November 25 2008, No.366
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  リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World   
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NLW ■
         *** http://scousehouse.net/ ***        


□■ INDEX ■□

 ▽フロム・エディター
 ▼寄稿:「Footballの旅」
 ▽ゴールドフィッシュだより <No.144>
 ▼スカウスハウス・ニュース
 ▽今週のフォト


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▽フロム・エディター
―――――――――――――――――――――――――─ NLW □


今週は久しぶりに、下村えりさんの「Footballの旅」をお届けします。
イングランドのフットボールの生観戦の醍醐味を伝えるこの連載、今
シーズンの第1回の対戦カードは、リヴァプールでもエヴァトンでも、え
りさんの愛するマン・ユナイテッドでもなく、マンチェスター・シティのホー
ムゲームとなりました。

超モダンなマン・シティのスタジアムに一度行ってみたいと、えりさんは
数年前から言ってました。
それが今回やっと実現したと思ったら、なんと相手はアーセナルです。
オーナーも監督も代わり、派手な戦力補強を敢行したシティが、昨シー
ズン最先端のフットボールで旋風を巻き起こしたアーセナルをどう迎え
撃つのか、とても注目される一戦でした。
えりさんには写真も提供していただいています。レポートと一緒にぜひ
ご覧ください。
http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo366.html

今シーズンも混戦となっているプレミアリーグですが、これからも出来
るだけえりさんに現場に行ってもらって、魅力をお伝えしたいと思って
います。お楽しみに!

● ● ●

ミナコさんの「ゴールドフィッシュだより」も、いつもながら非常に内容の
濃いレポートになっています。
写真もたくさん受け取っているのですが…すみません、現在のところ編
集が間に合っておりません。
明日(26日)じゅうには必ず写真ページをアップします。楽しみにしてく
ださっているみなさん、ごめんなさい!

● ● ●

LFCチケットのお知らせです。
11月26日にAnfieldで行われるチャンピオンズ・リーグ<リヴァプールvs
マルセイユ>の観戦チケットがあります(先週ご案内したものとは別の
チケットです)。
詳しくはウェブサイトの「スタジアムへ行こう!」ページをご覧ください。
決勝トーナメント進出決定の瞬間を、ぜひ聖地・アンフィールドで!
http://scousehouse.net/football/stadium.htm

● ● ●

明日(26日)、ウェブサイトの「LFCグッズ通販」ページを更新します。
オーダーをいただけるとうれしいです!
http://scousehouse.net/shop/lfcgoods2008_05.html

                          ― Kaz(25/11/2008)


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▼寄稿:「Footballの旅」
―――――――――――――――――――――――――─ NLW □

「Footballの旅」 / 下村 えり(Eri Shimomura)

 〜 Vol.13 Premiership
       - Manchester City VS Arsenal, 22 November 2008 〜

≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo366.html ≫

【Introduction:はじめに】
わたしにとって今シーズン初のレビューとなる今回、久しぶりにマー
ジーサイドを出て、東隣のマンチェスターにて、<Manchester City vs A
rsenal>を観戦しました。
長年マンUのサポーターであり、マンチェスターへ足を運ぶ事は度々で
すが、マン・シティのグランドへは初めてのこと。
しかもそのCity of Manchesterスタジアムは新しく、見るからに素晴ら
しい造りのスタジアムです。今から楽しみでなりません。


【History of Manchester City:マンチェスターシティーの歴史】
マンチェスター市にある二大プレミアリーグ・チームの中でも“真のマン
チェスター市民のクラブ”(?)と言われているマンチェスター・シティFC
の歴史に触れてみる事にしよう。

マン・シティの始まりは、1880年に創設されたゴートン・アスレティックと
いう地元のチームだった。
そのチームが1887年にウエスト・ゴートンと合併し、アーディックFCと新
たに名乗りプロとしての道をスタートする。
現在のマンチェスター・シティFCへの改称は1894年である。

前スタジアムのMain Road(1923-2003)には、80年という長い年月をか
けて、マンシティ・ファンの情熱が刻まれていた。
2度のリーグ優勝(1936-37, 1967-68)を始めとし、FAカップ4回
(1903-04, 1933-34, 1955-56, 1968-69)、リーグカップ2回(1969-70,
1975-76)、UEFAカップ・ウイナーズ・カップ1回(1969-70)と、60年代を
中心にまずまずの成績を残す。

