October 19 2010, No.434
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  リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World   
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▽フロム・エディター
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先週のこの欄で妻の入院のことを書いたところ、何人かの方より、お見舞いの
メールをいただきました。
ありがとうございます。とてもうれしいです。
術後の経過はまったく問題なく順調で、昨日、無事に退院しました。これからし
ばらくは自宅療養になります。

内臓を切除する手術だったので、完全に元の体には戻ることはできませんが、で
きるだけ前と同じような生活を送ることができるように、僕も協力しようと思い
ます。
ちなみに、妻が望んでいた「パエリア」は、体のほうが受け付けられないので、
まだしばらくは食べられそうもありません。当分はお粥とか湯豆腐とかが中心の
食事になります。まあ仕方ないですね。これから鍋が美味しい季節なので、ちょ
うどいいかもです。

● ● ●

このところ毎日のように、人里に出てきたクマがニュースで報じられます。
全国的に山の実りが絶望的なまでに不作で、食べ物を求めてクマたちが出てくる
のです。
クマに人を襲う習性はなく、基本的にはヴェジタリアンです。性格も優しくて臆
病な動物なのです。食べるものがなくてやむにやまれず山を下りて来て、人間に
見つかってしまったら、追い掛け回されて、多くは射殺されてしまいます。

このことに、僕はとても、とても心を痛めています。TVのニュースを見るのも、
新聞のページをめくるのも恐いです。

クマを含む野生動物の出没は、彼らの生息環境を奪い、環境を破壊してきた我々
人間の責任でもあるのではないでしょうか。
どうか殺さないで山に返してあげてほしいし、山から下りて来なくていいように、
森林の保全にも本格的に取り組んでほしいのです。

ちょうど今、日本では、「多様な生き物や生息環境を守り、その恵みを将来にわ
たって利用するために結ばれた生物多様性条約」のための国際会議『COP10』が
開催されています。193の加盟国と、1万6000人が参加するのだそうです。

その会議を開催中のホスト国で、豊かな森のシンボルであり、絶滅を危惧されて
いるクマが問答無用でたくさん殺されているわけですよね。いったいこれはなん
なんだろうと思ってしまいます…。

                          ― Kaz(19/10/2010)


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▼「利物浦日記2009」10
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「利物浦日記2009」10 / Kaz

≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo434.html ≫

【8月29日(土)】

午後9時、キャヴァーン・パブ。ブルーマーガレッツ4本目のギグだ。
マシュー・ストリートも人でいっぱいだが、この狭い店もぎゅうぎゅう詰めの満
員。おそろしい熱気。外は寒いくらいなのに、ここはサウナみたいだ。タオルを
持ってくればよかった。

ブルーマーガレッツは、<シー・ラヴズ・ユー>でギグをスタート。<キャント・
バイ・ミー・ラヴ><フロム・ミー・トゥ・ユー>と立て続けに演奏して、最初の
MCとなった。
タイトなスケジュールでコンディションの調整は難しいに違いないが、まったく
問題なさそうだ。
次の曲<イット・ウォント・ビー・ロング>が始まったところで、僕はステージ担
当のPAによろしくと伝えて、パブを出た。

● ● ●

9時半に、アスプレイズとロイヤル・コート・シアターの前で待ち合わせ。この
大きなホールを使った結婚式で、これからお祝いのギグを披露するのだ。
シアターの中に入ると、すぐそばにある部屋に案内された。楽屋である。窮屈と
いうほどではないが、決して広くはない。
ウィングスはちょうど30年前の1979年に、このロイヤル・コート・シアターで4
回のコンサートを行っている。ということは、ポールもこの楽屋を使った可能性
が高い、ということだ。僕もアスプレイズのみんなも、ちょっと興奮した。
しかしじっくり感慨にふけっている時間はほとんどなく、すぐに担当のスタッフ
が呼びに来た。

楽屋はステージのすぐそばにあるのだが、そのメインのステージには新郎新婦な
どの主役たちがずらりと座っている。
今日我々が演奏するのはそのステージではなく、客席よりも後ろにあるダンス・
スペースにある小ステージになる。
つまり、楽屋からステージまではかなりの距離がある。昼間のサウンドチェック
のときは、ステージの横から入って客席の横を突っ切って行くだけでよかったの
だが、さすがに結婚式の真っ最中にそのルートを通ることはできない。
スタッフに先導されて、迷路のような狭い狭い通路を歩く。階段を降り、左に曲
がり、右に曲がり、階段を上り、また右に曲がってやっとステージへの扉にたど
り着いた。途中で厨房のそばを通ったり、コックさんに出会ったりもした。

「こりゃもう一度ひとりで戻ってみろと言われても絶対無理だよね」
と、みんなで笑った。
セレモニーでは、メインステージの男性によるスピーチが行われているところ
だった。

照明の乏しい中、アスプレイズは演奏の準備を始めた。ここで案の定、ユウキが
忘れ物に気がつく。あーあと思ったが、仕方がない。はいはい、俺が楽屋に取り
に行って来るよ。戻って来れなかったらごめんな。

