August 04 2009, No.389
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  リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World   
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□■ INDEX ■□

 ▽フロム・エディター
 ▼寄稿:「夢をかなえて― Anfield再訪の旅」3
 ▽ゴールドフィッシュだより <No.161>
 ▼「利物浦日記2008」9
 ▽スカウスハウス・ニュース
 ▼今週のフォト


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▽フロム・エディター
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今週は久しぶりに「利物浦日記」の続きを書きました。
昨年・2008年の<International Beatle Week>を紹介する連載。今週お伝えして
いるのは<Beatles Convention>でのアスプレイズのギグの様子です。
もう1年近くの前の話なので思い出せるかどうかあまり自信はなかったのですが、
アスプレイズのドラマー・あんちゃんに送っていただいたヴィデオ映像のおかげ
で、詳しいレポートとして書き綴ることができました。

今あらためて振り返ってみても、まるでおとぎ話のようにハッピーなステージ
だったと思います。
(MCでの)大爆笑があり、興奮があり、一体感があり、解放感がありました。
あの場にいた100人を超えるオーディエンスは、ひとり残らず幸せな気分を味
わったことでしょう。もちろんアスプレイズのみなさんも。

あと3週間とちょっとで、2009年の<International Beatle Week>です。アスプ
レイズは今年も出場します。
初出場の去年はまったくのノーマークで、ひとつひとつギグをこなしながらオー
ディエンスを獲得して行ったわけですが、今年はまったく違った立場でのエント
リーとなっています。

ビッグ・ステージが2つも彼らのために用意されていて、それ以外のステージも
比較的お客さんの多い時間帯にセットされているのです。
去年も決して悪くはなかったのですが、今年は「ほんまにええんかいな」と思っ
てしまうくらいの待遇です。
世界を代表するバンドのひとつになったと思ってもいいかもしれません。今年は
黙っていてもオーディエンスは集まってくることでしょう。

ですが、これはこれでプレッシャーですよね。去年よりもずっとずっとハードル
が高くなっているわけですから…。
やって来るオーディエンスはもしかして、<1984 Tribute>や<Fab Faux>、<Lenny
Pane>といった過去のスーパーバンド並みの演奏を期待しているかもしれない。
いや、そこまでは行かなくても、ビートル・ウィークのトップ・バンドに相応し
いパフォーマンスをみせることが最低条件、ということになるでしょう。

そう考えると、今年のアスプレイズは、去年以上に全力でチャレンジして行かな
くてはいけないわけですね。
なんだかますます楽しみになってきました。きっとアスプレイズのみなさんも同
じ気持ちでしょう。
コーディネーターである僕も責任重大です。彼らと一緒にがんばります!

                          ― Kaz(04/08/2009)


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▼寄稿:「夢をかなえて― Anfield再訪の旅」(3)
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「夢をかなえて ― Anfield再訪の旅」 / ステラ

≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo389.html ≫ 

【自然のリズムを取り戻す】
Bibury Court Hotelについては、事前にtamaさんから、格調高く、執事が出
てきそうなホテルと聞いていました。
確かに建物自体は歴史の重みを感じさせるのですが、入ってみると、ホールから
レセプション、ロビーは小ぢんまりと落ち着ける造りになっていて、構えたとこ
ろがなく、アンティーク好きのお宅にお邪魔しているような印象でした。

私が泊まったのは、中2階にあるダブルの部屋。広~いベッドを1人占めです。
入り口から鏡のある出窓まで結構離れていて、自分のウチより全然広いのです
(当たり前か)。何だか落ち着かず、ウロウロしてしまいました。
バスルームも、独立した部屋みたいにゆったりしていて、バスタブとシャワーは
別々になっていました。
ティーセットとお菓子はもちろんのこと、窓辺にはウェルカムフルーツのリンゴ
がさりげなく置かれていました。
これでも狭いほうだと思われますので、上階のスイートルームなどは、さぞかし
ゆったりした造りなんでしょうね~。

