November 27 2007, No.322
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  リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World   
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NLW ■
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□■ INDEX ■□

 ▽フロム・エディター
 ▼寄稿:「Footballの旅」
 ▽「利物浦日記2007」
 ▼スカウスハウス・ニュース
 ▽今週のフォト


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▽フロム・エディター
―――――――――――――――――――――――――─ NLW □

特派員ミナコさんがドイツ&ルクセンブルクを旅行中のため、今週は
「ゴールドフィッシュだより」がお休みです。
困ったなあ、さびしいNLWになるなあ、どうしよう…と思っていたら、絶
妙のタイミングで、下村えりさんから「Footballの旅」が届きました。
今回は土曜日に行われた、Everton VS Sunderlandのマッチ・レヴュー
です。

7−1というスコアで、ゴールだらけだったこの試合。いつものことです
が、えりさんの原稿は届くのが早いです。だって試合が行われたのは
この前の土曜日。24日です。3日前ですけど、時差がありますから、ほ
とんど2日前みたいなものですよね。しかも、原稿が届いたのは今日
じゃなくて昨日なのです。つまり執筆にはほとんど1日しか時間がな
かったわけで、えりさんの集中力にはまったく脱帽です。
もちろん、内容もさすがえりさん、いつも通り本格的な原稿になってい
ます。帽子だけじゃなくてカツラも脱ぎたいくらいです。
えりさん、ありがとうございました!

「Footballの旅」、フットボール・ファンのみなさんには、じっくり読んでい
ただければと思います。
あ、僕も連載「利物浦日記2007」の続きを書きました。こちらもご覧い
ただけるとうれしいです。
この2つの原稿にちなんだ写真を、今週の「NLW フォト・アルバム」
ページに掲載しています。
http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo322.html 

                          ― Kaz(27/11/2007)


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▼寄稿:「Footballの旅」
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「Footballの旅」 / 下村 えり(Eri Shimomura)

 〜 Vol.11 Premiership
       - Everton VS Sunderland, 24 November 2007 〜

≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo322.html ≫

【Introduction:はじめに】
イギリスの秋も終盤を迎え、朝は霜が降りる寒さ。紅葉もほとんど樹木
を離れ、今では歩道を埋め尽くしています。

イギリス国内のフットボールは、先週まで来年のヨーロッパ選手権の予
戦で盛り上がりをみせていました。
スティーブ・マクラーレン率いるイングランドチームは、21日(水)の最
終戦で苦戦の末にクロアチアに2−3で敗れ、ロシアに抜かれて、信じ
られない予選落ちになってしまいました。
イングランドはチームの半分が故障のため離脱し、主力選手を欠いた
メンバー結成でした。それでも前線でリバプールのクラウチが良く頑張
り、後半ベッカムがMFに入るといいボールが彼に供給されだし、同点
のゴールにつながりました。しかしその後クロアチアにも素晴らしい
ゴールが決まり、再びリードを許したイングランドは攻め続けたものの、
及びませんでした。
すでに出場権を手に入れていたクロアチアに飲み込まれたかのような
試合でした。観ていて悔しくもあり、情けなかった気もします。
次の日には監督の更迭が決まり、ただいまイングランドは監督募集
中。すでに元チェルシー監督のモウリーニョに声を掛け、すぐさま断ら
れたそうです(やっぱり)。

その一方で、昨日(26日)、次のワールドカップの予選グループが決定
になりました。
ワールドカップというとついこの前の気がしますが…年は取りたくない
ものですね〜♪

【Premier League update:プレミアーリーグ】
8月中旬に始まったプレミアリーグも中盤に差し掛かり、リーグテーブ
ルが落ち着いてきたところ。言い直すと、リーグ上位は顔なじみがそ
ろってきたようだ。ただ、順序はやや入れ替わっている。
トップはベンゲル率いるアーセナル(先シーズン4位)が保持。キャプテ
ンでチームの中心にいたアンリ(フランス代表:現バルセロナ)を手放し
た今シーズン、ベンゲルが育て上げた若手たちが見事な働き見せてい
る。ベンゲルの選手育成手腕は昔から有名なのだが、潜在の能力の
ある若手を確保し、しかも多国籍からの外国人選手を(補欠を除くと見
事にイギリス人は一人もいない)実戦で使いながら育て、まとまりのあ
る素晴らしいチームワーク作りに成功している。

