November 20 2007, No.321
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NLW ■ *** http://scousehouse.net/ *** □■ INDEX ■□ ▽フロム・エディター ▼特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」 ▽「利物浦日記2007」 ▼スカウスハウス・ニュース ▽今週のフォト ―――――――――――――――――――――――――――――― ▽フロム・エディター ―――――――――――――――――――――――――─ NLW □ 久しぶりに「利物浦日記」の続きを書きました。 あの信じられないくらいにハードで、しかしそれ以上に楽しかったフェス ティヴァルから、もう3ヶ月が経とうとしています。 時の流れはほんとに早いものですね。おかげでただでさえ頼りない僕 の記憶はどんどん薄れて行くばかり、細かい部分はほとんど残ってお りません…。当時残していた簡単なメモも、このあいだ間違えてゴミに 出してしまいました…うぇ〜ん。 そういうわけで、この「利物浦日記」、今後はますます詳しいレポートと はほど遠いものになってしまうと思います。すみません。 でも、なんとかフェスティヴァルの楽しさ、素晴らしさを伝えることができ ればと願っています。 今週書いたのは、バンド<水割り>のキャヴァーン・クラブでのライブで す。このライヴはほんっっとうに盛り上がりました。 キャヴァーンでのライヴは、通常、1つのバンドのステージが終わると、 半分くらいのお客さんは居なくなってしまいます。会場を後にするうち の半分は外へ、もう半分はもう1つのステージに移動します(キャ ヴァーンにはフロントとバックの2ステージあります)。 ですから、ステージに上がって準備を終えて、さあ演奏を始めるぞとい う時には、バンドの目の前にはあまり多くのオーディエンスはいないこ とになります。時間帯が早いとなおさらです。この日の水割りのライヴ もそうでした。 そのオーディエンスの少ない状況をいかにして克服し、どれほどの大 盛況に持って行くか。バンドの真価が問われるのは、このことに尽きる と言っていいでしょう。 そしてこの日の水割りは、そのハードルを楽々とクリアしました。 水割りの演奏には、ある種独特のテイストがあったと思います。 そもそもこのバンドは元からあったわけではなくて、このフェスティヴァ ルへの出場だけを目的に結成されたのです。いや、正確に言うなら、 急逝したバンド仲間の追悼のために結成されたバンドなのです。 リヴァプールで演奏することが、世界中から集まって来るビートルズ・ ファンの前で演奏することが、亡くなった友人への彼らなりの追悼だっ たのです。 だからと言って、彼らの演奏には、悲壮感とかジメジメしたものは一切 ありませんでした。思わず噴き出してしまうシーンはちょこちょこありま したが…。 前にも書いたと思いますけど、過去いろんなバンドのブッキングを担当 しましたが、今回の水割りほど親しみを持ってオーディエンスに受け入 れられたバンドはありません。 演奏するバンドのキャラクター、あるいは「こころざし」というものは、言 葉にしなくてもちゃんと伝わるものなんだなあと、あらためて実感しまし た。 本文にも書いていますが、このキャヴァーンでのライヴは、台湾の ジャーナリストHansさんがヴィデオに収録し、インターネットで公開して います。 嬉しいことに彼は、フェスティヴァルの模様を伝える36分のうち、なんと 10分以上を水割りのために使ってくれています。 我々がマシュー・ストリートを歩いてキャヴァーン入りする姿から始まり、 演奏シーンもまるまる3曲、フルで収録されています。編集のテクニック もさすがに素晴しいです。何度観ても感心していまいます。 ぜひご覧になってみてください。 http://www.wretch.cc/album/show.php?i=Hence0701&b=1&f=1393507135&p=0 ― Kaz(20/11/2007) ―――――――――――――――――――――――――――――― ▼特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」 ―――――――――――――――――――――――――─ NLW □ 「ゴールドフィッシュだより」 / ミナコ・ジャクソン 〜 Goldfish Liverpool Update / Minako Jackson 〜 ― 第109号 / 「キャンドルライト、エレクトリック&スイッチオン」― ≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish109_photo.html ≫ こんにちは。 