December 07 2010, No.440
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NLW ■ *** http://scousehouse.net/ *** □■ INDEX ■□ ▽フロム・エディター ▼「利物浦日記2009」14 ▽スカウスハウス・ニュース ▼今週のフォト ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ▽フロム・エディター ――――――――――――――――――――――――――――――――─ NLW □ 今週号も、先週に続いて「利物浦日記2009」のみの掲載となりました。 何度も書いてますけど、この連載は、去年・2009年の<Beatle Week>のレポート です。できるだけ早く書ききって、今年・2010年版にとりかからなくちゃ、と 思っています。 今回が連載第14回ですが、最後までたどり着くには、あと3回は必要となりそ うです。ということは毎週書いて掲載すると、2010年の火曜日はあと3回です から、ちょうど年内いっぱいで終わらせられそうですね。がんばります。 さらさらっとした簡単なレポートにすればよかったのでしょうが、なんとなく成 り行きでこんなに詳しいレポートになってしまっております。読者のみなさんに とって面白いものになっているかどうかはわかりませんが…。 「よくそれだけ憶えていられますね」とか、「カズさんの記憶力はどうなってる の?」と尋ねられることがあります。 実を言うと、あんまり憶えてないんですよね。記憶力には自信はありません。た ぶん人よりも劣るんじゃないかと思います。詳しいメモを残すようなマメな性分 でもないですし。 ではどうやって書いているのかというと、それはもう、ひたすら考えるだけです。 フェスティヴァルのプログラムや、当時の自分のスケジュールを広げて、撮った 写真やヴィデオ映像を観て、追体験をしながら、とにかく書き始めます。書きな がら必死に考えます。 すると面白いもので、そのときの空気がポワンとよみがえってきたり、まるで忘 れていたことを思い出したりするのです。 さらに、それを文章に置き換える段階になって、当時は気がつかなかったり、お ぼろげで形になっていなかった自分の感情などが、すっと顔を出してくれたりす るのです。 ちょっとカッコつけて言えば、自分の内面を覗き込む作業といえるかもしれませ ん。「そうかあ、おれってこんなこと感じてたんだあ」と、自分で自分を発見す るような感じがあります。 アウトプットしようとしなければこういう体験はできなかったでしょう。溝をつ くれば水は流れてくるものなんですね。面白いなあと思います。 でも、けっこうしんどいんですけどね。書くのにえらく時間がかかるし…。 ● ● ● さて、先週のこの欄で、来年の<Beatle Week>フェスティヴァルのプログラムを いくつか紹介しました。 どうやら正式に決まったようで、公式サイトで、来年のブローシャー(パンフ レット)のダウンロードが可能になっています。 興味のある方はぜひご覧になってみてください。 http://beatlesfestival.co.uk/ スカウス・ハウスでは、例年通り、鑑賞パッケージを企画する予定です。また、 日本代表のビートルズ・バンドをフェスティヴァルにエントリーします。 詳しいことが決まり次第、この欄でお知らせしますね。来年2月くらいになると 思いますが…。 ● ● ● 最近のリヴァプールは、おそろしく寒い日が続いています。 リヴァプール在住の下村えりさんより、凍りついたセフトン・パークの写真が届 きました。 寒がりの僕にとっては、見るだけでブルブル震えがきそうな写真ばかりですけど、 あまりの美しさにため息もでてしまいます。 「今週のフォト・アルバム」ページに掲載していますので、ぜひご覧ください。 えりさん、ありがとうございました! http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo440.html ― Kaz(07/12/2010) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ▼「利物浦日記2009」14 ――――――――――――――――――――――――――――――――― NLW □ 「利物浦日記2009」14 / Kaz ≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo440.html ≫ 【8月30日(日)】 9時30分、アスプレイズと僕は、アデルフィ・ホテルのライヴ会場のひとつ、 <Derby Suite>に集合。 