July 31 2007, No.308
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  リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World   
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NLW ■
         *** http://scousehouse.net/ ***        


□■ INDEX ■□

 ▽フロム・エディター
 ▼リヴァプール・ニュース <2007年7月31日>
 ▽特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
 ▼寄稿:「イギリスのフラワーショー」
 ▽スカウスハウス・ニュース
 ▼今週のフォト


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▽フロム・エディター
―――――――――――――――――――――――――─ NLW □

今週は、久しぶりに下村えりさんからの寄稿を掲載しています。
えりさんといえば、「フットボールの旅」や「リアルエールのすすめ」と
いった、どちらかというと「男くさい」テーマの連載でおなじみです。

でも今回はそのどちらでもありません。
タイトルは「イギリスのフラワーショー」。もしかして意外に思われるかた
もいらっしゃるかもしれませんね。
でも何を隠そう、えりさんの本業はフローラル・デザイナー。つまり今回
のテーマこそが「えりさんらしい」ということになるかもしれません。
さらにえりさんからは、そして素晴らしい写真の数々も送ってもらって
います。「NLW フォト・アルバム」ページもぜひ!
http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo308.html 

できればこの「イギリスのフラワーショー」も、NLWの名物になるような
連載になるといいなあと期待しています。
えりさん、どうぞよろしくです!

                        ― Kaz(31/07/2007)


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▼リヴァプール・ニュース <2007年7月31日>
―――――――――――――――――――――――――─ NLW □

*** 7月31日(火) *******************************

【レッズの新スタジアム】
7月25日、リヴァプールFCの新スタジアムの建設計画が、リヴァプー
ル・シティ・カウンシルの承認を受けました。
スタンリー・パークに建設される新スタジアムは、超モダンな外観を持
ち、2010年のシーズン開幕に合わせてのオープンとなります。
新スタジアムの収容人数は6万人とされ、現在のアンフィールドの4万
5000人から1万5000人の増加となりますが、建設段階でさらに増やし
て、イングランドのフットボール専用スタジアムとしては最大の7万6000
人収容となる可能性もあります。

リヴァプールのキャプテン、スティーヴン・ジェラードは、新スタジアムを
絶賛しています。
「正直言って、すごいものになるってことは知ってたんだけどね。でもこ
のプランを5分かけてじっくり見た後で、完全にぶっ飛ぶことになった
ね」
「僕らはリヴァプール・フットボール・クラブだ。僕らは最高のものを求
める。で、これはその最高のものになってくれるだろうね」
「僕はこれまで、いくつかのスペシャルなスタジアムでプレイしたことが
ある。でもこれこそ、ほんっとにスペシャルだよ。しかも、僕らのは他の
クラブのスタジアムをコピーしたものじゃあない。これはすごく重要なこ
とだよね」

もうひとりの中心選手、ジェイミー・キャラガーも、新スタジアムの斬新
なデザインを気に入ったようです。
「みんなこのプランにエキサイトしてるよ。超豪華だよね」
「僕らは今、アンフィールドというグレイトなスタジアムを持っている。で
もデザイナーたちはそれにとらわれず、完璧に違うものを出してきた。
ほんとにスペシャルなものになったね。こんなフットボール・スタジアム、
見たことないぜ」

監督のラファエル・ベニテスも手放しで称賛しています。
「新しいスタジアムの設備は、このクラブの明るい将来を確かなものに
してくれるはずだ。そしてこのスタジアムは、グレイトな我々のファンに
ふさわしいものだ」


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▽特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
―――――――――――――――――――――――――─ NLW □

「ゴールドフィッシュだより」 / ミナコ・ジャクソン
       〜 Goldfish Liverpool Update / Minako Jackson 〜

  ― 第 99号 / 「国際交流 in Liverpool」 ―
 ≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish99_photo.html ≫

こんにちは。
先週、続報をお約束していた、カプリオールのリヴァプール・レポートで
す。
カプリオールはニッポンが誇るワールドクラスのダブルダッチ・チーム。
「ダブルダッチ」とは、2本の長縄を使ったスーパー縄跳びで、その昔、
アメリカはニューヨークでオランダ人が伝達した遊びとしてスタートした
そうです。
一時は衰退の途をたどったものの、70 年代に公式ルールが制定され、
正式なスポーツとして確立されました。

