April 26 2011, No.457
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  リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World   
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□■ INDEX ■□

 ▽フロム・エディター
 ▼寄稿:「日々の暮らしが変わる旅もある!」(11)
 ▽「たんぺれたろう日記」(6)
 ▼スカウスハウス・ニュース
 ▽今週のフォト


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▽フロム・エディター
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昨日の地元紙<リヴァプール・エコー>に、「マシュー・ストリートの<ウォール・
オブ・フェイム>がクリーン・アップされた」というニュースが掲載されました。
<ウォール・オブ・フェイム>というのは、ザ・キャヴァーンの向かいの壁にあり
ます。世界の“キャピタル・オブ・ポップ”であるマージーサイドが生んだ全英
ナンバー1・ヒットナンバーを記念するモニュメントで、曲名とアーティストが
刻まれた金色のレコード盤オブジェが年代順に飾られています。

記事によると、54曲分の真鋳のレコード盤のひとつひとつを取り外して洗浄し、
ペイントをし直した、とのことでした。この5年で初めてのことであり、設置さ
れて以来のことでもあるそうです。
(僕の知る限りでは、ディスクの数は56枚で、このモニュメントのオープンは
2001年なんですけど…はて?)

僕は毎年、夏の《インターナショナル・ビートル・ウィーク》のときに、お客さ
んやバンドのみなさんのために、リヴァプールの街を歩くツアーをやっています。
もちろんマシュー・ストリートは外せない場所ですよね、なにしろグレープスや
キャヴァーンがありますから。で、そのついでに、この<ウォール・オブ・フェ
イム>にも足を止めてもらって、由来を説明しています。そして説明が終わった
あとで、必ず1つのクイズを出すことにしているのです。

そのクイズ、これまで誰も、ヒントなしで正解にたどり着けた人はいませんでし
た。ただのひとりも、です。

えー、というわけで、ここでそのクイズを。

「この56枚のナンバー1ディスクの中に、同じナンバーのものが2つあります。
曲もアーティストもまったく同じで、日付だけが違います。つまり2回、ナン
バー1になっているわけですね。はい、ではそれは何という曲でしょう?」

ちょっと考えてみてください。
正解は8月26日、リヴァプールでのウォーク・ツアーでお教えします。お楽し
みに!

……なんて言って終わってしまうと怒られそうですね。
正解が知りたいかたは、info@scousehouse.net までご連絡ください。件名は
「ウォール・オブ・フェイム」でお願いします。
「正解がわかった!」というマニアなかたからのお便りも、もちろん大歓迎です
よ。ぜひぜひ! 賞品はでませんが…すみません。

● ● ●

<お休みのお知らせ>
スカウス・ハウスは、5月1〜3日をお休みとさせていただきます。
NLW次号(No.458)は、5月10日の発行・配信の予定です。ご了承ください。

                          ― Kaz(26/04/2011)


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▼寄稿:「日々の暮らしが変わる旅もある!」(11)
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「日々の暮らしが変わる旅もある!」 / Anne

≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo457.html ≫ 

■第35話《これから初めてのオランダ旅行》■

1時間強のフライトで飛行機はスキポール空港に到着。
「ここで要注意d(゜ο゜)!」
時差が1時間あるので到着は2時間後ということになります。
時計の針を合わせることを忘れないようにしないとね!
ロンドンからパリに行った時にも、ユーロスターの予約の時には気が付いていま
せんでした。
そのために結局、計画した予定時間より1時間短い滞在になっちゃったんです。
滞在時間のことより、帰りのユーロスターに乗り遅れなくて良かった〜σ(^◇^;)
「もし時差に気が付かなかったら!!!」
これはスリル満点な思い出ですね。

オランダのスキポール空港は嬉しいことに出発も到着も同じフロア。
だからリヴァプールに向かった時に見覚えがある光景。これは本当にホッとしま
すよ!
国際空港ってあまりにも広くって、良く分らないまま標識に従って歩いているこ
とが多いですよね。
ここの空港は自分がどこに向かって進んでいるかがイメージ出来る空港なんで
す<(゜。゜)
特に慣れない方の乗り継ぎには本当にお薦め出来る空港だと思いました。

