February 03 2009, No.373
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  リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World   
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□■ INDEX ■□

 ▽フロム・エディター
 ▼寄稿:「Homecoming for Liverpool 08」
 ▽寄稿:「利物浦日記2008」5
 ▼スカウスハウス・ニュース
 ▽今週のフォト


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▽フロム・エディター
―――――――――――――――――――――――――─ NLW □

1週間ほど前のことですが、リヴァプールのローカル夕刊紙<Liverpool
Echo>のウェブ版で、「ビートルズのアンプが見つかった」という記事を
見つけました。
ウールトンにあるジョージ・ハリスンが住んでいた家の、数ブロック先の
お宅の物置で発見されたアンプが、どうやらビートルズがデビュー前に
使っていたものらしい、という話なのです。
VOX AC30というアンプで、マイクと西ドイツ製のリード、そしてビートル
ズのサイン入りの写真が一緒に置いてあったのだそうです。

本当だとすれば大発見ですよね。でも、それが本物であると証明でき
る人はいるのでしょうか。
ボブ・ウーラーさんは亡くなってしまったし、アラン・ウィリアムズが証言
しても誰も信用しません。
というわけで、やはりこの人、サム・リーチさんの登場となったようです。
ブライアン・エプスタインが現れる前まで、ビートルズのプロモーターを
やっていた人です。

サムさんは、<エコー>の記者にこうコメントしています。
「間違いあれへんな。奴らはこのちんまいのとおんなじようなアンプをど
こんでも持ってっとったよ。ちゅうても女の子がきゃーきゃーゆうて何も
聴こえへんかったけどな」

思わず関西弁風に訳してしまいました。すみません。
でも、サムさんの口調は、なんとなくこんなニュアンスなんです。
サムさんとは、去年のBeatle Weekが終わった翌日に、マシュー・スト
リートのパブGrapesで話す機会がありました。

「カズ、俺、今度日本に行くかもしれへんねん」
「日本に? どうしたの?」
「コージュマーに招待されたんや。コージュマーはすごいビートルズ・
ファンでな、こないだ来たんだわ。ほんでぜひ日本に来てくれゆうて誘
われてな」
「コージュマー? 誰それ?」
「お前、コージュマーを知らんのか。前の総理大臣やろうが」
「総理大臣? …あ、もしかしてコイズミ??」
「そやそや、コージュマー」
「……」
「せやから俺、日本に行くかもしれへんねん。来年の春くらいちゃうか
な」
「…………」

小泉さんがリヴァプールに行ったなんて話は聞いたことないですよね?
ブッシュさんとメンフィスに行ってプレスリーのモノマネをした話なら有名
ですけど…。
いやいや、サムさんがホラ吹きだと言っているわけではないですよ。も
しかしたら本当かもしれませんし、僕を楽しませるために多少サーヴィ
スしてくれたのかもしれません。

さて、先ほどのビートルズのアンプの話。
あらためてサムさんのコメントを読んでみると、最初に間違いないと断
言しておきながら、その後はずいぶんと自信なさげなようにも見受けら
れます。
そりゃまあそうですよね。自分のものでもないアンプ、しかも47〜8年前
に何度か見ただけのものを、細部までしっかり憶えてるなんてことはあ
り得ないですよね。
記事では、このアンプの現在の持ち主のコメントは紹介されていませ
ん。ということは、このアンプがいつ、なぜ、どうやってこの物置に置か
れたのかということは、おそらく不明なのでしょう。

なんだか謎はますます深まるばかり。
そもそも、サム・リーチの証言だけで「ビートルズのアンプ」と断定する
のは、そりゃあ無理というものです。
この記事を書いたエコーの記者にはぜひ、他の証言者を探したり(例
えばビートルズと共演したマージービートのバンドとか)、同じアンプが
写っているビートルズの写真を探したりして(いっぱいあると思うんです
けど…)、さらに追及して行ってほしいです。

                           ― Kaz(03/02/2009)


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▼寄稿:「Homecoming for Liverpool 08」
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「Homecoming for Liverpool 08」(2) / 鹿志村 克

≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo373.html ≫ 

■Liverpoolの楽しみ方1〜マッチデイ

Liverpool滞在の1日目。
前日は長い一日で、ベッドに入る時間も遅かったのに、目が覚めると
朝の7時でした。
普段とあまり変わらない時間で起きたのには自分でもびっくりでした。
普段と違うのはまだ外が真っ暗だということ。窓の外のオレンジ色の
街灯に、Liverpoolにいるということを感じました。

ホテルの朝食は、Blakesというレストランです。ビートルズのアルバム、
"Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band"のジャケットをデザインした
Peter Blakeにちなんだ名前で、壁にはビートルズの写真が飾ってある
し、BGMはもちろんビートルズです。朝からご機嫌になります。
メニューはコンチネンタルスタイルの朝食でしたが、トーストにベイクド
ビーンズやスクランブルドエッグをつけて、自前でイングリッシュブレッ
クファストにしました。

Hard Days Nightホテルのロゴは、マス目に4つの丸印がついているも
のですが、これにはいくつかの隠された意味がありました。
まずは、6本の弦に4箇所を指を押さえた形で、ホテルの名前になって
いるA Hard Day's Nightの、強烈な印象のイントロのジャーンという音
のギターコード(G7 sus)を表しています。
それから、4つの丸印が、左にポールとジョージ、右にジョン、後ろにリ
ンゴという、ステージでの4人の位置を表しています。
そして縦4つ、横5つのマスは、フィルムのコマをイメージしたA Hard
Day's Nightのアルバムジャケットの、20分割したコマを表しています。
ビートルズの生まれた街に誕生したビートルズのテーマホテルの単純
なロゴにも、これだけの意味があったとは驚きでした。

10時にはスカウスハウスの現地スタッフのミナコさんとイアンさんとロ
ビーで会いました。
今日のフットボールチケットを受け取るのですが、2人とは2年半前に
も会っているので、久しぶりの再会でした。
ホテルのロビーには落ち着いて話をできるスペースがなかったので、
そのままホテルを出て、ミナコさんお勧めのParr Street Studioでミナコ
さんたちの朝食(BreakfastをBreakkieと言っていましたが)と、僕は紅
茶を飲みながらしばしおしゃべりをしました。

ここは元の音楽スタジオで、今いる場所はコンソールルームだったそう
です。今はホテルも営業しているそうです。
Hard Days Night Hotelもそうでしたが、街の中心部にはいろいろなスタ
イルのホテルができているようです。それだけLiverpoolを訪れる人の
数も増えたということなのでしょう。
このスタジオで録音したアーティストのリストというのを見せてもらった
のですが、その中には、Liverpool Football Clubなんていう名前もあり
ました。

ミナコさんたちと別れてホテルに戻りましたが、戻る途中で、新しくでき
たショッピングセンターLiverpool Oneを通るので、その中にある
Liverpool FCのオフィシャルショップに吸い込まれてしまいました。
市内には既にWilliamson Squareにオフィシャルショップが一つあり、
Anfieldスタジアムにもあるのですが、それらよりもさらに規模が大きい
ショップです。
今日はLiverpool対West Ham Unitedの試合の日です。スタジアムに行
ったら荷物は少ない方がいいので、買い物は先に済ますことにしまし
た。

12月に入ったのでもうすぐクリスマスです。赤い色に溢れた店内はクリ
スマスの雰囲気もあって華やかでした。
リバプールサポーターズクラブ日本支部でも次の週に東京でクリスマス
会を開くので、そのプレゼントにするものも手に入れました。

それから、Whitechapelにある08 Placeで、イベント情報をチェックしまし
た。ここでは展覧会や観光施設のパンフレットが置いてあります。
僕はここで、街の歴史的なパブを紹介した"Liverpool Historic Pub
Guide"、さまざまな建物に刻まれたLiver Birdを集めた"The Little
Book Of Liver Birds"、Liverpoolの訛りを4カ国語に訳した"Scouse
International"の3冊の本を買いました。
Scouse Internationalに載っている4カ国語は、英語、フランス語、ドイ
ツ語、そして日本語です。わざわざ英語の訳まであるのが笑えます。

