November 03 2009, No.397
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  リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World   
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         *** http://scousehouse.net/ ***        


□■ INDEX ■□

 ▽フロム・エディター
 ▼寄稿:「夢をかなえて― Anfield再訪の旅」7
 ▽特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」 <No.166>
 ▼「利物浦日記2008」11
 ▽スカウスハウス・ニュース
 ▼今週のフォト


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▽フロム・エディター
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今回もがんばって「利物浦日記2008」の続きを書いてみました。
ついさっき書き上げたばかりのできたてのホヤホヤです!
…といっても、果たして美味しいかどうかはわかりません。前回も書いたように
瑣末でどうでもいいようなエピソードが多いので、ヴォリュームのわりに味はイ
マイチ、かもしれません。
でもまあ、《ビートル・ウィーク》に興味をお持ちの方には、フェスティヴァル
の空気のようなものを感じていただけるのではないかと思います。

今回でようやく日曜日のコンヴェンション・デイが終わり、残すは月曜日のマ
シュー・ストリート・フェスティヴァルのみとなりました(火曜日がフェスティ
ヴァルの最終日でしたが、その日はバンドのみなさんと一緒にロンドンにおりま
した)。
次号でなんとか書き上げて、できるだけ早く「利物浦日記2009」をスタートさせ
たいと思っています。

ステラさんの連載「夢をかなえて― Anfield再訪の旅」は、いよいよリヴァプー
ルFCのマッチ・デイです。
今号と次号の2回に分けて掲載します。ぜひご覧ください。

そしてミナコさんの「ゴールドフィッシュだより」は今回も面白い話題がたくさ
んです。
「おまけ」扱いではありますが、レッズ・ファンにはうれしいことに、ジェイ
ミー・キャラガー選手も写真つきで登場します。
このジェイミーの表情がとってもいいんです。なんともいえないナチュラルで
素敵な笑顔を捉えています。さすがミナコさん。こちらもぜひご覧くださいね。
ミナコさん、誕生日おめでとう!

                          ― Kaz(03/11/2009)


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▼寄稿:「夢をかなえて― Anfield再訪の旅」(7)
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「夢をかなえて ― Anfield再訪の旅」 / ステラ

≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo397.html ≫ 

【2008-2009リーグ最終戦:前編】

24日日曜日。
いよいよ試合当日です。
この日を心待ちにして、はるばる東京から飛んできたけれど、今日が終わってし
まえば、一つの思い出になってしまう。
ずっと永遠に今日が続いたらいいのに…。
でも現実の時間はドンドン流れていきます。私もそれについて行かなければなり
ません。

ちょっと遅めに朝食ルームにいくと、昨日の4人組がユニを着こんで腹ごしらえ
中でした。
「今日は勝たなきゃね!」
と声を掛け合いました。

この日Jamesはゆで卵のほかに、4個でひとパックになっているヨーグルトをバ
キッと外して、出してくれました。
そこへJamesと彼のお母さん、友人のフランシスもやってきて、一緒に朝ごはん
タイムです。
Jamesは、思いっきり焦がしたトーストにゆで卵を乗っけて潰し、即席の卵サン
ドにしてかぶりついています。何だかその姿が、微笑ましくも切なく思えてしま
いました。もうちょっと上手く、キツネ色に焼いてもらえる人がいればいいの
に…。
ネイティブ同士のお喋りが始まりましたが、残念ながら私の理解力では歯が立ち
ません。やっぱりこの次までの課題だな〜と諦めて、お先に失礼しました。

外に出ると、澄みきった空に一筋の飛行機雲。眩しい陽ざしが芝生に濃いかげを
作り、暑くなりそうな予感がします。
まずはB&Bの裏にあるStanley Parkに寄り道して、ちょっと歩きまわってみまし
た。かなり広々した公園で、サッカーのピッチがいくつも取れそうなくらいです。
ボールを蹴っている少年たちの姿もそこかしこに見られましたが、それでも全然
余裕の広さ。東京のせせこましさを思うと、ホントに羨ましい環境です。

この公園の反対側にはEverton FCのスタジアムもあり、歩いて行けるくらいの距
離だそうです。Tamaさんによると、スタジアムツアーもなかなか良かったとのこ
と。ぜひ次回は訪ねてみたいものです。