イングランドに比べたら入国はいたって簡単。今、思い出しても何か質問された
記憶がない。
「あっ! イングランドからの到着便だったからかな?」
そしてスーツケースとも無事に出会えました。
まず「OV-chipkaart (オーヴィ・チップカールト)」の購入をしておこうと思い
ます。
このカードは日本で言ったら「スイカ」や「パスモ」みたいなもの。
記名した定期券などに使えるものと、無記名でチャージしておいたら自由に乗車
出来るものがあります。

海外に行ったら、バスやトラムの乗車の運賃体系が分かりにくいですよねf(^^;)
だから最初に購入しておくと楽ちんですよd=(^o^)=b
ロンドンでは「オイスターカード」、バルセロナでは「T10」。
同じようなカードを今までの観戦記で紹介させて頂きました。

さあ、どこで購入出来るかな(((^^ )( ^^)))


■第36話《鉄道に乗ってアムステルダム中央駅だよ!》■

アムステルダムに向かう鉄道の駅に向かって歩いていると、途中インフォメー
ションの「i」マーク。
「よし! ここで聞いてみよう!(^。^)b」
なんと二軒並んであります。悩んでも仕方ないからまずこちら側のカウンターの
女性に尋ねましょ!
オランダも英語が通じる国だからちょっと安心。
日本で印刷してきた「OV-chipkaart」の説明書きを見せて、
「これが欲しい」
言ってみると、カウンターの女性は隣を指して何か言ってます。
「つまり隣で買いなさいってことね!('〜' )/」

こんどは隣の旅行カウンターに行って同じことを言ってみましたよ。
「ここにもないみたい」
それ以外には何を私に言っているのか分らない( -.-)
でも、「空港で買える」ってことは調べてあるんですよ!
「駅のカウンターに行ってみよう( ^_^)/」
ホテルにチェックインしたらすぐにトラムに乗って移動したいんだもの!!!

凄く広い駅構内を見渡してカウンターを探します。端の方に見つけることが出来
ました!
カウンターのおじさんにも同じように印刷物を見せて、「これが欲しい」って
言ってみると・・・
「良かった(*^.^*)」
おじさんは頷いてくれました。
「よし(*^-^*)!」
すぐにユーロのお札を渡します。
チャージして欲しい金額もこのお札で理解してもらえるでしょ。
「こんな風に印刷物を利用するとコミュニケーションも簡単だよ!(°-° )/」

ついでにアムステルダム中央駅行きの切符もお願いしなきゃ!
だっていきなり自動販売機は自信ないしね。
「アムステルダムセントラル、One Way Please!」でこれも購入出来ましたよ。
これで伝えられるのだから心配いらないですよ〜d(^-^)
チケット類の購入で空港でしなくちゃいけないことは完ぺき! 
「アムステルダム中央駅行きの列車は何番ホーム?」
電光掲示板で調べて乗車したら目的地は終点。これも心配ないよね。


■第37話《ホテルにチェックイン》■

電光掲示板を確認してホームに降ります。
スーツケースを引いての移動だからちょっと大変。でも電車はたくさんあるよ!
「焦らない、焦らないσ(^_^;」
ホームでもまた電光掲示板を確認。この電光掲示板は日本ほどは正しくないらし
い。
ネットの口コミでそんなことも見つけました!
「日本の鉄道で疑うことないよね!」

必ず電車の行き先表示を見た方が良いらしいですよ。
でも走っている電車がホームに入って来た時、行き先を確認出来る自信なんてな
いです(-。-;)
「よし!」
周りをキョロキョロ(。_。 ) ( 。_。)
そして現地で暮らしているらしい人に声をかけてみます。
「次の電車はアムステルダム中央駅に行きますか?」
頷いてくれたからバッチリね(^o^)
あっ! こんなにまともな英会話じゃないですよ。
「中央駅へ行きたい・・・次の列車でOK?」ってな感じで言ってみれば伝わるは
ず!