今日のフットボールマッチは、夜の8時キックオフです。
試合開始までは時間がたっぷりあるのですが、今回スカウスハウスさ
んに用意してもらったチケットの席が、メインスタンドの前側のエリアで
あるPaddockの、1列目という席なので、スタジアムに早めに入って選
手が練習するのを見たい、というのと、気温が低くなりそうなので、試合
の前にスタジアムの周りにあるパブに入って体を温めておきたい、とい
う思いがあったので、4時ぐらいには夕食を食べてスタジアムに行くこと
にしました。

この時期のLiverpoolでは、4時といっても夕方というよりはすでに夜の
空ですが、夕食はJamie Carragherがオーナーになっている"Cafe
Sports England"というお店に入りました。City Centreにあって気軽に
入れるお店です。Liverpoolのシャツを着たファンもたくさんお店にいま
した。みんなこれからAnfieldに行くのでしょうか?

店員さんも全員Jamie Carragherの背番号である23番が背中に書か
れたシャツを着ています。地元出身の彼はサポーターにとても愛されて
いて、ビートルズのYellow Submarineのメロディーに合わせて、11人の
選手がみんなCarragherだったらいいのに、という歌詞の、彼を応援す
る歌があるのですが、このレストランはそれを実現したかのようなとこ
ろです。

以前、近くの通りにスポーツ中継を見せることをメインにした別のス
ポーツバーがあったと記憶しているのですが、今はもうなくなっていまし
た。Jamie Carrgherのお店は、そのなくなったお店の後を引き継いだ
ような感じなのかもしれません。

夕食の後、Queens Squareのバスセンターから、17番系統のバスに
乗ってAnfieldへ向かいます。試合の日であれば、赤いシャツを着た人
が必ずバス待ちをしていますので、その人たちと一緒に行動していれ
ば間違いなくスタジアムに行くことができます。まだ時間が早いせいで
特に渋滞などもなく、10分ほどでAnfieldに到着しました。

Anfieldでは、まずはスタジアムの周りを1周しようと思いましたが、意外
と時間がなくなってしまったので、メインスタンドの裏側を歩くだけで終
わってしまいました。
スタジアムの周りは以前あった住宅がなぜか取り壊されて駐車場や空
き地になっていました。Anfieldは今のスタジアムが手狭になっているの
で、近くに新しいスタジアムを建てる、という計画があるのですが、毎年
財政的な問題で先送りになっています。
でもこの様子を見ると、現在のスタジアムを拡張するのではないか?
という気がしてしまいます。選手にとってもサポーターにとっても聖地で
あるAnfieldが残るのなら、その方がうれしい気もします。

メインスタンドの裏側には、クラブの関係者が入る入り口や選手が入る
入り口などがあります。選手の入り口の周りにはファンが集まっていま
す。これから選手がバスで到着するのでしょう。
待っていれば僕も選手を見ることができるのかもしれませんが、早くパ
ブに入りたい気持ちもあったので待たないでそのままShankly Gateに
向かいました。
ここにはLiverpoolサポーターのみならずフットボールファンなら忘れて
はならないHillsboroughの悲劇の記念碑が建っています。この日も世界
中のサポーターからのメッセージや花が飾られていました。
中央にあったのは、先週試合のあったOlympique Marseilleからの花束
でした。

再びメインスタンドの裏側を歩いて、バスを降りた通りに戻って、The
Albertというパブに入りました。
パブに入ったとたんごった返す人の熱気が押し寄せてきました。まず
はチームのスポンサーになっているCarlsbergを飲んで気分を盛り上げ
ます。
このパブにはこの地を訪れたサポーターが置いていったのであろう、ス
カーフや旗やイラストなどが壁や天井一面に飾られています。一つ一
つ見ているだけでも楽しいです。

The AlbertはCarlsbergを1杯飲んだだけで後にし、今度はスタジアム
の周りに出ている露天を冷やかします。クラブ非公式の商品ばかりで
すが、Tシャツに書かれたユーモラスな言葉は非公式ならではの名物
でしょう。今回売られていたのは、アニメ「シンプソンズ」の主人公が
Torres 9のシャツを着て、"I must not call Ronaldo a dirty diving
manc."と黒板に何度も書いている絵のTシャツでした。前日のRonaldo
の反則の皮肉でしょうか? このTシャツも日本へのお土産に買っていく
ことにしました。

