July 08 2008, No.349
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  リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World   
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□■ INDEX ■□

 ▽フロム・エディター
 ▼リヴァプール・ニュース <2008年7月8日>
 ▽寄稿:「英国紀行2008春」
 ▼ゴールドフィッシュだより <No.133>
 ▽スカウスハウス・ニュース
 ▼今週のフォト


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▽フロム・エディター
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今日、スーツケースを買いました。
もちろん旅行用のもので、来月の<International Beatle Week>のツアー
に備えて新調したのです。
10年以上使ってきたサムソナイトのスーツケースが、先月の<Liverpool
Sound>のツアーから帰ってじっくり見てみると、ずいぶんくたびれている
ことに気がつきました。車輪はかなりボロボロです。イギリスのでこぼこ
道でさんざん酷使したので、まあ無理もないなあと思いました。
まだ使って使えないことはなさそうですが、旅の途中で何かあっても困
るので、思い切って買い換えることにしました。

今日まで僕は知らなかったのですが、最近の旅行用かばんには、新し
いタイプの鍵が取り付けられているんですね。アメリカの空港での荷物
検査用に開発されたものなんだそうです。その鍵がついていないかば
んを預ける場合は、検査で破壊されるのを覚悟で施錠するか、鍵をか
けないでおくか、あるいは、その鍵がついたベルトを別に購入して巻い
ておくか、ということでした。

きっと911のテロ以降にこういうことになったのだと思いますが、現在の
スーツケースはほとんどすべて、この鍵(TSAロックというそうです)がス
タンダードになっているようです。
スーツケースの鍵まで統一してしまうなんて、アメリカというのはなんだ
かすごいなあと、あきれ…いや、感心してしまいました。

僕がスーツケースを見に行ったのは、神戸のデパートの旅行用品売り
場です。そこにはたまたまバーゲンコーナーがあり、その中に、きらり
と光るスーツケースがありました。
いや、別にオーラが見えたとかそういうのではなくて、メタリックな水色
をしていたというだけの話です。

係りの人に訊いてみると、バーゲンといってもキズものでも中古でもな
く、品質もまったく問題ないとのこと。何年か前まではサムソナイトをラ
イセンス生産していた<エース>というブランドです。
それが、ただ鍵がTSAロックではない旧タイプというだけで、2万円くら
い値引きされて、たったひとりでそこに佇んでいたのです。

とりあえずアメリカに行く予定のない僕は(マリナーズやヤンキーズを
観に行きたいとは思っているのですが…)、迷わずそのスーツケースを
購入しました。
旧型のせいか形はあまりスマートではないけれど、実用的で頑丈そう
な感じです。
きっと何年もずっとこの売り場で僕を待ってたんだろうなあ…と思うと、
もうそれだけで愛着が沸いてきます。これから長い付き合いになりそう
です。
名前なんてつけようかな…。

                          ― Kaz(08/07/2008)


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▼リヴァプール・ニュース <2008年7月8日>
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*** 7月8日(火) *******************************

【サー・ポールとスポーツ】
ブリティッシュ・パラリンピック・チーム支援キャンペーンに協力すること
になったサー・ポール・マッカートニーが、《Observer Sport Monthly》の
インタヴューに答えています。
これまであまり語られてこなかったスポーツとの関わりについて、興味
深いコメントが多く見られました。リヴァプールに関する部分を抜粋して
紹介します。

Q:世界的に見てもスポーツのさかんな街で生まれ育ったわけですが、
スポーツには元々熱心でしたか?

―― そういうわけでもないんだ。スポーツはぜんぜん駄目で見込みが
なかったから。道端でよくフットボールをやって遊んだもんだよ。でも時
が経つにつれて分かって来るんだよね。ああ僕には才能はないんだっ
て。他の子はもっとでっかくなるしうまくなるし。で、だんだんやらなくなっ
ちゃった。ビートルズはみんなそうだったよ。誰もスポーツ好きって感じ
じゃなかった。僕はテリー(テレビ)でフッティー(フットボール)を観るの
は好きだよ。実際に観に行くこともある。でもすっごいファンってわけ
じゃないんだ。