荷物を収めてひと息ついてから、ホテルの周辺を散策しに出てみました。Public
Footpathと呼ばれる自然のウォーキング・ルートを歩いてみたいと思ったのです。
敷地を流れるコルン川の写真を撮っていると、日本人の親子連れのお客さんに出
会いました。
こんなイングランドの片田舎で日本人に会うとは思いもよりませんでしたが、実
はKelmscott Manorでも、日本人の親子を見かけたのです。
いずれも娘さんが親御さんを案内して、という組み合わせ。コッツウォルズに惹
かれて…というのもあるのでしょうが、日本人女性の行動力もナカナカのものだ
と思いました。

ご一家と別れて、村の名物であるArlington Rowを見に、メインストリートに向
かいました。
静かな村…を期待してきたのですが、実はハイスピードで通りすぎていく車が、
結構多いようです。路上駐車も結構あるし…人気のゆえんでしょうか。

コルン川に沿って歩いていくと、芝生に上がったカモたちがお昼寝をしているの
を見つけました。
私が近づいて、シャッターを切っても全くお構い無し。午後のまどろみを楽しん
でいます。人を警戒しないのかな?

ところで、このカモの写真を撮ったすぐ傍に古びた家並みがあり、『あ~ここも
風情があるな~』と写真に収めました。そのときは全然気づかなかったのですが、
そこがArlington Rowだったのでした。

さらに川に沿って進むと、右手に有名なSwan Hotel、左手にはトラウト・ファー
ムに向かう道の分岐点に出ました。コルン川の澄んだ水面に映る柳の姿もステキ
でした。
私はFootpathを探すため、左手に進んでいきました。道の両側にはハチミツ色
の家並みが続いています。が、特にお土産屋さんやカフェやパブがあるわけでも
ない、何のヘンテツもないごく普通の村なのです。なぜ人々を惹き付けるのか、
不思議なくらいでした。

Footpathの入り口は余り目立たなくて、見落としてしまったほどでした。
通りを逸れて矢印に従って進むと、緑の草地の間を縫っていく小路が見えました。
ここからがFootpathのようです。
歩き始めて暫くは、背の高い草が道の両側に茂っていて、何の面白味もなかった
のですが、そのまま進むうちに周りが開けてきて、十字路に出ました。
右に曲がると、なだらかな丘を上り下りしながら伸びていく道になっています。
私はその道を行けるところまで行ってみようと思いました。
澄みきった空が広がり、穏やかな日差しと乾いた風が心地よく感じられます。周
りには人影もなく、聞こえてくるのは、木々を揺らす風の音と、鳥のさえずりだ
け。あ、たまに無粋な飛行機の音もしますが。

緑の絨毯を縫って、道はどこまでも続いていきます。空の下に1人きりだけど、
なんて贅沢な1人の時間でしょう。この空も、風も、緑も全部独り占めなんです
から…。

なぜ人々がこの村に惹き付けられるのか分かったような気がしました。
ここには余計なものがないのです。お土産店も、パブも、名所と呼ばれるものも、
ごく一部だけ。あるのは、緑と、澄んだ川と、美味しい空気。それだけで十分な
んです。
自然とひとつになって、生き物としての自分を取り戻す。
いままで忘れていたけど、私も自然の一部なのです。風と一緒に呼吸し、大地の
リズムで動いている。
時には忙しい日常を離れて、自然のリズムを取り戻す時間が必要なのでしょう。
Morrisがkelmscottとコッツウォルズの自然を愛してやまなかった理由も、分か
るような気がしました。
これまで英国に来るたびに、いつも慌ただしく街や名所を巡っていたのですが、
今回は田舎に来てみて本当に良かったと思いました。

結局この日は、写真を撮りながらFoot pathを1時間くらい歩き回って、最後は
Arlington Rowの裏手に辿り着きました。
この時やっと、ガイドブックに出ているあの建物だ! と気づきました(笑)。そ
れくらい地味だったのです。

ホテルに戻ってひと息いれてから、ダイニングルームに降りて行くと、先ほどの
ご一家が一緒のテーブルに誘ってくださいました。
このBさんご一家は、留学経験のある娘さんが、初めてのイギリス旅行に、ご両
親を連れ出したそうです。
初イギリスでいきなりレンタカーを運転させられたお父さんは、『ラウンドアバ
ウト(周回型交差点の一種)は慣れないと大変だね~!出られなくなっちゃっ
て!』などと話されていました。