しばらくすると黄色い電車。
「わあっ(°.°;! 車両に大きく『1』とか『2』とか書いてある!」
「これは知らなかった!」
「どこに乗車したらいいの???」
「そんな短い停車時間に誰かに質問なんてしてられない!」
「『2』なら大丈夫でしょ(^^ ;)!」
「一等車とか二等車の意味だよ。きっと!」
これは想像通りだったみたいです。
一等車と二等車が交互にあるから、日本のグリーン車とはイメージが全然違いま
すね。

発車して15分程でもうアムステルダム中央駅に到着。たしか東京駅ってこの駅
がお手本だったんだよね。
駅構内は表示に沿って歩くだけ。
トラムの駅がある方の外へ出ると目の前は運河!
トラムやタクシーがかなりゴチャゴチャと行き来してる賑やかな駅前です。
「OV-chipkaart」も購入したからトラムに乗車出来るけど、スーツケースも引い
てる。
「ここはタクシーに乗っちゃえ(^^ゞ」

なんかタクシーも日本のように整列して順番にお客さんを待っていない。
でも習慣というか列の前方の車のドライバーにホテルの地図と名前の印刷物を見
せるよ。
ドライバーはスーツケースをトランクに入れながら「20ユーロ」って言ってる。
「あれ???」
「メーターじゃないの?」
「ちょっと高いかなあ(゜゜)(。。)」
少し疑問を感じたけれど了解して乗せて頂くことにしました。
こう言う時には交渉出来ないのが英会話力の無さの問題ですよね。

ホテルに到着して20ユーロと1ユーロのチップを渡すと、
トライバーのお兄さんは20ユーロだけ受け取って、チップの1ユーロは返して
くれたよ!
「良い人だなあ(^-^)」
「ダンキュウェル」
オランダ語で「ありがとう」って言ってみました!

後で知ったことですけれど、
オランダではメーターを使わないタクシーは禁じられているそうです。
最近は多くて取り締まりも厳しくなってるそうです。
本当はホテルまでは15ユーロ位の距離らしい(;°°)
中央駅前にたくさん停車しているタクシーに乗ってそれじゃ、旅行者には分らな
いよね。
「これもまあ皆さんへの情報になるか!」

今回の旅で宿泊するアムステルダムのホテルは、ご家族で経営してる小さなホテ
ル。
しかも日本人のご家族が経営しているから日本語で大丈夫。
このホテルのうわさを目にして随分探しました。
「このホテルに宿泊したい<(`^´)>」
こうしてやっと予約出来たホテルなんです。
そのお話は前半の「第5〜7話」のところで書かせて頂いてますね。

ドアを開けると女性の方が日本語で迎えてくださいました。
やっぱり日本語で迎えて頂けるとホッとしますね。
私は日本からのお土産の和菓子をお渡しして、奥にいらしたお父様やお母様とも
ご挨拶。

春のヨーロッパ旅行ならどうしても叶えたかったオランダへの旅。
「さあ始まりましたよ〜ρ(*^_^*)ρ」

(つづく)

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▽「たんぺれたろう日記」(6)
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「たんぺれたろう日記」6 / Kaz

≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo457.html ≫

【1月28日(金)】

ブルーマーガレッツのファースト・ギグは大成功に終わった。
しばらくステージ裏で余韻を楽しんだあと、いったん楽屋へ戻り、ブルーマーガ
レッツは別室でステージ衣装を普段着に着替えた。その間、僕はユーハさんとワ
インで軽く乾杯。しかしゆっくり呑んでいる時間はなく、ブルーマーガレッツが
戻って来るとすぐに楽屋を出て、再びライヴ会場に向かった。

会場のテーブル席では、ユーハさんのファミリーがブルーマーガレッツの4人を
首を長くして待っている。そして11時からは、いよいよメイン・アクトである
<オーヴァーチュアーズ>のライヴが始まる。今はもう10時20分だ。

しかし、我々はなかなか会場にたどり着くことがきなかった。
先ほどのステージの興奮さめやらぬファンの人々に、次から次に取り囲まれてし
まうのだ。誰もがサインや記念写真を求めている。あまりにもたくさんの人が集
まって来るので、順番待ちの整理券でも発行しようかと思ったくらいだ。
去年リヴァプールで撮った写真を額装して持って来たおじさんにも驚いたけれど、
膝まづいて彼女たちの足にキスをするお兄ちゃんまで現れるに至っては、なんか
もうわけわからん状態。