6時30分にいよいよスタジアムに入ります。スタジアムの入り口は
Turnstileといって、回転式の仕切りでチケットを見せて、一人ずつ中に
入るという仕組みになっています。
大きな荷物を持っていると通れないような狭い入り口ですので、なるべ
く身軽にしていった方がいいです。

僕の席は、Mainスタンドの、Awayスタンド席寄りの方ですが、確かに
一番前の席でした。まだ選手は練習をしていませんでしたが、West
Hamの選手がピッチの様子を確かめていました。
観客も、選手が近くに来ることがわかっているので、サインペンを手に、
選手を待っていました。僕はWest Hamの選手のサインは別にいらない
ので、その様子を見ているだけにしました。
その後、Liverpoolの選手でこの時は怪我のため出場していない
Martin Skrtelが私服でピッチの周りを歩いていたのですが、この時は
僕も油断していて、サインをもらおうと手を伸ばしたときにはすでに戻ろ
うとしているところで、サインはもらえませんでした。

その後7時24分にWest Hamの選手が練習のためにピッチに現れ、そ
の数分後に今度は我らがLiverpoolの選手が、Steven Gerrardを先頭
にピッチに登場しました。スタンドからは大きな拍手が起こります。

今日は選手たちは"FREE MICHAEL NOW"と書かれたTシャツを着て
練習をしています。これは、Liverpoolのファンで、身に覚えのない罪で
10年の刑に服しているMichael Shiledsという人の解放を訴えるキャン
ペーンです。
Liverpool側のゴール裏の席であるKOPスタンドにも、"FREE MICHAEL
NOW"のモザイク用の紙のようなものが用意されていました。
キックオフの前には、Michael Shieldsの家族がピッチ中央に登場して、
女優のSue Johnsonがスピーチを行いました。この時ばかりはWest
Hamのサポーターも拍手を送り、それに対してホームサポーターも拍手
を送り返すという、美しい光景を目にしました。

8時近くに、テレビでおなじみのプレミアリーグのテーマ曲が流れ、一旦
ロッカールームに下がっていた選手たちが再びピッチに登場し、Gerry
& The PacemakersのYou'll Never Walk Aloneがスタジアムに流れ、サ
ポーターたちの合唱が始まりました。
そして8時を少し回ったところでキックオフです。ここから興奮の90分
が始まりました。KOPスタンドでは先ほどのモザイクが浮かび上がって
います。

今日は、ここまでチーム内でリーグ戦ではDirk Kuytと並んで5得点の
Fernando Torresが、前の試合で怪我をしてしまい欠場しています。昨
シーズン、スペインから移籍していきなりプレミアリーグで24得点もの
大活躍をしましたので、今シーズンも期待しているのですが、その姿を
見られないのは残念でした。
ワントップになっているのはRobbie Keaneです。彼は今シーズンになっ
て同じプレミアリーグのTottenham Hotspurから移籍してきたのですが、
なかなか得点が取れずに苦しんでいます。果たして今日はどうなので
しょうか?

試合は序盤からLiverpoolのペースで進みます。
中央のSteven GerrardやXabi Alonsoから右サイドのYossi Benayoun
にボールが回り、Robbie Keaneに向けてクロスをあげるのですが、な
かなかシュートは決まりません。

メインスタンドから反対側の右サイドにはよくボールが行くのですが、自
分の席の目の前でのプレイが見たくて、左サイドの方で攻撃にならな
いかな、と思っていてもなかなかボールが回ってきません。
たまに回ってきたと思っても、Albert Rieraはうまくボールを運ぶことが
できません。今日は彼はあまり調子がよくありません。チームメイトもそ
のことをわかっているのか、余計に左サイドにはボールが回ってきませ
ん。

