July 17 2007, No.306
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  リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World   
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         *** http://scousehouse.net/ ***        


□■ INDEX ■□

 ▽フロム・エディター
 ▼リヴァプール・ニュース <2007年7月15日>
 ▽コラム:「スカウスハウス的・リヴァプール語学留学」
 ▼特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
 ▽「利物浦日記2006」
 ▼スカウスハウス・ニュース
 ▽今週のフォト


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▽フロム・エディター
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ひさしぶりに、Marikoさんのコラム「スカウスハウス的・リヴァプール語
学留学」 をお届けします。
毎回、語学留学に向けての準備を細かくアドヴァイスするこの連載。今
回で5回目になりました。

ちょうどいい機会なので、スカウスハウスの留学サポート体制を、簡単
に紹介してみましょう。

Marikoさんには、スカウスハウスの語学留学担当として、留学を希望さ
れる個々のみなさんの相談に乗ってもらっています。
学校から送られてくる資料には、基本的に学校のことしか書いてありま
せん。
どうしたら留学できるのか、留学するにあたって何が大切なのか、リ
ヴァプールでの生活はどういうものか…などなど、寄せられる相談に、
Marikoさんは、「そこまでしなくてもいいよ〜」と言いたくなるくらいに親
身になって答えてくれています。

ご自身も留学経験者であり、さらに現地で留学生のサポートをしていた
Marikoさんは、まさに理想的なアドヴァイザーです。学生さんにとっては
もちろん、スカウスハウスにとってもありがたい存在なのです。

そして現地では、ゴールドフィッシュのミナコさんに、学生さんのサポー
トをお願いしています。ミナコさんもリヴァプール留学経験者です。
学校やホームステイのお宅への初訪問時に付き添ってもらったり、便
利なお店や交通機関の使い方など、生活する上でのオリエンテーショ
ンをやってもらったり、たまにランチを一緒にしたりと、いろんなケアを
自発的にしてくれています。

Marikoさんとミナコさん、前々から親友同士だったこの2人のコンビ
ネーションもばっちりです。もちろん、実際に留学している学生さんの
評判も上々です。

というわけで、リヴァプールでの語学留学をお考えのかたは、どうぞ安
心して、お気軽にご相談ください。
http://scousehouse.net/study/index.htm


…あれ? なんだかまるっきりPRみたいになってしまいました…。でも
ホントおすすめですよ、ぜひ!

                        ― Kaz(17/07/2007)


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▼リヴァプール・ニュース <2007年7月15日>
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*** 7月15日(日) *******************************

【もっと大きく】
アルバート・ドックの「ビートルズ・ストーリー」が、来年の「ヨーロピアン・
キャピタル・オブ・カルチャー」に向けて、倍以上のサイズに拡大される
ことになりました。
1990年にオープンし、数々のツーリズム・アワードを受賞するなど、
マージーサイドでも有数のツーリスト・アトラクションとなったこのビート
ルズ・ミュージアムは、ここ数年でさらに人気を伸ばしています。2006
年には20万を超えるヴィジターを記録し、これは前年比で17%以上の
増加となりました。

今回の増床により、これまであまり公開されていなかった貴重なコレク
ションの数々が、脚光を浴びることになりそうです。
新しいスペースには、特別展示用のコーナーが作られるほか、これま
でリクエストの多かったジョージとリンゴのソロ・キャリアにスポットをあ
てたコーナーも作られる予定です。すでにあるジョンとポールのコー
ナーも拡大し、展示コレクションの数を増やすということです。
そのほかにも、子供のためのラーニング・センターやカフェ&リラク
ゼーション・エリアの設置が予定されています。

ビートルズ・ストーリーのスポークスマン、ジェイミー・ボウマンはこう話
しています。
「新しいエキシビション・スペースをどうするか、もうちょっと煮詰めない
といけないんですよ。どれも捨てるのが惜しいアイデアばっかりでね、
困ってるくらいです」
「特設コーナーができるのはほんとに大きいですよ。定期的にコレク
ションを入れ替えることができるわけですからね。新しい物が来るたび
に、そのテーマでスペシャル・エキシビションを催すことが可能になるん
です」
「建て増しじゃあないんです。建物自体はそのままです。あくまでのも
ベースメントのエリアを有効に使うということですよ」


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▽コラム:「スカウスハウス的・リヴァプール語学留学」
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「スカウスハウス的・リヴァプール語学留学」 / Mariko

 ― 第5回:ビザのお話 ―

大変大変ご無沙汰しております。
あっという間に今年も半分終わってしまったなんて…。
皆さんは今年立てた目標達成への途中経過はいかがでしょうか?