今週は先週とは打って変わって、バラエティーに富んだ賑やかな1週 間でした。 まずは "Joseph Wright of Derby in Liverpool" 展。土曜日のオープン に先駆けて木曜日に見てきました。 Joseph Wrightは18世紀の肖像画家で、この展覧会では、1768年から 71年までの3年間、リヴァプールで暮らしていた間の彼の作品が展示 されています。 この頃のリヴァプールは大西洋貿易で栄えていて、巨額の富を蓄えた 商人から肖像画の依頼を受けていたようです。当時の帳簿が残されて いてそちらも展示されているのですが、クライアントの中には、現在の リヴァプールの道の名前になっているような人々も見られます。 「キャンドルライト画」というスタイルを確立しただけあって、ろうそくの 灯りと影のコントラストがとても印象的です。 また、フルカラーの油絵も、もちろん素晴らしいのですが、黒と白の チョークやパステルで描かれたモノクロの肖像画のもつ質感や透明感 も溜め息ものです。 この展覧会は2月24日まで続きます。 < The Walker Art Gallery(ウォーカー美術館)> 住所:The Walker, William Brown Street, Liverpool L3 8EL 電話:0151 478 4199 オープン:毎日10:00〜17:00(クリスマスイブは午後2時以降、クリス マス、ボクシングデー、元旦は終日閉館です) ホームページ: http://www.liverpoolmuseums.org.uk/walker/exhibitions/wrightofderby/ アート関連では、このほかに木曜日からFACTにて、マンチェスターの ヴィデオ・アーティストNick Crowe & Ian Rawlinsonによる "At 25 Metres" 展がスタートです。 インドアで花火が楽しめます!こちらは1月13日まで。 < FACT > 住所: FACT, 88 Wood Street, Liverpool, L1 4DQ 電話: 0151 707 4444 ギャラリーオープン: 11:00〜18:00 月曜休み ホームページ: http://www.fact.co.uk/whatson/detail/?infoID=2943079944098101744 ♪ ♪ ♪ 土曜日は、FACTにて電子音楽をプロモーションするThe Hive Collective主催の "Hive Microfestival" が開催されました。 メインアクトはWarp Recordsの代表的ユニットPlaid、サポートにGeiom、 Frog Pocket、そしてリヴァプールからDealing The Hand、Joe Pattersonというラインアップで、ヴィジュアルはHiveお抱えのアーティス トが即興VJをしていました。 会場に入る前に観客はひとりひとり写真撮影され、ケーキが配られて 着席。 私は少し遅れて到着したので、Dealing The Handから観ました。鳥の 鳴き声や雨音、物が階段から転げ落ちる音などをサンプリングしたア ブストラクトなサウンドコラージュで面白かったです。 Frog Pocketはエフェクトをかけたギターやバイオリンを掻き鳴らしつつ メロディックでドラマチックな展開で、聞きながら鼓動が高まっていきま した! Geoimはミディアムテンポでベースが効いたダブで、リズムが気持ちよ く、呼吸が整いました。 メインアクトのPlaidですが、89年から踊るテクノというよりむしろアタマ で聴くテクノ/エレクトロニカをつくり続けています。 生音を取り込んだエレクトロニカが増えるこの頃ですが、彼らの奏でる ミニマルで純正な電子音源に懐かしさを感じると同時に妙な新鮮さを 感じました。 日本では松本大洋原作のアニメーション映画『鉄コン筋クリート』のサ ントラで参加しています。まだ見てないので、是非見たいと思ってます。 Plaidのライブ中は、入場の際に撮られた人々の写真がモンタージュの ように変化していく映像やリモート操作されたビデオカメラが撮った ミュージシャンの表情が映し出されました。 そっちのほうに注意がいってしまって、肝心の音楽への集中力が少々 疎かになってしまいましたが。。。 リヴァプールの若手ミュージシャンとイギリスの電子音楽をリードする ミュージシャンをバランスよくショーケースした、いいイベントでした。ま た来年も楽しみです。 The Hive Collectiveホームページ: http://www.thehivecollective.co.uk ♪ ♪ ♪ 今年もクリスマス・ライツ・スイッチオンの季節がやってきました。 