後ろを追うのはもちろん先シーズンチャンピオンのマンチェスター・ユナ
イテッドと先々チャンピオンのチェルシー。そして今年は元イングランド
代表監督のエリクソンが指揮するマンチェスター・シティーも未だ上位
を泳ぐ。そしてスタート好調ながら少々浮き沈みの激しいリバプールの
Reds!
これらのチームが、これから当分の間、チャンピオン争いを繰り広げ
ることになるだろう。

≪試合前のリーグテーブル≫
Barclays Premier League Table, 12 November 2007

          P  GD  PTS
1 Arsenal    12  17  30
2 Man Utd    13 17  30
3 Man City    13 3  26
4 Chelsea    13 10  25
5 Liverpool   12 13  24
6 Portsmouth   13 10  23
7 Blackburn   12 4  22
8 Aston Villa  14 21  21
9 Everton    13 4  20
10 West Ham    12 8  18
11 Newcastle   12 1  18
12 Reading    13 -13  13
13 Fulham     13 -4  12
14 Tottenham   13 -1  11
15 Birmingham   13 -7  11
16 Sunderland   13 -9  10
17 Middlesbrough 13 -11  10
18 Bolton    13 -7  8
19 Wigan     13 -13 8
20 Derby     13 -26 6

【Everton:今シーズンのエバトン】
今日の主役Evertonは、順位としては現在のところ9位と例年に比べて
やや低いが、今年のエバトンは何かが違う。少なくとも手ごたえのある
動きをみせてくれている。
もちろん戦いは“勝ってナンボ”で、最終的な結果がすべてかも知れな
いが、今年のエバトンはエネルギーの使い方がちがう。
勝っても負けても1−0で勝利を分けていた数年前のエバトンからする
と自信も付いて、得点する時は2点3点と追加点を取り続けていく。

FWやMFからの攻撃に加え、更にDFも確実な力を付けているようだ。
エバトンでは年長者に当たるDF Lescottだが、最近の彼の活躍は目を
見張るものがある。センターバックもサイドバックも器用にこなす上、ご
機嫌のへダーが爆発! マンUtdと同じように、ディフェンスから得点で
きるのが大きな強みになっている。更に怪我から戻ったCahillがミッド
フィールドに入ることにより、こうも動きが変わるのかと見違える様な厚
みのある攻撃を見せてくれる。しかし実際は未だ浮き沈みが大きく、
UEFA CUPも抱えるスケジュールを踏まえ、これからの後半戦でどの
様なタクティクスを見せてくれるのか、注目である。

【Sunderland FC:サンダーランドFCの歴史】
一方、今シーズンチャンピオンシップ(2部相当)より昇格してきたばか
り、ロイ・キーン率いる新生サンダーランドは、出だしは良かったものの
現在16位で、降格ラインの2つ上あたりを行ったり来たり。
まあ、今シーズンは下に戻らずにプレミアシップに残れればひとまず
ファンも安心なのではないだろうか。ヨーヨーチームのレッテルを剥が
すまでには、まだまだ時間と努力の必要なチームといえようか。

ここでサンダーランドのクラブヒストリーに触れてみたいと思う。
Sunderland Football Clubが始まったのは、1879年10月に遡る。地元
のHendon Board Schoolの教職員グループによって創設され、グラス
ゴー大学出身のJames Allan氏が中心となり運営されていく。はじめは
その名の通り、Sunderland and District Teachers' Association  
Football Club(サンダーランドと教職員によるフットボールクラブ)として
スタートしたらしい。

サンダーランドFCの初のホームグランドはHendonのValley Roadに
あった、The Blue House Fieldと言う小学校のグランドから始まった。
現在ホームで使われているThe Stadium of Light(1997年完成:4万9
千人収容)までになんと8回もグランドが変わったとの事。

1890年代から1900年代にかけて4回のリーグ優勝、第二次大戦でリー
グが中断するまでに2度のリーグ優勝と1937年のFAカップ優勝など、
強豪チームの一角を占めていたが、大戦後は1部リーグと2部リーグ
を行ったり来たりするシーズンが続き、戦後のタイトル獲得は1973年に
FAカップを制したのみとなる。
[リーグ優勝6回:1891-92, 1892-93, 1894-95, 1901-02, 1912-13,  
1935-36 FAカップ優勝2回:1936-37, 1972-73]