カプリオールは、2004 年オーストラリア、2006年カナダで行われたダブ
ルダッチの世界大会優勝を獲得した、名実ともに世界チャンピオンで
す。
メンバーは、ノブ(リーダー)、テル、Mon、マサに加えて今回残念なが
らリヴァ入りを果たせなかったYabiっちの5名。
日本のダブルダッチを引っ張る存在であるというプライドとカリスマ性、
そして世界にダブルダッチの魅力を多くの人たちに伝えたいという強
いミッションを持っています。
オフステージでは兄弟のように仲が良く、明るく笑いが絶えず、時には
厳しいツッコミを入れあいながらも、互いを理解しケアしあっています。
そして、さすが体育会系、とにかく礼儀正しい。今回は私は急遽彼らの
滞在中アテンド&通訳をすることになったのですが、毎回会うたびに
深々と感謝され、絶妙なタイミングで席やジュースが用意されたりと、
VIP待遇を受け恐縮しました。

"Brouhaha International Street Festival"が始まるその日まで、「ダブ
ルダッチって何?」「日本のカプリオーレって誰?」というところから始
まった人たちが殆どだったようです。
というのも、彼らがこのフェスティバルに招待されたのがイベント開始
の3週間前。東京の代々木公園でパフォーマンスをしているところを、
Brouhahaの運営に関わっているウルグアイ出身のVikkiからその場で
スカウトを受けたとのこと。
カプリオールはフェスティバルの趣旨や詳細も良く分からないまま、リ
ヴァプール行きを決定したそうです。人生、どこで誰が見ていて何が起
こるか分からないものです。

そんな前評判ゼロの状態で行われた先週金曜日のPhilharmonic Hall
でのオープニング。
巧みに回される2本の縄を、アクロバティックな動きやブレイクダンスを
取り入れて跳び舞うパフォーマンスは、多くの観客の度肝を抜きまし
た。お世辞抜きで、彼らへの拍手喝采の音量は他のどのチームよりも
大きかったです。

その他のショーは、悪天候で野外イベントが変更中止になったり変更
になるトラブルもありましたが、オフの日の月曜日に、シティーセンター
で敢行されたゲリラ・パフォーマンスは素晴らしかったです。
私はチャーチ・ストリートとホワイトチャペルの交差する場所での回を
見たのですが、お昼休みの時間帯、続々と観客が集まって来て彼らを
取り巻き、大盛況でした!
途中、警官やパトカーなども現れてヒンヤリしましたけれども、問題なく
続行。

英和辞書を引くと、'double Dutch' には「(俗語)ちんぷんかんぷん、理
解不可能」という意味もあるようです。
確かにカプリオールのレベルまできてしまうと、アスリートの域に入って
いて、普通の人には真似できない業という印象を受けますが、彼らは
自分たちのショーの合間に一般の観客にも
跳んでもらって、「君にもできるよ!」と人々に自信と親しみを持たらせ
ています。
日本では小中学校の生徒たちへの指導なども積極的に行ってきた経
験と、持ち前のフレンドリーなキャラクターで、大人から子供まで幅広
い観客へのコミュニケーションも抜群です。まさにダブルダッチ親善大
使!

私の住んでいる建物のすぐ近所の学生寮は、毎年、Brouhahaのパ
フォーマー村となります。
去年までは、ドラムの練習の音が聞こえてくるくらいの認識しかありま
せんでしたが、今年はアテンドとして私もここにお邪魔し、楽しい経験を
させてもらいました。
毎日各チームのリーダーが招集されてミーティングがあるのですが、
まずは国名で出席をとり、翌日のスケジュールの確認や注意事項が
伝達されます。英語のほかにスペイン語、フランス語、ドイツ語が飛び
交い、リヴァプールにいながら別世界のようで興味深かったです。