この日は不思議と毎年グッと気温が下がり、厳しい寒さですが冬らしさ が醸しだされます。今回はプレスパスをもらって観客とステージの間の 至近距離で観ることができました。あいにくの雨の降る中、St George's Hall前の広場は、観客でぎっしりでした。 毎年、ゲストを招いて行われるこのスイッチオンのイベントですが、今 回は一段と豪華で、司会にRadio CityのDJ Kev Seed、ゲストに元 Atomic KittenのNatasha Hamilton、リヴァプールが誇るボーイズグ ループEton Road、リヴァプールFCからはJamie Carragher、エヴァトン FCからはVictor Anichebeに加え、マイケル・ジャクソンも顔負けの天 才少年シンガーShaun WalshとNotre Dame School Choir、リヴァプー ル市議会リーダーWarren BradleyとPaul Clark市長。 Natasha Hamiltonはショッピングモール<Metquarter>にヘルシーカフェ <Hamilton's>を今週オープンしたばかり、Jamie Carragherは道の向か い側に<Cafe Sports England>を開店して間もないので、その辺のプロ モーションが目的なのは見え見えなのですが、何より観客は大喜びで した。 Shaun Walshはこの夏の "Brouhaha Festival" の時に初めてみて度肝 を抜かれましたが、何度観ても鳥肌が立つ才能です。あのプチな12歳 の男の子のどこからパワーやグルーヴが湧き出て、こぶしまできかせ ちゃう余裕のパフォーマンスができてしまうのか、とってもアンビリーバ ブルです。Youtubeにテレビ出演した時の映像がありましたのでご覧く ださい。 http://www.youtube.com/watch?v=BL8HkUQWCzY Eton Roadが登場すると、最前列でかぶりつきの女の子達の黄色い声 はピークに達しました。 全国テレビの<Xファクター>というオーディション番組でファイナリストに 選ばれた、チャーミングな男の子4人組です。 Notre Dame School合唱団が出てくると、一瞬トーンダウンしていました が、Eton Road目当てで来た女の子達はとっても協力的(?)で、一緒 に歌ったりしていて微笑ましかったです。 Natasha Hamiltonは3曲披露。新しいカフェのアピールも忘れないしっ かり者。チャキチャキとしたキャラクターで、元気なパフォーマンスが好 感が持てました。 最後に合唱団とShaun Walshが戻ってきて、'Santa Claus Is Coming To Town' を大合唱。 ひととおりパフォーマンスが終わるところで、St George's Hallの屋上か ら、サンタクロースが降りてきました。 降りたまでは良かったのですが、体に巻きつけたロープが解けなくて、 ステージにはたどり着けず。本来ならスイッチオンの真っ赤なスイッチ ボタンを届ける大役を授かっていたのですが、仕方なくスタッフがボタ ンを受け取って届けました。 Warren Bradley、市長に続いて、Jamie CarragherとVictor Anichebe、 Natasha Hamilton、Eton Roadの面々が舞台に揃い、スイッチオン。 クリスマスのイルミネーションが点灯され、人口雪が舞い(これは寒 かった!)、ウォーカー美術館前のWellington像の塔が、クリスマスツ リーに形どられた花火も見られました。 こちらのクリスマスは、日本のお正月のように家族でひっそりと過ごす ものなので、年に一度こうやって市民が集まって楽しくお祝いするのは いいものですね。寒かったですが、心が暖まりました。 ♪ ♪ ♪ 【今週の告知】 その1; ICE2007 アイスランド・フェスティバル 11月29日から12月2日まで、"ICE2007 アート&カルチャー・フェスティ バル" がリヴァプールにて開催されます。 アイスランド政府や大使館の強力なバックアップで、アイスランドの音 楽、映画、アート&デザインからグルメまでアイスランドのフレーバー が楽しめるプログラムが展開されます。 ICE2007ホームページ: http://www.ice07.org その2; Santa Dash 2007 冬の風物詩となりつつある、第4回サンタ・ダッシュ。昨年もまた、 「一ヶ所に最もたくさんのサンタさんが集まった」というギネスブックの 記録を塗りかえたこの5kmマラソン。今年は何千人のサンタさんが走 るのでしょうか? 参加者も募集中とのことです。 