Q:あなたがリヴァプールFCのファンかエヴァトンのファンかというのは、
長い間議論の的になっていましたね。

―― スポーツやサポーターのルールには反することなんだろうけど、
リヴァプールとエヴァトン両方のファンなんだ。詳しく言うとだね、ウチの
親父がエヴァトン地区の生まれだったから、家族全員がエヴァトニアン
なんだよ。正式にはね。だからダービーマッチや、FAカップの決勝で両
チームが対戦するとかの場合は、やっぱりエヴァトンを応援することに
なるね。

ケニー・ダルグリッシュ(リヴァプールの名選手&監督)について、いい
思い出があるんだ。ウィングスのウェンブリー・アリーナでのコンサート
の時だ。僕はいつもプロモーターに『もしチケットが売れ残ってたら、外
に出てその辺に歩いてる人にあげてくれ。君の親戚を呼んでも構わな
い。とにかく満杯にするんだ』って言ってたんだけど、その日幕が開い
て見てみると、最前列、2列目、さらに3列目もごっそり席が空いてるん
だ。もう大ショックでさ、『プロモーターの野郎、殺すぞこんにゃろ』って
思いながら歌ってた。

でも、2曲終わったところで集団が入って来て、迷惑にならないよう身を
低くして席についた。3列全部埋まったよ。それが、ケニーに率いられ
たリヴァプール・チームだったんだ。みんなお揃いのグレーのスーツに
白のシャツ、赤いネクタイでね。カッコよかった。

その時にケニーに親しみを感じて、こう心の中で言ったんだ。『よしわ
かった、これからは両方のチームを応援するぞ』ってね。だってどっち
もリヴァプールのチームなんだし、カソリックだからとかプロテスタントだ
からってのは僕には重要なことではないしね。だからまあ、法王さまに
はお許しいただくことにして、偉大なる両チームをサポートすることに決
めたんだ。でもさっき言ったように、究極の状況では僕はエヴァトニアン
ってことになるけどね。

Q:ビートルズの全員が特にフットボールに熱心ではなかったというの
は面白いですね。リヴァプール出身の男としてはちょっと珍しいので
は?

―― そうだね。熱狂的なファンでも不思議じゃないよね普通は。でも
僕らみんな、そんなんじゃぜんぜんなかった。だって学校でじゃあ運動
が駄目だった奴らばっかりだもんね。クリケットではずっと外野をやらさ
れてたな。ボールが飛んで来ないところでのんびり座ってられたから、
それで僕はハッピーだったんだ。楽しくはなかったけど。バンドをやりだ
してからはもう年がら年中ずっとツアーでそんな暇なかったし。だから
みんなスポーツ音痴だったけど、でもそれを自慢に思ってたもんさ。

Q:Sgtペパーズのアルバム・カヴァーでは、ビートルズを囲む人々の中
に元リヴァプールのセンター・フォワード、アルバート・スタッビンスが選
ばれていますね。

―― 架空のグループ<Sgtペパーズ>に扮して、自分たちのヒーローを
後ろに並べるというアイデアだったけど、でも半分だけだよ、真面目に
考えたのは。だってビートルズなんだぜ。

アルバート・スタッビンスを持って来たのはジョンだったと思うよ。たしか
ディキシー・ディーン(エヴァトンの伝説的プレイヤー)も候補になってた
な。でも僕ら、名前だけ昔に聞いたことがあった程度で、どっちもあん
まり知らなかったんだ。名前が面白いから選んだんだな。『アルバート・
スタッビンス、ええやん!』みたいに。それ以上の意味はなかったと思
うよ。

Q:先日の<Liverpool Sound>コンサートでは、アンフィールドの満員の
オーディエンスに向かって、「リヴァプールに戻って来るといつも、いろ
んな思い出が押し寄せてくるんだ」と言ってましたね。

―― うん、スピーク空港…今じゃジョン・レノン空港だね。そこに着い
た瞬間から、昔の思い出がどっと押し寄せて来たよ。スピークに住んで
た頃には自転車に乗って空港によく行ってたな。あの頃はずいぶん遠
いと思ってたけど、今じゃたった20ヤードくらいの感じだね。飛行機を
見るお決まりのスポットもあったんだよ。

そこから恒例のツアーのスタートさ。子供の頃の家を見ながらドライヴ
するんだ。普通はルート的にイージーな2つの家を通ることになる。今
回もそうだったけど、子供たちと一緒だったから最高だった。まずウエ
スタン・アヴェニュー72番地で車を降りて、みんなで写真を撮ったんだ。
そしたら住んでる人が外に出て来てね。『あらポールね、元気?』だっ
て。なんか面白いよね。