私は1つ早くも目標を達成しました! 先月リヴァプールに里帰り(?)
してきたのです! 3年ぶりのリヴァプール。もっともっと懐かしく
かんじるのかなあ??? と楽しみにしていたのに、帰ってみたら
なんだかそのまま住んでいるような感覚で、これまた不思議でした。
それがふるさとというものなのでしょうか…。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

【リヴァプール語学留学の流れ】
 1) 学校・コース選び
 2) コース決定・申し込み
 3) 学校より受け入れ許可書到着
 4) 寮・ホームステイ手配
 5) ビザ申請・ビザ取得(6ヶ月以上滞在の場合のみ)
 6) 航空券購入
 7) 旅行保険加入
 8) 渡英準備
 9) リヴァプールへいざ出陣!

今回は5)のビザ申請・ビザ取得(6ヶ月以上滞在の場合のみ)に関し
てお話します。

忘れもしない、2001年9月11日の同時多発テロ。この事件がきっかけ
でイギリスへの入国が厳しくなっています。不法侵入者を防ぐためで
す。

6ヶ月を超える滞在には、渡航前にイギリス大使館で学生ビザの申請
をする必要があります。
これは必ず余裕をもって行ったほうが良いでしょう。最低でも1ヶ月前
には申請を済ませるようにしてください。

★注意★
1.6ヶ月を1日でも越えるとビザが必要です。
2.イギリス大使館の所在地を確認。遠方の方は郵送でも受け付けて
  いますが、パスポートなどの貴重品を郵送する必要があるので必
  ず書留で郵送しましょう。
3.必要書類など、大使館のHPをしっかり確認しましょう。
  http://www.uknow.or.jp/be/visa/visas/visas06.htm
4.大使館には不定期で休館日があるようです。出向く前には必ずHP
  で休館日ではないことを確認しましょう!

以前、確認せずに休館日に大使館に行ってしまった人がいます。地方
だったので、わざわざ新幹線に乗って…。気をつけましょう。

ビザは、特に問題のない場合は、出頭した当日に発行してもらえる
ケースが多いようですが、8月、9月は申請者が殺到するため、余裕を
もっておくと良いようです。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

さて、今回のリヴァプールの旅で、スカウス・ハウスを通して現在リヴァ
プール・コミュニティー・カレッジに通うTさんと、そしてわがスカウス・ハ
ウス特派員のミナコ・ジャクソンさんとも「Everyman Bistro」で再会。
なんとその日がリヴァプール帰郷初ビールでした! それはそれはお
いしかった…。
この旅についてはまた後日、じっくりと回想して書きたいと思います。

イギリスの皆さんは洪水とテロに要注意。日本の皆さんは気候が変わ
りやすいので体調に、お互い注意しましょう!

それでは!

Mariko / スカウス・ハウス語学留学担当

( 第5回・おわり)


「スカウス・ハウス」がサポートするリヴァプール語学留学の詳細は、こ
ちらのウェブページをご覧ください。
http://scousehouse.net/study/index.htm

リヴァプール語学留学に関するご相談は、こちらまでお気軽にどうぞ。
study@scousehouse.net


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▼特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
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「ゴールドフィッシュだより」 / ミナコ・ジャクソン
       〜 Goldfish Liverpool Update / Minako Jackson 〜

  ― 第97号 / 「リテール〜ミュージック〜フィルム・セラピー」 ―
 ≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish97_photo.html ≫

こんにちは。
このところ、7月だとは思いたくないような、どよ〜んとした気候が続く
リヴァプールです。
低気圧に弱い私としては、軽い頭痛でテンションも下がってしまい、本
当に参ってしまうのですが、そんな状態を見かねてた旦那が「Cheshire
Oaksにでも行こうか!」と提案し連れて行ってくれました。