Santa Dash ホームページ: http://www.santadash.co.uk/liverpool_santa_dash.html その3; 私事で申し訳ありません。来週はルクセンブルグとドイツにおりますた め、ゴールドフィッシュだよりはお休みさせて頂きます。。。 それでは再来週! ミナコ・ジャクソン♪ ≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish109_photo.html ≫ ―――――――――――――――――――――――――――――― ▽「利物浦日記2007」 ―――――――――――――――――――――――――─ NLW □ 「利物浦日記2007」7 / Kaz ≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo321.html ≫ 【8月26日(日)】 ディングルからバスに乗って、<ビートルズ・コンヴェンション>真っ最中 のアデルフィ・ホテルに戻った。 時計はちょうど1時。バンド<水割り>のみなさんとは20分後に待ち合わ せにして、しばしの間(といっても20分ばかりだけど)自由行動。コン ヴェンション会場を見て回った。 豪華で広いラウンジには今年もたくさんのストールが並び、多くのファ ンでにぎわっている。ホテル内にある4ヶ所のライヴ会場では、それぞ れに熱いパフォーマンスが繰り広げられている。 そして奥のボールルームでは、昨日我々がペニー・レーンで会った ジュリア・ベアードさんがステージに上がり、スペンサー・リーさんのイン タヴューに答えていることろだった。ゆっくり聴きたいところだが、残念 ながら時間がない。 今日の水割りライヴは、2時からキャヴァーン・クラブ、そして5時から アデルフィ・ホテルにある<フライデイズ・バー>の2本だ。 まず僕の部屋でギターのチューニングをしてキャヴァーンへ。クラブの 入り口にはDJのニールが立っていた。 「カズ!」 「やあニール、今年の僕のバンドだよ。ミズワリ」 「おおそうか、リヴァプールへヨウコソ〜!」 ほんとにいつも感心するくらいに調子のいい兄ちゃんだ。不機嫌な ニールって見たことがない。もうずいぶん前になるけど、顔に大きなア ザを作った彼に会ったことがある。やはりこのフェスティヴァル中での ことで、目のまわりが真っ黒になっていたのだ。どう見ても、誰かに思 い切り殴られた直後という感じだった。それでも彼はまったく普通どお りで、「みんな、次のステージで会おうぜ〜!」と、いつもどおりの屈託 のない笑顔を周りに振りまいていた。 さて、キャヴァーンでの水割りライヴ。 昨日のステージは大きい方の<バック>だったが、今日は<フロント>。 あのお馴染みのレンガのアーチのある、ビートルズが出演していた時 代の姿を再現したステージだ。 水割りは3番バッターとしての登場。ステージはほぼ定刻どおりに進ん でいて、彼らは楽屋でゆっくりする暇もなくステージに呼ばれた。 しかしここでトラブル発生。ドン田中さんが唖然としている。なんと、ドラ ムのイスが壊れてしまっているのだ。とても座れない状態。まさか中腰 の姿勢で演奏するわけにも行かないので(前のバンドのドラマーは 一体どうやってドラムを叩いていたのだろう?)、係の人に「何とかし て〜」と頼んだ。しかし天下のキャヴァーンにはスペアのイスは用意さ れておらず(まあそうだろうな)、彼が持って来たのは楽屋に置いて あった普通の背もたれのある木のイスだった。 ニールのイントロデュースで水割りのライヴがスタート。 オープニングは<デイ・トリッパー>。 あの印象的なギター・リフに続いて、ドン田中さんのドラムがどどどどん と炸裂した。ものすごい迫力。すぐ傍で見ていた僕は思わずのけぞっ てしまったくらいだ。 始まる前は、 「初めてだよぉ、背もたれのあるイスで演奏するのは」 と文句を言っていたドン田中さんだが、あのアクシデントで逆に気合い が入ったのかもしれない。前の2つのステージよりも明らかに音が大き い。文字通りのビッグ・ビートだった。 他のメンバーも調子が良さそうだ。 マサ井上さんは、たぶん最年長者なのだが、グループの中では道化 役で、マスコット的存在だ。欽ちゃんのようなすっとぼけたキャラクター がどのステージでもウケていた。 持参したギターが1964年製のグレッチという超ヴィンテージものなの で、チューニングが狂いやすく、そのせいでところどころでミストーンが 発生してしまうのだが、それもひっくるめて、マサさんの重要な個性に なっていた。 そういえばこのステージでは、<アイ・コール・ユア・ネーム>のイントロを ど忘れしてしまったらしく、3回もやり直すというパフォーマンス(?)