彼らは10時からここで、ビートルズ5枚目のオリジナル・アルバム《Help!》の 全曲を演奏することになっている。 今年のコンヴェンションの夜は、数年ぶりに《Album Years》企画が復活した。 これは、<ビートル・ウィーク>を代表するトップ・バンドがビートルズの曲をア ルバム単位で全曲、最初から最後まで演奏するというもので、1バンドが1アル バムをトータルで担当し、年代順にリレーして行く。アンコールはなし、曲の カットや入れ替えももちろんなしである。 今年の《Album Years》は、アデルフィ・ホテルのメイン・ステージ(ボール ルーム)とダービー・スイートの2ヶ所を会場とし、それぞれ夕方5時にスター トする。バンドのラインナップは以下の通り(カッコ内が担当アルバム・タイト ル)。 Ballroom Derby Suite 05:00pm Revolver (Revolver) Hal Bruce (Rarities) 06:00pm The Mersey Beatles (Sgt. Pepper) Tripper (Please Please Me) 07:00pm Get Back Band (Yellow Submarine) Ringer (With The Beatles) 08:00pm Clube Big Beatles (White Album) The BlackBirds (A Hard Day's Night) 09:00pm Clube Big Beatles (White Album) The Elliotts (Beatles For Sale) 10:00pm Nube 9 (Abbey Road) The Aspreys (Help!) 11:00pm Nube 9 (Let It Be) Cavern Beat (Rubber Soul) 裏話をすると、主催側からは最初、「アスプレイズにはボールルームでの 《Revolver》を担当してもらいたい」というオファーがあった。 コンヴェンションのハイライトとなるイヴェントで、しかもステージはアデル フィのボールルーム。これはすごいやと思って伝えたところ、バンドの返事は意 外にも「NO」だった。「ビートルズのサウンドをリアルに再現する」というのが アスプレイズの信条であり、複雑なアレンジのあのアルバムの全曲を、自分たち の納得の行くレヴェルで披露できるとは思えない、というのが彼らが出した結 論だ。 いや、ちょっとくらいアレンジ変えたって誰も文句言わないと思うんだけど…そ もそもあの《リヴォルヴァー》完璧に再現することは求められていないんじゃ あ…と彼らに言ってみたが、さっぱり聞き入れてもらえなかった。 まったく、頑固というか融通のきかないバンドである。でももちろん、だからこ そアスプレイズはアスプレイズなのだ。 仕方なく主催者に「ごめんね」と断りの連絡を入れると、すぐに返事が来た。こ んな内容だ。 「そうか、それでは《Help!》をやってもらえないかな。ただしメインステージ じゃなくてダービールームで申し訳ないんだが」 今度のオファーには、アスプレイズも首を縦に振った。基本的にバンド・サウン ドなので、ライヴでの再現性にはほとんど問題はない。その時点で彼らのレパー トリーにない曲もあるし、<イエスタデイ>のストリングスをどうするかなどの課 題はあるが、本番までにじゅうぶんに対応できるだろう。 たとえメインステージではなくても、大きな舞台であることに変わりはない。 それに、アスプレイズのバンド名は、映画《Help!》に登場した宝石店<Asprey> に由来するのだ。彼らがやらなくて誰がやる。まさにうってつけのキャスティン グではないか。 10時前にステージの袖に移動。前のバンド<エリオッツ>が《Beatles For Sale》 を1曲1曲片づけて行くのを見守っていると、ニーナがやって来た。 ニーナは<ビートル・ウィーク>のプログラムの編集者である。毎年メールをやり とりしていておなじみの仲なのだが、よく考えると実際に会うのはこれが初めて なのだった。写真で見るよりずっとチャーミングな女性だ。 アスプレイズと記念写真を撮ったあとで彼女は、ビートルズのアルバムの中では 《ヘルプ!》が一番好きで、だからこのステージは絶対に観たいと思って足を運 んだのだと言った。 「《ヘルプ!》が一番好きなのか。