その後はアラートンの家に向かった。ウエスタン・アヴェニューの家の
次の次に住んだ家だよ。ここでも写真をと思ったんだけど、ちょうど団
体ツアーが来てたから、通り過ぎることにしたんだ。降りてたらちょっと
した騒ぎになってたかもね。で、僕が『ああ思い出すなあ。ジョンと一緒
に、黒の服とぴっちりしたズボンでね、ギターを背中にぶら下げてここ
を歩いたもんだ』なんて説明したりしてね。時間以外には何も変わって
いない同じ場所に立つと、いろんなことを思い出すもんさ。

その後で僕らはアンフィールドに着いた。足を踏み入れた時にはこん
な感じだったよ。『ワオ、ここだよな。うわあ、聖地に来ちゃったよ』 


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▽寄稿:「英国紀行2008春」
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「英国紀行2008春」(第2回) / 宮本 裕司

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【2008年5月28日(水)】

ホテルで朝食をとった後、Green Parkを散歩しました。
やはりイギリスは公園の美しさと、そこでの散歩が格別の味わいがあ
ります。
どのような小さな町や村にも必ず美しい公園があり、そこが憩いの場
になっている。
それがイギリスの素晴らしいところだと思います。

ビートルズガイドの越膳こずえさんと再会し、しばしロンドン散策を楽し
みました。
3時間ほど散策した後、SOHO Square近くのタイ料理屋さんで昼食をと
りながら、お互いの近況を話しました。

越膳さんは最近どうしていたかというと、リリー・フランキーのガイドを
務めたそうです。
リリー・フランキーのその本は最近、日本で出版され、私も読みました
が、よくできた本だと思います。

越膳さんはさすがロンドン在住15年だけあって実に博識で、私の知ら
ないことをたくさん教わることができ、とても勉強になりました。
越膳さんは風邪で体調が悪かったのに、長時間徒歩の案内いただい
たことに感謝。

今回は、Indica Gallery跡の画廊とLinda McCartney特別写真展を見ら
れたこと、Sloan Square Hotelを見たことが収穫です。

私が最初にIndica Gallery跡を訪れたのは1996年のことです。
その頃はボロボロの空き家だったのですが、昨年行ってみたら、
James Hyman Galleryという画廊が入っていました。
ジョンとヨーコが出会った画廊だった場所が、オーナーが変わったとは
いえ画廊として復活していたのを見て、嬉しく思ったものです。

昨年はJames Hyman Galleryが入っていたのですが、今年はStephen
Ongpin Fine Artという別の画廊が入っていました。
James Hyman Galleryはというと、Seville Row 5番地でLinda
McCartney特別写真展を開催していました。

Seville Row 5番地といえば、ビートルズが最後にライブを行ったApple
Buildings(Seville Row 3番地)のすぐ隣。
Indica Gallery跡に入っていたJames Hyman Galleryが、Apple Buildings
のすぐ隣でLinda McCartney特別写真展を行っているのです。
なんというドラマティックな出来事でしょう。
これはビートルズの現代史に刻まれるべきことだと思いました。


今年のお正月にロンドンを訪れたばかりですが、大変な勢いでロンド
ンは変わっています。
私は13年間ロンドンを見てきましたが、ここ5ヶ月間ほど大きな変化が
あったことはなかったかもしれません。

地下鉄の路線に大幅な改編があり、見慣れた店がいくつかなくなり、
駅のそこかしこで改装工事がなされています。
Piccadilly Circusのバーガーキングやボディーショップがなくなっていた
り、お正月には既になくなっていましたが、ヴァージン・メガストア(元タ
ワーレコード)も別のCD屋さんになっていたりしていました。
ロンドン・オリンピックを4年後に控え、ロンドンは生まれ変わろうとして
います。
変わっていくことは寂しいけれど、受け入れなければなりません。


夜はミュージカル「Joseph and the Amazing Technicolor Dreamcoat
(ヨセフ・アンド・ザ・アメージング・テクニカラー・ドリームコート)」を見
ました。
この作品は以前ビデオ化されており、そのビデオを見たのですがあま
り私好みでなかったことから、舞台版を見るのを躊躇していたのです
が、あまりにも評判が良いため、ようやく今日、足を運んだというしだい
です。