そして2003年より、現在のこのCity of Manchesterに舞台を移すことに
なった。


【Mark Hughes監督と新オーナー】
『フットボールの旅』で監督としてMark Hughesを紹介するのは今回二
度目である。
前回はBlackburn Roversの監督として紹介した記憶があるが、
Premier Leagueファンならば嫌でも耳に入ってくる監督の移動、新たな
就任のニュース。
すでにご存知の方も多いだろうが、今年夏、元イングランド代表監督ス
ウェーデン人のSven Goran Erikssonに代り、彼がマンチェスター・シ
ティの監督に就任した。

ヒューズは元ウェールズ代表でもあり、ウェールズのナショナル・チー
ムを指揮した経験も残す。
現役時代は数々のリーグ、カップ優勝を経験し、殆どの時をマンチェス
ター・ユナイテッドのFWとして活躍、ユナイテッド黄金世代を自ら引っ
張っていったキープレイヤー、立役者と言っても過言ではない。
そんな彼が今現在、ライバルチームであるマン・シティの監督としてス
タートを切ったのだから人生は判らないものである。

マン・シティのオーナーも、この夏に交代した。
ヒューズ監督就任直前、タイの汚職疑惑で揺れる前首相のタクシン・チ
ナワット氏が、オーナーの権利をUAEの投資グループADUG(アブダ
ビ・ユナイテッド・グループ・フォー・デベロップメント・アンド・インベスト
メント)へ売却。Sheikh Mansour bin Zayed Al Nahyanがマン・シティー
の代表者となった。
これにより、マン・シティFCは世界一のリッチクラブとなり、ヒューズ監
督就任後は、選手獲得のデッドラインぎりぎりに、チェルシーへの移籍
が決定的とされていたレアル・マドリッドのロビーニョを強奪した話は
有名である。

ここ数年監督がころころと代わり、リーグの真ん中あたりの順位を行っ
たり来たりだったマン・シティだが、今回監督に就任したヒューズが潤
沢な資金を活用し、何処まで盛り上げて行くかが注目である。


【今回の見所】
シーズン始まって早くも約3ヶ月が過ぎようとしている。
マン・シティはヒューズ新監督の下でまずまずのスタートを切ったもの
の、最近4試合は3連敗の後で引き分けという結果で、監督のポジショ
ンも危ういとの噂が流れている。

方やArsene Wenger率いるアーセナルも上位テーブルを保持しつつも、
10月下旬にHarry Redknappを監督に据えたばかりの新生Tottenham
Hotspurにホームで喫したドロー(4-4)を皮切りに、翌週はアウェイで
Stoke Cityに2-1で敗れるなど、不本意な結果が続いた。
11月8日にホームでマンチェスターユナイテッドに2-1で勝利し、一度は
浮上するかと思いきや、先週末はホームでAston Villaに0-2で敗れてし
まうといった、かなり不安定な状態である。

ピッチの外においても、キャプテンGallasが今年出版した自伝でフラン
ス代表のチームメイトJerome Rothenを批判したことが問題となり、
キャプテンの座を下ろされる羽目となった。
もちろん今日の試合も欠場、加えてアーセナルは、Walcott、
Adebayor、Sagna、Toureといったスーパースターを怪我で、先週の
レッドカードでFabregasまでもを欠いた布陣で今日の試合に臨む。

実力はあるものの現時点では調子を落としているチーム同士の対戦
となった今日の一番。
ピッチ上でどの様な試合展開が観られるか、ニュートラルなフットボー
ルファンにとっては面白い見所だと思う。


【City of Manchester Stadium】
マンチェスター市の西に位置するOld Trafford(マンUのホーム)とは反
対に、City of Manchesterはマンチェスター市の東側にある。
最大で4万8000人を収容するブラン・ニューのスーパー近代スタジアム
だ。
旧スタジアムのMain Roadより移ったのはつい最近2003年の事、イギ
リスで4年に一度行われる《Commonwealth Games》(英連邦の国や地
域のみで争われる陸上の大会。2002年にマンチェスターで開催)のた
めに建設されたスタジアムに、マン・シティFCが3,500万ポンドの大金を
導入、北ウイングのスタンドを新たに設置するなどの改修を施し、現在
の輝かしいCity of Manchesterに仕上がった。
 
Liverpool Lime Street駅から鉄道で約50分、Manchester Piccadilly駅
へ到着。
駅を出て道を下ると、すぐにCity of Manchester行きのバス停(216番)
が見えてくる。バス代は片道1ポンド、5分もしないうちにスタジアムに
到着。シティー・センターから徒歩でも20分、一本道なのでとてもわかり
やすい。