近年の出来事といえば、1992年FAカップの準優勝(決勝で惜しくもリバ
プールFCに敗れた)の他に、1999-2000シーズンの躍進がある。
この年のサンダーランドは、FW Niall Quinn(現サンダーランド・チェアマ
ン)やFW Kevin Phillips(現在ウェストブロム)の活躍でリーグ30ゴールを
決めるなど、リーグテーブル7位まで浮上し、サンダーランドファンを盛
り上げた。
そのままプレミアシップでの地位を固めるかと思われたのだが、残念
ながらそうはならず、昇格と降格を繰り返している。

そして今シーズン、昨年就任したロイ・キーン監督の指揮の下、サン
ダーランドは再びプレミシップ定着を目指すことになる。

【Roy Keane:ロイ・キーン監督】
キーンはアイルランド出身(生年月日1971年8月10日)。アイルランド代
表やManchester Utdでキャプテンを務めた彼の姿は、攻守の要、存
在感のあるMF(DF)として記憶に新しいところだろう。プロのサッカー
選手になる前はアマチュアのボクサーだったと聞くと、彼の激しすぎる
闘争心や“サイコ”とも言える様な試合中の乱闘は納得出来る気がす
る。

ヨーロッパ・チャンピオンズ・リーグでの優勝など、選手としてのキーン
は数多くの栄光に輝いた。しかし彼のフットボール・ライフは波乱の連
続だった。
2002年のワールドカップでも、大会前のキャンプで監督ばかりでなく選
手ともぶつかり合い、選手生活最後のワールドカップに出場することな
く、帰途に着いた。
その年はキーンの波乱の年だったのか、その後発行された自叙伝『ロ
イ・キーン 魂のフットボールライフ』(原著 'Keane: The Autobiography') 
での記述が物議を醸すこととなった。
あるフットボールでのマッチ(1997年のマンチェスターシティー戦)での
事故について、『報復を意図して故意にやった』と書かれていたのだ。
キーンはメディアで大きく叩かれ、イングランドサッカー協会(Football  
Association)は彼に、プレミアシップのリーグ戦5試合出場停止と罰金
15万ポンドという処分を下した。

2006年8月、彼はそんな選手生活を離脱し、2部リーグでもどん底の
位置にいたSunderlandの監督に就く。
彼は元マンチェスターUtdだった選手に声をかけ積極的な選手の補強
を行い、クラブを一気に建て直した。チームはシーズンの中盤から終
盤にかけて驚異の追い上げをみせ、クラブの連勝記録を更新した。そ
して最終戦でバーミンガムを逆転し、見事に2部リーグ優勝を勝ち取
る。監督就任1年にしてキーンは、早くもプレミアリーグへの帰還を果
たすこととなった。

監督としてのキーンは、的確な選手起用を行い、選手を信頼し、やる
気を上手く引き出していると聞く。
現役時代には見られなかった細やかな気配りや監督としての指導力
が、今のロイ・キーンにはあるのだろう。
プレミアリーグでの始めての仕事をいかに安定させ、ファンを納得させ
られるかがこれからの彼の課題となる。

【Goodison Park:グディソンパーク】
どんよりとした雨雲に覆われたグディソンパークだが、活気に満ちた商
店街には人の渦。早々とクリスマス前のプレゼントを求める人だろう
か、Everton FCのショップ前にも行列が出来るほどだった。
露天商のおじさんが、まるでフーテンの寅さんのような口上で行き交う
人を苦笑させていた。
『これ、Liverpoolのベニテスも欲しくってしょうがないんだが、オーナー
からお金を貰えなくって、泣いてるってよ』
先日、選手獲得資金の件でリバプールの会長と監督の間での揉め事
がニュースになったばかり。早速それを皮肉に取り上げてるところが
可笑しい。

お天気は今ひとつであるが、11月にしては寒さも落ち着き、予報の小
雨も未だ降ってこない。しかし風が吹き始めた。試合に影響しなけれ
ばいいのだが…。
相変わらず人気の聖ドミニコ教会のバザーカフェは人でごった返して
いたが、とっても温かくって一旦入ると外に出る気にならない。紅茶の
ほかに目に入ったのが、“Everton Mint”というキャンデー。普通のミン
トと違うのは、中にトフィーが入っているそうだ。興味津々でつい買って
しまった。 