ふーん、ニーナって変わってるね」 「なにが? なにが変わってるのよ、カズ」 「え? いや…そうだねニーナ、そうだそうだ、《ヘルプ!》は素晴らしいアル バムだ。ビートルズの最高傑作だ!」 「そう? わかりゃいいのよ」 見た目はチャーミングだが、性格はちょっとこわい、ということがわかった。今 度から気をつけよう。 エリオッツの演奏は10時すぎに終了。アスプレイズが準備に入る。彼らはこの ステージのためだけに、旧知のキーボード・プレイヤー、トヨミさんを連れて来 た。キーボードもイスも日本からはるばる持参である。トヨミさん、ごくろうさ まです…。 ステージの準備をしているうちに、会場はみるみる人で埋まって行き、人と人の 隙間がほとんどなくなってしまった。それどころか、入りきれない人がいっぱい いて、外の通路や階段まで埋まっている。まさに超満員状態。こりゃすごいや。 でもよく考えると、向こうのメインステージではこの時間、絶世の美女ルクレシ アさんを擁するスター・バンド<Nube 9>が《Abbey Road》を演奏中のはずだ。普 通なら向こうを観に行くんじゃないかと思うんだけど…どうなっているんだ?? アスプレイズには内緒だけど、僕だったらぜったいにそうするけどなあ…ルクレ シア、かわいいもん。 10時25分。スティーヴのMCでアスプレイズのライヴがスタート。 オーディエンスの半分くらいは、去年・今年のステージを観てアスプレイズの ファンになり、ここにやって来た人だった。おなじみの顔がたくさん並んでいる。 もう半分は、おそらくは初めてアスプレイズを観る人たちだ。「コンヴェンショ ンの夜」「メイン会場のアデルフィ・ホテル」「ビートルズのアルバムの全曲演 奏」という3つのキーワードを頼りに、ここに足を運んだに違いない。つまり は、「ノリのいい演奏で盛り上がりたい」ではなく、「トップ・レヴェルの演奏を しっかり観たい」という目的を持った人たちだ。 だから大ダンス大会にはならないし(もっとも人口密度が高すぎて踊るスペース なんてなかったが)、多くの人たちがじっとステージに集中している。演奏する 曲は決まっているのだから、それをどこまで忠実に再現できるか、あるいはど んなオリジナリティを盛り込めるか。それが鑑賞の、あるいは評価のポイント になるわけだ。つまり、レギュラーのギグとは、オーディエンスの態度がまっ たく違うのだ。 アスプレイズは、そんな厳しい視線をまったく問題にしなかった。 午後のキャヴァーンではストレスフルで不本意なパフォーマンスになってしまっ たが、その残像は微塵も残っていない。サウンドはパワフル、声も絶好調、そし て何より、楽しそうにのびのびと演奏している。1曲目の<ヘルプ!>が始まった と思ったら、あっという間に数百人のオーディエンスとアスプレイズはひとつに まとまった。なごやかであたたかい、親密な空気がそこに生まれていた。ヘンな 例えだけれど、大西洋に浮かぶ客船のダンスフロアで一夜限りのパーティーを過 ごしているような、そんな感じだ。 そのアトマスフィアを生み出したのは、アスプレイズ自身が発するオーラもある が、それよりも、会場の半分を埋めたアスプレイズのファンだ。彼らの、アスプ レイズへの全面的な信頼感だ。忠誠心、といってもいいだろう。彼らのヴァイブ レーションが、ほかのオーディエンスを巻き込んだのだ。そ してそんな素敵なファンを生み出したのは、ほかならぬアスプレイズなのだった。 会場全体がやさしい光に包まれていたように見えたのは、照明の明るさのせいだ けではないだろう。実にマジカルで素晴らしい光景だった。 そしてあらためて思った。昨日の<アルマ・デ・キューバ>でもそうだったが、ア スプレイズには大きな会場・大勢のオーディエンスがよく似合う。 このままパーティーがいつまでも続けばいいのに、という気持ちは、ここにいる 全員に共通するものだったろう。 しかし、終わりの来ないパーティーはない。 11時10分、レニーさんのシャウト炸裂の<ディジー・ミス・リジー>でアルバム 《ヘルプ!》全曲演奏が完了した。 まさに、文字どおりの大団円。完璧といっていいくらいに美しいステージだっ た。 アスプレイズ、サポートのトヨミさん、集まってくれたオーディエンス、そして リヴァプールの夜に最高のありがとうを! (つづく) ≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo440.html ≫ ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ▽スカウスハウス・ニュース ――――――――――――――――――――――――――――――――─ NLW □ *** スタジアムへ行こう! ****** リヴァプールでのフットボール観戦をご希望の方は、ぜひお任せください! フットボール・ファンのためのプライヴェート・ツアーもご用意しています。 