世界20カ国から集まって来たパフォーマー達はここで寝食をともにし、
オフの時間は練習をしたり、他国とパフォーマンスを通じて交流してい
ました。
カプリールのメンバー曰く、初対面で自己紹介をするより先にブレイク
ダンスのバトルで技を競い、B-ボーイ、B-ボーイと呼び合って親交を
深めたとのこと。
また、各国の料理を持ち寄るインターナショナル・パーティーなんかも
開催されていたのですが、ノリがラテンな人が多いから酒盛りになるか
と思いきや、飲むよりも踊るが優先だったのも印象的です。

今年のBrouhahaでカプリオール最後のパフォーマンスは、水曜日の日
中にWilliamson Squareで行われました。
その前には、なぜかカラオケ大会が催されていて、ランチタイムに会
社を抜け出したサラリーマンの歌う「マイ・ウェイ」や、思いっきり音程
のはずれている青年がいるかと思えば、小学生くらいの普通の男の子
がこぶしを握って、ジャクソン・ファイヴのナンバーを歌いだしたりで観
客を賑わせました。
そしてカプリオールが特に親交を深めたドイツのRoots & Rootsがブレ
イクダンスを披露したあと、カプリオールが登場。
その様子は、ショートビデオをYoutubeに載せましたので、ご覧下さい。
Capliore in Liverpool: http://www.youtube.com/watch?v=nKJRhq2FVtc

このパフォーマンスが終わると、メンバーは新しいファンに囲まれ、フェ
スティバルの最高責任者のGiles Agisからは満面の笑みで「来年もまた
来てほしい」とオファーを公言され、別の団体からは「リヴァプールのダ
ブルダッチ・チームをトレーニングしに来てくれないか?」との打診を受
けたりと、モテモテでした。

そして一息ついてミニ観光。マシュー・ストリートを歩きました。ビートル
ズ・ショップ、ジョン・レノンの銅像、Wall of Fameなどを回り、キャヴァー
ン・クラブで一杯飲んでゆっくりしてから地上に出てきたら、なんと、元
ビートルズのマネージャーAllan Williamsが!
せっかくなのでお願いして記念撮影しました。

その晩は、彼らの帰国前夜で、他の国のパフォーマー達が、カプリ
オールの送別会をするというので、私と旦那も招待されました。
パフォーマー村で夜遅くまで、多国籍ブレイクダンスのバトルとダブル
ダッチが繰り広げられました。別れ際には、メンバーから私たちに、心
のこもった感謝のメッセージを書いた特大T シャツが。
『I love Liverpool...I love duble-dutch! I love Jackson Family!!』
泣けます。
ありがとうはお互いさまで、本当にエキサイティングな数日間でした。ま
た次回、フルメンバー揃ってリヴァプール入りするのを楽しみにしてい
ます!

カプリオール公式ホームページ: http://www.capliore.com

そしてBrouhahaのクライマックス、インターナショナル・カーニバルは、
8月4日(土曜日)午後12 時スタートです。
Brouhaha International Street Festival: http://www.brouhaha.uk.com 

♪ ♪ ♪

今週後半のリヴァプールでは、"TrocaBrahma" というブラジルとイギリ
スのミュージシャンやアーティストが交流するフェスティバルが行われま
した。
そのうちの日曜日の晩に、ハードマン・ストリートBumper にて行われた
Open Field Church(ブラジル代表)とFour Tet(英国代表)のライブを
観にいきました。
日曜の晩とは思えないほど会場は満員。ライブの前には、リヴァプー
ルの電子音ムーブメントを支えるHive CollectiveのAlexのDJでウォーミ
ングアップ、続いてOpen Field Churchがステージに上がります。
クワイヤーと聞いていたので、てっきり筋金入りのゴスペル合唱団だと
期待していたら、歌はみんな地声で統一感もなく殆ど素人ばり。会場の
雰囲気からも浮いてはいますが、魂から力いっぱい熱唱される賛美歌
もある意味新鮮だったかもしれません。

続いては、別プロジェクトユニット 'Fridge' で最近新しいアルバムをリ
リースしたばかりのKieran HebdenことFour Tetのライブ。
こちらはうって代わってクールなフォークトロニカ。ギターを早弾きする
かのごとくデッキのつまみをぶりぶりと回して奏でるテクニックと演奏中
の鋭いまなざしを見ると、「鬼才」という愛称がぴったりです。アコース
ティックな音素材を使いながら、気持ちのいいビートを打ち出して、会
場はダンスフロアと化して盛り上がりました!