ブラン・ニューのスタジアムは息を呑むような素晴らしい建物。螺旋状
道路がマンシティ・カラー(水色)でとても可愛らしく、建物全体をキュー
トに演出している。
スタジアムの直ぐ傍には『B Of Bang』というアートの物体が目の中に
飛び込んできて、訪れる人の目も楽しませてくれる。

スタジアムの写真撮影に気をとられていると、人ごみの中に、家族連
れの元Birmingham、DerbyのMFとして活躍していた、ウェールズ代表
選手でもあるRobby Savegeが現れた。
ヒューズ監督とは元ウェールズのチームメイトでもあって親しいに違い
ない。Robbyが手をとる2人のエンジェル達はしっかりマン・シティのス
カーフを身に着けている。きっと彼女達のお気に入りチームなのだろ
う。

本日は晴天なり…ではあるのだが、気温は最低を記録、なんと最低マ
イナス2度、最高が3度と予報されていた。
厚着を重ね、ダウンジャケットを羽織ってもこの寒さは体の芯まで到達
する。日中とはいえ、かなり寒い!


【 Kick Off:試合開始 】
スタジアムの中に入ると、人々の群れとカフェの暖かさの中で一時的
にホッとする。
席に付くが今回はチケットの購入が遅かったのと、お相手がリーグ上
位チームのアーセナルとあって最上階のPier 3しか取れなかった。
かなり急な斜面で、高層恐怖症の方にはちょっとお勧め出来ないだろ
う。選手達の姿も豆粒ほど。選手達を見分けるのにも、ひと仕事である。
しかし、試合全体の流れはパーフェクトに把握でき、最高の眺めかもし
れない。

大きなサイドスクリーンに選手達の顔が映し出された。いよいよ、選手
入場だ。選手達は握手を交わし、試合は定刻の15時に始まった。

<前半>
最初のチャンスはわずか開始2分、アーセナル前線のミスボールをも
ぎ取ったMF IrelandがMF Vassellにパス。ゴール前のVassellにサポー
ターから「シュート!」の声がかかるが、出遅れたVassellは慌ててチー
ムメイトのブラジリアンDF Zabaletaへパス。しかしZabaletaのキックは
アーセナルGK Almuniaの左を大きく反れた。

その後は両チームの中盤でのパスが乱れがちで、サポーター達の苛
立ちの叫びが響く中、展開されていく。

16分、アーセナルDF HoyteがFW Robinhoを押し倒し、シティは左ウイ
ングにてフリーキックを与えられるがGK Almuniaによってブロックされ
た。

33分、初めてアーセナルにチャンスらしいチャンスが訪れた。
MF Van Persieがフリーキックを獲得そ、チームメイトのMF Nasriが
ボールを蹴る。ボールはマン・シティGK Hartの正面へ。跳ね返された
ボールがアーセナルMF Songの前に落ち、すかさずシュートを放つが、
大きくゴールを逸れる。アーセナルは大きなチャンスを逃してしまった。

その数分後、シティMF Irelandがボールを上手く扱い、ゴール前のFW
Benjaniへとつなげるが、直後にラインズマンの旗が挙がる。
オフサイド。ほぼ一直線だった感じがするのだが…惜しい。

前半終盤にかけてシティのIrelandが際立って良い動きを見せ、アーセ
ナル・ディフェンス陣の動きを揺さぶるが、最後のクロスがどうしても繋
がらない。
そんなジレンマが続く中、試合は前半のロスタイムに突入した。

アーセナルDF SilvestreからDF Clichyへのパスが乱れ、目の前に転
がったボールをIrelandがネット目掛けて打つ。ゴール!! 1−0。
ちょっとラッキーだった気もするが、これも今までの素晴らしい働きの
見返りとも言えよう。彼の今シーズン6ゴール目となった。

<後半>
前半はIrelandのゴールに沸いたCity of Manchesterだが、このまま
リードを続けられるのだろうか。
今日はいつもの美しいパスワークの見られないアーセナルがリズムを
取り戻し、反撃してくるのか。後半は面白くなりそうだ。

予想通り、後半はアーセナルが攻めてきた。
MF Diabyがボックス内になだれ込み、いきなりシュートを放つがゴール
は決まらない。
続いてFW Bendtnerのクロスもゴール前を襲うがシティDF Dunneにブ
ロックされ、ゴールには届かない。