僕自身は誰も取り囲んでくれないので(当たり前だ)、少し手持ち無沙汰。トイ
レに行ってみたら、となりで用を足す赤ら顔のおじさんに「君は日本から来たの
かね?」と話しかけられた。
「そうですよ、ブルーマーガレッツといっしょです」と答えたところ、「そうか、
わしの息子は日本女性と結婚してな、アキコっていうんじゃよ。紹介するからつ
いてきなさい」と言われて、そのまま家族のテーブルまで案内されてしまった。

息子さん夫婦は、バックパッカー同士で異国で知り合って結婚したというヘルシ
ンキ在住の若いカップルだった。
アキコさんは笑顔が素敵で優しそう。夫もこれまた優しそうで、まさしくお似合
いだった。お父さんはなんと去年リヴァプールでブルーマーガレッツを観て感動
し、今回のタンペレは息子夫婦をほとんど強引というか無理やりに連れて来たと
のこと。
もちろんアキコさんも夫も、ブルーマーガレッツのステージを楽しんでくれたそ
うだ。こういう出会いがあるのはとてもうれしい。

フィンランド在住の日本人のかたは、ほかにも何人か会場にいて、僕にも声をか
けてくれた。
ブルーマーガレッツの雄姿に感動した、勇気づけられた、日本人として誇らし
かったと言ってもらえて、僕もうれしかった。日の丸を背負っているつもりはな
いけれど、日本人としてのスピリットみたいなものは、やっぱりある。それはブ
ルーマーガレッツの4人も同じはずだ。

ブルーマーガレッツはどうにかこうにかユーハさんファミリーのテーブルに到着。
しかし5分もしないうちにオーヴァーチュアーズのステージが始まった。4人と
も彼らの大ファンである。蹴るように席を飛び出したと思うと、あっという間に
ダンススペースへと消えてしまった。みんな元気である。

● ● ●

リヴァプールで何度も観ているのだが、オーヴァーチュアーズのパフォーマンス
は非常にソフィスティケートされている。完璧なテクニックと熱いパッション、
そして最初から最後まで一瞬たりともオーディエンスを離さないスリリングなス
テージ構成。要するにプロフェッショナルなステージなのだ。

レパートリーはすべて60's & 70'sのクラシックで、いわゆる「エヴァーグリー
ン」なナンバーがずらりと並ぶ。例えばこんな感じだ。

<You Really Got Me><Keep On Running><Just One Look><Mr Tambourine Man>
<Oh Pretty Woman><Sound Of Silence><Gimme Some Lovin'><Pinball Wizard>
<Light My Fire><Hippy Hippy Shake><Fun Fun Fun><Satisfaction><Party>
<Daydream Believer><California Dreaming><Feelin' Groovy><Tell Me Why>

ロック・ファンなら、曲名を見ただけでワクワクしてしまうのではないだろうか。
ほとんど反則といってもいいような、魅力的な楽曲ばかりである。そしてオー
ヴァーチュアーズは、これらの名曲のひとつひとつに新しい息吹と説得力を与え、
生き生きとよみがえらせるのだ。その手際はあまりにも見事で、まるで手品を見
せられているような感覚になることさえある。

ステージの上での彼らは、まぎれもなくスターである。
選曲はいつもだいたい同じなのにまったく飽きない。リヴァプールでは、(お、
ちょっとのぞいてみるか)と何の気なしに足を踏み入れて、そのまま最後までノ
リノリで観てしまった、という経験が何度もある。
まるで、ビールを1杯だけ飲みに来たお客に、ワインを1本あけさせて、最後に
オン・ザ・ロックまで注文させてしまう老練なバーテンダーのような、容赦のな
いエンターテイナーなのだ。
それは、ここタンペレのステージでもまったく同じで、満員のオーディエンス
の興奮は1曲目から最高潮に達していた。

もちろん僕も楽しく観ていたのだが、だんだんと不安な気持ちになってしまった。
ブルーマーガレッツは、こんなモンスターのようなバンドと、同じステージに上
がっているのだ。
彼女たちはきっと「比べないで」と言うだろう。僕だって比べたくなんかない。
勝ち目があるとかないとかの問題ですらない、という感じだ。
だけれども、観に来たお客さんは、どうしたって比べてしまうだろう。ついさっ
きブルーマーガレッツを絶賛してくれた人々は、今、オーヴァーチュアーズに熱
狂している。「わお、こっちのほうがホンモノだ!」という気持ちになったとし
ても、それを責めることはできない。事実なんだから。