スタジアムの中に入ると、TV中継の都合でお昼12時のキックオフで始
まっていた地元Liverpool FCのニューカッスルでのアウェー戦がスク
リーンに映されていた。
リバプールが2−0でリード、試合終了直前に更にBabelのダメ押しの
1点が入ると.…グディソンパーク中がブーイング。

【Kick Off:試合開始】
今日のエバトン、チーム構成は前回のチェルシー戦からすると、MF
Tony Hibbertに替えてMF Mikel Artetaを起用した以外は何も変わらな
い。グッドニュースは、怪我で長く欠場していたFW Andrew Johnsonが
補欠に戻ったことだ。
一方サンダーランドは、元マンチェスターUtdのFWの顔ぶれがそろう。
Dwight Yorkeは先発、Andy Coleはサブに起用されていた。

<前半>
試合は3時ちょうどに始まった。 
試合直後は両チームとも相互に行き交い積極的にゴールを目指す。
開始5分、エバトン最初の試みはMF Steven Pienaarによる右足
シュート。しかしゴールポストを大きくそれる。
エバトンは今日もMFのダイナモMikel Artetaの賢い動きが素晴らしい
チャンスをクリエート。彼からMF Tim Cahillへパスが通る毎に、サン
ダーランドのDFを揺り動かす。

その結果、試合開始わずか12分に待ってましたのエバトン先制点!
高く舞い上がったロングボールをサンダーランドのDF Paul McShane 
が見失った隙にエバトンFW Joseph Yakubu(ナイジェリア代表)がすか
さずペナルティーエリアまで蹴り入れる。ボールはサンダーランドDF  
Danny Higginbottomに当たり、皮肉にもゴールイン。1−0。

続いて18分にはまたもやArtetaが素晴らしい動き。チームキャプテン
DF Phil Nevilleからのボールを、サンダーランドのレフトバックを上手く
かわして8ヤード先のMF Tim Cahillへパス。Cahillは器用なボール捌き
と力強いドリブルでサンダーランドGKを突破。これで2−0。 

24分には、今度はサンダーランドが試合の流れを変えようと、MF  
Grant LeadbitterがエバトンのDFラインを崩し、ペナルティーエリア左よ
りシュート。しかしサイドネットで、惜しくもゴールを逃す。

前半も終盤の40分、エバトンMF Leon OsmanがサンダーランドGK  
Craig Gordon(スコットランド代表)目掛けて素晴らしいボレーシュート。
しかしGordonはすばやい反応でボールを跳ね返した。

43分。またもやエバトンサイドに素晴らしいゴールが決まる。ミッド
フィールドで繰り広げられる魔術の様な演出、PienaarとDF Nuno  
Valenteとの見事なパスの交換から、フィナーレはPienaarの美しい
シャープなシュートでゴールとなる。さすがのGordonも手が出ない。
息を呑むゴールに、会場は歓声が沸き起こった。3−0。

乗りに乗ったこのエバトンサイドを、サンダーランドはどうやったら崩し
ていけるのだろうかと思った直後の45分、マンチェスターUtdのストライ
カーでもあったMF Yorkeが意地のゴール。エバトンDF陣を切り裂くよう
な、マンチェスターUtd時代を彷彿とさせる素晴らしいゴールが決まる
と、丁度ハーフタイムの笛が鳴った。3−1。

<後半>
Yorkeの1点がサンダーランドに希望を与えたのか、後半が始まるや否
や、サンダーランドの攻撃が始まった。エバトンDF陣に圧力を掛けるも
のの、しかしエバトンも3得点の自信からか、なかなか敵にゴールチャ
ンスを作らせない。

50分、サンダーランドDF Ian Harteがフリーキックを蹴るがまたもやサ
イドネットにかかり、ゴールを逃がす。

後半に入ると小雨がグディソンに降り注いできた。

62分、サンダーランドMcShaneが雨で濡れたピッチで滑ったのか、ロン
グパスを受け損ねる。そのボールをCahillが追い、器用なボール捌き
でゴール前までドリブルそしてシュート。エバトン4点目のゴールが決ま
る。4−1。McShane、今日はトコトンついてなさそうだ。
直後サンダーランドも又チャンスを作る。FW Michael Chopraが同じFW 
のKenwyne Jonesから受けたボールをゴール前でシュート。しかしどう
しても得点に結びつかない。