娘さんにはFootballの試合を観に来たと話したら、ビックリされました。どう
やら彼女が留学していた頃は、フーリガンが問題になっていたようで、<ファン
が暴れる>イメージが強かったようです。『暴れてたのはホントのファンじゃなく
て一部のフーリガンです! ホントのファンは暴れたりしません。それに、今は
安全管理が徹底していて、女性も子どもも安心して試合を楽しめるんですよ!』
と、力説しておきました。

コッツウォルズの地ビールで一緒に乾杯し、スープ、メイン、デザートのコース
をいただきました。
ここのディナーは、今回の旅行のなかでも絶品でした! どれをとってもオリジ
ナリティーに溢れ、素材を活かした繊細な味付けなのです。
メインの鱒も、添えられたお野菜も、地元で採れた新鮮な材料を使っているので
しょう。デザートのクリームプリュレの濃厚な口当たりは最高でした。
イングランドで、いや日本も含めて、今年食べたなかでも最高のディナーだった
かも知れません。日頃は粗食でガマンしてるから余計に…。

●参考文献
 英国コッツウォルズをぶらりと歩く 小関由美 小学館 2008年

(つづく)

 ≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo389.html ≫


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▽特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
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「ゴールドフィッシュだより」 / ミナコ・ジャクソン
          ~ Goldfish Liverpool Update / Minako Jackson ~

 ― 第161号 / "Up To Something" なリヴァプール ―

 ≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish161_photo.html ≫

こんにちは。
今年もやられました。
春、英国の気象庁より「今年はBBQサマーの見込み強」との発表がありました。
確かにここ数年に比べて夏日が数週間あったものの、7月下旬からはほぼ毎日
20度を割る冷夏が続いています。
先日、正式に「8月はブロリー(傘)サマーになる」との発表があり、がっかり
です。
もういっそのこと、8月を「夏」と呼ぶのをやめてしまえば、人々の期待も薄れ
るのでしょうが。。。
渡英の際には重ね着アイテムと折りたたみ傘を忘れずに。。。

そんな中、この週末は、野外イベントが目白押しでした。ピア・ヘッドでは
《Music On The Waterfront》ウィークエンド、爆撃で中が空洞になってしまっ
た教会St Luke's ChurchではFab Collectiveによる写真展。Princes Parkでは
恒例の《Brouhaha International Street Festival》、シティーセンターでは夕
暮れどきに《Liverpool Samba Carnival》など、野外イベントが目白押しでした。

♪ ♪ ♪

まずは、7月31日(金)にオープンした、Fab Collectiveの写真展 "Up To
Something" から。会場は、St.Luke's Church(爆弾の落ちた教会)。

Fab Collectiveは、写真サイトのFlickrを通じて知り合った、地元のプロの写
真家や写真愛好家で結成されたフォトグラファー集団。
共通して皆、リヴァプールを愛し、人々や日常、風景、出来事をレンズを通して
記録をしています。

この展覧会は20枚の写真で構成されていて、それぞれの写真にはリヴァプール
に関する引用句が添えられています。
この展覧会の企画段階で、各フォトグラファーには引用句が割り当てられ、それ
をキーワードに写真撮影が行われたそうです。
写真と引用句が巧みににリンクされていて、見る人の感性により深くパワフルに
訴えかけるものがあります。印象に残ったものとしては...

ゴールドフィッシュだよりでもお馴染みの写真家、Pete Carrによる、ヒルズボ
ロの悲劇から20年たった今年の記念式典での遺族の表情。
"You'll never walk alone." Hillsborough Memorial, Anfield 2009.