でも、と僕はさらに考える。
先ほど、オーヴァーチュアーズのステージは「完璧なテクニックと熱いパッショ
ンとスリリングなステージ構成」が素晴らしいと書いた。
「完璧なテクニック」と「スリリングなステージ構成」はともかく、「熱いパッ
ション」部門では、ブルーマーガレッツも健闘していると言えるのではなかろう
か。さらに彼女たちには、女性らしい「可愛らしさ」や「初々しさ」という、ほ
かのバンドにはない武器があるのだ。
うん、勝ち目はないかもしれないけど、同じ土俵には上げてもらえるかもしれな
いな、と僕は思った。つまり、いちおう、なんとか、どうにかこうにか、勝負に
はなっているんじゃないか、と。

オーヴァーチュアーズのステージが終わった。
文句のつけようのない見事なエンターテイメントだった。ブルーマーガレッツや
ほかのバンドのステージも含めて、お客さんの誰もが大満足の一夜だったことだ
ろう。チケット代金は30ユーロ(約3,500円)。きっとタダみたいに安く感じた
のではないだろうか。

もう0時に近い。
僕は演奏したわけではないので特に疲れは感じなかったけれど、ブルーマーガ
レッツは明日もライヴがある。早めにホテルに戻って休んだほうがいいかもしれ
ない。
しかしユーハさんからこんなお達しがあった。
「イモさん(フェスティヴァル責任者)から、大事な話があるからこの後でス
タッフルームに集合するように言われている。どうも明日のステージに変更があ
るようだ」
ビールで赤くなっているけれど、真面目な表情だ。なるほど、そういうことなら
仕方がない。でも変更ってなんだろう…。

スタッフルームを目指して歩き出すが、またもやブルーマーガレッツのファンた
ちにつかまってしまって、我々はなかなか進めない。早く行かなくちゃと思いな
がら周りをみると、ユーハさんもイモさんも近くにいて、お客さんと談笑してい
る。慌てたり急いだりする様子は感じられない。

● ● ●

なんとかスタッフルームに到着したのは、0時40分ごろ。ほかにも何人か関係
者がいる。はいどうぞと缶ビールを手渡され、ソファに座って飲んだ。あんまり
美味しくないフィンランドのビールだ。不味くはないんだけれど、僕にはちょっ
とまろやかすぎる。フィンランド人の人の良さが味に表れているのかもしれない。

なんだろうね、いつ始まるんだろうねと話しているうちに、続々と人が集まって
きた。どんな大きなミーティングなんだよと思っていると、なんと、オーヴァー
チュアーズのメンバーたちまでが姿を現した。
カッコいいフロントマンを目にした瞬間、ブルーマーガレッツの全員が理性を失
い、「ぎゃぁーーーーっ!」と叫んだ。憧れのスターなのだ。さとみさんなんか
もう泣いている。

「カズさん、去年リヴァプールでオーヴァーチュアーズと一緒に写真撮って、今
日持って来てるんです。これ手渡してもらっていいですか?」
「ん? おれが? 自分で渡せば?」
「だめ、ぜったい無理! お願い〜! サインもほしいんです〜!」
「しょうがないなあ、はいはい。で、あの人なんていう名前なの?」
「それがわかんないの」
「は? ファンなのに知らないのか? それって失礼ちゃうんか」
「えへへ」
「えへへじゃないだろー! あれ? 写真2枚あるのか。君たちのとオーヴァー
チュアーズの分なんだね。ふ〜ん、ならばこうしよう。1枚に、君たち全員のサ
インを書いて、彼らに渡す。そしてもう1枚を差し出して、ここに同じようにサ
インしてって頼むんだよ」
「わあーい!」
「そうすれば彼の名前もわかるよね、サイン見れば」
「なるほど〜! じゃ、カズさんよろしく〜!」
「やっぱりおれかよー!」

というわけで僕がフロントマンに話しかけて、こっちに来てもらった。彼もブ
ルーマーガレッツがすっごく気に入ったと言ってくれた。舞い上がるブルーマー
ガレッツの4人。よかったね、お世辞でもうれしいよね。

