May 01 2012, No.503
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リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NLW ■
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□■ INDEX ■□

 ▽フロム・エディター
 ▼リヴァプール・ニュース <5月1日>
 ▽寄稿:「ハプニングもレベルアップな旅って!」(10)
 ▼特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」 <No.206>
 ▽スカウスハウス・ニュース
 ▼今週のフォト


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▽フロム・エディター
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NLW No.503です。
今週は4週ぶりにミナコさんの「ゴールドフィッシュだより」の掲載です。
話題は先日リヴァプールに上陸した《Sea Odyssey》。僕もインターネットの
ニュースなどで見てはいたのですが、ミナコさんの文章と写真に触れて、「うわ
あ、すんごいショウだったんだなあ」と、今さらながら驚いてしまいました。

もうほんと、とんでもないファンタジーです。
うん、エンターテイメントというよりはファンタジーですねこれは。しかもリア
ルなファンタジーというべきか。
女の子もおじさんもワンちゃんも、マリオネットなのに、現実離れしたサイズな
のに、まるで生きているみたいなんですから。

夢も希望もロマンもあって、しかも老若男女の誰でもが平等に楽しむことができ
る、壮大な「フェアリーテール」だと思います。
本文でミナコさんが「きっと百年先にまで語り継がれる」と書いていますが、ま
さにそのとおりで、ぜんぜんオーヴァーな表現じゃないです。
いやあ、僕もあの場所にいたかったなあ…。無理してでも観に行くべきでした。

というわけで、今週の「ゴールドフィッシュだより」とその写真ページは必見で
す。ぜひご覧ください。

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                         ― Kaz(01/05/2012)


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▼リヴァプール・ニュース <2012年5月1日>
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*** 5月1日(火) ***************************************************

【スチュアート・サトクリフの死から50年】

少し前のことですが、4月9日の<リヴァプール・エコー>に、ビートルズのオリ
ジナル・メンバー、スチュアート・サトクリフに関する記事が掲載されました。
没後50年を記念してのものです。翻訳して紹介します。

Stuart Sutcliffe: Legacy of the fifth Beatle 50 years after his death
by Jade Wright, Liverpool Echo, Apr 9 2012

スチュアート・サトクリフの没後50年を迎えるリヴァプールで、ジェイド・ラ
イト(リヴァプール・エコー紙のライター)が彼の遺産を再検証する。

スコットランドに生まれてリヴァプールで育ったスチュアート・サトクリフは、
アート・スクールでのジョン・レノンの友人であり、ザ・ビートルズのオリジナ
ル・ベース・プレイヤーであった。
スチュアート・サトクリフが死んだのは21歳のとき。脳内出血が原因だった。
命日となる明日(2012年4月10日)、リヴァプールとハンブルグには、世界各国
からビートルズの、そしてスチュアート・サトクリフのファンたちが追悼のため
に集まることだろう。

ハンブルグでは、アーティストとしてのスチュアートに光を当てた新著『In
Conversation with Stuart Sutcliffe』の出版記念イヴェントが行われる。
リヴァプールのキャヴァーン・クラブでは、この日一日、スチュアートの人生、
そして音楽への貢献を祝福することになった。

「スチュアートは初期ビートルズにおいて重要な役目を果たしている」
キャヴァーンのイヴェント&マーケティング・マネージャー、ジョン・キーツは
言う。
「明日はスチュアートのファンのためにキャヴァーンを使うつもりなんだ。彼の
人生を振り返るようなものにしたい。うちのハコバンは一日中、初期のビートル
ズ・ソングを演奏するよ。スチュアートがプレイしたものなんかをね」
「こういう記念の日っていうのは、みんなやっぱりキャヴァーンに集まって来る
んだよ。ビートルズにひたるにはもってこいだし、ナマでビートルズが聴けるし
ね」
「悲しい日ではあるけれど、祝福する日でもあると僕は思う。世界中から集まっ
て来るスチュアート・サトクリフのファンに会うのが楽しみだよ」

スチュアートは、ミュージシャンとしてだけでなく、アーティストとしても知ら
れている。
才能ある画家だった彼は、リヴァプール・カレッジ・オブ・アートでジョン・レ
ノンと出会った。ポール・マッカートニーとジョージ・ハリスンは、隣の建物で
あるリヴァプール・インスティテュートに通っていた。
彼らは、もうひとりの友人ロッド・マレーと一緒に、ライス・ストリートにある
イー・クラックでよく酒を飲んだ。
スチュアートは、パーシー・ストリートに借りたフラットをアトリエとして使っ
ていたが、そのうちにガンビア・テラスのフラットでジョンとロッドと共同で暮
らすようになる。アート・スクールの2人の女学生、ディズとダッキーも一緒に。