取りあえず、17番のバスでシティーセンターへ向かいました。初めはアッガー
のお店に行くつもりだったのですが、またしても住所と名前をチェックし忘れて
しまいました。
大体の見当はついていたけど、結構距離があり、無駄足になる可能性もあります。
それに、試合に遅れでもしたらシャレにならない。無理はせず、昨日行きそびれ
たリバプールOne内のショップに行くことにしました。

お店は2つのフロアに分かれ、スタジアム内のショップよりも明るく、見やすい
レイアウトで、品揃えも豊富です。私のような『決められない』人が足を踏み入
れたら最後、アレコレ迷って出られなくなるかと思うくらいでした。
1階の入口にはジェラードのマネキンがあり、記念撮影をしているファンも見か
けました。このショップ限定の選手のマグカップがオススメと聞いていたのです
が、さて誰のカップを買って帰るか、ひとしきり悩んでしまいました。
アロンソのカップに惹かれたのですが、途中で割れでもしたら縁起悪いかも…。
暫く考えた末、また明日来てみて、それでも欲しかったら買うことにしました
(しかし次はなかったのです!)。
結局この日はお土産用のプログラムと、アッガーがカッコ良く着こなしていたL4
の黒のTシャツを買いました。

買い物を済ませて、一番上にある芝生のスペースでひと休み。
行き交う買い物客や、芝生の上でボールを追いかける親子連れのなかに、たくさ
んの赤いユニ姿を見かけました。
4年前の試合当日よりも、ユニ姿が増えているような気がしました。

思えばLiverpoolは、あの1週間後にイスタンブールの奇跡を起こして、見事
ビッグイヤーを獲得、翌年はFAカップ獲得、その翌年もアテネでのCL決勝戦に
進出と、目覚ましい活躍をしてきたのです。
今年もリーグ・タイトルこそ逃したものの、ギリギリまで優勝争いに絡むこと
ができました。
着実に力をつけてきているLiverpoolをサポートするファンが増えているのも不
思議はないでしょう。
そして、世界中から彼らに魅了されたファンがこの街を訪れています。モチロン
私もその1人。どこまで彼らが成長していくのか、この先もますます楽しみです。

この後リバプールOneを後にして、お土産を置くため一旦Jamesの家に戻りました。
彼は部屋の鍵と表玄関の鍵を渡してくれていたのですが、どうも私はこの鍵との
相性が悪く、上手く開けられないのです。この時も難儀したのですが、ちょうど
戻ってきたJamesに開けてもらうことが出来ました。

彼は『今晩はウチに居ないけど、適当にキッチンでお茶とか入れていいよ〜』と
言います。
(また鍵が開かなかったら…?)
一瞬不安がよぎりましたが、まさか何度も開かないなんてことはないだろうと、
すぐ打ち消したのでした。

家を出る前に、TESCOで買ってきたベイクウエル・パイ(エッグタルトに似ていて
結構美味しい)で軽くお腹を満たしました。スタジアム内の食べ物がイマイチと
聞いていたからです。Tシャツの上にアロンソ14番のユニを着こんて、いざ出陣
です。

ユルネバ門(シャンクリー・ゲート)の所まで来ると、物凄い人だかり! 選手の
入り待ちをするファンが溢れていました。
そういえば、午前中に通りすがったときにも、すでにたむろしている人がいまし
た。いい位置取りをするには早くから並ぶ必要があるのでしょう。
ノコノコ遅れてきた私は背の高いファンに埋もれてしまいました。目一杯背伸び
したのですが、バスを降りてくる姿は見えませんでした。でも、到着したとき、
窓から手を振るトーレスの姿はバッチリ目に焼き付けました!

両チームの到着を見届けてから、スタジアムの反対側に回り、The AlbertかThe
Parkに入ろうと思ったのですが、どちらも超満員で立錐の余地ナシでした!
The Parkの方は裏庭までお客が溢れかえっています。残念だけどビールはお預け
にして、早めにスタジアムに入りました。
 
(つづく)

 ≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo397.html ≫


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▽特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
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「ゴールドフィッシュだより」 / ミナコ・ジャクソン
          〜 Goldfish Liverpool Update / Minako Jackson 〜