64分、サンダーランドRoy Keane監督はChopraに代えてFWにColeを起
用する。どうにかして得点差を短めたいのだろう。

絶好調のエバトンも攻撃の手を緩めることはなく、71分に5点目目の
ゴールが決まる。
疲れが出たかサンダーランドのDF陣にもスペースが目立ち、ボールが
自由にペナルティーエリアで飛び交う。Artetaからのボールを受けた
Yakubuがクールにシュートを放つ。GKのGordonはエバトンDF Osman 
の影でボールが遮られ、阻止することが出来なかった。5−1。

74分、2点目のゴールを決めたYakubu、きっとハットリックを狙ってた
のだろうが、エバトンのDavid Moyes監督は、怪我から戻ったJohnson 
を投入しYakubuをおろす。

そして80分。加わったばかりのJohnsonに、怪我からの復帰を祝福す
るかのようなゴールチャンスが訪れる。
ゴールはまたもやサンダーランドのディフェンスエラから起きたようなも
の。1点目のYakubuのゴールと同じパターンだ。エバトンGK Tim  
HowardからのロングボールをサンダーランドDFが上手くコントロール
出来ず、エバトン前線に奪われて失点するというパターンである。これ
で6−1。なんというスコア。周りのエバトンファンは笑いが止まらない。

しかし結末は…6点では終わらなかった。
85分、今ゲーム大活躍のOsmanがサンダーランドのDF陣をすり抜ける
美しいドリブル。エバトン輝かしい7点目のゴールとなる。

【End:試合終了】
7−1。試合はエバトンの圧倒的な勝利に終わった。
自信のついてきたエバトンの美しいパフォーマンスだったが、反対にサ
ンダーランドのディフェンスのもろさが露呈したゲームだったと思う。し
かし彼らは反撃することを諦めず、守りだけに徹しなかったのは見ごた
えがあった。きっとこれがキーン監督のやり方なんだろう。
ボールのポゼッションは約半々だったのに、エバトンが高得点を記録
したのは、彼らの攻撃力がアップしている証拠と言えるだろう。

ゲームを終えてサンダーランドは降格圏(18位)に落ち、エバートンは
8位へと上昇した。
両監督は試合終了後の心境をこう語った。

David Moyes(Everton)
『エバトンの監督に就いて初めてとも言って良い程の素晴らしいパ
フォーマンスに言葉もない。この見事なチームプレイをこれからも見せ
られるように努力していきたい』

Roy Keane(Sunderland)
『エバトンにはレベルの高い選手が少なくとも3,4人はいる。我々の弱
みを見抜いて、今日はそのアドバンテージをフルに生かされたのだろ
う。責任を持って、今日の試合よりいち早く学び、選手達を信じて頑張
るつもりだ』

(Fin)

≪マッチ・データ≫

 EVERTON 7 - 1 SUNDERLAND
  Goodison Park, Saturday 24 November 2007 15:00,
  Barclays Premiership

            エバトン     サンダーランド
 ゴール         7         1(Yorke45)
      (Yakubu12,73 Cahill17,62)
      (Pienaar43 Johnson80 Osman85)
 ターゲットショット   14         4
 コーナーキック     2         6
 ファール        9          13
 オフサイド       0         1
 イエローカード   0          1(McShane)
 レッドカード      0         0
 ポゼッション      51%        49%


 Team Line-ups
 Everton: Howard, Neville, Yobo (Jagielka 81), Lescott, Nuno Valente,  
 Arteta, Carsley, Osman, Pienaar, Cahill (Anichebe 74),  
 Yakubu (Johnson 74).
 Subs Not Used: Wessels, Gravesen.

 Sunderland: Gordon, Whitehead, McShane, Higginbotham, Harte,  
 Edwards, Etuhu (Wallace 46), Yorke (Collins 46), Leadbitter,  
 Chopra (Cole 67), Jones.
 Subs Not Used: Ward, O'Donovan.

 Attendance(観客数): 38,594.

≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo322.html ≫


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▽「利物浦日記2007」
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「利物浦日記2007」8 / Kaz
≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo322.html ≫

【8月26日(日)】

<キャヴァーン・フロント>での水割りライヴが終了したのが午後3時す
ぎ。次の<アデルフィ・フライデイズ・バー>の会場入りまでには、1時間
半しかない。
ランチでもと考えていたのだが、みなさんに意見を訊くと、「昼ごはんよ
りもゆっくり休憩したい」ということだった。
あれだけ全力をつぎ込んだライヴの後だから、そりゃあ無理もない。
次のライヴも大盛況必至だから、ここはしっかり休んでいただかなくて
は。

チャーチ・ストリートを歩いているときに、ミナコさんから電話が入った。
今日到着するお客さん、YちゃんとNちゃんの出迎えをお願いしていた
のだが、2人とも無事に学生寮にチェックインしたとのこと。これでスカ
ウスツアーは全員集合だ。よかったよかった。

どこかのパブかカフェで水割りさんたちに休んでもらおうと思うが、今日
のリヴァプールはものすごい人出で、どの店も人があふれんばかりだ。
ビートルズ・コンヴェンション・デイということもあるが、それ以上に今日
は、夏休み最後の3連休の真っ只中なのだ。
しかし僕には1軒、当てがあった。ボールド・ストリートの書店<ウォー
ターストーンズ>の2階にあるカフェ<コスタ>。ここはいつ行っても空いて
いるのだ。案の定、今日もゆったりと空いていて、外の喧噪とはまるで
別世界だ。ソファのあるコーナーは我々の貸し切り状態。これなら落ち
着いて休んでもらえるだろう。
水割りのみなさんにコーヒーと軽食を運んで、僕は店を出てアデルフィ
に向かった。主催者<キャヴァーン・シティ・ツアーズ>のイアンに用事が
あったのと、少しでもコンヴェンションを見ておきたいという思いもあっ
た。

イアンとの用事はすぐに済んで、会場をぶらぶらしていると、Yちゃんに
ばったり遭遇。去年も今年も、なぜかこの日&この場所で会うという偶
然。1年ぶりだけど、相変わらずお人形みたいに可愛らしい。遠慮の
ない毒舌で僕をいじめるのも相変わらずだけど…。
続いて出会ったのは、おお、なんと、ハレルヤ洋子! なんだ、もう来
てたのか〜。実は今日の6時半から、伝説のパブ<ジャカランダ>でハ
レルヤさんのライヴを企画しているのだ。彼女とは火曜日にロンドンで
会っているのだが、さすがハレルヤ洋子というか、「何時に来るのか連
絡しろよー」と言って別れたきりさっぱり音沙汰がなくて、こっちは非常
に困っていた。なぜ困っていたかというと、今回のハレルヤさんのス
テージでは、数曲をジョニー黒田さんと共演してもらうつもりなのだ。
ジョニーさんにもハレルヤさんにもそのことは伝えているのだが、しか
し今からではもうその打ち合わせをする時間はない。これから水割り
はライヴだし、そのライヴが終わる頃にちょうどハレルヤライヴが始ま
る。仕方ない、ジョニー&ヨーコの共演はぶっつけ本番か…。

4時半。水割りのみなさんがアデルフィに集合。100%復活というわけ
ではないだろうが、すっかり元気になった様子。さあ、もう一丁やったろ
うぜ!
<フライデイズ・バー>は、すでにじゅうぶん盛り上がっていた。
全員女性のバンド<ザ・レディバグズ>が演奏している。リヴァプール出
身の5人組だ。すごく上手い。迫力がある。
彼女たちがステージを降りたあとも、ほとんどのオーディエンスはその
まま残った。さすがコンヴェンション会場のビートルズ・ファンは気合い
が違う。よぉ〜し、我々の出番だ。

ほぼ定刻に水割りライヴがスタート。オープニングは<ヘルプ!>だっ
た。そして<フロム・ミー・トゥ・ユー><オール・マイ・ラヴィング>とテンショ
ンの高いパフォーマンスが続く。最初からエンジン全開。キャヴァーン
での疲れなどまったく感じさせない。
これだけのオーディエンスを目の前にしてマイペースでやっている場合
ではないのは分かるが、横で見守る僕としては、最後まで持つのかな
と少し心配になってしまう。明日もライヴがあるのに…。
いや、たぶん彼らは、明日のことなんて考えていないのだろう。全てを
賭けて、このステージに臨んでいるのだ。