壮大に聳え立つSt George's Hallを捉えた Simon Barrowの作品。
"The magic of Liverpool is that it isn't England." Margaret Simey

Sam Bythewayによる、躍動感あふれるマージー川の波しぶき。
"It's the power of the Mersey, there is a power in those rivers, the
artery of life." Paul McCartney, 1990

Tom Faircloughによる、霞のかかった静寂なマージー川に浮かぶ造船所とドッ
ク。
"Every phase of my life has been touched, sprinkled religiously perhaps,
by the waters of the River Mersey." Anthony Wilson

特に、Tom Faircloughの美しくかつ哀愁の漂う写真と、ミスター・マンチェス
ターで知られる故Anthony Wilson(Factory Recordやハシエンダ・クラブなど
マンチェスター音楽シーンの仕掛け人)の最後の寄稿文となったこの文章のコン
ビネーションは、ハートにじりじりと焼きつくものがありました。

この展覧会のタイトルである、"Up To Something" も例外でなく、ある引用句か
ら由来しています。
"You know what scousers are like, they're always up to something. Please
do not repeat that to anyone from Liverpool." JACK STRAW 1999

1999年に、政治家のJack Strawが、「スカウサー達がどんな奴らか分かってる
だろ? いつもなにかを企んでいるんだ。このことは、くれぐれもリヴァプール
出身の人に言わないように」とコメントしたことで物議を醸し、結果的にリヴァ
プール市に対して謝罪をする羽目になったという実話があります。

"Up To Something" とは、「何かを企む・目論む・計画する」といった、ネガティ
ブな意味に使われることが多いのですが、Fabのメンバーたちは、皮肉と彼らの
もつポジティブなアティチュードをこめてタイトルに使っています。

リヴァプールのリヴァプールらしさを様々な角度から体験できるこの写真展は、
8月30日まで続きます。

 < St Luke's (Bombed-Out) Church >
  Leece Street, Liverpool, L1 2RT (Bold Streetを上がりきって正面の教会)
  オープン:木曜日~日曜日 正午~午後4時まで。入場無料。
  Fab Collective: www.fabcollective.com

♪ ♪ ♪

Fab Collectiveの展覧会のオープニングのあと、ピア・ヘッドへ向かい、
《Music On The Waterfront》の一環のコンサート "The Rightful Owners of
the Song" を観にいきました。

このタイトルは、Liverpool Poetsの1人、Brian Pattenの詩 "Interruption at
the Opera House" からの引用で、音楽は一部のお金持ちやエリートだけに属す
ものではなく、大衆すべてに捧げられたもの、といった趣旨を表現した、心温ま
る詩です。

これはミュージシャンのJonathan Raisinが発起人となったプロジェクトで、
「ミュージック・シティー」の金看板を掲げるリヴァプールの中で、才能があり
ながらも一般的に忘れられがちなパブ回りのシンガーやパフォーマーに脚光を当
てたコンサートです。
リヴァプールで最も有名な交響楽団 Royal Liverpool Phiharmonic Orchestra
(RLPO)を従えてのコラボレーションですが、主役はあくまでもパブ・シンガー
たちです。

このコンサートの第一弾は、昨年のリヴァプール欧州文化首都プログラムの一環
で行われ、Philharmonic Hallをソールドアウトにした人気のコンサートでした。
今回が第二弾となります。野外の無料コンサートというセッティングも、素晴ら
しいアイディアです。

しかし、ここはイギリス。開演のほんの直前から大粒の雨が降りだしました。
ジンクスでしょうか、2006年のMathew Street Festivalのピア・ヘッドでの
RLPOのコンサートも雨に降られました。
それでも、観客は傘やレインコートで雨をしのぎながら音楽を楽しんでいました。

この日の午後にリハーサルを少しだけ観たのですが、そのときはみな私服で、隣
のおじちゃんやおばちゃんといった出で立ちでしたが、本番ではビシッとドレス
アップし、堂々と輝いて見えました。
懐メロのポップスやジャズのスタンダード・ナンバーが中心で、観客も一緒に大
合唱。娘、父ともにステージに立ったJoanne WentonとBill Wenton、85歳の
Bill Whelanがステージに上がったときは、客席から大きな歓声が湧きました。
素晴らしいと思ったのは、屋外の大きなステージで歌っていながら、距離感を感
じさせない、一対一の親近感のようなものが感じられたことです。

天気予報を見て覚悟はしていたものの、横なぐりの雨と、椅子の座面にできた水
溜りと戦いながらの鑑賞は容易ではありません。
結局、コンサート半ば、スペシャル・ゲストのエルヴィス(Phil King)が登場し
たところでギブアップしてタクシーに乗り込んで帰宅してしまいました。
後半のパフォーマンス、特にお目当てにしていたスプーン・プレイヤーのJohn
McGuirkおじいちゃんの演奏が聴けず残念でした。

James Street駅に近いパブ<The Liverpool>では、地元のパブ・シンガー達が時
折ライブをしているようです。
リヴァプールの伝統ともいえるパブ・カルチャーを体験できること間違いなしで
す!