 ― 第166号 / Queen Mary 2〜Get Off at Edge Hill〜Eco Design Show ―

 ≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish166_photo.html ≫

こんにちは。
冬時間が始まりました。午後5時すぎには真っ暗ですが、夜が長く感じる分、
ゆったりと時間が流れているような気もして、まんざら悪いものでもありません。

さて、今回号では、まずは10月20日にリヴァプールに寄航したクルーズ客船、ク
イーン・メリー2号(QM2)の話題から。
QM2は、キューナード社が誇る豪華オーシャンライナー。151,400トンという巨大
なスケールで、リヴァプールに寄航した船としては最大級です。
今回は、QM2の5周年記念とキューナード社の創業170年を祝うクルーズで、サウ
サンプトンから出発し、エジンバラ、グラスゴー、リヴァプール、アイルランド
のコーク、フランスのシェルブールと回ったあと、母港のサウサンプトンへ戻る
という周遊ルート。

2007年にピア・ヘッド付近にオープンした<リヴァプール・クルーズ・ライナー・
ターミナル>には、沢山の人々が詰めかけて、乗客に手を振ったり、船を写真に
収めていました。

私も、船体の美しいフォルムに感嘆しながら必死に写真を撮っていましたが、正
面は向こう側だったことに気づきました。。。
船を眺めながら船の正面の方向に歩いていきました。船というより巨大なバルコ
ニーつきのホテルのようです。
どんな人達が乗っているのだろう、「Queen Mary 2」 のサインの文字のフォン
トのサイズはいくつなんだろう? などと考えながら、見物客の間をくぐり、船
の前方にたどり着きました。
ちょうどマージー・フェリーが通過していたのですが、ライナーの大きさを考え
ると、まるでおもちゃのボートのようです。

その晩QM2がリヴァプールを去る際には、花火も上がったようです。
私は残念ながら見にいくことはできませんでしたが、地元の写真家Pete Carrが
またまたいい写真を撮っていますので、リンクをお伝えしておきます。
http://www.vanilladays.com/gallery/2009/10/queen_mary_2_in_liverpool_with_fireworks/

クイーン・メリー2号: http://queenmary2.cunard.co.uk/

このクルーズターミナルには、同じ週の後半にイギリス海軍の航空母艦、イラス
トリアス号も停泊していました。
ちょっと暗いですが、対岸のワラシーからの眺めを一枚送ります。

♪ ♪ ♪

10月22日に、世界最古の旅客鉄道駅であるエッジヒル駅(Edge Hill Station)
に、常設のアートセンターがオープンしました。
名称は<Metal at Edge Hill>。
2008年にバイエニアルのパヴィリオンをここで展開したアート団体のMetalが中
心となって実現したものです(ゴールドフィッシュ128号をご参照ください)。

オープニングを飾る展覧会は、その名も《XXX: Get Off at Edge Hill》。
今年の<Liverpool Art Prize>の大賞を受賞したデュオ、AL & ALがキューレー
ターを努めたグループショーです。
'Get off' というフレーズですが、電車などから「降りる」という意味のほかに、
リヴァプール独特の表現で、なにやら性的な意味合いを含むスラングでもあるよ
うです。

この展覧会では、産業革命を生むきっかけとなった鉄道の歴史に関連したインダ
ストリアルでメカニカルな要素と、スカウス訛りの表現にちなんだセクシュアル
な要素を掛けあわせたテーマで繰り広げられています。

参加アーティストは以下のとおり。、
AL and AL, Kenneth Anger, Sebastian Buerkner, Toby Clarkson, Nicki
McCubbing, Crystal DeBeers, Marcel Duchamp, Johnny Ferral, Hayley
Goodsell, Richard Meaghan, Jodie Mellor, Jenny Porter, Man Ray, George
Albert Smith, Imogen Stidworthy, and Hannah Wilke.