詳細は、ウェブサイトの「スタジアムへ行こう!」ページをご覧ください。 http://scousehouse.net/football/stadium2010-11.html *** 新ガイドツアー「ロンドン特別編」スタート ****** 好評のビートルズ・ツアーに加えて、ロンドンでのウォークツアーを2コース、 新しくスタートさせました。シャーロック・ホームズゆかりのスポットを案内す る「ホームズ・ツアー」と、ちょっと怖い「ロンドン・パブ・ツアー」です。 ディープなロンドン体験をぜひ! http://scousehouse.net/beatles/guidetour_london2.html *** リヴァプール語学留学 ****** スカウス・ハウスは、リヴァプールへの語学留学をサポートしています。 公立のリヴァプール・コミュニティ・カレッジに加えて、今年より、私立の語学 スクールLILAとも提携しています。 長期でじっくり学べる学生の方にはコミュニティ・カレッジを、まとまった期間 を留学に充てられない社会人の方にはLILAをおすすめします。 スカウス・ハウスには、リヴァプール留学に関する専門知識や経験を持つスタッ フが、日本とリヴァプールの両方に常駐しています。入学前はもちろん、入学後 のサポートについても安心してお任せください。 http://scousehouse.net/study/index3.htm *** ビートルズ・ガイドツアー ****** リヴァプール&ロンドンのビートルズゆかりの地を訪ねるガイドツアーをアレン ジしています。ツアーの詳細は、ウェブサイトの「ガイドツアー」ページをご覧 ください。 http://scousehouse.net/beatles/guide_liverpool.htm http://scousehouse.net/beatles/guide_london.htm *** 原稿募集中 ****** NLWでは、読者のみなさんからの投稿を募集しています。 旅行記、レポート、研究、エッセイ、写真などなど、リヴァプール、あるいは英 国に関するものなら何でも歓迎です。 お気軽にお寄せください。楽しい作品をお待ちしています。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ▼今週のフォト ――――――――――――――――――――――――――――――――─ NLW □ *** 今週のフォト・アルバム ****** 下村えりさん撮影のセフトン・パークの写真と、「利物浦日記2009」に関連した 写真を掲載しています。 http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo440.html ■ NLW ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ *** 毎週火曜日発行 *** □■ 第440号 ■□ ◆発行 SCOUSE HOUSE (スカウス・ハウス) ◇編集 山本 和雄 ◆Eメール info@scousehouse.net ◇ウェブサイト http://scousehouse.net/ ◆お問い合わせフォーム http://scousehouse.net/liverpool/form.html ご意見・ご感想・ご質問など、お気軽にお聞かせください。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ このメールマガジンは、以下の配信サーヴィスを利用して発行しています。配信 の解除やメールアドレスの変更は、それぞれのウェブサイトからどうぞ。 ◆まぐまぐ http://www.mag2.com/m/0000065878.htm ◇めろんぱん http://www.melonpan.net/melonpa/mag-detail.php?mag_id=000917 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 無断での転載を禁じます。 Copyright(C) 2001-2010 Scouse House |