トンネルでマージー川をくぐってウィラル側に渡り、約20分。
"Welcome to the World of Guilt-Free Shopping" というポス ターが。
ここは英国でも最大のアウトレット・ヴィレッジ、「買い物せぬもの来る
べからず」じゃないですけど、不思議と買い物モードにギアーが上がり
ます。

140以上の店舗が立ち並び、ぐるっと2周ほどしたのですが、1周目は
様子見でちらっと外からお店を覗く程度だったのが、2周目になると、
普段なら入らないようなちょっと敷居の高いショップでも、後ろめたさ抜
きで物色してしまいました。恐るべし、Guilt-Free shopping効果。
アパレル系のショップのほかにも、スポーツ・アウトドア系、電化製品、
ホーム・キッチン用品(ウェッジウッドのショップもあり)、文房具から、
自然食品、ソーントンズやカドベリーのチョコレートショップなどいろい
ろで、多くのショップが常時半額以下。

最終的にはバカ買いはしませんでしたが、その日の戦利品として、オ
ニツカタイガーのスニーカーとベンシャーマンのジャケットをバーゲン
価格で購入、あとはヴァージン・メガストアーでDVDを買って、自然食品
のショップで食料を調達。我ながら単純にもすっかり癒されて帰りまし
た。
ああ、これこそリテールセラピー!

チェスターにも程近いので、セットで訪れるといいかもしれません。旅
行で来られる方は、お店によっては、デューティー・フリーの手続きも
できるようですので、要チェックです。

 < Cheshire Oaks Designer Outlet >
  住所: McArthur Glen Cheshire Oaks, Ellesmere Port, CH65 9JJ
  ホームページ: http://www.cheshireoaksdesigneroutlet.com/
  電話: 01513485600
  営業時間: 月〜金 10:00〜20:00
        土 10:00〜19:00
日 10:00〜17:00(ショップによっては午前11時から)
  アクセス: リヴァプール、Sir Thomas Street から、バス1番系統で
        平日は30分毎、日曜日は1時間に1本程度出ています。
        時刻表はこちらから。http://www.firstgroup.com/ukbus/northwest/chesterwirral/home/index.php

♪ ♪ ♪

梅雨の中休みではありませんが、土曜日は唯一青空に恵まれ、午後
はアルバート・ドックのSite Galleryで行われていた、Mercy主催の
"Demolition" 展を見に行きました。
晴れのアルバート・ドックとあって、赤ちゃんからお年寄りまで賑わって
いました。

Mercyといえば、アート、グラフィック、詩などを集めたミニコミ誌でス
タートし、展覧会やイベントを企画しているクリエイター集団ですが、最
近はグラフィックデザイン会社を立ち上げ、Arctic MonkeysのCDジャ
ケットのイラストを手がけたりと絶好調です。
( http://www.mercydesign.co.uk/ )

この日は最終日で、Demolition展のFolk vs Anti folk Closing Partyで、
その名のとおり、フォークが4アクト、アンチ・フォークが3アクトで対決。
そのうちの2つ、アンチ・フォーク組のDavid Cronenberg's Wifeというバ
ンドと、フォーク組John Smithを観ました。

アンチフォークは、80年代にNYを中心に始まったムーブメントで、パン
クの影響を受けながら、その精神をアコースティックな音にのせて炸裂
したもの。
代表的なところでは、The Moldy Peaches、そしてBeckやSuzanne
Vegaもこのシーンに貢献していたそうです。近年はイギリスにも
Anti-folkが広がりつつあり、アクティブにライブイベントなどをオーガナ
イズしています。
Antifolk UKホームページ: http://www.antifolk.co.uk/ 

David Cronenberg's Wife(DCW)は現在、ロンドンのアンチフォークの
第一線で活躍しています。名前からしても奇妙ですが、音やテーマも
キュートなものからブラックユーモアたっぷりなものまで、ひとくくりにで
きないアヴァンギャルドなヒネクレ・ポップです。
David Cronenberg's Wife ホームページ(音源も聞けます): http://www.davidcronenbergswife.com