サインペンを渡して、作戦通り全員にサインしてもらった。もちろんフロントマ
ンもサインしてくれたのだが、残念ながらなんという名前なのか読めない。仕方
がないから僕が訊いた。
「ねえ、これなんて書いてあるの?」
「あ、デニス。おれデニスっていうんだ」
「そっか、そうだったね。デニスありがとう!」
これでやっと、名前で呼べる。やれやれ。

● ● ●

それにしても、ミーティングはいつ始まるのだろう。その気配すらない。ただ大
勢でだらだらと呑んで、てんでばらばらにおしゃべりしているだけだ。
ちょうどイモさんがそばに来たので、ユーハさんに訊いてもらった。
「え? ミーティング? ははは、そんなのあるわけないだろ。君たちに来ても
らう方便だったのさ。ははは」

ズッコケてしまった。ちゅうことはこれ、ただの打ち上げなんじゃん。それなら
それと早く言えばいいじゃないか。
しかもよりによって、いつもむっつりして笑わない、いかにもカタブツなイモさ
んにかつがれてしまうとは…。
ユーハさんもしゃくにさわったのか、イモさんに、「『イモ』って日本語で何の
ことか知ってる?」と訊いた。当然「知らない」と答えるイモさん。
「ポテトだよ。だからあんたはミスター・ポテト」とユーハさんが言って、その
場で大爆笑が起こった。恥ずかしそうに苦笑いするイモさん。やーい!

気を取り直して、みんなでワイワイと楽しく呑んでしゃべった。イモさんが赤ワ
インやブランデーもすすめてくれる。
途中、スーツ姿で粋なソフト帽をかぶった長身のおじいさんが近寄って来て、ハ
イパーなテンションで話しかけてきた。手には杖をもっていて、独特のオーラが
ある。ブルーマーガレッツをえらく褒めてくれた。
あとでユーハさんが、「彼はフィンランドの伝説的ロックスターで、デイヴ・リ
ンドホルムっていうんだ」と教えてくれた。なるほど、フィンランドの内田裕也
だ。ロックンロール!

ほかにもいろんな人たちに褒められた。褒めるというよりは、ほとんど激賞、と
いう感じで、僕でさえ照れくさい。
だからそのたびに僕は、「えーほんまかいな? このブルーマーガレッツが? 
あんた耳はだいじょうぶ?」なんて憎まれ口をきいて、ゆかさんの肘鉄をたくさ
ん食らうことになった。

その中のひとり、タンペレ・タローのスタッフのおばさんからもらった言葉が忘
れられない。
「いいえ、ほんとうよ。ブルーマーガレッツの出演が決まって、わたしたち、オ
フィスの壁に彼女たちの写真を貼ったのよ。毎日それを眺めてた。ここの冬は気
が滅入るくらいに寒くて暗いんだけど、彼女たちの笑顔を見てると、とても明る
い気持ちになれたのよ。だから今日がとても、とても待ち遠しかったわ。本物は
写真よりももっと素敵。ステージも素晴らしかった。あなたたちには心から感謝
してるのよ。ほんとにありがとう」

これにはさすがに僕もじーんときた。
ブルーマーガレッツは、ステージに立つ前からタンペレの人々を幸せにしていた
のだ。
彼女たちの笑顔には、たしかにそういうパワーがある。あの、春の日差しのよう
に自然でイノセントな、そして天真爛漫な笑顔には、きっと誰もかなわない。

結局、打ち上げの最後までつきあってしまった。
ブルーマーガレッツとユーハさん、森田さんと一緒にホテルに戻ったのは、午前
2時半すぎだった。
それから部屋でシャワーを浴びて、仕事のメールをいくつか書いて、ベッドに
入った。

明日が待ち遠しい。
明日って、もうとっくに今日なんだけど。

(つづく)

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*** お休みのお知らせ ******

スカウス・ハウスは、5月1日〜3日の3日間をお休みとさせていただきます。
NLW次号(No.458)は、5月10日の発行・配信の予定です。
どうぞご了承ください。


*** リンク追加しました ******

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ズ・トリビュート・バンド<Now Here>さんを掲載しました。
今年のInternational Beatle Week出場バンドです!
http://scousehouse.net/links-japanese.htm
http://thenowhere.web.fc2.com/


*** <Beatle Week 2011> ツアー参加者募集中! ******

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この夏、ぜひぜひリヴァプールでお会いしましょう!
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