イギリスでは、視聴者と主催者がミュージカルの主役の俳優を決める
というオーディション番組が流行っています。
「The Sound of Music」や「Grease」の主役がオーディションで選ばれま
したが、この作品も同様にオーディションで選ばれた俳優が主演してい
ます。
「The Sound of Music」の主演女優Connieは今年春に降板してしまった
ため、この作品も主役が降板しないうちに見ておこうというのも動機の
一つです。

結論から言えば、本当に面白いミュージカルで、見てよかった。
日本に戻ったら、早くサントラを聞きたいです。

この作品は、アンドリュー・ロイド・ウェバーとティム・ライスが組んだ最
初の作品であり、旧約聖書の創生記をベースにしたミュージカルです。
イギリスでは小中学校の学芸会で何度となく取り上げられてきた作品
だと聞いています。

12人兄弟の末っ子ヨセフは、父親のヤコブが溺愛するあまり、他の11
人の兄たちから妬まれ、追放され奴隷として売られてしまいます。
ヨセフは持ち前の機転でファラオの宰相となり、最後は兄たちと和解す
るという物語です。

物語の冒頭で、ヤコブはこう言います。
「ヨセフは一番愛した妻の子供だからかわいい」

という具合で、他の11人の兄たちは「その他大勢の普通の人」として扱
われます。
そういう愛情のあり方はいかがなものか、という私の違和感は最後ま
で解消されませんでした。
ファラオの宰相となるのはヨセフの天賦の才なのですが、特別扱いさ
れる最初の理由がどうしても気になってしまいました。
(私自身は聖書やキリスト教文化を高く評価しており、宗教的な見解と
物語の好悪は全く別です)

しかし今日は会場全体が異様な盛り上がりで、理屈抜きにミュージカ
ルを楽しむ状況が出来上がっていました。
幕が上がった途端、観客一同が歓声をあげ、曲に合わせて手拍子を
するなどという盛り上がり方は、私が見てきたどんなミュージカルでも
ありませんでした。
最初から最後まで観客のテンションは下がりません。

隣に座っている少女たちなど、一見ミュージカルに興味なさそうなもの
ですが、劇場に売っているTシャツを着て、オペラグラスまで用意して、
最後まで歓声をあげて舞台を楽しんでいました。

テーマソングの「Any Dream Will Do」はヨセフと子役たちの合唱が素
晴らしく、感動し、私の耳から離れませんでした。
やはり生で聞く合唱は、ビデオとは比較になりません。
初めて見る舞台装置もシンプルでありながらもかわいらしく温かみが
あり、カラフルなもので、楽しめました。

この作品の初演は1991年。
この作品は学生たちの親が愛し、学生たちは子供の頃から親しんだ
作品だったのです。
だからこそ、これほどまでに特別な雰囲気で観客みんなが舞台を楽し
めたのかもしれません。

隣に座っていたテキサス出身の男性が感心していました。
「これほどの人が来ていてびっくりした。
イギリスの若者がミュージカルを見に来るのは、とても良いこと」

(つづく)

 ≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo349.html ≫


【お知らせ】
宮本裕司さんが講師を務める『Yujiの英国講座』が、横浜・鶴見の「ラ
イブハウス&ロックバー ラバーソウル」で開催されます!
8月10日(日)19:00スタートです。お時間のある方はぜひ!

<ラバーソウルのURLはこちら>
http://www.beatle-japan.com/calender/

<ラバーソウルの連絡先>
ラバーソウル
横浜市鶴見区鶴見中央1−14−2−2F
TEL:045-505-9617 または、090-4220-1080
FAX:050-3710-9255

〜宮本さんのコメントです〜
イギリスについての基礎知識から始まり、1996年から2008年まで私が
観察したイギリス新旧比較、ビートルズゆかりの地めぐりの楽しさなど
をお話しします。
もちろん、今回は写真、映像を交えてポールのライブのレポートも行い
ますし、前回まで講義に出席されなかった方でも楽しめる内容にしま
す。
12回のイギリス旅行で、見たこと、聞いたこと、感じたことなど、私の大
好きな国イギリスについて、愛情を込めて語ります。


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▼特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
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「ゴールドフィッシュだより」 / ミナコ・ジャクソン
       〜 Goldfish Liverpool Update / Minako Jackson 〜

 ― 第133号 / ローマン・スタンダード(鳥)事件! ―
 ≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish133_photo.html ≫