50分にはアーセナルMF Van Persieがフリーキックを奪う。蹴ったボー
ルはシティの壁を上手く抜け、ゴールへ突き刺さるかと思われたが、
僅かに右ポストを叩く。スタジアムが大きくどよめいた。

1−0でリードするシティも負けじと動き出し、56分に追加点のチャンス
が巡ってくる。
ピッチ中央からMF(FW) Wright-Phillipsの素晴らしい縦パスが3,000万
ポンドで勝ち取ったブラジリアンFW Robinhoに渡る。Robinhoは魔術と
も言える足技でボールをフリップ、近寄って来たGK Almuniaの頭上を
すり抜け、ボールはネットに収まった。2−0。素晴らしいゴール!

さらにその後もVassellとIrelandのパスワークが上手く繋がり、Robinho
に届くとゴールに的確なシュート。しかし、ラインズマンの旗が挙がっ
た。またしてもオフサイド! 追加得点はならなかった。

アーセナル側もMF Songの鋭いシュートがゴールを襲うが、シティGK
Hartによってさえぎられる。

残り12分に達した所でRobinhoが中央からボックス内に入り、左に回り
こんでシュート。ボールはゴールを大きく外れ、Robinhoはゴールの左
サイドに倒れこんだ。足首を痛めたらしい。
Robinhoはシティ・ファンの不安げな拍手の中、82分に退場した。
Robinhoの代わりにMF Hamannが入り、その6分後にもヒューズ監督
はFW Mwaruwariに代わってFW Sturridgeを投入した。

ロスタイムを迎える前後には2−0で安心しきったのか、席を立ち始め
る観客もいたが、試合は未だ終わってなかった。
サブで起用されたSturidgeが左アウトサイドからボールをインサイド
ボックスに運ぶ途中、アーセナルDF Djourouに足をかけられてボック
ス内で倒れた。ペナルティー!
Sturidge自身が蹴ったボールは見事にゴールに突き刺さり、ダメ押し
の3点目がシティに入った。


【試合終了】
City of Manchesterに響き渡る歓声の渦の中、試合は3−0で幕を閉
じた。

いいところが全くなかった今日のアーセナル、きっとベンゲルも心の中
で怒りに燃えているだろう。
わたしも何時ものアーセナルの美しいフォームを観る事が出来ず少し
落胆したが、マン・シティのフットボールは見事だったと思う。
前半ロスタイムの1点が引き金となって、Irelandを中心にまとまった。
ヒューズの新生マン・シティもここに来てようやく、クオリティーの高い
選手達が上手くブレンドされ、1つのチームになって来た気がする。
アーセナルとしては悪夢を引きずらず、故障続きの苦しい状況の中、
ベンゲルがどの様にチームを立て直して行くかが今後の大きな課題だ
ろう。

今週末のプレミアリーグは、全試合が終わっての結果、リーグテーブ
ル上位につけるチェルシー、リバプール、アーセナル、マンチェスター・
ユナイテッドは、どこも勝利を収めることができなかった。
かなり珍しい現象ではないだろうか。不思議な週末だった。


【監督インタビュー】
マン・シティのヒューズ監督は、
「プレミアシップでアーセナルを破ったのはこれで2度目で、素晴らしい
勝利だと思う。もちろん、我々もあの美しいアーセナルの試合運びや
リズムを崩すために苦心してプランを立てた。勝ちに行く精神とプレー
の質の高さで、我々が圧倒したゲームだったと思う」
と、非常に満足げなコメントを残した。

一方でアーセナルのベンゲル監督は、
「前半の最後と試合終了間近に点を入れられたということは、集中力
に欠けていたということ。選手の選択肢が限られていたとはいえ、それ
は理由にはならない。次の試合に向けて白紙に戻し、気持ちを入れ替
えて頑張るつもりだ」
と、やや力なさげで、キャプテンGallasの将来に付いては触れたがらな
かった。

(Fin)


≪マッチ・データ≫

 Premiership 08-09
 MANCHESTER CITY 3 - 0 ARSENAL
 City of Manchester Stadium, Saturday 22 November 2008 15:00
           
            マン・シティ          アーセナル
 ゴール          3               0
       (Ireland 45,Robino 56,Sturridge90)
 ターゲットショット    10               5
 コーナーキック     3               3
 ファール         17                9
 オフサイド        7                1
 イエローカード     0               1(Song)
 レッドカード       0                0
 ポゼッション      59%             41%
 
 Team Line-ups
 Man City: Hart, Zabaleta, Richards, Dunne, Garrido, Wright-Phillips,
        Ireland, Kompany, Vassell (Elano 73),
        Robinho (Hamann 82), Mwaruwari (Sturridge 88).
 Subs Not Used: Schmeichel, Onuoha, Evans, Ben-Haim.
 Goals: Ireland 45, Robinho 56, Sturridge 90 pen.

