November 16 2010, No.437
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  リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World   
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タンペレに行くことになりました。
タンペレ、地名です。「Tampere」と綴ります。ピンとこないかたも多いかもしれ
ませんね。僕もまったく知りませんでした。

フィンランド第2の都市で、レーニン博物館やムーミン博物館が有名なんだそう
です。地図で見ると、大きな2つの湖に挟まれるという変わった地形をしていて、
携帯電話で有名なノキア社のあるノキアはすぐ隣です。
首都のヘルシンキからは170kmの距離で、そのヘルシンキには、日本から飛行機
でおよそ10時間です。

ムーミンの国、フィンランド共和国についても少し書いておきましょう。
北ヨーロッパにあり、スカンジナビア半島と大陸をつなぐような形をしていて、
東はロシア、西はスウェーデンに接しています。
国の教育水準は高く、洗練されたデザインの国として世界的に有名です。氷河で
削られてできた湖が無数にあり、北部のラップランドではオーロラを観ることが
できるそうです。リヴァプールFCのサポーターにとっては、ヤリ・リトマネン
やサミ・ヒーピアの母国としておなじみですね。

ではなぜ、僕がタンペレに行くことになったのか。
答えはブルーマーガレッツです。
このNLWでもすっかりおなじみ、関東で活動する女性4人のビートルズ・バンド
ですが、昨年<インターナショナル・ビートル・ウィーク>に出場したことがきっ
かけとなって、来年1月にタンペレで行われるビートルズ・フェスティヴァルに
招待されたのです。
招待ですから、もちろん旅費と滞在費は向こう持ちです。すごいですよね。

で、彼女たちとしては、バンドの4人だけでは不安だし何かと世話をしてくれる
人が必要、ということで、僕にお声がかかったというわけです。

「カズさんに一緒に行ってもらえるとうれしいなあ。旅費と滞在費は出してもら
えるんですけど」
「へえー、面白そうだねえ。いいよいいよー」
「でもギャラは出ないんですけど…いいですかね?」
「え…? まあいいかあ」
「わーいやったー!」

とまあ、ほとんど何も考えずに2つ返事で引き受けてしまいました。可愛らしい
女性4人に面と向かって頼まれたらしょうがないですよね。ちょうどビールも飲
んで気持ちよくなってたし。

今年の夏のリヴァプールには、タンペレのフェスティヴァルの主催者がブルー
マーガレッツを観に来ていました。
ライヴのあとでミーティングを設け、あらためて正式なオファーをもらい、出場
を約束しました。帰国してからはメールのやりとりで打ち合わせを続けています。
そう、主催者とのコンタクトは、ぜんぶ僕がやっています。もう、乗りかかった
船です。

フェスティヴァルの名前は《Tampere Beatles Happening》。2011年1月28日
(金)と29日(土)の2日間にわたって、「タンペレ・ホール」で開催されます。
スカンジナビア最大のコンヴェンション&コンサート・ホールだそうです。

フェスティヴァルの内容としては、世界のトップ・バンドを招待してのコンサー
ト、フリー・マーケット、シンポジウムなどが予定されているのですが、招待さ
れたバンドというのがすごいです。英国の<オーヴァーチュアーズ>と米国の<アッ
プル・ジャム>がエントリーされていて、もうこの2バンドを観るためだけでも
価値があるんじゃないかと僕なんかは思ってしまいます。ブルーマーガレッツ、
ごめんね。
そのほかにもいろんなバンドが登場するそうで、もしかしたらお隣スウェーデン
のスーパーバンド<ペパーランド>も観られるんじゃないかな…と密かに期待して
います。

タンペレ・ホールのウェブサイト… http://www.tampere-talo.fi/en/
タンペレ・ビートルズ・ハプニングのウェブサイト… http://www.beatles.fi/