こんにちは。
今週は、身近に起こった話題をひとつだけお伝えします。

トレイシー・エミンは、90年代に注目を浴びたヤング・ブリティッシュ・
アーティスツ(YBA)と呼ばれるムーブメントの中心作家の一人として
ブレイクして以来、イギリス現代アートが誇る代表選手です。

過激&お騒がせアーティストというイメージが先行しがちな彼女が、
初のパブリック・アート作品<Roman Standard>をリヴァプール大聖
堂に隣接するオラトリーにて除幕したのが、2005年2月。
アーツ・カウンシル主催の「アート05」というイベントと2008年のリヴァ
プールの欧州文化首都を祝って、BBCが6万ポンド(約1,200万円!)
かけて依頼したコミッション作品ということでも話題になりました。

<ローマン・スタンダード>は、4メートルのブロンズ製の棒の上にちょ
こんととまっている手の平サイズの鳥の彫刻で、「希望、信仰、スピ
リチュアリティ」を象徴しています。
発表当時から、国営放送局がこんな彫刻に多額のお金をつぎ込む
なんて税金や受信ライセンス料の無駄遣いだという非難と、これま
でのイメージを払拭してトレイシー・エミンが好きになったという賛否
両論でした。

私事になりますが、2週間ほど前に来客があり、大聖堂を案内した
ついでに、せっかくだからオラトリーにあるトレイシー・エミンの作品
も見てもらおう、と思って覗いてみたら、、、なんと鳥がいませんでし
た!
状況が瞬時に把握できないまま、その時は通り過ぎましたが、数日
後に旦那が大聖堂に報告したところ、どうやら誰も気づいていなかっ
たようでした。
<Artinliverpool>では真っ先にブログに掲載
( http://www.artinliverpool.com/blog/blogarch/2008/06/tracey_emins_bird_has_flown.php )
し、BBCや関連団体にもメールをしたのですが、寝耳に水だったよう
です。

それが今週の火曜日になって、BBC地方局の《North West Tonight》
の特派員から連絡があり、第一発見者(であろう)と私と通報者の旦
那がインタビューを受けました。
特派員のジェーン・バレットさん曰く、関係する団体に取材をしたとこ
ろ、どこからも芳しいコメントが得られないとのこと。ここでいう関係
団体とは、BBC、アーツ・カウンシル、ナショナル・ミュージアム・リ
ヴァプール(NML)、トレイシー・エミンの所属するロンドンのギャラ
リーのホワイト・キューブ、そしてリヴァプール大聖堂。

アーツ・カウンシルは、「この件については関与していないので何と
もいえない」。
大聖堂は「オラトリーは大聖堂ではなく、NMLが管理しているので、
大聖堂はこの件について関与していないが、警察に連絡をしたとこ
ろ、所有者から盗難届けが提出されない限り、動きがとれないと言
われた」とのこと。
オラトリーを管理するNMLは、「オラトリーの敷地を提供したが、彫刻
の所有も管理もしていないので、この件には関与していない」。
BBCは「出資はしたが、著作権と所有権は作家本人に帰属するの
で、BBCとしては関与できない」。
作家本人からは「コメントが得られなかった」、作家の所属するホワ
イト・キューブからは「BBCがコミッションしたものなので、BBCに相談
すべきこと」とのこと。

盗まれたのか? それとも修復のために一時的に持ち出されたの
か? といった鳥が消えた疑問から、責任を擦り合う様子に焦点が
移り、ますますナゾが深まっていきました。

「棒にとまった鳥の彫刻が、ただの棒に?!」という火曜日の晩の
BBCのニュースが放映された翌日、ようやく地元紙のエコーやデイ
リー・ポストなども記事に取り上げはじめ、トレイシー・エミン本人から
も「これは犯罪でリヴァプールに対する侮辱だわ」とのコメントも発表
されたようです。