を やってのけた。間違えるたびにオーディエンスはハラハラドキドキ、今 度こそ成功しろよと全員が祈るような気持ちでマサさんを見守った。 そして最後にようやく成功したとき、曲が始まったばかりという普通は あり得ないタイミングであるにも関わらず、割れんばかりの拍手が沸き 起こった。 ベースのしのポンさんは演奏も素晴らしいが、何よりもステージでの表 情がいい。活き活きとして、すっごく楽しそうなのだ。頭を振り、ジャン プし、思いっきりシャウトする。生涯青春というか、死ぬまで18というか、 とにかく若々しい。見ていて気持ちがいいのだ。 そしてジョニー黒田さん。 この人のスゴさに、僕はこの3回めのステージでやっと気がついた。と にかく、信じられないくらいにジョンなのだ。ジョン・レノンなのだ。顔の 表情も歌声も発声の仕方も歌い方もステージでの仕草も、何から何ま でそっくりなのだ。クールでヤクザな雰囲気もジョン・レノンだし、それを ひっくり返して大爆発するときの迫力もジョン・レノンそのものだ。 そしてこれがいちばん重要なことなのだが、ジョニーさんには、「マネを している」とか「コピーをしている」と感じさせるものが、微塵もない。つ まりジョニーさんには、「ジョン・レノンになろう」という意思がない。 ジョン・レノンになろうとしていないのに、まるでジョン・レノンそのものな のだから、まったく不思議な人である。 僕も結構たくさんのコピーバンドを見てきているけど、こんなジョン・レ ノン・パフォーマーを見たのは初めてだ。ステージの横からじっと見て いて、なんだかゾクゾクした。 この<キャヴァーン・フロント>での水割りのライヴは、掛け値なしの大 成功だった。会場全体がハッピーなアトマスフィアに包まれる、素晴し い盛り上がりだった。 次のバンドの到着が遅れていたために、結局15分以上もオーヴァーし て演奏することになったが、オーディエンスは大喜びだった。 しかし大きな拍手の中で水割りがステージから降りて、やれやれと思っ た途端、MCのニールがステージの上で何か良からぬことをしゃべって いるのが聴こえて来た。 「レイディース&ジェンツ! 今からこの水割りを連れてきた男を紹介 するぜ〜!」 うわ、またやられた! 去年もリッキー廣田&ザ・ミッシェルのステージ の後にこれをやられて、ものすごい恥ずかしい思いをしたのだ…。 「カズ、こら、早くこい! こっちこっち!」 オーディエンスからも拍手。何度も断るが、とても許してもらえそうな雰 囲気ではない。しぶしぶステージに上がって、ちょっと手を振ってすぐ に帰ろうとしたけれど、ニールにしっかりつかまえられてしまった。 「みんな、こいつがカズだ。カズは毎年日本から素晴らしいバンドをこ のフェスティヴァルに連れて来てくれるんだ。えーと、もう10年だっけ?」 「…8年」と僕。まるで借りてきた猫状態。 「そう、8年。たくさんのバンドがこいつのおかげでビートル・ウィークに やって来た。しかもカズの会社の名前が最高なんだ。いいか、聞いて 驚くなよ〜、スカウスハウスだ。スカウスハウスって言うんだぜ! イ エ〜イ! 拍手〜〜!!」 ひきつった顔でオーディエンスに手を振って、逃げるようにステージか ら降りて楽屋に入ると、ヴィデオカメラを持った青年が待っていた。 このフェスティヴァルを取材している台湾のジャーナリストで、水割りの ライヴが素晴らしかったので、映像を公開させてもらいたいのだがい いだろうかということだった。もちろん全員一致で快諾した。 リヴァプールの人や欧米のビートルズ・ファンばかりでなく、台湾の人 に気に入ってもらえたことは、我々としてはとてもうれしいことだった。 帰国後に届いたこのHansさんからメールには、インターネットに公開し ているヴィデオのアドレスと一緒に、こんなメッセージが添えられてい た。 「MIZUWARI are really good ROCKERS!!!!」 (つづく) ≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo321.html ≫ ―――――――――――――――――――――――――――――― ▼スカウスハウス・ニュース ―――――――――――――――――――――――――─ NLW □ *** LFCグッズ通販:On Sale Now!! ****** LFCグッズ通販ページを更新しました! おなじみのマッチ・プログラムとLFCマガジンの最新号がそれぞれ入荷 しています。 また、前回ソールド・アウトになったバックナンバーもいくつか再入荷し ています。 オーダーをいただけるとうれしいです! 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