対するは、南イングランドはデヴォン出身で、リヴァプール在住の若手
フォークのシンガー・ソング・ライターのJohn Smith。
全国各地のフォーク・フェスティヴァルやギター・フェスティヴァルに出
演し、Davy GrahamやCara Dillionとのツアーも予定されています。何
度かライブに行きましたが、観るたびに貫禄がついて、ギターのテクに
もますます磨きがかかっていて、その天才ぶりに感嘆してしまいます。
DCWとは対照的に、オリジナルからクラッシックなナンバーまで正統派
フォークを披露しました。乳母車の中にいた赤ちゃんまで乗り出して聴
き入っていたのが印象的です!
John Smith 公式ホームページ: http://www.johnsmithjohnsmith.com/
John Smith マイスペース: http://myspace.com/johnacousticsmith 

この音楽イベント、結局どちらに軍牌があがったかは分かりませんが、
面白い切り口での企画だったと思います。今後のMercyの活動も楽し
みです。
Mercyホームページ: http://www.showmercy.co.uk/index.htm

♪ ♪ ♪

その足で向かった先は、A-Foundation Greenland Street。50年代〜
80年代までのリヴァプールのウォーターフロントやドックを舞台にした
映画がシリーズで紹介されました。
これは、Tate Liverpoolとリヴァプール大学のCity in Filmsという研究プ
ロジェクトの共同上映会です。
作品は、"The Magnet"(1950年)、"The Waterfront"(1950年)、
"Letter to Brezhnev"(1985年)、"Violent Playground"(1958年)の4
本。このうちの "The Waterfront" を観ました。
14年間も家庭を放ったらかしにしてきた後にひょっこり帰ってきた大酒
飲みでならず者の船乗りと、当惑するその家族のドラマ。
DVD・ビデオ化されていないのが残念ですが、白黒で、戦後間もないピ
アヘッドのLiver Buildingや、Empire Theatre、George Henry Lee(現在
のJohn Lewis)、Owen Owens(現在のクレイトン・ スクエアのテスコと
TK Maxのある建物)などが見られ、興味深い映画でした。

リヴァプール大学のCity in Filmでは、これまでリヴァプールで撮影され
た映画のデータベース化を進めていて、近い将来その情報は、ホーム
ページ上で一般公開されるそうです。
City in Filmホームページ: http://www.liv.ac.uk/abe/cityinfilm/

そういえば、昨年の初頭にリヴァプール&近郊で撮影をしていた映画
"Across The Universe" はどうなったのか調べてみたら、アメリカでは
今年9月に公開のようです。
日英でも見られればいいですね。
公式ホームページ: http://www.acrosstheuniverse.com/

♪ ♪ ♪

【今週の告知】
キングス・ドックで建設が進んでいるLiverpool Echo Arenaで、2008年
のキックオフを飾るコンサートのチケットが発売開始されました。その
名も "Number 1 Concert"。
リヴァプールは世界で最も多くのナンバー1ヒットを輩出してきた都市
で、ギネスブックにも載っています。その輝かしい記録を祝って行われ
るこのコンサート、出演者の詳細はまだ明かされていないので何とも
いえませんが、チケットは木曜日の発売から着々と売れているようで
すので、お早めにどうぞ。

 < The Number 1 Project Live >
  公演日: 2008年1月19日(チケットはThe Liverpool Echo Arena
        Box office又はホームページから購入可)
  料金: £22.50 又は £32.50(Gold Circle席)+予約手数料
  電話: 0844 8000 400
  詳細は、Liverpool Echo Arena ホームページから: http://www.accliverpool.com/whatson/projectlive.asp  

それではまた来週!

ミナコ・ジャクソン♪

≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish97_photo.html ≫


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▽「利物浦日記2006」
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「利物浦日記2006」 13 / Kaz
≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo306.htm ≫

【8月28日(月)】

午後7時からはリッキー&ザ・ミッシェルのギグ。昨日に続いてキャ
ヴァーン・バックでのステージだ。
ファンクラブのみなさんと一緒にマシュー・ストリートに到着したのは、
その1時間前の6時。リッキー&ザ・ミッシェルが、NHKの取材を受ける
ことになっていたのだ。
インタヴューを収録後、バンドがマシュー・ストリートを歩いてキャヴァー
ンへ向かうシーン、そしてキャヴァーンに入るシーンを収録。僕は画面
に入らないように気をつけていたのだが、9月にオンエアされた映像を
観ると、バンドをキャヴァーンにエスコートする姿がしっかり映ってし
まっていた。ちょっと嬉しかった。