 Arsenal: Almunia, Hoyte (Ramsey 60), Djourou, Silvestre, Clichy,
       Nasri, Denilson, Song Billong, Diaby (Vela 69), Van Persie,
       Bendtner.
 Subs Not Used: Fabianski, Wilshere, Gibbs, Lansbury, Simpson.
 Booked: Song Billong.

 Attendance(観客数): 44,878

≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo366.html ≫


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▽特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
―――――――――――――――――――――――――─ NLW □

「ゴールドフィッシュだより」 / ミナコ・ジャクソン
       〜 Goldfish Liverpool Update / Minako Jackson 〜

 ― 第144号 / 世界の国からリヴァプールへ ―

 ≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish144_photo.html ≫
(※写真ページは11月26日にアップします)

こんにちは!
11月の中旬は、今年のリヴァプールの欧州文化首都を祝って、様々な
国からの文化交流イベントが集中して行われました。
そのほとんどが、Novas CUC(コンテンポラリー・アーバン・センター)に
て開催され、建物全体が国際色豊かに彩られた2週間となりました。

11月12日は日本のEU・ジャパンフェスト日本委員会が主体となった2つ
のイベントが開催されました。
まずひとつめは、Novas CUCにてオープンした写真展『日本に向けら
れたヨーロッパ人の眼・ジャパントゥデイvol.10』。
1999年から始まったこの写真展ですが、今回で第10回を迎えます。
毎年、ヨーロッパで活躍する写真家を日本の各自治体に招待し、滞在
しながら現在の日本の姿を撮影し、日本という国を身近に感じてもらう
とともに、日本人が見過ごしてしまっている日常を再発見するというプ
ロジェクトです。今年は春に4名の写真家が日本入りしました。

英国リヴァプールからは、ジョン・デイヴィスが静岡県富士市にて、イン
ダストリアルな風景に浮かぶ富士山を捉え、ノルウェーのオスロ在住
のメッテ・トロンヴォルは長崎の五島列島の大自然をバックに海草採り
をする年配の女性たちを撮影。オランダ出身のカリー・マルケリンクは
長崎県長崎市で、街の風景のカラー写真とモノクロの人々のポート
レートのコンビネーションを通じて、街の歴史、記憶、原爆を考えさせる
作品を制作、ドイツ出身ロンドン在住のマルコ・ボーアは、茨城の久慈
郡大子町にて、その土地がモチーフとなった写真や絵画を手に持って
もらい、地元の人々を撮影したものです。

2001年からアーティスティック・ディレクターを務めている菊田美樹子さ
んによるセンスの光るレイアウトで、とてもすばらしい展示となっていま
す。
日本にもいずれ巡回すると思いますので、そのときは是非見に行って
ください。写真プロジェクト詳細はこちらから。
http://www.eu-japanfest.org/program/photo_project.html

この展覧会は、2009年1月9日まで続きます。
  ※同じ建物の5階では、ヨーロッパの6つの港街をつなぐ写真展
   《Cities on the Edge》が開催中で、こちらにもジョン・デイヴィスが
   出展しています!

♪ ♪ ♪

同じく12日の夜は、セント・ジョージズ・ホールのスモール・コンサート・
ホールで『インターナショナル・ユース・イン・コンサート(国際青少年音
楽祭プロジェクト)』が行われました。
日本からは鹿児島県志布志市出身のまつやまキッズ合唱団、2005年
の欧州文化首都だったアイルランドのコークからコーク児童合唱団、リ
ヴァプールからはリヴァプール・ユース合唱団とリヴァプール・スクー
ル・コンサート・バンドが参加し、合計100名ほどの子供たちが共演しま
した。

私はまつやまキッズのメンバーのリヴァプール滞在中、ほとんど密着し
ていました。
小学生5名、中学生5名、高校生6名の計17名で構成されるこの児童
合唱団は、このリヴァプールでのコンサートのために結成されました。