是非、エッジヒル駅を降り立って、世界最古の鉄道駅とコンテンポラリー・アー
トを体験してみてください。

<METAL at Edge Hill>
住所:Tunnel Road, Liverpool L7 6ND
オープン:火曜日−土曜日、11.00〜16.00
アクセス:(電車)Lime Street駅から各駅列車で1駅
      (バス)86番でUpper Parliament Street下車、または79番で
          Wavertree Road下車。ともにシティセンターLiverpool
          ONEのバス・ターミナルから乗車できます。
ホームページ: http://www.metalculture.com/liverpool/

♪ ♪ ♪

19世紀の技術革新が鉄道や工業機械の導入だとすると、21世紀のテクノロジーは
「環境」がキーワードといえるでしょうか。
今年はリヴァプールの「環境年」ということもあり、10月30日から11月1日まで、
メトロポリタン大聖堂のクリプト・ホールにて、《Eco Design Show》が行われ
ました。
これは、Design Initiativeが主催する<Liverpool Design Festival>の一環で行
われたメインイベント。

このショーでは、選りすぐりのデザイナーたちによって、斬新なアイディアに溢
れ、環境やエネルギー消費、リサイクルや廃棄物削減のために素材を再生して作
られた製品の数々が展示販売されていました。目からウロコが落ちるようなエキ
サイティングな作品ばかりです。

出展者のハイライトとしては、リヴァプール出身デザイナーのIlsa Parryと、最
近ウィラルに引っ越してきたばかりのMichael Cloke。
二人は、先日BBC2より放映された、大御所デザイナーのフィリップ・スタークが
審査するデザイン・コンペ番組《Design For Life》のファイナリストです。
( BBC 2: Design For Life: http://www.bbc.co.uk/programmes/b00mx9y1 )

番組のチャンピオンとなったIlsaは、電球のスイッチが切れたあとも長いあいだ
暗闇でも光り続ける賢いランプ<Kaspa>を、マイケルはゴミを利用して生活雑貨
に変身させる便利なグッズを販売。また、番組で登場した製品<Flo>や<Stable>
のプロトタイプも展示されていました。

Ilsa Parry(イルサ・パリー) REthinkthings: http://www.rethinkthings.co.uk
Michael Cloke(マイケル・クローク): http://www.michaelcloke.co.uk/

クリプト・ホール内には30ものストールが並び、サステーナブルな素材から作ら
れたファッション・アイテム、廃タイヤの家具やプライウッド+再生アクリルや
プラスティックを組み合わせた花瓶などの製品が展示されていました。

エコ・デザイン・フェスティヴァルは終了してしまいましたが、Liverpool
Design Festivalは、11月8日まで続きます。

Liverpool Design Festival:: http://www.liverpooldesignfestival.com/

♪ ♪ ♪

【今週のおまけ】
《Jamie Carragher Launches Talent Week at Liverpool ONE》
10月26日(月)、<The Talent Week>という14歳から25歳までの若者を対象に各
自の個性や才能を認識して引き出そうというキャンペーンが、全国展開されまし
た。
リヴァプールではLiverpool ONEにて行われ、Liverpool Football ClubのJamie
Carragherが出席。子供達にもみくちゃにされながら登場し、開会のリボンを
カットしました。
ほとんどスピーチらしいスピーチもないまま去っていきましたが、サインをねだ
る子供達にサービス旺盛でした。
次世代のスポーツ選手、起業家、技術者、ミュージシャンやアーティストの誕生
が楽しみです。
Talent Week: http://www.talentweek.co.uk/

それではまた再来週!

ミナコ・ジャクソン♪

≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish166_photo.html ≫


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▼「利物浦日記2008」11
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「利物浦日記2008」11 / Kaz

≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo397.html ≫

【8月24日(日)】

Mal Evans Memorial Bandのステージは、0時20分ごろに終わった。いよいよア
スプレイズの出番だ。
気がつけば、会場はぎっしり満員になっている。
最初からアスプレイズを目当てに集まったファンも多いようだが、それだけでは
ない。ホテル内の他の会場のギグは午前0時ですべて終了したので、必然的に、
ここクロスビー・ルームにオーディエンスが集中することになったのだ。

クロスビー・ルームはそう大きくない会場だが、ぎゅうぎゅうに詰まったこの様
子だと250人くらいは入ってるんじゃないだろうか。会場の外にも大勢の人がい
るから、300人は軽く超えてるかもしれない。もう日付が変わっているというの
に…。
もちろん、疲れた表情をしている人は誰もいない。まだまだ楽しみはこれからだ、
と言わんばかり。まあそれはそうだろう。ほとんどのファンは常連で、これを楽
しみに毎年アデルフィ・ホテルに戻って来るのだ。

満員のオーディエンスが醸しだす期待感というか高揚感というか、そういうもの
に包まれながら、楽器のセッティングに取り掛かる。
ユウキくんが切羽詰った表情でそばに寄って来た。
「カズさん、水あります?」
「ん? 水? …あ、忘れてた」

