November 15 2011, No.483
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  リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World   
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▽フロム・エディター
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すみません、また最初におわびです。
えーと、「ゴールドフィッシュだより」の200号記念企画は、またしても間に合
いませんでした。ごめんなさい!

ちかこさんの「予定は未定!? 〜 スカウスハウス・ツアー2011同行記」も今週は
お休みです。

これでは掲載原稿がゼロになってしまう…ということで、僕が「利物浦日記
2010」の続きを書きました。去年のツアーでペニーレーンやストロベリー・
フィールドを訪ねたときのエピソードです。
今考えると、僕がストロベリー・フィールドの門のオリジナルを見たのは、あれ
が最後でした。ううさびしいなあ…というか、「なんでレプリカなんか作るん
じゃあほー!」と、あらためて怒りがこみ上げてきます。

レプリカといえば…。
<ジャカランダ>の地下にある壁画。
スチュアート・サトクリフとジョン・レノンが描いた(と言われる)あの壁画は、
レプリカです。
オリジナルと思っている人がけっこういるんですけど、あんなに湿気の多い場所
で、1950年代に描かれた絵が、あの状態で残っているなんてあり得ません。そう
ですよね?
1996年のリオープンにあたって、ぼろぼろだったオリジナルは一部を残してす
べて剥ぎ取られました。そして同じ場所に、レプリカの絵がペイントされたので
す。

壁に残されたオリジナルは、ほんのLPレコード1枚半ほどの大きさです。階段
を降りてすぐのところにあります。
当初はそのまま無防備なむき出し状態だったのですが、多くの人にさわられ続け
ている間に色がはげ落ち、凹凸もなくなってしまいました。数年経ってからカ
ヴァーが取りつけられましたが、時すでに遅し。今ではよほどの想像力で補わな
い限り、それがスチュの描いた「人の顔」であるとは誰にもわかりません。さす
がにその上からペイントするわけにもいきませんしね。

先週この欄でお伝えしたジャカランダの謎の休業ですが、どうやらクローズされ
た模様です。
これから売りに出されることになるはずですが、新オーナーが早く決まるよう、
そして現在の状態をキープしてくれるように願うばかりです。

                          ― Kaz(15/11/2011)


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▼「利物浦日記2010」7
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「利物浦日記2010」7 / Kaz

≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo483.html ≫

【8月28日(土)】

今日もいい天気。
ぼうっとした頭や目にはうっとうしいほどだ。うう、寝不足…。
朝8時50分、アデルフィ・ホテルに集合。これから<スカウスハウス・ツアー>
名物、チャーターバスに乗っての<ペニーレーン&ウールトン・ツアー>である。
去年参加したブルーマーガレッツ組は不参加で、彼女たちを除く23人が集まっ
た。

最初の目的地はディングル。リンゴ・スターが生まれ育ったエリアである。
リンゴの小学校、取り壊しが決まっている生家を見て、お母さんが働いていたパ
ブであり、ファースト・ソロ・アルバム《センチメンタル・ジャーニー》のジャ
ケットにも使われた<エンプレス>を案内して、いよいよアドミラル・グローヴ10
番地へ。
リンゴが4歳のときからビートルズでロンドンに引っ越すまで、およそ17年も
住んだ家である。ドラムを覚えたのもここだ。

この家に現在住んでいるのは、マーガレットさんというおばあちゃん。リンゴの
ことは幼少時から知っている。僕がこの家に通いだしてもう10年以上になるのだ
けれど、毎回必ずといっていいほどマーガレットさんの説教を聞かされることに
なる。ほとんど恒例行事みたいなもので、もちろんぜんぜん嫌ではない。むしろ
楽しみにしている部分もある。

今年は3日前の水曜日にここに来た。説教をありがたくいただいたあとで、マー
ガレットさんに「土曜日の朝にみんなを連れて来るからね!」と伝えた。何度も
念押ししたので早起きして待ってくれているはずなのだが…。
ブザーを鳴らすが、応答はない。窓をコンコン叩いてみるが、部屋は静まり返っ
たままだ。おそらく、まだ寝ているのだろう。
マーガレットさんが起きるのをここでじっと待っているわけにもいかないので、
ツアーで家の中を案内するのはあきらめることにしよう。みなさん、ごめんなさ
い。