そして木曜日の午前7時ごろ、BBCラジオ・マージーサイドから電話
があり、「鳥が返ってきたので見にきますか?」とのこと。
旦那と私が急いで準備をして大聖堂に向かうと、レポーターのイア
ン・ケニオンさんが、ジフィー・バッグ(プチプチのクッション付きの封
筒)に入れられた<ローマン・スタンダード>を見せてくれました。
イアンさん曰く、その日の早朝未明に「オラトリーに鳥を返した」とい
う匿名のメッセージがBBCのリヴァプール支局の留守電に残ってい
たので半信半疑でオラトリーに向かってみると、「FAO Tracey Emin,
Urgent!」と書かれた白い封筒を発見したそうです。
中には、鳥とエコーの記事の切り抜きと、紙の切れ端に鉛筆書きで
「ごめんなさい。鳥を盗りました。でも悪気はなかった。もっと早く返し
たかったけど、怖くなった。xxx(キスマーク3つ)」と書かれたメモが。

おそらく複数の若者がいたずらで盗んだのではないかと思いますが、
有名なアーティストの高額な作品だと知ってビビッてしまったのでしょ
う。
それにしても無事に返還してよかったです。あとは、管理責任などの
役割分担を、はっきりしておかなきゃですね。

Artinliverpool:
http://www.artinliverpool.com/blog/blogarch/2008/07/tracey_emins_bird_returns.php

♪ ♪ ♪

【今週の告知】
ワールド・ミュージアム・リヴァプールにて、《Beat Goes On》展が7月
12日からスタートします。
ビートルズからズートンズまで、イングランドにおける "Most Musical
City" と認められたリヴァプールの60年間の音楽の歴史を、メモラビ
リアや写真などで綴った展覧会です。
数多いビートルズのメモラビリアの中でも注目なのは、ジョンとポー
ルが出会ったセント・ピーターズ教会ホールにあった今はなきステー
ジのオリジナルが、初めて再び組み立てられて展示されます。
また、ジュークボックスやカラオケ・コーナーも設けられるそうですの
で、各ジェネレーションの音源を聞くだけではなく、せっかくだから
歌っておきたいですね。

Beat Goes On: http://www.myspace.com/thebeatgoesonliverpool
World Museum Liverpool: http://www.liverpoolmuseums.org.uk/wml/exhibitions/thebeatgoeson/index.asp

それではまた来週。

ミナコ・ジャクソン♪

PS: 先週に続いて、ゴー・スーパーラムバナナの写真を送ります。
今週は、アルバートドック近辺のラムバナナちゃんたちです!


≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish133_photo.html ≫


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▽スカウスハウス・ニュース
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*** Liverpool Soundグッズ:On Sale Now!! ******

たいへんお待たせいたしました。6月1日にAnfield Stadiumで行われた
<Liverpool Sound>コンサート記念グッズの通販ページをウェブサイトに
アップしました。オーダーをいただけると嬉しいです!
http://scousehouse.net/shop/lpoolsound.html


*** 《Beatle Week 2008》スカウスハウス・ツアー ******

“世界最大のビートルズまつり” International Beatle Week 観光のた
めの個人旅行パッケージ「スカウスハウス・ツアー2008」の参加者を募
集しています。この夏、ぜひぜひリヴァプールでお会いしましょう!
http://scousehouse.net/beatleweek/scousetour2008.html


*** 語学留学生募集中 ******

リヴァプールへの語学留学をサポートしています。
詳細については、ウェブサイトの「語学留学案内」ページをご覧くださ
い。
http://scousehouse.net/study/index.htm


*** ビートルズ・ガイドツアー ******

リヴァプール&ロンドンのビートルズゆかりの地を訪ねるガイドツアー
をアレンジしています。
ツアーの詳細は、ウェブサイトの「ガイドツアー」ページをご覧ください。
http://scousehouse.net/beatles/guide_liverpool.htm
http://scousehouse.net/beatles/guide_london.htm


*** 原稿募集中 ******

「リヴァプール・ニュース」では、読者のみなさんからの投稿を募集して
います。
旅行記、レポート、研究、エッセイ、写真などなど、リヴァプール、ある
いは英国に関するものなら何でも歓迎です。
お気軽にお寄せください。楽しい作品をお待ちしています。



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▼今週のフォト
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*** 今週の「ゴールドフィッシュ」フォト ******

今週も、特派員ミナコさんから素敵な写真が届いています。
ウェブサイトの「NLW ゴールドフィッシュだより」ページをご覧ください。
http://scousehouse.net/goldfish/goldfish133_photo.html


*** 今週のフォト・アルバム ******

今週の「NLW フォト・アルバム」ページには、連載「英国紀行2008春」
にちなんだ写真(宮本さん提供)を掲載しています。

http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo349.html 


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□■ 第349号 ■□

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