いくつか飛んでいるかもしれないが、セットリストを紹介しておこう。だい
たいこんな感じだ。
<ヘルプ!><フロム・ミー・トゥ・ユー><オール・マイ・ラヴィング><ベイ
ビー・イッツ・ユー><アンド・アイ・ラヴ・ハー><イフ・アイ・フェル><ノー
ウェア・マン><ボーイズ><ロックンロール・ミュージック><アイ・ソウ・
ハー・スタンディング・ゼア><ロール・オーヴァー・ベートーヴェン><エ
ニータイム・アット・オール><キャント・バイ・ミー・ラヴ><シー・ラヴズ・
ユー>そしてアンコールに<ツイスト・アンド・シャウト>。

この<フライデイズ・バー>でのライヴは、独特の雰囲気があった。何と
いうか、ものすごくオープンな感じなのだ。さすが一流ホテルのバーだ
けあって、リラックスできる内装やインテリアになっている。しかも窓か
ら光が入るので、全体が明るい。そしてここにいるオーディエンスの大
半は、毎年やって来るコンヴェンションの常連ときている。まるで仲間
うちのパーティーのような、親密な空気があった。
そしてその親密な空気は、演奏が進むにつれて、熱狂の色に染めら
れって行った。オーディエンス全員が、歌ったり踊ったり叫んだり、足を
踏み鳴らしたり、力いっぱい手拍子を送ったりした。会場全体が、信じ
られないほどの一体感に包まれた。

会場の一体感にも感動したが、それ以上に、水割りのパフォーマンス
がさらにグレードアップしていることに驚いた。
さっきのキャヴァーンが間違いなく彼らのベストで、あれがピークだと
思っていたのだが、わずか2時間後にあっさり更新してしまったのだ。

疲労はあったに違いないが、逆にそれが彼らの「開き直り」を生んだの
かもしれない。そして彼らの演奏に触発されたオーディエンスからの熱
狂的なサポートが、彼らをぐいぐいと押し上げ、ポテンシャルを超えた
パフォーマンスを引き出している。そんな感じだった。
グルーヴがグルーヴを呼び、大きなうねりになっていく。まさに理想的
なライヴの形だ。
これが<ビートル・ウィーク>のマジックなのだろう。想像だが、彼ら自身、
未知の領域に足を踏み入れたことを感じながら演奏していたのではな
いだろうか…。

終演後、ホテルの外でしばしクールダウン。マサ井上さんに言われた。
「ステージの横でカズさんが楽しそうに歌ってるのを見たらこっちも楽し
くなったよ」
「だってほんとに楽しかったですもん。僕だけじゃなくてみんな歌ってま
したよね。すごかったですよねー」と僕。
「ほんとにねー。あ、後ろに回って写真撮ってたよね、カズさん。なんか
オーラみたいなのが出てたよ」
「オーラ? 僕がそんなもの出すわけないじゃないですか。単に逆光
だっただけでしょ」
「あ、そうか。後ろ、窓だったもんね」
「そうですよ、まったくもう。後ろなんて気にしてないでちゃんと演奏して
くださいよ…って、もう終わっちゃいましたね。ははは」
「そりゃそうだ。はははー」

一世一代のパフォーマンスをやってのけたばかりだというのに、水割り
のみなさんはあっけらかんとしていた。まったくフツウなのだ。それがこ
のバンドのいいところでもある。
ただ、4人とも今度こそ本当に疲労困憊の様子だ。エネルギーは最後
の一滴まで、出し惜しみすることなく使い切ってしまった。もう1曲だって
演奏することはできないだろう。ベンチに座っているだけでしんどそう
だ。なにもここまでやらなくていいのに…。

でももちろん、ここまでやってもらえて本当に嬉しい。ここまでやってこ
その<ビートル・ウィーク>だ。
明日は最後のライヴがあるが、おそらく期待できないだろう。気力も体
力もノドも、完全に限界を超えているはずだ。もしかしたら、ボロボロの
ステージになってしまうかもしれない…。
でも、それはそれで構わないじゃないかという気がする。全力を出すべ
きところで全力を出したのだ。完全燃焼したのだ。あんなにたくさんの
オーディエンスをハッピーにしたのだ。それで本望じゃないか…。

まあ明日のことは明日考えよう。
とにかく今日の2本のライヴは、本当に最高だった、最高という表現が
陳腐に思えるほど素晴らしかった。
リヴァプールのオーディエンスと水割りのみなさんに、心から感謝した
い。

(つづく)

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今週の「NLW フォト・アルバム」ページには、下村えりさんの「Football
の旅」、そして連載「利物浦日記2007」にちなんだ写真を掲載していま
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