気を取り直して、次はペニー・レーンである。
ラウンドアバウトでバスを降りて、まずはジョン・レノンの最初の家である
ニューカッスル・ロード9番地へ。あまり知られていないけれど、ペニー・レー
ンのすぐ近くにあるのだ。
ラウンドアバウトに戻ってバーバーやバンク、セント・バーナバス・チャーチを
案内して、ストリート・サインで撮影会。雲はあるけれど晴れ間の多い、まさに
ペニーレーン日和である。気持ちがいい。

バスに乗って、メンローヴ・アヴェニューを南へ。
ジョンの家<メンディップス>を通過して、アラートン・ロードからチャーチ・
ロードへ入ると、登り坂の向こうに立派な教会が現れる。ジョン・レノンとポー
ル・マッカートニーが出会った場所、セント・ピーターズ・チャーチである。
チャーチの向かいにあるホールで、管理人のグラハムさんとデイヴさんがいつも
のようににこやかに迎えてくれた。デイヴさんの声はほとんどかすれ切っている。
毎年のことだがこの期間中はひっきりなしにツーリストがやって来るので、喉を
休める暇がないのだ。

チャーチに移動して、1957年7月6日にクォリーメンが演奏していた場所や、ミ
ミ伯母さんの夫ジョージ伯父さんの墓、リヴァプールFCの名監督ボブ・ペイズ
リーの墓、エリナー・リグビーの墓を案内。

そして最終目的地、ツアーのハイライトである<ストロベリー・フィールド>へ。
ここで不思議なことが起きた。
我々のバスがあの門の前に着いたまさにその瞬間、雨が降りだしたのだ。それも
ただの雨ではない。「バケツをひっくり返したみたいな」という表現がぴったり
くるような、土砂降りの雨である。バスの天井が「どかどかどかっ」と、ものす
ごい音で鳴り響く。

とても観光できるような状態ではない。ドライヴァーのおじさんは、バスのドア
を開けていいのかどうかわからず、僕のほうを見ている。
「さっきまで晴れてたのになんで? わざわざこのタイミングで、しかもこんな
滝のような雨とは…おれたち何か悪いことした?」
…と思ったけれど、口には出さなかった。こういうときガイドはひるんではいけ
ないのだ。
ドライヴァーにドアを開けるよう合図し、チェルシーのメンバーに向かって叫ん
だ。
「さあ行くぞ、ゴー!」
素直な彼女たちは、ひと言も文句を言わずにバスを降りてくれた。ほかのお客さ
んたちは席から動かず、バスに残った。

チェルシーがストロベリー・フィールドの赤い門の前に立つ。
そしてまさにその瞬間、雨がぴたりと止んだ。降り始めたときと同じように、な
んの前触れもなく。

あれはなんだったんだろう?
もちろん偶然に違いないのだろう。でも、それにしてはタイミングがあまりにも
ぴったりすぎる…。
きっとストロベリー・フィールドからの挨拶だったのだろう、と考えることにし
た。もちろん、我々を歓迎してくれているのだ。

いやそれとも…と、さらに思いはジャンプする。
もしかしてジョン・レノンのいたずらだったのでは…??
思わず見上げて、空を覆うように伸びている木々のこずえに目を凝らす。隙間か
らバケツを持ってニヤリとするジョンの姿が見えるんじゃないかと思ったのだ。
でももちろん誰もいない。何もない。

不思議な雨が降ったあとのストロベリー・フィールドは、なんだか空気がいつも
と違っていた。神聖な雰囲気がある。それに、瑞々しさと懐かしさがブレンドさ
れていて、あらゆるものの輪郭がかすかにぼやけている。気がつくと木立のなか
には、きれいな虹のかけらがふわりと浮かんでいた。
そして赤門の前に立つチェルシーのメンバーたちも、いつもより少しだけきれい
に見えた……のは気のせいかな、やっぱり。

(つづく)

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