しかし人間ここぞという場面ではカンが冴えるもので、意外とスムーズに迷路を
往復することができた。そのことをアスプレイズに褒めてもらおうと思ったのだ
が、彼らは彼らで、新たな問題に直面していた。
ステージのセッティングが、すべて後に演奏するバンド<リピートルズ>用のもの
になっていたのだ。サウンドチェックの順番は彼らのほうが後だったので、PAの
スタッフはもう一度、アスプレイズ用に戻しておかなければならなかったのに、
どうやらそれを忘れていたようだ。

急いで自分たち用に設定をやり直さないといけないのだが、今はセレモニーの
真っ最中、しかもスピーチが行われているために、音を出してチェックすること
ができない。久保さんがアンプを通さずにちょろっとギターを鳴らしただけでス
タッフに注意されてしまった。僕なら「どうせいっちゅうねん」と啖呵をきると
ころだが、アスプレイズはあくまでも冷静に準備を進める。しかし緊張は隠せな
い。彼らの心臓の鼓動が聞こえてくるようだった。

とりあえずスピーチだけでも早く終わらないかなあと待っていると、新郎&新婦
が我々の前を横切って、ダンススペースでスタンバイ状態となった。新郎のケ
ヴィンはスコティッシュなのだろう、タータンのキルトをはいている。
…えーと、ということは、アスプレイズの演奏にあわせて踊る、ということなの
かな…。

スピーチが終わった。最後のフレーズは、
「今からケヴィンとジルにファースト・ダンスを踊ってもらいましょう」
というものだった。

ファースト・ダンス? 結婚してカップルが最初に踊るダンスで、ウェディン
グ・セレモニーの定番といっていいものなんだけど…。そうか、我々がそのダン
ス音楽を担当するのか。ああ、そうか、そういうことだったのかあ…と、今ごろ
気がついてももう遅い…。

ケヴィンとジルが手を組んでダンスを始める体勢になった。スタッフに促されて
アスプレイズも演奏体勢に入る。このままスタートだ。こうなったら運を天に任
せて、出たこと勝負だ。がんばれ、アスプレイズ。

ここで新郎のケヴィンが、バンドに向かって小さく一言。
「スローで」

んなあほな!
このタイミングでリクエストするかあ〜?
アスプレイズを見ると、彼らの耳にはまったく入らなかったようだ。そのままス
タートしようとしている。これはマズイかも…。

彼らが1曲目に用意したナンバーは<イット・ウォント・ビー・ロング>。ハード
なロックンロールだ。まさに歌いだそうとするこの瞬間、スローナンバーに変更
しろと僕が伝えに行く時間はない。無理に行けば、セレモニーのムードがぶち
壊しになってしまうだろう。
しかし、これから始まるのはイントロのない激しいロックンロールである。主役
の新郎新婦はスローなナンバーを想定している。このままスタートしてファース
ト・ダンスはぶち壊しにならないだろうか。どうしよう…。

僕の逡巡はほんの3,4秒ほどだったろう。
レニーさんの豪快なシャウトが炸裂。祈るような気持ちでケヴィン&ジルを見る
と、彼らはまるで何事もなかったように優雅にダンスをスタートさせた。
これにはほんとうに驚いた。
スローな曲を想定していたのに、である。しかもカウントもイントロもまったく
なしで、いきなり始まったのに、である。
踊りだすタイミングは、冒頭の ♪It won't be wrong〜♪ の「wrong」になるわ
けだけど、彼らはちゃんとそこから踊り始めた。「It」を聞いてから「wrong」
までの時間はわずか1秒ほど。その1秒の間に、彼らは想定外の曲のテンポとス
タートのタイミングを完璧に把握したのである。
まったく、見事と言うほかなかった。パートナーと踊ることが日常生活の一部に
なっている人たちというのは、こういうものなのだろうか…。

無事に<イット・ウォント・ビー・ロング>を踊り終わったケヴィン&ジルに、満
場の拍手が沸き起こった。
ケヴィンはそれに応えて一礼し、「みなさんもどうぞこちらに出て踊ってくださ
い」と一言。
広いダンス・スペースはたくさんの人で埋まり、それからのおよそ1時間はダン
ス・タイムとなった。
アスプレイズはすっかり緊張から解き放たれ、目の前で踊るイギリス人たちを眺
めながら気持ちよさそうに演奏していた。

ハラハラ、ドキドキがてんこ盛りのウェディング・ギグだったが、結果は大成功。
一部とはいえイギリスの結婚式に参加できたのは貴重な体験だったし、アスプレ
イズのバンドとしての能力の高さをあらためて認識させられることになった。

演奏のあとは、次のバンド<リピートルズ>の演奏を、みんなでビールを飲みなが
ら観た。ケヴィンがおごってくれたのだ。アスプレイズの演奏を気に入ってくれ
たようで、よかったよかった。
ダンスの曲があれでよかったのかどうかは、ちょっと恐くて訊けなかったが…。

(つづく)

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