♪ ♪ ♪

8月1日(土)の午後8時半から、《Liverpool Samba Carnival》がシティー・
センターにて行われました。
これは、Liverpool Carnival Company主催のブラジリアン・カーニヴァルで、
今年で2回目を迎えます。このカーニヴァルは、リヴァプール大学キャンパスか
ら始まり、メトロポリタン大聖堂を通ってHope Street、Hardman Streetの坂を
下り、Bold Street、Slater Street、Duke Streetを上がって、最終目的地、中
華街の門の前で終了。

トップ・グループは、意外にも悪夢に出てきそうな、ゾンビやオバケや妖怪のパ
フォーマンス。
続いてリオ風のパーカッション、カーニヴァル・ダンサー、そしてアクロバ
ティックなカポエイラ(ダンス要素の加わったブラジルの格闘技)、巨大でカラ
フルな山車が続きました。

Brouhahaに比べると規模は小さいですが、夕暮れどきのリヴァプールを華やか
に彩るパレードは高揚感を掻き立てるものがあって、いいものですね。
来年もがんばってほしいと思います。

Liverpool Samba Carnival: http://www.liverpoolcarnivalcompany.com/

♪ ♪ ♪

A for Apocalypse - Z for Zombie ?!
最後に、オバケや妖怪がでてきたところで、若手アーティストの集うアトリエ&
ギャラリー、Red Wireの新しい展覧会にも触れておきます。
このところの不況で暗い世相を反映しているのでしょうか、映画『地獄の黙示録
(Apocalypse Now)』をテーマで一般公募し、セレクトされた作品のグループ展で
す。

ギャラリーに入ると、今にも「いらっしゃ~い」とでも言い出しそうな、Laura
Collinsonのオブジェ 'Hawkiniranasaurinator T-500' が出迎え、奥にはLaura
Smithによる光る「Z」'For Zombie' と'Dead Handy'をはじめとした、15人+1
組のアーティストの描く「地獄」が表現されています。

プライベート・ビューに定評のあるRed Wireの今回のエンターテインメントは、
地獄フード。
3フレイバーのイナゴとゾンビ・ケーキ。イナゴに関しては、日本では普通に
売ってるものなので、地獄でもなんでもないのですが、「うーん、ポークみたい
ね」などと試食するお客さんのリアクションが楽しめました。
ゾンビ・ケーキもなかなかよくできています!

この展覧会は、8月8日(土)まで続きます。

 < Red Wire Gallery >
  Carlisle Building, 69 Victoria St. Liverpool
  開館時間:木、金、土 午後12時~6時まで。 入場無料。
  ホームページ: http://redwireredwire.com

♪ ♪ ♪

【今週の告知】
8月14(金)から16日(日)は、《Art On The Waterfront》が開催されます。
現在開催中の、Tate Liverpool "Colour Chart" 展に呼応した様々なアートイベ
ントがアルバート・ドックとピア・ヘッドにて展開。ハイライトは、金曜日と土
曜日の夜にピア・ヘッドで行われるサウンド&ライト・ショー "LuminoCity" が
見ものです。
パンフレット(PDF)は、こちらからダウンロード可能です。
http://www.liverpool.gov.uk/Images/tcm21-160099.pdf

それでは、また再来週!