僕らの旅行日程は3日前に決まりました。
3泊5日で、1月31日(月)の午前に帰国します。きっと楽しい旅行になると
思います。
主催者からは「ぜひファンの人を連れて来てほしい。ホテルやチケットの手配は
こちらでできるから」と言われていますので、興味を持たれた方は、
info@scousehouse.net まで、お気軽にご連絡ください。

あ、言い忘れましたが、1月のタンペレの気温はマイナス20度だそうです…。
いったいどんな寒さなんでしょうか、想像すらつきませんが、個人的にはそれも
楽しみのひとつです(夏でも長袖を着るくらい寒がりのくせに)。

                          ― Kaz(16/11/2010)


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▼「利物浦日記2009」12
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「利物浦日記2009」12 / Kaz

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【8月30日(日)】

由緒あるブリタニア・アデルフィ・ホテルが会場となる「ビートルズ・コンヴェ
ンション」は、今年もたくさんの人でにぎわっていた。
12時30分、アスプレイズの4人とアデルフィのロビーで待ち合わせ。これから
フランスのTV番組用の取材を受けるのだ。
ジャーナリストのフレデリックさんからは、2日前に取材の申し込みを受けた。
このフレデリックさんとは、夕方にもブルーマーガレッツのインタヴューを約束
している。それともう1本、メキシコのフィルム製作クルーが、ブルーマーガ
レッツのインタヴューを収録する予定だ。
というわけで、今日は全部で3本のインタヴュー取材があるわけだ。とっても忙
しいけれども、楽しみだし、気合いも入る。

アスプレイズのインタヴューでは、アデルフィの2階にあるカンファレンス・ルー
ムがたまたま空いていたので、使わせてもらうことにした。といってもホテルに
許可をもらったわけではなくて、ドアを開けてみたら誰もいないので勝手に入っ
ちゃっただけなのだが。

アスプレイズはちゃんとステージ衣装で来てくれた。フィルムの撮影なので、や
はり普段着よりもベターだ。フランス人のフレデリックさんは英語で質問し、僕
が通訳をした。なごやかな雰囲気でなかなか楽しいインタヴューになった。

1時20分、アデルフィの中にあるライヴ会場<Crosby Suite>でブルー・マーガ
レッツのギグ。南向きで南東の壁がほとんど窓なので、陽光が部屋いっぱいに
降り注ぐ。インドアでこれほど明るい会場はないだろうといつも思うのだけど、
バンドにとってはあまり演奏しやすい条件とは言えないだろう。

オーディエンスも集まるには集まったが、まだ早い時間帯なので、緊張感という
か盛り上げようという熱気はほとんど感じられない。それでも、ブルーマーガ
レッツはいつものように気合いと笑顔を全開にして10曲をパフォームした。残
念ながらその結果はあまり芳しくなく、どんなにがんばってみても会場は盛り上
がらない。のれんに腕押し、ぬかに釘。あまりの手ごたえのなさに、彼女たちの
表情にもかすかに焦りの色が浮かぶ。なんとかしようとすれば余計に力が入り、
それがアンサンブルにも影響する…。

決して演奏がダメだったわけではないし、オーディエンスが満足しなかったわけ
でもない。途中で帰る人はほとんどいなかったし、アンコールの拍手はかなり強
烈だった。
にもかかわらず、全体的には空回りのようになってしまった。ではどうすればよ
かったのか…。

おそらく、彼女たちの緊張感や余裕のなさが原因だったのではないだろうか。雰
囲気にのまれてしまった、とも言えるかもしれない。オーディエンスひとりひと
りの表情を観察するくらいの余裕があれば、もう少し距離感は縮まったはずだ。
けれどもこれは仕方がないと思う。一生懸命に演奏した彼女たちを責めるわけに
はいかない。楽しさとひたむきさが彼女たちの魅力なのだ。それだけはオーディ
エンスにしっかり届いたはずだ。