単にコンサートの本番を鑑賞するだけでなく、リヴァプール滞在期間中
に彼らが成長していく過程を見ることができたことを嬉しく思っていま
す。
到着した翌日の10日には地元の高校ブロード・グリーン・インターナ
ショナル・スクールと、老人ホームのマージーケアNHSトラスト・ヘイズ・
コートを訪問して、それぞれの場所で歌を披露し、現地の子供たちや
ご老人たちと、言葉を超えた交流のひと時を過ごしました。
学校での最初の演奏ではイギリスで初めての経験だったこともあって
か、相当緊張しているようでしたが、回を重ねるほどに自信をつけ、
めきめきと上達していきました。

11日は午前中のリハーサルの前にマシュー・ストリートを観光している
と、リヴァプール唯一の公認日本人ビートルズガイドの阿部さんにばっ
たりお会いし、ご好意でキャヴァーン・クラブで詳しい説明までしていた
だきました!
その後ブルーコートにてみっちりリハーサルをした後は、ワールド・
ミュージアム・リヴァプールやビートルズ・ストーリー、大聖堂を見学。
夕方にコークのメンバーもリヴァプール入りをして合流。

本番当日の12日、午前中は今回のコンサートを取りまとめるアーティス
ティック・ディレクターのサーニャ・キョウさん(ARTlifeCulture)による
ウォーミングアップとリハーサル。
頭で考えるのではなく、体で感じて覚える、ダイナミックなボイストレー
ニングは驚くほど効果的で、サーニャのカリスマ性に脱帽です。子供た
ちの背筋、呼吸、口の形もばっちり整い、声量がグッとアップします。

午後はリヴァプール・バイエニアル主催のウォークツアー。
ハリエットとエマの2人のガイドで、ブルーコート、ピルキントン(草間彌
生の作品が子供たちの間でも大人気!)、ジョイフル・ツリーズ、セン
ト・ルークス教会のオノ・ヨーコの作品、アトリエ・ワンのロックスケープ
などを楽しく回りました。 

コンサート会場に戻り、午後4時からは、まつやまキッズ、コーク、リ
ヴァプールの合唱団が揃っての初の合同リハーサル。
コンサートの最後で発表される曲<When We Sing Beneath a Star>を
練習します。

この曲は、この日のコンサートのピアノを担当している、リヴァプールに
も関わりの深いコーク在住の作曲家、C.S.L.パーカー氏によるもの。
キーが高く、楽曲として難易度の高い上に、もちろん歌詞は英語です
から、まつやまキッズにとってはハードルの高い曲だったことと思いま
すが、他の合唱団に負けていませんでしたよ。

午後6時半に、EUジャパン・フェスト日本委員会の大橋洋治実行委員
長のご挨拶のあと、コンサート本番がスタート。
一番バッターはリヴァプール・ユース合唱団で、コーラス・ラインの
<One>を披露。
次はコーク児童合唱団が6曲のワルツが連なる曲集<Ships and
Waltzes>を歌います。こちらもC.S.L.パーカーによる楽曲で、同じく港街
であるコークで育った子供たちの海の思い出やパーカー氏の実父が
過ごした1950年代のリヴァプールでの回想録が基となったものです。

コーク児童合唱団は、2005年の欧州文化首都の年に立ち上げられ、
この曲集は同年に発表されました。
また、今回のメンバーのほとんどが、2006年には志布志市で行われた
前回の国際青少年音楽祭を経験しているだけあって、成熟したパ
フォーマンスでした。

コークの演奏が終了し、まつやまキッズの子供たちの表情を見ると、
不思議と緊張した様子もなく、むしろ清々しくステージへ向かって行き
ました。
舞台に上がった彼らの表情は、最後のリハーサルからもさらにグレー
ドアップして、パッと輝くような豊かな表情で、元気に『音楽の贈り物』、
『世界がひとつになるまで』、そして志布志市のテーマソング『フロム・
志布志』を歌い上げました。 

続いて、リヴァプール・スクール・コンサート・バンドがビートルズ・メド
レーを演奏。先述のリヴァプール・ユース合唱団とコンサート・バンドは、
ともにリヴァプール・ミュージック・サービスが運営しているリヴァプール
・サタデー・モーニング・ミュージック・センターで毎週レッスンを受ける
児童生徒がメンバーで、これまでも市内のみならず、国内外で公演し
ています。
今年3月には中国公演もあったそうですから、日本で演奏する日も遠
くはないかもしれません! 