ミナコ・ジャクソン♪

≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish161_photo.html ≫


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▼「利物浦日記2008」9
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「利物浦日記2008」9 / Kaz

【8月24日(日)】

4時半、アデルフィ・ホテルのクロスビー・ルーム。
アデルフィには、巨大なラウンジを囲むようにして6つのカンファレンス・ルー
ムがある。大きさは大小さまざまで、このクロスビー・ルームはその「小」の部
類に入る。しかし小といっても100人くらいは軽く収容できるし、天井がおそろ
しく高くて音響がいい。おまけに建物の南側にあるから日当たりが良くて、明る
いムードでライヴができるという素晴らしい会場なのだ。

我々が到着したとき、クロスビー・ルームでは誰も演奏していなかった。本来な
らBack From The USSRというロシアのバンドが演奏しているはずだが…。
PAの卓には人の良さそうなおじいちゃんが座っていた。早速訊いてみる。

「やあ、こんにちは。5時からのアスプレイズです。進行はどう?」
「やあ、どうも何も、わしにはようわからんのんじゃ」
「?」
「わしはキャヴァーンのスタッフじゃないんじゃ。(着ているポロシャツの胸の
ロゴを見せて)ほれ、このバンド、Persuadersのスタッフなんじゃよ」
「…? じゃあなんでここにいるの?」
「いや、うちのバンドが機材一式を貸すことになっての。ほれ、そこにセットさ
れとるドラムやらアンプやらはぜ~んぶウチのなんじゃよ。朝にここに運び込ん
だら、PAやる人間がおらん言われての、なぜかわしがここに座ることになったん
じゃ」
「ふうん、MCはいないの?」
「おらん」
「そりゃたいへんだ。おじさん司会するの?」
「まさか。わしゃここに座って音の調整するだけじゃよ。君ら次のバンドか? 
4時のバンドは来んかったんじゃ。いつでも始めてええよ」
「…おじさんもたいへんだね。とにかくよろしく。で、ヴォーカル・マイクなん
だけど、フロントに3つとドラムにも1本ほしいんだけど、ある?」
「ない。2本きりじゃよ」
「ぜ、ぜんぶで2本!? せめてもう1本ない?」
「ないもんはない。悪いねえ」
「……」

仕方がないので、1本はレニーさんが使い、もう1本はユウキくんと久保さんに
シェアしてもらうことにした。あんちゃんが歌うときはレニーさんのマイクを倒
して使ってもらおう。

我々が準備をしていると、ぞろぞろとお客さんが集まって来た。明らかにアスプ
レイズ目当てのオーディエンスだ。ありがたい。
ANPのジョンとアシスタントのスティーヴもフィルム収録の準備に取り掛かって
いる。

4時50分、バンドの準備完了。客席も埋まり、ドキュメンタリー・フィルムの
撮影もスタンバイOK。臨時PAのじいちゃんを見ると、こちらに向けて親指を立
てた。
よっしゃ、ちょっと早いけど、始めちゃおう!

● ● ●

<All My Loving>でスタート。みんな調子が良さそうだ。昼一番のキャヴァーン・
パブよりもずっと、気負わずのびのびしたパフォーマンスになっている。
さらに<Misery><Everybody's Trying To Be My Baby><No Reply>そして<Baby's
In Black>と続く。

なかなか渋めの選曲。明るい日曜日の午後にぴったりのランニング・オーダーだ
な…と思っていたら、ここからいきなりの加速が始まった。

<It Won't Be Long><Can't Buy Me Love>そして<I Wanna Be Your Man>。これぞ
ロックン・ロールなナンバーの3連発。締めくくりにレニーさん必殺の<Ain't
She Sweet>。
あのドスの効いたジョンのヴォーカルのこんなにイキイキと再現できるとは…。
加えてあんちゃんのドラムがやはり素晴らしい。まるっきりのリンゴ印なのだ。
オリジナルは言うまでもなくピート・ベストなんだけど、あんちゃんはリンゴと
してドラムを叩いている。「リンゴのドラムがビートルズだ」とあらためて思う。

続く<Devil In Her Heart>がこれまた良かった。
ジョージのたどたどしいヴォーカルを久保さんがたどたどしく再現し、レニーさ
んとユウキくんがスウィートなハーモニーを聴かせた。
ロックな気分を一旦和らげるアクセントとしての選曲だろう。効果は抜群だった。

次の<From Me To You>からが圧巻だった。<Kansas City~Hey Hey Hey Hey><Mr
Moonlight><I Saw Her Standing There>とシャウト系のナンバーが続く。
いつの間にか超満員になっているオーディエンスの全員が体を揺らしている。最
後のナンバー<Long Tall Sally>では、ついに何人かの人がバンドの前のスペー
スに飛び出して踊りはじめた。