それでも、ボールが飛んでくると選手たちの走る足音、ボールを蹴る音
がびしびし伝わってきます。スタンドのサポーターたちも大きな声を出し
て選手を応援します。

コーナーキックのときにはディフェンダーのSami Hyypiaもゴール前に
上がってきます。彼はひときわ背が高くて、コーナーキックからのプレイ
ではヘディングでたくさん得点を決めています。今回も、うまくヘッドで合
わせてシュートしますが、残念ながらゴールにはなりませんでした。

攻めながらもWest Hamの堅い守りに阻まれて、前半45分ではゴール
を決めることができませんでした。後半は自分の席から遠い方のゴー
ルに向かって攻めることになるので、前半のうちに得点が入らなかった
のはちょっと残念です。

前半が終わると、スタンドの下にあるトイレに行きました。天井はその
ままスタンドなので、斜めになっていてちょっと窮屈ですが、このスタジ
アムの約100年もの歴史が染み込んでいるようで、それはそれで味わ
いがあります。
トイレの後には暖かい飲み物を、とも思いましたが、同じことを考える
人は多いもので、売店に並ぶ長い列を見てあきらめました。

後半は今度はディフェンダーたちがよく見えます。前半に惜しいヘディ
ングシュートを放ったSami Hyypiaもよく見えます。僕のいるスタンドの
最前列はピッチよりも低いレベルなので、余計背が高く見えます。
彼はもうLiverpoolに9シーズンも在籍していて、かつてはチームのキャ
プテンも務めており、地元出身のSteven GerrardやJamie Carragher
に次いで長い間活躍しています。最近は若いDaniel AggerやMartin
Skrtelに活躍の場を奪われつつありましたが、まだまだ彼は頼りになる
選手です。

後半はWest Hamも少し攻めるようになり、コーナーキックを得る機会
がありました。West Hamのコーナーキックを蹴るのは、元Liverpoolに
いたCreig Bellamyです。
Anfield Roadスタンドの一角のわずかなアウェイサポーター席に駆けつ
けた熱心なWest Hamサポーターたちは、数では圧倒的に差がある
Liverpoolサポーターの前でも、声を途切らせずににぎやかに応援して
いましたが、コーナーキックのときには一段とその声が大きくなります。
自分の席に近いだけによく聞こえました。ビートルズで有名なTwist &
Shoutのメロディーに乗せて歌うチャントには思わず苦笑いしてしまいま
す。ビートルズのホームタウンに来てビートルズの歌を歌うのはなんと
大胆なことでしょう。

途中、この日も無得点に終わったRobbie Keaneが交代で退くときには、
West Hamサポーターたちに、"Waste money(お金の無駄遣い)"という
悔しい声をかけられてしまいました。
しかし結局West Hamもコーナーキックのチャンスを生かせず、お互い
無得点のまま90分が近づいてきました。スタンドからは帰りの渋滞を
避けるためか、早くもスタジアムを去る人たちが増えてきました。

いくら得点の雰囲気がないと言っても、最後まで何が起こるかわかりま
せん。
それに、せっかくスタジアムで観戦しているのに、最後まで見ないとは
なんてもったいないことだろう、と思ってしまいます。
僕の席の前が通路になっているので、試合が見づらくなってしまうのも
残念です。

でも、Injury timeの最後の攻撃も実らず、結局無得点のドローで試合
が終わってしまいました。
はるばる日本からこの試合を見にきたけど、得点もない引き分けで終
わってしまったのは正直に言うとがっかりですが、これもフットボールの
世界です。同じポイントで首位に並んでいたChelseaが、前の日に
Arsenalに負けていたため、Liverpoolはこの試合が引き分けでも1ポイ
ント差のリードでリーグ順位が単独1位になりました。
本当はこの試合を勝利して3ポイント差をつけたかったところが、1ポ
イント差で終わってしまったことが素直に喜べないところでしょうか。

さて、試合の後は特にすることはないのですが、City Centreに戻るバ
スはなかなか来ないし、道路も渋滞している、という話を事前に聞いて
いたので、それならあわてて帰ることはないだろうと思い、再びスタジア
ムの周りのパブに入ることにしました。