最後に、コンサートのクライマックスである<When We Sing Beneath a
Star>を3国の合唱団が一緒に歌い、一時間のコンサートを締めくくり
ました。

コンサートが終わった後の、まつやまキッズの達成感に満ちた顔が印
象的でした。
短い準備期間で一生懸命練習し、異国の地で時差ボケと生活パター
ンの違いとハードスケジュールの中で、最後の最後まで本当によくが
んばったと思います。

また、このコンサートは本当に多くの人たちに支えられて実現しました。
EUジャパン・フェスト日本委員会の事務局の古木事務局長、長谷川さ
ん、引率で来られた志布志市役所の杉田さん、有村さん、やっちく松原
藩初代藩主の松原さん、伴奏の小野さん、今回同行できなかった志布
志の鹿島先生、EUジャパンの箱田さん。コンサートのプログラムを
オーガナイズしたサーニャ・キョウをはじめとしたコークのアーティス
ティック・チーム、リヴァプール・ミュージック・サービス、リヴァプール市、
リヴァプール・バイエニアルなどなど。

皆さんと素晴らしい思い出を共有できて幸せに思います。
この関係が、今後も継続していくことを願っています。
次はどこで開催されるのでしょうか?

国際青少年音楽祭の詳細:
 http://www.eu-japanfest.org/program/13/japan/music_festival_3.html 

EU・ジャパンフェスト日本委員会リヴァプールでの支援プロジェクト:
 http://www.eu-japanfest.org/program/16/liverpool_2008.html 

♪ ♪ ♪

その他の国際イベントを駆け足でお伝えします。

11月13日から3日間、《Live from Korea》と題した、FACTでの韓国映
画祭とNovas CUCでのパフォーマンス、プラスFACT、A Foundationで
開催中の韓国人作家による展覧会とStatic Galleryのサムジ・ストア&
ヌードル・バーとタイアップしたコリアン・フェスティバルが行われました。

これは、今年1月にロンドンにオープンしたばかりの<Korean Cultural
Centre(KCC)>と在英韓国大使館の主催で行われたイベントです。
この私は、14日にNovas CUCで行われたUniversal Taekwondo
Federationによるテコンドーのデモンストレーションとレセプションに
行ってきました。

テコンドーのデモンストレーションでは、古典的なテコンドーの基本の
型を見せるだけだろうと思ったら大違いで、途中からダンスミュージッ
クにガラリと変わり、衣装もシーンもストリートの喧嘩や映画007ばりの
セッティングやヒップホップにテコンドーの技を組み込んだ、現代風の
アレンジのパフォーマンスで会場は沸いて大盛況でした!
レセプションでは、韓国料理でもてなされ、韓国風海苔巻きとキムチで
舌鼓を打ちました。

Live from Korea:
 http://www.liverpool08.com/stage/events/details.asp?id=TMP-223451 

17日月曜日からは、《Romanian Connections》と題したルーマニアから
のフェスティバルがこちらもNovas CUCにてスタートしました。
どんなコネクションかといいますと、昨年の欧州文化首都がルーマニア
のシビウで、今年がリヴァプールというつながりです。
初日のレセプションでは、Paprika Balkanicusによるライブ。メンバーが
ルーマニア、セルビア、スロベニア出身なので、ひっくるめてバルカン
地方のジプシー音楽をハイパーに演奏し、観客をすっかり飲み込んで
踊らせていました。寒い冬の夜も乗り切れるようなホットなパフォーマン
スでした!
Paprika Balkanicusマイスペース: http://www.myspace.com/paprikabalkanicus 

18日火曜日は、シアターパフォーマンス『ザ・ボール』、20日木曜日に
は『ゴドーを待ちながら』の舞台がNovas CUCにて開催されました。

Romanian Connections:
 http://www.romanianculturalcentre.org.uk/connections/ 

♪ ♪ ♪

20日からは、北から南から。Novas CUCの地下階、Bluecoatその他会
場にて北欧の音楽、アート、デザインを紹介するNICE08、そしてNovas
CUCの3階にて東南アジアの大型絵画展Tenggaraが同時スタート。
しかも、同じ日にシアタースペースでは、ゴドーが、そして3階の別の部
屋ではもちろん日本の写真展も見れる(!)というマルチナショナルな
夕べでした。 
Tenggara展は、Novas とMatahatiグループの共同開催で、マレイシア、
インドネシア、フィリピンからこれまで東南アジア以外で紹介されること
のなかった現代美術をショーケースしています。
既に確立された作家から新鋭のアーティストまで、33名の絵画が展示
されています。
Tenggara: http://www.artinliverpool.com/index.php/maingalleries/cuc/1017-cuc-tanggara

この展覧会に合わせて、Novas CUCの5階には、マレイシア料理のレ
ストランもオープン! とどまるところを知らないこの巨大文化センター
からは目が離せません!  