アンコールは4曲。
<Sweet Little Sixteen><Hippy Hippy Shake><Lend Me Your Comb>そして<Slow
Down>。
バンド全員がエキサイトしているが、特にレニーさんのぶっ飛び具合はすさまじ
い。暴走している。誰も止められない。
会場はダンス大会のようになってしまった。バンド前のスペースは大勢の人が入
り乱れて踊っている。

<Slow Down>で終わるはずだったが、もんのすごい盛り上がり。嵐のような拍手
と歓声で、とてもじゃないけど許してくれそうもない。もう1曲だけ、短めのナ
ンバーをやってもらうことにした。

では何をやろう? バンドの4人と相談。
「カズさん、何がいいですかね?」とあんちゃん。
「う~ん、スロウなのがいいんじゃないかな。でも任せますよ。やりたいのを
やってください」と僕。
これ以上ロックンロール・ナンバーを続けたら、まさに火に油。オーディエンス
をさらに焚きつけてしまう。<This Boy>あたりでさわやかに締めくくれば、ス
ムーズに終われるんじゃないか…そう僕は考えたのだ。<This Boy>が彼らのレ
パートリーにあるかどうかは知らないけど。

しかしアスプレイズの4人が選んだのは、極めつけのロックンロールだった。
これが最後、ショートヴァージョンで、と断ったうえでの<Twist And Shout>。
ラストはロックンロールで締めるというのが、彼らの流儀なのだろう。うん、
やっぱりこれで正解だな。

僕の心配とは裏腹に、オーディエンスは全員が納得してくれたようだった。極め
て例外的なダブル・アンコールに応えてあげたこと、久保さんのMCがまたして
も大爆笑を誘ったこと、そして、もっと踊りたいという需要も満たしてあげたこ
とがよかったのだろう。
みんな最後の最後までダンスを楽しんでくれた。僕も踊りたいくらいだった。

年に一度、世界中からビートルズ・ファンが集まって来る<ビートルズ・コン
ヴェンション>。
この晴れの舞台で、アスプレイズはまさに最高のパフォーマンスを披露し、最高
のアトマスフィアを創造した。
この場に居られた人たちはラッキーだったと思う。誰もがハッピーだった。

ビートルズ・バンドとしても、このステージはひとつの到達点になるはずだ。何
もかもがパーフェクトに素晴らしかった。
でも、今日のステージはまだ終わっていない。深夜、我々はまたこのステージに
戻って来るのだ。もっとマニアックで目と耳の肥えたオーディエンスを相手にす
ることになる…。

後日談をひとつ。
このステージには、僕の友人のベーニーさんが観に来てくれていた。ポールや
ジョージと同じ時代にリヴァプール・インスティテュートに通っていた彼は、デ
ビュー前からビートルズのステージに足を運んでいた。
フェスティヴァルが終わった後、いつものようにジャカランダで一緒に呑んだと
き、ベーニーさんはこう僕に言った。

「カズ、アスプレイズはいいバンドだな。楽しかったよ。今年のベスト・バンド
のひとつだと思うよ。お世辞抜きでな。でもな、あの<Mr Moonlight>、ありゃ大
笑いしたぞ。ほれ、『膝まづいて君に許しを乞う』のところ、ニーズじゃなくて
ノーズって歌ってただろ? 鼻まづいて許しを乞うってわけか。ケッサクだった
ぜ」
「わはは、よく気がついたなベーニーさん。でもあれはああいう歌詞なんだよ。
あれはハンブルグのヴァージョンだから。ジョンはふざけてノーズって歌ってる
んだよ」
「へえ、そうだったのか。そんな細かいことまでちゃんとコピーしてるんだな」
「まあね、彼らのこだわりはスゴイよ。僕もびっくりしっぱなしの毎日だった」
「ほう。来年も観たいもんだな」

(つづく)

≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo389.html ≫


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□■ 第389号 ■□

 ◆発行 SCOUSE HOUSE (スカウス・ハウス)
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