バンドのステージ・ドリンク(ミネラル・ウォーター)を用意するのは僕の役目
なのだが、Mal Evans Memorial Bandのライヴに夢中になってしまって、すっか
り忘れていた。
「ごめんごめん。でも今からじゃ間に合わんな。水なしでいける?」
「ええ〜!? ムリムリ! 水なしじゃ死んじゃう〜〜〜!」
「…わかったわかった。買いに行って来ようね」

ホテル内にはいくつかバーがあるので、通常はそこで水をもらうことができるの
だが、あいにく午前0時ですべてクローズになってしまっていた。
あと数分でステージが始まるという緊急事態だが、ホテルの外に買いに行かなけ
ればならない。
近くにあるチッピーはすべて満員状態。長い行列が出来ている。仕方がないので
ライム・ストリート駅近くのチッピーに駆け込み、水を5本調達してダッシュで
戻った。たぶん5分とかかっていないはずだ。我ながら感心する早業だった。

まだ演奏は始まっていない。スタンバイが完了したアスプレイズの前にひとりの
おじさんの姿。
おや、いないはずのMCの姿が…と思ったらなんと、<Cavern City Tours>のダイ
レクター、ビル・ヘックルさんだった。
ビルさんのイントロデュースで演奏をスタートできるとは、なんたる幸運。なん
たる行幸。たぶんバンドのみんなはこの人が誰だか分かってないだろうけど…。

● ● ●

オーディエンスをかき分けてステージに近づく。しかし人が多すぎてなかなかた
どり着けない。残念ながら、ユウキくんに水を渡す前にギグがスタートした。

オープニング・ナンバーは<A Hard Day's Night>。久保さんが紡ぎだすリッケン
バッカーの12弦の音色がカラフルだ。
レニーさんとユウキくんの喉の調子はあまりよくなさそうだ。これが3ステージ
め、しかも午前1時という時間だから無理もない。しかしそれを気にする様子は
見られない。余裕しゃくしゃく、とまでは行かないけれど、リラックスして楽し
みながら演奏しているように見える。いい感じだ。
ただ1人、あんちゃんだけはいつものように最初からエンジン全開でドラムを叩
いている。すごい迫力。この人には誰にも敵わない。

続いて<Any Time At All><Things We Said Today>、MCをはさんでさらに<You
Can't Do That><I Call Your Name>と、12弦ならではの華やかなナンバーが披露
される。
そして6曲目の<Eight Days A Week>で、盛り上がりは早くもピークに達した。
僕はあんちゃんの後ろに回ってこの光景をヴィデオに収めたのだが、鈴なりの
オーディエンスが一斉に手拍子を打ち、合唱する様子にじ〜んと感動してしまっ
た。

ここでリッケンバッカー12弦はお役御免。久保さんはギターをグレッチに持ち替
えた。
最初の6曲は「1964年のビートルズ」シリーズだったが、ここから「1963年の
ビートルズ」シリーズがスタート。
久保さんがリード・ヴォーカルをとる<Chains>を皮切りに、<From Me To You>
<You've Really Got A Hold On Me>、そしてほとんどあんちゃんのワンマン・
ショウみたいな<I Wanna Be Your Man>に至って、盛り上がりは2回目のピーク
を迎えた。

● ● ●

11、12曲めは<Carol>と<Hippy Hippy Shake>。《Live at the BBC》からのナン
バーだ。
当初このポジションには、<Don't Let Me Down><I've Got A Feeling>という意
表をついたナンバーがセット・リストに入っていた。しかしANPの撮影があると
いうことで、急遽、開演直前に差し替えたのだった。

ANPが製作するドキュメンタリー・フィルムは、現時点では、アップルからビー
トルズの楽曲の使用許可が降りるかどうかはわからない。そのため製作陣からは、
「ビートルズのオリジナルでない曲をたくさん演奏してほしい」というリクエス
トを受け取っていた。
結果としてこのステージでは、半分近くがビートルズのノン・オリジナル曲とい
う構成になった。

