってアンフィールドでの試合観戦にウールトン&ペニー・レーン
のウォークツアーがあったんだもん、どう考えても無理だ!!)。 
でもまあ作品だけはちゃんと見ておかねばと、この日にお客さんたちと
一緒に行くことにしたのだ。

ビルさんの写真は、見たことのないものもたくさんあって、とても興味
深かった。ビートルズ以外にも、やさしい笑顔のジミ・ヘンドリックスや
可愛らしいメアリー・ホプキンの写真を見ることができた。
ひととおり見て、スタッフのアン=マリーに挨拶をして帰ろうとしたところ
で、部屋の隅にいる人物にふと気がついた。
どこかで見たことあるような気が……あ〜っ! ロバート・ウィタカーさ
んだ!!

1966年のビートルズのフォトグラファーで、日本公演にも同行した、ボ
ブさんには、去年もここで会っている。そして幸運にも、我々スカウス
ハウス一行は、ボブさんに写真を撮ってもらうというハプニングを体験
したのだ。

また会えて嬉しいですと話しかけると、ボブさんは、先々月に日本に
行って来たばかりなんだと言った。
「ああそうか、来日40周年記念でしたもんね。日本はどうでした? 気
に入りました?」
「好きだよ。日本人は好きだし、日本の文化もすごく好きだ。でも日本
の街は…正直言ってあまり。だって日本らしさってものがないじゃない
か。どこ見てもビルばっかりで。日本には独特の美があるのにね。西
洋のマネをする必要なんてないのにね」
まったくそのとおりだ。ボブさんの鋭い指摘に、我々はただただ頷くこと
しかできなかった。

ギャラリーを出て、人波をかき分けるようにしてマシュー・ストリートを
突っ切って、ウォーターフロントへと向かった。
ちょうど、Yちゃんのお気に入りのバンド「ロックス・オフ」が、ストランド
の野外ステージで演奏している時間だった。
スウェーデンのストーンズ・トリビュート・バンド、ロックス・オフは、ここ
数年、毎年フェスティヴァルに招待されている。本物もびっくりの熱い
パフォーマンスは今年も健在で、ぎっしり集まったオーディエンスを沸
かせていた。

その後はピア・ヘッドのビッグ・ステージに行ってみたのだが、予想以
上の混雑ぶりで途中からまったく進めなくなってしまった。仕方なく引き
返して、デール・ストリートのステージ(どんなバンドだったか思い出せ
ない)を観ながらチップスをパクついて(他のお客さんはホットドッグ
だったかな?)いるところに、なんとミナコ&イアンのジャクソン夫妻に
ばったり遭遇。こんな何十万人も集まってるところで会えるとは。これ
だよなあ、これがリヴァプールのマジカルなところなんだよなあと、あら
ためて実感する。

その後、ロンドンに移動するYちゃんと別れて、Kさん&Yさんと一緒に
ビール休憩。
この日はどこのパブも人でぎっしり満員だったが、クィーン・スクエア裏
にあるケインズ直営パブ「Dr. ダンカンズ」まで行くと、少し落ち着いて
座ることができた。

ケインズのビターで乾杯。しみじみ美味い。この日のこの時間のこの
場所のこの1杯。フェスティヴァルの高揚と心地よい疲労が、ビールと
一緒になってじわんとしみ込んでくるような充実感。
まさに至福の1パイントだった。

(つづく)

≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo305.htm ≫


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