このギグには、僕がいつもお世話になっている2人のスカウサーが観に来てくれ
ていた。パブ<ジャカランダ>の名物おじさんであるベーニーさんと、リヴァプー
ルでナンバー1のビートルズ・ガイド、ジャッキーさんだ。2人とも、ブルー
マーガレッツのパフォーマンスを心から褒めてくれた。決してお世辞ではなく。
まあベーニーはジャパニーズ・ガールが大好きなので、彼女たちのキュートな
ルックスだけでもうニッコニコだったんだけど…。

ほとんど休む暇もなく、僕はマシュー・ストリートへ移動。歩く途中で、昼ご
飯を食べてなかったことを思い出した。これからキャヴァーンで3時にアスプレ
イズ、5時にブルーマーガレッツのギグがある。7時からはアデルフィでインタ
ヴューが2本…ということは、今しかない。今何か食べておかなくちゃ!
セント・ジョンズ・マーケットの<セイヤーズ>でヴェジタリアン・ソーセージ
ロール(£0.95)を1コ買って、歩きながら食べた。美味しかった。

3時、キャヴァーンのフロント・ステージでアスプレイズのギグ。彼らの考えた
セット・リストがほれぼれするほどすばらしかったので、ここに紹介しよう。

<Cry For A Shadow><Roll Over Beethoven><Carol><Hippy Hippy Shake>
<Lend Me Your Comb><All My Loving><So How Come><Some Other Guy>
<Matchbox><Soldier Of Love><Besame Mucho><I Saw Her Standing There>
<Money><My Bonnie><Long Tall Sally><Sweet Little Sixteen>
<Ain't She Sweet>

おわかりだろうか。ビートルズのオリジナル・ナンバーはわずか2曲。そのうち
の<All My Loving>を除けば、すべてデビュー前にこのキャヴァーンで彼らが演
奏していたナンバーだ。マニアックで渋い曲がほとんどだけど、実に意外性のあ
る、起伏と含蓄に富んだラインナップではないか。これだけのナンバーをずらっ
と並べられるバンドはそうはいないだろう。

しかし、中盤にさしかかったところで、アスプレイズのファミリーの方から突然、
ダメだしが入った。あんちゃんの横に来て、
「お客さんぜんぜん盛り上がってないよ! みんなもっと踊りたいのよ。踊れる
曲やって!」
と叫んだのだ。

バンドが全員で考えて決めたセット・リストに強引にダメを出す姿には驚いたが
(しかも本番中だ)、あんちゃんが即座に従ったのにはもっと驚いた。1秒も躊
躇することなく、前のメンバーたちに軌道修正を指示。結果、僕が楽しみにして
いたクールな名曲たちは、次々とメジャーなナンバーに差し替えられてしまった。
ああ、もったいない…。

その場の雰囲気を反映させ、臨機応変にステージを構成することが悪いとは思わ
ない。ウケないよりはウケたほうがいいに決まっている。
けれども、せっかくコンセプトを持って臨んだステージなのだ。成功しようが失
敗しようが、最後まで貫き通してみないことには、何も得られないではないか。
それに、仮にオーディエンスの盛り上がりが今ひとつだったとしても、それで失
敗だったとがっかりすることはない。伝える意思があれば伝わる。観る人はちゃ
んと観ている。肝心なのは、演奏のクオリティであり、バンドとしての個性や信
念なのだから。

ちなみに僕自身は、これまでフェスティヴァルにブッキングしたバンドの演奏曲
目に口を出したことはない。相談されれば意見は言うつもりだけれども、相談さ
れたことは一度もない。つまり100%ノータッチである。もちろん、会場が盛り
上がらなかったからといって文句を言ったこともない。
どのバンドも例外なく、日本代表のビートルズ・バンドとしての誇りを持ってリ
ヴァプールにやって来ているのだから、自由に、やりたいようにやってもらおう、
と考えている。もしうまく行かなくても、そこから何かをつかんでもらえればい
いのである。リスペクトの気持ちはいつも持っていたい。

(つづく)

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