October 26 2010, No.435
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  リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World   
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 ▽フロム・エディター
 ▼「利物浦日記2009」11
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▽フロム・エディター
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先週に続いて、「利物浦日記2009」をお届けします。
1年遅れの<ビートル・ウィーク>レポートですが、最後まで書き上げるにはもう
しばらくかかりそうです。すみません。

今週分では、ウールトンにあるセント・ピーターズ教会のグレイブ・ヤードでの
出来事が、自分で言うのもナンですが、ちょっと面白いです。ビートルズ・ファ
ンよりもむしろリヴァプールFCファンの方に興味深く読んでいただけるのではと
思います。

お墓といえば、今年の夏に、ジョンのお母さん・ジュリアのお墓を訪ねました。
実に久しぶりのことでした。以前は毎年のようにお参りしていたのですが、ここ
数年は時間が取れず、すっかりご無沙汰してしまっていたのです。
ジュリアのお墓は、埋葬されたときから墓石がなく、ネコの置物だけが目印でし
た。それが、驚いたことに、今年行ってみると、立派な墓石ができていました。

いや、「立派な」というのは適切ではないかもしれません。ノーマルなスタイル
の墓石とはぜんぜん違って、すごく小さいけれどカッコいいシェイプの、黒い墓
石です。
その表面に、名前が刻んでありました。

何と刻んであったと思います?

 Mummy
 John
 Julia
 Jackie

です。
Mummyはお母さんのジュリアで、JuliaとJackieはジョンの異父妹です。
墓石をつくったのはジョンの妹のジュリアでしょう。
最愛の母ジュリアと、リヴァプールで仲良く暮らした3人の子供のお墓、という
ことなのかもしれません。ということは……。

墓石のそばには、おなじみのネコの置物が静かに佇んでいました。長年風雨にさ
らされたせいでしょう、最後に見たときよりもずっとちっちゃく、形もいくぶん
ぼやけてきています。
このネコはずっとここでお墓を守っているんだなあと思うと、抱きしめてよしよ
ししてあげたい気持ちになりました。

いろんなことを考えさせられた8月のリヴァプールの午後でした。

● ● ●

今週は「ゴールドフィッシュだより」はお休みですが、ミナコさんより、「アル
バートドックに映し出されたBill Zygmantによるジョン・レノンの写真」が届き
ました。
「今週のフォト・アルバム」ページに掲載しておきますね。ぜひご覧ください。

http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo434.html

Albert Dockウェブサイト:
http://www.albertdock.com/index.php?page_id=1952

                          ― Kaz(26/10/2010)


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▼「利物浦日記2009」11
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「利物浦日記2009」11 / Kaz

≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo435.html ≫

【8月30日(日)】

日曜日は毎年恒例、「ビートルズ・コンヴェンション」の日だ。
メイン会場のアデルフィ・ホテルで、午前10時から明朝まで、えんえんとイヴェ
ントが続く。グッズショップあり、ライヴ演奏あり、フィルム上映あり、ビート
ルズ関係者のインタヴューありの、何から何までビートルズづくし。雰囲気もイ
ンターナショナルかつピースフルで、ファンにとってはまさに至福の1日である。

で、僕はというと、朝7時に起きて、寮のエントランスに7時半に集合。昨日到
着したYちゃんグループ3名と一緒にタクシーに乗り込んだ。
これから、ペニー・レーン&ウールトンのビートルズ・ツアーなのだ。
昨日バスツアーをやったところだけど、Yちゃんたちは昨日の昼すぎにリヴァ
プールに到着したために、参加してもらうことができなかった。

Yちゃん以外の2名は初のリヴァプール。
「どうしてもペニー・レーンとストロベリー・フィールドは見に行きたい。せっ
かくだからカズさんに案内してほしい」
とカワイイ女性にお願いされては、「忙しいから自分たちで回ってね」とはとて
も言えない。喜んで案内することにした。
しかし彼女たちは午前10時からの<Mendips & 20 Forthlin Road Tour>に参加
することになっているので、ちょっと早いけれど7時半にスタートすることに
なったというわけだ。

イギリスの夏らしい天気。空の青が日本と違うように感じるのは気のせいだろう
か。ひんやりした空気が気持ちいいし、当然ながらセミも鳴いていない。

郊外に出る前に、まずはホープ・ストリートの裏手にある、ジョン・レノンが生
まれた産院へ。今は産院ではなく、建物だけ残っている。ここは昨日は案内でき
なかったので、Yちゃんたちはラッキーかもしれない。