< Novas CUC (Contemporary Urban Centre)>
  41 - 51 Greenland Street L1 0BS
  電話: 0151 708 3515
  ギャラリーオープン:水−土 11:00-18:00、日曜日11:00-16:00
        月曜休み。火曜日は要予約。
  ホームページ:
  http://www.novasscarman.org/contemporary-urban-centres/north-west/novas-galleries-cuc-north-west,60,IN.html

♪ ♪ ♪

【今週の告知】
《マジカル・クリスマス・モーメンツ》
今年は、地元セレブやフットボーラーによる派手はクリスマス・ライトの
スイッチ・オンのイベントはありませんが、クリスマスまでの毎週木曜日
のシティーセンターではレイト・ナイト・ショッピングとリンクした夜の催し
物や、12月5日から21日までクリスマスマーケットが開催されます。
円高で、しかも12月からはイギリスでは消費税カットになるようですし、
旅行で来られる方には朗報ですね。
詳細はLiverpool08ウェブサイトから。
 http://www.liverpool08.com/streets/ChristmasEvents/index.asp 

それではまた来週!

ミナコ・ジャクソン♪

≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish144_photo.html ≫
(※写真ページは11月26日にアップします)


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▼スカウスハウス・ニュース
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*** LFCグッズ通販:On Sale Soon!! ******

明日(26日)、ウェブサイトの「LFCグッズ通販」ページを更新します。
オーダーをいただけるとうれしいです!
http://scousehouse.net/shop/lfcgoods2008_05.html


*** Beatle Week 09:出場バンド募集中! ******

スカウス・ハウスでは、2009年の<インターナショナル・ビートル・ウィー
ク>に、日本代表として出場するビートルズ・トリビュート・バンドを募集
しています。プロ・アマは問いません。
出場を希望されるバンドは、 info@scousehouse.net までお問い合わ
せください。折り返し詳細をご案内いたします。
(メール本文には、バンド名と簡単なプロフィール、代表者のお名前・
住所・電話番号をご記入ください)


*** スタジアムへ行こう! ******

リヴァプールでのフットボール観戦やスタジアムツアーをご希望の方は
ぜひおまかせください!
詳細は、ウェブサイトの「スタジアムへ行こう!」ページをご覧ください。
http://scousehouse.net/football/stadium.htm


*** リヴァプール語学留学 ******

スカウス・ハウスは、リヴァプールへの語学留学をサポートしています。
公立のリヴァプール・コミュニティ・カレッジに加えて、今年より、私立の
語学スクールLILAとも提携しています。
長期でじっくり学べる学生の方にはコミュニティ・カレッジを、まとまった
期間を留学に充てられない社会人の方にはLILAをおすすめします。
スカウス・ハウスには、リヴァプール留学に関する専門知識や経験を
持つスタッフが、日本とリヴァプールの両方に常駐しています。入学前
はもちろん、入学後のサポートについても安心してお任せください。
http://scousehouse.net/study/index.htm


*** ビートルズ・ガイドツアー ******

リヴァプール&ロンドンのビートルズゆかりの地を訪ねるガイドツアー
をアレンジしています。
ツアーの詳細は、ウェブサイトの「ガイドツアー」ページをご覧ください。
http://scousehouse.net/beatles/guide_liverpool.htm
http://scousehouse.net/beatles/guide_london.htm


*** 原稿募集中 ******

「リヴァプール・ニュース」では、読者のみなさんからの投稿を募集して
います。
旅行記、レポート、研究、エッセイ、写真などなど、リヴァプール、ある
いは英国に関するものなら何でも歓迎です。
お気軽にお寄せください。楽しい作品をお待ちしています。


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▽今週のフォト
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*** 今週の「ゴールドフィッシュ」フォト ******

今週も、特派員ミナコさんから素敵な写真が届いています。
ウェブサイトの「NLW ゴールドフィッシュだより」ページをご覧ください。
(※11月26日にアップします)
http://scousehouse.net/goldfish/goldfish144_photo.html


*** 今週のフォト・アルバム ******

今週の「NLW フォト・アルバム」ページでは、「Footballの旅」で紹介の
プレミアシップ《Man City vs Arsenal》の写真を掲載しています。撮影
は下村えりさんです。ぜひご覧ください!
http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo366.html 


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□■ 第366号 ■□

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