Four Tetホームページ: http://www.fourtet.net/site/site.php
Four Tetマイスペース: http://www.myspace.com/fourtetkieranhebden
TrocaBrahmaホームページ: http://www.trocabrahma.com
(ビール会社主催のサイトなので、アクセスに生年月日の入力が必要
 です。)

♪ ♪ ♪

【今週の告知】
前々回お伝えした、Mercyによる "Demolition" 展。
大盛況に終わりました…が、実はその開催を助成金でまかなわれると
期待していたところが、結果的に支援が得られず、急遽、資金集めの
ためのイベントを開くことになりました。

<'Help Us to Help You' by Mercy>
 8月4日(土曜日)夜 入場料5ポンド
 場所: Mello Mello, 40 Slater Street(Parr StreetとSlater Streetの
                        コーナー)
 ライブ: The Amnesiacs + Tom Brookes
 DJ: Dialogue Disco Supreme Team (Hive) + Doug Kerr
    / Tom Sheppard (Late Night Sessions)
 ホスト/ ポエトリー: The Fiction Massive
 ※この日Mello Melloの2階では、東京代々木公園のテント村からやっ
  てくるアーティスト市村美佐子さんの短編映画上映会もあります。

それではまた来週!

ミナコ・ジャクソン♪

≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish99_photo.html ≫

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▼寄稿:「イギリスのフラワーショー」
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「イギリスのフラワーショー 1」 / 下村 えり (Eri Shimomura)

“RHS Flower Show at Tatton Park 2007” (18th-22nd July 2007)   
≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo308.html ≫

【まえがき】
NLWをご覧の皆様こんにちは。 
“イギリスの夏もすっかり本番!”と言いたいところですが、あいにく5月
中ごろから振り出した雨は、6月は梅雨状態でコンスタントに降り続き、
7月に至っても尾を引いており各地で洪水の被害もあるほど。
しかしこんな雨に負けてはいられません。今日は、ナチュラルで美しい
イギリスのフラワーショーの模様をタップリお届けしたいと思います。
皆様どうぞお付き合い下さい。

私自身、イギリスで2年間フラワーデザインの資格取得のためカレッジ
に通い、今現在フローラルデザイナーとして小規模ながら活動中であ
ります。
ガードナーとしてはマダマダ未熟者ですが、うちの小さなバックヤード
に少しでも緑をと、ガードニングの時間が増えつつある今日この頃。自
然に触れる時間が長ければ長いほど心も洗われ、とても癒されます。
本領発揮、とまで言えるかどうかはともかく、この素晴らしいショーの模
様が幾らかでも伝わればと、心してレポートしたいと思います。

【Tatton Park Flower Show 07】
リバプールにやってきて初めての“Tatton Park Flower Show”訪問と
あって、私の胸も大きく弾む。
“Hampton Court Flower Show”の終了からたった1週間でのショーと
あって、準備も大変だったらしい。ましてや立て続けの雨で更に心配さ
れていた。
しかし初日の18日(RHSメンバー限定)から晴れ間が伺われ、私達が
足を運んだ19日(一般入場初日)は素晴らしい青空の元での開催と
なった。一般公開初日と晴天が重なったためか、大勢の人々が集まっ
て大盛況。しかし敷地は広大で駐車場も十分にとってあるので、混雑
した印象は感じられない。ただ、アルバイトの学生を中心にした警備ス
タッフのみなさんはお忙しだった。