楽屋に入ってスタンバイ。
偶然にも、リッキー&ザ・ミッシェルの前のバンドは、昼間にストランド
で観たロックス・オフだった。野外ステージとまったく変わらないハイテ
ンションでオーディエンスを盛り上げている。
楽屋でのリッキーさんは余裕の表情だ。そしてさすがの分析。

「へえ、ローリング・ストーンズのバンド? すごなあ。みんなよく似てる
ね。でもヴォーカルはもうちょっとかな」

え? ダメですか? 上手いと思うけどなぁ。
「うん、もっとさ、こんなふうにしないと。あぁ〜〜いきゃぁ〜〜ん
げぇぇ〜っのぉおぉぉ〜〜♪」

なるほど、下品さが足りんと?
「そう、上品なんだよ。もっと下品さがほしいね〜」

などと評論をしているうちに、ロックス・オフのメンバーが楽屋に戻って
来た。本編のステージが終わったのだ。
みんなものすごく疲れている。特にヴォーカルのトニーは息も絶え絶え、
まさにノックアウト寸前という感じだ。「お疲れさま」と声をかけても、笑
顔で頷くのが精いっぱい。肩でも叩こうものなら、がらがらと崩れてしま
いそうだ。無理もない、あんなにすごい全力投球のパフォーマンスを、
連日何度も繰り返しているのだから…。

しかし客席からはすさまじいコールが聴こえてくる。
MCのニールが、「もっと聴きたいかぁぁ〜〜〜〜!?」とオーディエン
スを煽る声も響いてくる。
30秒ほどだったろうか、それとも1分も経ったろうか、トニーがよろりと
立ち上がりステージに出て行った。他のメンバーも続く。
客席からフル・ヴォリュームの歓声が沸きおこった。グッドラック!

ロックス・オフと入れ替わりにニールが入って来た。また馬鹿な話をし
ているうちにあっという間にロックス・オフのアンコールが終了。リッ
キー&ザ・ミッシェルの出番になった。
すっかりおなじみ、ブルージーな“Cold Turkey”でスタート。その後は
ビートルズ初期・中期・後期、あるいはソロのナンバーをとり交ぜての
選曲でステージは進む。オーディエンスも昨日よりも盛り上がっている。
ステージの袖からさすがだなあと感心して観ていると、間奏のときに
リッキーさんが近寄って来た。

「カズさん、あと何分?」

うっかり忘れていた。
リッキーさんはステージに上がってからその場その場で演奏する曲を
決める。つまりセットリストというものがない。セットリストがないというこ
とは、残り時間の計算が難しいということなのだ。終盤の選曲にもかか
わってくる。
急いでニールに相談した。
「う〜ん、そうだな、押してるから、あと2曲だな。そのあとアンコールに
1曲行こうか」
時計を見ると、確かにスケジュールはかなり遅れていた。次のバンド、
リンガーもスタンバイしている。

ステージの袖に戻ってリッキーさんが近づいて来るのを待つが、一向
にやって来る様子がない。こちらを振り向きもしない。曲が終わっても、
すぐ次の曲に入ってしまった。
仕方がないので楽屋を出て客席に入り、中腰で最前列を横切り、リッ
キーさんのまん前にしゃがんだ。ちょうど“Helter Skelter”を熱唱中の
リッキーさんだったが、すぐに気付いてくれた。「この曲を入れてあと2
曲」と手で合図をすると、シャウトしながら小さく頷いてくれた。うまく行っ
たと安心するよりも先に、リッキーさんの冷静な対応にあらためて感心
してしまった。あれだけ激しい曲を演奏している最中に、よくこんなに
冷静でいられるものだ。プロフェッショナルの真髄を見た気がした。

しかし僕の伝え方がまずかったようだ。
リッキーさんは「この曲が終わったらあと2曲」と判断したのだろう、いっ
たん終了するはずのところで終わらず、そのまま“Golden Slumbers〜
Carry That Weight〜The End”のメドレーに突入してしまった。ニール
がステージに出ようとしたが間に合わなかった。
ここで再びニールと相談。
「カズ、悪いけどアンコールは無理だよ。これ以上伸ばせないし、リン
ガーにもずっと待ってもらってるし。これで終わりにしよう」
オーケー、ニール。残念だけど仕方がない。