今度はKopの裏側の道路を挟んだ向かいにあるThe Parkというパブに
入りました。同じように考える人も多いのか、こちらのパブも混雑してい
ました。ここではWorthingtonを飲みました。以前はリーグカップのスポ
ンサーになっていた会社のビールです。

それから、もう一度The Albertの様子を見たくなったので、道路を渡っ
て再びThe Albertに入りました。今度はTetley's mildを飲みました。
試合の前はCarlsbergを飲みましたが、本当はラガーよりビターが大好
きなのです。ちなみにCarlsbergは2ポンド80ペンスしましたが、
Tetley's mildは1ポンド90ペンスでした。Carlsbergは高かったですね。
それでも日本では1000円近くしてしまうのが、今の為替レートが1ポン
ド140円ちょっとなので、Tetley's mildであれば300円もしないで飲め
るのは、イギリスのビールが大好きな僕にとっては天国です。

もっともイギリスではパブの中では禁煙になったり、アルコール中毒者
を減らそうというキャンペーンの一環としてメニューにはアルコール度
数を表示したりと、パブを取り巻く環境は変わってきているようです。
僕自身は煙草は吸わないのですが、パブの中での禁煙がどのくらい
守られているのだろうか、と半信半疑でいましたが、皆さんきちんと
守っているようです。
おかげでパブの入り口の外が喫煙所みたいになっているのが、以前と
は違った見慣れない光景でした。

試合の方があまり盛り上がらなかったこともあって、さすがに試合終了
後1時間もすれば人が少なくなってきました。僕もこの辺でパブを切り
上げてバスを待つことにしました。基本的には30分おきにバスが来る
ようです。また、タクシーもたくさん停まっていました。

そんな様子を眺めながら15分ほど待っているとちゃんとバスがやって
きました。バスの中も道路も全然混雑していなくて、来たときと同じよう
に帰りも10分程度の乗車で街に戻ってくることができました。
試合に勝った場合はどうなるかわかりませんが、試合の後はパブで時
間をつぶすのは渋滞を避けるのに有効だと思います。

こうしてLiverpoolの1日目、マッチデイが終わりました。

(つづく)

 ≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo373.html ≫


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▽「利物浦日記2008」
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「利物浦日記2008」5 / Kaz

【8月23日(土)】

12時半ごろ。
ツアー参加者のみなさんと一緒に、マージー河の向こう、ウィラルに向
けて出発した。
僕を入れて8人のスカウス隊。バンドメンバーを含む6人の人は、夕方
のギグにそなえてシティ・センターに残った。

ウィラルでは、《I Am The Wirral》と題して、4つの会場で同時進行でラ
イヴ演奏が行われている。そのうちで最も大きい<Pacific Road>という
ライヴハウスでは、アメリカの大物バンドAmerican Englishがステージ
に立つ。昨日の深夜にアデルフィ・ホテルで僕が観たバンドだ。他のみ
なさんは観のがしたことを残念がっていたので、これはちょうどいい、
ぜひ行ってみようということになったのだ。

ジェームズ・ストリート駅からマージーレイルに乗った。マージー河の下
のトンネルをくぐって、1つ目の駅、ハミルトン・スクェアで下車。そこか
ら歩いて3分のところに<Pacific Road>はあった。
入口には<キャヴァーン・シティ・ツアーズ>のダイレクター、デイヴさん
がいた。入場者のチケットをチェックしている。
 僕:「やあ、デイヴさん。ここでもお会いするとは! 忙しそうですね」
 デイヴさん:「カズ、忙しくはないさ。こうやってボ〜っと立ってるだけだ
  しな」
 僕:「(ツアー参加者のみなさんに)みなさ〜ん、チケット出してください
  ね〜」
 デイヴさん:「ああいいよいいよ、カズんとこのお客さんだろ。入って
  入って」
 僕:「いいの、デイヴさん? いい加減だなあ」