少人数のタクシー・ツアーは、ひとつひとつのスポットで過ごす時間が少なくて
済むし、フレキシブルに行き先を決めることができるところがいい。
ペニー・レーンでは、道の両端のストリート・サインで記念撮影をすることがで
きた。ラウンドアバウトの反対側の端では記念撮影の順番待ちになることがよく
あるが、さすがに朝8時前だとライバルはいない。静かなものだ。あまり知られ
ていないけれど、このストリート・サインの向かい側には、ブライアン・エプス
タインの母校がある。

歌に出てくるバーバーやバンクのあるラウンドアバウトをひと通り案内して、い
よいよウールトンへ。

セント・ピーターズ・チャーチに入り、まずはクォリーメンの野外演奏スポット
を、続いてミミおばんさんの夫・ジョージおじさんのお墓をガイド。そしてエリ
ナー・リグビーのお墓に移動しようとしたところで、教会の管理人のグラハムさ
んにばったり会った。まだ8時すぎなのに、もう働いてるんだ。

「やあグラハムさん、おはようございます。早いですねえ」
「やあ、君か。おはよう。また来たの?」
「はい、ガイドツアーです。昨日も来たんですよ。ホールでデイヴさんに会いま
した」
「そうか、ご苦労さんだねえ。ホールのほうも見る?」
「もちろん。開けていただけるんですか?」
「いいよ。今から行く?」
「お願いしまーす」

ほんとうに親切な人なのだ、グラハムさんは。歩きながら会話は続く。

「カズ、ジョージおじさんの墓は知ってる?」
「知ってますよ。さっき案内したところです。そこでしょ?」

で、よせばいいのに僕は、ここでいらんことをグラハムさんに言ってしまう。

「ボブ・ペイズリーの墓はそっちですよね」

グラハムさんが知らないわけはない。ちょっと失礼な言い方をしちゃったかなと
後悔したのも一瞬、まったく想像を超える答えに耳を疑った。

「うん、知ってる。うちの親父だもん」

…うちの親父?? んん???

「誰が?」
「ボブ・ペイズリーが」
「誰の?」
「俺の」
「誰が?」
「ボブ・ペイズリーが」
「誰の?」
「……俺の」

気が動転して、思わず何度も訊き返してしまう僕。まるで大木こだま・ひびきの
漫才だよこれじゃ。チッチキチー。

ボブ・ペイズリーといえば、伝説のビル・シャンクリーとともにリヴァプールFC
の黄金時代を築いた大監督だ。
シャンクリーが低迷していたチームを鍛え上げて基礎を作り、引き継いだペイズ
リーは70年代中盤から80年代中盤まで9シーズンの監督在任期間に、なんと6度
ものリーグ優勝をもたらしている。残りの3シーズンのうちの2シーズンは2位。
つまりあきれるほど強かったのだ。その強さは国内だけにとどまらず、ヨーロッ
パ・チャンピオンにも3度輝くという偉業を達成。リヴァプールというクラブを
世界最強のチームに育て上げた。
そのほかのタイトルもあわせると、ペイズリー時代に獲得したトロフィーの数は
実に20。9シーズンで20である。圧倒的な業績ではないか。
今なおLFCが世界的な人気を博しているのは、まさにペイズリーさんのおかげな
のである。

そのクラブ史上最強監督の息子さんが、セント・ピーターズ・チャーチの管理人
として、今ぼくの目の前にいる。
サポーターとして何か言わなくちゃと思ったけれど、何と言っていいか、とっさ
に言葉が出てこない。グラハムさん本人も、何か言ってほしそうなそぶりは微
塵もない。自慢げなニュアンスがまったくないのだ。

「俺の苗字、ペイズリーなんだよ。えーと、名刺今日持ってたかな…(とポケッ
トをごそごそ)」
「あ、いいですいいです。前にもらってるから。そういえばペイズリーでしたよ
ね、グラハムさん。でもびっくりしたなあ」
「そう? ははは」

などと話しているうちに、教会のホールに到着。
グラハム・ペイズリーさんは、ドアの鍵を開けて中を案内してくれた。
1957年6月ジョンとポールが初めて出会った場所である。ここを見ることができ
るのとできないのとでは、やはり大きな違いがある。
朝早いツアーだから中に入れるとは思ってなかったんだけど、グラハムさんに
会えてよかった…。

セント・ピーターズ・チャーチのあとは、ストロベリー・フィールドを案内して、
ジョージの生家を見て、シティ・センターに戻った。
トータルで2時間とちょっとの、実に効率的かつ濃密なツアーになった。Yちゃ
んをふくめて3人ともとても喜んでくれた。がんばって早起きした甲斐があった
というものだ。よかったよかった。

僕にとっても、偉大なボブ・ペイズリーの息子さんに会えるという特別なツアー
になった。毎年知らずに会ってたわけだけど…。

(つづく)

≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo435.html ≫


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