曲が終わって、ニールが飛び出して行った。リッキー&ザ・ミッシェルを
紹介して、バンドを楽屋に帰す。そして時間が押してるのでこれで終わ
りです、ごめんなさいと説明するニールに、オーディエンスからはブー
イングの嵐が浴びせられている。素晴らしいパフォーマンスだったか
ら、誰もがアンコールを望んでいるのだ。もっともな話だ。僕だってアン
コールを聴きたい。
オーディエンスを納得させようと一生懸命になっているニールの後姿を
見ていて、ちょっとしたいたずら心が湧いた。僕の姿は、オーディエン
スからはよく見えるけれど、ニールには見えない…よっしゃ!

ステージの袖から少し出て、バンザイというか胴上げというか、「もっと
やれぇ〜〜」というジェスチャーを繰り返してオーディエンスを煽る。も
ちろんみんな大喜びで反応してくれた。「モー! モー!」の大合唱は
どんどんどんどんヴォリュームアップして行った。
ニールとしてはたまったものではなかっただろう。オーディエンスをなだ
めようとすればするほど、盛り上がりは静まるどころか、ますますヒート
アップするのだから。

しかしさすがにニールも、何かヘンだということに気がついて、くるりと
後ろを向いた。そこにはバンザイポーズの僕…うわっ、見つかってし
まった!

「こらぁカズ!!」

ニールの怒鳴り声に背中を向けて、一目散に楽屋へと逃げ帰る。しか
しニールは許してくれなかった。「カズ! こっちこい!!」と何度も呼
ばれて、すごすごとステージに出て行った。

キャヴァーンのステージの真ん中で、僕をそばに立たせたニール。何
をするのかと思ったら、オーディエンスに僕のことを紹介しだした。日
本から素晴らしいバンドを連れてくるのはコイツだとか何とか…。しか
し時間がないというのに、ずいぶんゆっくりとした紹介の仕方だった。
早くしろばかやろう、と何度も言おうとしたけど、言えなかった。恥ずか
しさと緊張のせいだ。なにしろここはポール・マッカートニーが実際に
立ったステージで、目の前には熱狂的なビートルズ・ファンが何百人も
いるのだ。

いちばん印象に残っているのは、スポットライトの強烈さだ。眩しすぎて
客席がまったく見えなかった。そして、ものすごく熱かった。
最後にニールが、「カズの会社の名前はな、サイコーなんだぜ。なんて
いう名前かって言うとだな、いいかみんな、よく聞けよ、スカウスハウ
スって言うんだぜ!」と言って、歓声と笑い声と拍手が沸いて、やっと
解放された。

後でKさんに会ったとき、「あれはMCのテクニックだな」と言われた。
「どういうことかっていうと、あれだけ盛り上がってしまった後で客を納
得させるのはほとんど無理だよ。だからカズさんを利用したんだ。ゆっ
くりゆっくり説明する間に客の興奮を醒まして、最後はハッピーにして
終わらせたってことだよ」

…なるほど、そういうことだったのか。やれやれ、結局はニールの思う
つぼだったわけか…まあでも、そんなに悪い気はしなかった。
考えてみると、キャヴァーンのステージで拍手を浴びるなんて経験、な
かなかできるもんじゃない。

ひとつ残念なのは、この時の写真が手元に1枚もないことだ。
もしも読者の方で、僕とニールがキャヴァーンのステージで並んでいる
姿を撮影した方がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡ください!

(つづく)

≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo306.htm ≫


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ツアーの詳細は、ウェブサイトの「ガイドツアー」ページをご覧ください。
http://scousehouse.net/beatles/guide_london.htm
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*** 原稿募集中 ******

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旅行記、レポート、研究、エッセイ、写真などなど、リヴァプール、ある
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お気軽にお寄せください。楽しい作品をお待ちしています。


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*** 今週の「ゴールドフィッシュ」フォト ******

今週も、特派員ミナコさんから素敵な写真が届いています。
ウェブサイトの「NLW ゴールドフィッシュだより」ページをご覧ください。
http://scousehouse.net/goldfish/goldfish97_photo.html


*** 今週のフォト・アルバム ******

今週の「NLW フォト・アルバム」ページには、連載「利物浦日記2006」
にちなんだ写真を掲載しています。
http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo306.html 


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