マンチェスターのシティーセンターより12マイル(約19km)南にある
Tatton Parkは、現在はナショナルトラストが所有する観光地である。
今回は公園の中を観ることは出来なかったが、1000エーカー(1エー
カーが1200坪)の敷地には、チューダー朝のお屋敷や日本庭園を含む
広大な庭園やファームランドなど、見所が一杯の公園らしい。
イギリスには、特にビクトリア〜エドワード王朝に賭けて栄えて行った資
産家達が残したお屋敷や家宝、土地などが多く、その後子孫の手に負
えなくなった場合、それらをNational Trustや保護団体に寄付、贈与さ
れるケースが多くある。そして寄付を受けた団体がそれらを保護し、数
ポンドの入場料で一般に公開している。

今回のフラワーショーは、このTatton Parkの一部をお借りしての、年
に一度の大規模なフラワーショーである。
入場料は大人£22(約5千円)子供£5(千円ちょっと)、当日配布の
パンフレットが£3.50(約800円)と、何でもフリーのイギリスにしては
ちょっと高め。

20エーカーの広い公園敷地を使って、イギリス園芸家達によるデザイ
ンガーデン、地域で活躍中のフローリスト(学生を含む)達のFloral
Displays、そして園芸家達が大切に育て上げた花々の披露、販売など
など、バラエティーに富んだ演出の数々が、所狭しと広げられている。 

あまりの広さに加えて、見たいものが目白押しで、どこからスタートして
良いのか、オロオロ…。まるで久しぶりに遊園地に連れてってもらった
子供のよう…。

まずはパンフレットを購入し、フラワーショーの地図を広げてみた。
会場内は上手くオーガナイズされており、とても判りやすい。まずA〜F
の区域に分けられ、区域内では、お店や出し物のテントにそれぞれナ
ンバーがつけられている。

さあ、まず見ておかないといけないものは、このショーの目玉とも言え
る、有名ガードナーのスポンサー付きのガーデンデザインだろう。 

【Show Gardens】
いくつかの園芸露店販売を横目で見い見いたどり着いたのは、セク
ションCにある、有名デザイナーを含むガーデンデザイナー達の数々
のショーガーデン。全てをご紹介したいのだが、数が多いので、特に私
の印象に残った素敵なお庭をレポートしたい。

今回のショーガーデンではカテゴリーが2つ。1つは最大225平方メート
ルの敷地を使った“Show gardens”、2つ目は“Back to Back gardens”
と呼ばれる、2ブロックから3ブロックを使ったかなり小さめのバック
ヤードタイプのガーデンである。

いずれの部門も、優秀な作品には、ショーのスポンサーでもあるRHS
により、賞(ゴールド、シルバーギルト、シルバー、そしてブロンズ)が与
えられる。
RHSはフルネームで“Royal Horticultural Society”といい、イギリスを
リードするガーデニングチャリティー団体である。
“Tatton Park Flower Show”の他、イギリスの初夏をお花で飾る
“Chelsea Flower Show”や“Hampton Court Flower Show”も彼らの主
催である。

☆金賞☆
<Spaced Out UK / Ann Picot & Pasquale Pascucci>
最初に私達の目に入って来たのは、赤いドーナツ型の屋根からス
ティール製の銀色のスティックが色々な方向に伸び、いかにもモダン、
コンテンポラリーデザインといった新感覚のお庭。
このお庭のタイトルは『Spaced Out: A Garden of Observation &
Discovery』。上手に英訳する事はナカナカ難しい。というのも、英語で
はダブルミーニングと言って、一つの言葉で二つ以上の意味を含む言
葉があり、このSpaced Outもその一つではなかろうかと…。

Spaced Outとは、例えばお庭だったらスペース、間隔を取って物を置
いていく、といった様な意味と、もう一つは、ドラッグなどを採ってハイに
なり宇宙遊泳みたいに歩くみたいな意味もあるそうだ。
想像するに、このデザイナーはきっとこの二つの意味をかけてタイトル
に選んだのではないではないだろうか。
とにかく、観察したり何かを発見するためのお庭という意味が込められ
ているようだ。