デイヴさんには今朝、アデルフィ・ホテルでも出会った。
「カズ、君んとこ何人だっけ?」
と言いながら、持っていた箱に手を突っ込んで、デイヴさんはぐちゃっと
した赤いゴムのかたまりをひとつかみ差し出した。
受け取りながら、何だろうと思ってよく見ると、それは、3年前のストロ
ベリー・フィールドのチャリティ・リストバンドなのだった。
「うわあ、デイヴさんありがとう!」
あとで数えてみると20個くらいあったので、もちろんツアーやバンドの
みなさんに配ることにした。
 
ステージでは、Instant Karmaが熱演中だった。
バンド名からも分かるように、ジョン・レノン専門のトリビュート・バンド
だ。シカゴから毎年このフェスティヴァルにやって来る6人組バンドで、
パワフルな演奏には定評がある。もちろん、ものすごく上手い。

続いて、American English。昨日と同じようなステージ構成だ。「1972年
のビートルズのコンサート」というテーマで、ジョン、ポール、ジョージ、リ
ンゴそれぞれのソロ・ナンバーを順番に演奏して行く。

コンサートを観ながら、失くしてしまったカメラのことを考えた。
常識的に考えれば、戻って来る可能性は限りなく低いだろう。でも、落
としたのがバスや電車などの公共交通機関ではなく、タクシーの車内
だというところに、一縷の望みがあるような気がした。

もしあのドライヴァーが、後部座席にあるはずのあのカメラにすぐに気
がついたら…そして僕が落としたことに思い当たったら…さらに、彼が
親切で責任感があって、面倒なことも厭わない性格なら…僕がタクシー
を降りたHDNホテルに届けてくれる…かもしれない。

あのドライヴァーとはいろいろ話をしたし、降りるときにはチップも渡し
た。それに、Hさんが用意していたアスプレイズのフライヤーを1枚あげ
たんだった。「ギグのスケジュールがここに書いてあるから観に来て
ね!」と言って…。
うん、これはひょっとするとひょっとするかも。希望はあるんじゃないか
と思えてきた。

American Englishのステージが終わったのが午後3時すぎ。《I Am The
Wirral》はまだまだ続いているけれど、我々はそろそろリヴァプールに
戻らなければならない。アスプレイズのギグが待っているのだ。
Instant KarmaとAmerican English。おそろしくハイレヴェルなステージを
ピンポイントで堪能することができたのは、実にラッキーだった。

リヴァプールに来たからには、やはり<Ferry Cross the Mersey>は体
験してもらわなければ! ということで、帰りはマージーフェリーに乗る
ことにした。
眺めは素晴らしいし、フェリーに揺られながらカモメと一緒にマージー
河を渡るのは、なんとも言えない感慨を覚えてしまう。到着時に流れる
ジェリー&ザ・ペースメイカーズの<Ferry Cross the Mersey>も実に効
果的で、何度聴いても感動させられる。
もちろん僕だけじゃなく、みなさんにも大好評。予想以上のヒットだっ
た。めでたしめでたし。

4時半、HDNホテルでアスプレイズと合流して、キャヴァーン・クラブ
<バック・ステージ>の楽屋へ。
時間に余裕があったので、ひとりでHDNホテルに戻り、レセプションの
スタッフにカメラのことを尋ねてみた。
 僕:「あのう、実はカメラをですね、タクシーに落としてしまって、えーと
  もしかしてそのタクシーのドライヴァーがここに届けてくれてたりなん
  かしてないかなーなんて思って…」
 レセプション:「ああ、カメラね。そのドライヴァーから電話があったよ。
  電話番号も預かってる。電話してあげようか?」
 僕:「わお! ぜひぜひ!」
 レセプション:「(電話が終わって)今ね、彼はアンフィールドなんだっ
  て。試合が終わったら届けてくれると言ってたよ。よかったね」
 僕:「スバラシイ! どうもありがとう!」

なんちゅうこっちゃ。こんなに願いどおりの展開になるなんて!
それにしても面白いものだ。あのドライヴァーは今アンフィールドでレッ
ズの応援をしているのだ…。
カメラが戻って来ることも嬉しかったが、彼がレッズ・サポーターだとい
うことにも不思議な感動があった。
さすがリヴァプールだ。街も、フットボール・クラブも、ほんとうに最高
だ。ウェヘヘ〜イ!

(つづく)


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