<Carol>は久保さんのリード・ギターが主役だ。ほとんどリード・ヴォーカルと
いう感じ。そのフレーズが実にスリリングで、無茶苦茶カッコいい。
<Hippy Hippy Shake>も、グレッチのリフ、あの独特の音色が曲のキモになって
いる。
マニアックなファンが多数を占めるオーディエンスは当然ながら大喜び。惜しみ
ない賞賛の拍手が贈られた。

● ● ●

そしていよいよ終盤、<The Night Before><Too Much Monkey Business>と来て、
最後におなじみ<I Saw Her Standing There>。
アンコールには2曲、<Sweet Little Sixteen>と<Long Tall Sally>で締めく
くった。

信じられないことに、僕がベストだと思ったあの素晴らしい夕方のギグよりも、
もっともっと素晴らしいステージになった。
開始直後はかすれ気味で心配させられたユウキくんとレニーさんの声は、みるみ
るうちに絶好調になり、終盤では針が振り切れるほどパワフルになった。特に、
<Too Much Monkey Business>でのレニーさん、<Long Tall Sally>でのユウキく
んのヴォーカルは最高のロックン・ロールだった。

今晩のアスプレイズのパフォーマンスは、世界のどのトップ・バンドにも劣るも
のではないと思う。バンドとしてのアンサンブルはほとんど完璧だった。
言うまでもないことだけど、それを引き出したのは間違いなく、このコンヴェン
ションの最高に素晴らしいオーディエンスなのだ。

● ● ●

終演後のアスプレイズには、やはり多くのファンが集まってきた。
PA係のおじいちゃんまでもが、サインをくれと言ってきたのには驚いた。
「他のバンドにはサインもらおうなんてことはぜんぜん思わんかったがね。君ら
はベスト・バンドだ。君らに会えてよかったよ」

気がつくと、レニーさんが酔っ払いにからまれて困っているようだ。ちょっと話
に割り込んでみた。
「君らのパフォーマンスはグレイトだった。ファンタスティックだったぜえ」と
ヨッパライ。
「はいはい、どうもありがとう」と僕。
「特にあれだ、<Too Much Monkey Business>。あれはサイッコウだった。ビート
 ルズよりいい」
「ビートルズより? なわけないだろ〜。あんた飲みすぎ」
「なわけあるって! 俺を信じろ! 飲んでるけど気は確かなんだから。俺はさ、
 <The Beatles Story>のスタッフなんだぜ」
「あのビートルズ・ストーリーの? ほんまかいな」
「ほんまほんま。ほれ、これ見ろ(と言ってIDカードを出す)」
「へえ、なるほどー」
「君らのバンドを招待する。明日来てくれたら入場料は要らん」
「おお、ありがたい! でもバンドのメンバーだけ? 僕らもいいかな?」
「え? えーと…」
「15人くらいいるんだけど」
「じゅ、15人!? だめだめ〜!」

● ● ●

ようやくファンや酔っ払いから開放されて、ホテルのエントランスを出るところ
でビル・ヘックルさんに会った。
「やあビルさん、さっきは僕んとこのバンドを紹介していただいてありがとうご
 ざいました!」
「おおカズ、アスプレイズだろ? いいバンドだな!」

午前2時半を回っていたが、このまま寝るのももったいないし、だいいちギグの
興奮がまだ醒めていない。アスプレイズのメンバーとマシュー・ストリートへ繰
り出した。

朝までライヴをやってるキャヴァーンで乾杯して、今日1日のギグのことを振
り返る。
なんだか何日も前のことに思えるけれど、昼はキャヴァーン・パブで演奏したん
だった。あれは今日のことだったんだなあ…まあ正確には昨日だけど。
印象に残らないようなステージでは決してなかったはずなのに、誰もがほとんど
忘れそうになっている。
それほど、夕方のギグと深夜のギグは素晴らしかった。素晴らしすぎるくらいに
素晴らしかった。

なんだか夢みたいだね、こんな経験はなかなかできないだろうね、とみんなで語
り合った。

(つづく)

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 紹介、フリーランスとしての求職やお仕事オファーも可能なオンライン・
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The BlueMargarets( http://bluemargarets.co.uk/ )
 カワイイ女性4人組ビートルズ・トリビュートバンド、「ザ・ブルーマーガ
 レッツ」さんです!

Liverpool Art Blog( http://www.art-it.asia/u/liverpool/?lang=ja )
 artinliverpool.comのイアン&ミナコ・ジャクソンさん編集のブログです。

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