デザインは地球と宇宙を中心に考えられていて、真ん中の赤のドーナ
ツ型が太陽、その中に穴が開いているのはそこから太陽の光が宇宙
に漏れて数々の星達が存在する意味を持ち、周りの芝の緑が地球を
意味しているのだそうだ。
落ち着いた色合いの花や、ソフトな感触の草木は雲を、クリーム色の
バラなど淡色の草花は、宇宙の凹凸や影を表しているとか……なるほ
ど、納得するようなしないような……。
(えりのテイスト審査:3/5)

☆銀ギルト賞☆
<Forest Fusion / Philllippa Probert>
『森林との融合』の名とおり、お庭の殆どが熱帯雨林地方のシダ科の
緑植物に囲まれ、オーガニックの石で作られたペイブメント(歩道)が
木漏れ日に反射して、眩しすぎるくらいに光っていた。
その中心に、ガラスづくりのサマーハウスが、心地よいガーデンファー
ネチャー(お庭の家具)と共に演出されている。このガラスには最新の
テクノロジーが使われていて、外から入る熱量と光を上手くコントロー
ルできるそうだ。
雨も凌げ、光もふんだんに注がれるとなれば、イギリス人にとっては最
高の極楽場ではないだろうか。
(えりの審査点数:3/5)

☆銀ギルト賞☆
<Cater Allen Private Bank Garden / Jamie Dunstan>
スポンサーの名前を取ったこのお庭のアイデアは、“豪華でロマン
ティックな週末を素敵なホテルで過ごしたい”という所からきているそう
だ。いかにも高級感漂うアリストクラシーの空間をかもし出している。
ガーデンの中心にはプールがあり、そのプールをお屋根付きのデッキ
から、ソファーに座って眺められる優雅さ。デッキ先端からプールへと
滝の様に流れるトリックもお見事。周りを囲むプラントたちも、シーズン
を飾るものからエバグリーンまで、丸く刈られたBuxus(ツゲ)の木や夏
色の花々が上手く混ざり合い、とてもLuxury(贅沢)な雰囲気が演出さ
れていた。
(えりのテイスト審査:4/5)

☆銀賞☆
<Tetrad / Matthew Unwin>
『Tetrad;四方向』とのタイトル通り、4つの空間を使ってのカラフルでい
かにもドラマティックなお庭。それぞれの空間に色とりどりの季節の
花々が植えられ、後方のデッキエリアの左右から、中央に向けて水が
流れる。
“リラックスした空間でガーデンの色合いを楽しんでもらう”というのが
彼の思惑だったようだが、素人の私でさえも、このガーデンからはリ
ラックスを感じ取れなかった。
カラフルな花々があまりにもぎっしりデッキエリアを囲んでいるのと、流
れる水の音が少し煩しすぎるとの辛いジャッジで、このガーデンは銀賞
(シルバーメダル)止まりとなった。
デザイナーのMatthewさん、これには凄く不満そうだったが、まだまだ
ガーデンデザイナーとしてお若そう、更に頑張って素敵なガーデンを
沢山作って欲しい。
(えりのテイスト審査:2/5)

☆金賞☆
<A Personal Journey / Janine Crimmins>
さて、もう一つの金賞受賞作品は、『A Personal Journey』と名の付い
た、一気に目の中に飛び込んでくるダイナミックな色合いとゴージャス
な感覚のお庭。
“普通、お庭にはこんな色合いは使いません”と言いたくなる様な、真っ
赤な壁と黒のガーデンファーネチャーがこのお庭のキーポイント。
それを囲むプラントたちの色合いは、中間の壁を挟んで2シーンに分
かれており、1シーンはこのタイトルのコンセプトでもある『旅』の始まり
を演出しているらしく、クールなブルーや紫の花々で飾られる。
そして壁を越えると、今度は旅のクライマックス、パッションとエネル
ギーを象徴するかの様に、シックな赤茶のロンググラスと真っ赤なクロ
コスミア(ユリ科の植物)、そして濃いエバグリーンが現れる。
プラントたちとバックグランドの派手な演出とがやけに上手く溶け込ん
でいて、好き嫌いを別として完璧な出来ばえ、金賞受賞はフェアーな採
点だと私は思った。
(えりのテイスト審査:3/5)

☆金賞(Best Show Garden)☆
<The Bubble Garden / Heather Appleton>
最後にご紹介するショーガーデンは、『シャボン玉ガーデン』。
今回のショーでわたしが一番気に入ったお庭でもあり、なんと今年の
Tatton Flower Showで、ショーガーデン部門の“Best Show Garden”に
輝いた作品。
このガーデンは、小児白血病で無くなったAnthony Nolan君にちなんで
作られた骨髄ドナートラストが提供している意味深いお庭でもある。
お庭のデザインもアンソニー君の好きな花々で飾られ、彼がお母さん
と遊んだシャボン玉が何よりもこのお庭のコンセプトになっている。
正面のステンレススティールの壁、噴水の演出、小石で敷き詰められ
たオープンなセンタースペースにより、全体的にとてもクリーンなイメー
ジが漂う。さらに、両サイドのクールな色彩のアリウムの花々とグリー
ングラスがいかにも涼しげで、初夏のガーデンにぴったりのマッチン
グ。お庭の後方から次々とブルーの空へ舞い上がるシャボン玉に、観
客達の足もしばらく釘付けになっていた。
お花の色合いやアレンジメントも素晴らしく、全ての演出を含めて100
点満点。
(えりのテイスト審査:5/5)

【Floral Design Studio】
次に足を運んだのは、セクションBのFloral Design Studio。
7つのエリアに分けられた会場には、プロフェッショナルのフローラル
デザイナーや地元のカレッジの作品が展示されていて、フラワーアレ
ンジメントのデモンストレーションも行われていた。 

作品はいずれもかなり大きいアレンジメントで、季節のお花をふんだん
に使って色んな動きをや流れを表したもから、カラフルな色を使って高
さや形を強調演出されたもの等さまざま。
中でもテント中央に位置するThe Black Roseというプロフェッショナル・
デザイナーの演出は目を見張るものがあった。
使われている草花のカラーはグリーンと白のみ。この2色で、いろんな
動きや流れ、あるいは静止が表現される。シンポジュームのクリーンな
白い花や、シャムロックの鮮やかなグリーン(黄緑色の菊)、個性的な
アンサリウムの花など、様々な形のフォーリエッジと木の枝を上手く掛
け合わせての素晴らしい演出だった。

【おわりに】
真夏日にこれだけの広さの会場を歩いたせいか、体力も一気に消耗し
てしまった。
イギリスでは夏の炎天下でも日傘を指す人はまず見当らない。帽子姿
すらほとんど見かけない。典型的な北ヨーロッパの風潮で、日が射す
と一気に露出傾向、体全体に太陽を浴びたがるからだ。
日本人には考えられないだろうが、日焼け止め、UV50など、とんでも
ないって感じである。

会場には3〜4箇所、大きなカフェやレストランが設けてある。私たち
も、中に入って一休みする事にした。
このフェスティバルには、植木やガーデニング道具などのショップで沢
山お買い物された方々のための荷物預かり用テントまで存在していて、
とても便利な上にノーチャージ。さすがに訪れる人の平均年齢も高い
せいか、そのあたりの気配りは抜かりなく考えられてて、私もとてもあり
がたい(年寄り思考)。
予定では沢山お買い物するはずだったのだが、ショーガーデンを見て
周るだけで結構疲れてしまって、残念ながらお持ち帰りの植木は1個
だけ。うちの玄関脇のホスタ(キボウシ)の横に植えるための薄グリー
ンのクレマティス(テッセン)を約800円で買った。
まだ30cm位の高さなのだがしっかりとお花が付いてて、とても可愛い。
シーズン的にはそろそろ終わりなんだが、来年まで待つのがマタマタ
楽しみである。

昨年見逃したショーだけに今年来れたこと自体、とても満足だった。お
天気にも恵まれて十分な目の保養になったと思う。
来年もまた是非来よう!

( Fin )

≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo308.html ≫


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*** 今週のフォト・アルバム ******

今週の「NLW フォト・アルバム」ページには、下村えりさんの寄稿「イギ
リスのフラワーショー」の写真を掲載しています。
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□■ 第308号 ■□

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