「スチュアートはグレイトなやつだったよ」
当時スチュアートやジョンと友人だったデイヴ・ジェイムソンは語る。
「あいつはいつもジョンと一緒だった。親友同士だったからね。スチュアートは
あんまりしゃべんなくて、ちょっとレイドバックした感じだったよ」
「よくジョーズ・カフェで一緒になったよ。どのグループもみんなあそこに集
まってた。たまり場だな。ある晩面白いことがあってね、気がつくとひとつの
テーブルを囲んで13人座ってたんだ。ジョンとスチュアートも、それからリン
ゴやロリー・ストームもいた。で、こりゃ最後の晩餐だなってことになってね、
ロリーにジーザスをやってもらったよ。あのころはロリーとジョンがリーダー
だったな。スチュアートはいつも物静かでね、内省的なやつだったよ」

ジョンはスチュアートとロッドの2人にグループに入らないかと声をかけた。
ベース・ギターを調達することを条件に。
ロッドは自分でベースの製作を始めた(彼はいまでもその一部を持っている)が、
そのレースはスチュアートが勝利することになった。ジョン・ムーアズ・エキシ
ビションで絵が売れたからだ。買ったのはジョン・ムーア本人だった。そして彼
はその金でベースを買った。

ジョンとスチュアートは、何時間もかけてグループの名前を考えた。スチュアー
トがバディ・ホリーのザ・クリケッツみたいなのにしようと提案して、彼らはあ
らゆる昆虫の名前を検討し、その結果ビートルズ(beetles)に辿りついた。そ
してBeatals、The Silver Beats、The Silver Beetlesなど試行錯誤を繰り返し
た後に、最終的にThe Beatlesに落ち着いた。

1960年の4月、アングリカン大聖堂のすぐそばのガンビア・テラスを歩きながら
ジョンとスチュアートは、ポール・マッカートニーとジョージ・ハリスンに、新
しいバンドの名前はThe Beatlesにすると興奮気味に伝えた。

バンドとしてのビートルズの大部分を形作ったのはハンブルグのクラブだった。
激しいロックン・ロールが彼らのアイデンティティとなった。ビートルズ・サウ
ンドの誕生の経緯については、イアン・ソフトリーの1994年の映画『バック
ビート』に詳しく描かれている。リヴァプール出身のイアン・ハートがジョン・
レノンを、そしてハリウッドのアクター、スティーヴン・ドーフがスチュアート
を演じた。

ハンブルグに送り込まれたこの未熟な若手バンドは、インドラやカイザーケラー
といったクラブでの連夜における長時間の演奏によって腕を磨いた。同時に、ク
ラウス・フォアマンとアストリッド・キルヒヘルの助けによってアヴァンギャル
ドなルックスを手に入れた。
そして…そう、アストリッドはスチュアートと恋に落ちた。

アストリッドはスチュアートのことをこう語っている。
「彼は素敵だった。ユーモアもインテリジェンスも優しさもある素晴らしい男性
だったわ。そのあとも恋愛はもちろん何度かあったけれど、いつもどこかに違和
感のようなものを感じてた。こんなにも長い間にわたって惹きつけられるキャラ
クターで、今でも私を笑顔にさせてくれる人ってやっぱりいないわよね。それが
スチュアートなのよ」

アートとアストリッドはスチュアートにとっての初恋だった。ビートルズの2度
目のハンブルグ巡業のあとで、彼はアストリッドとともにドイツに留まる決意を
する。そしてハンブルグ・アート・カレッジに入学し、ポップ・アーティスト、
エドゥアルド・パオロッティの元で学ぶ。

彼が脳出血で倒れたのはハンブルグでのことだった。病院に運ばれたが、その途
中に救急車の中で息を引き取った。21歳だった。
リヴァプール郊外のハイトンにある彼の墓碑にはこう記されている。

 Stuart Fergusson Victor Sutcliffe - artist

しかし、音楽の世界においての彼は、アートの世界でよりももっと大きな存在と
いえるだろう。
彼は、5番目のビートルなのだから。

Stuart Sutcliffe: Legacy of the fifth Beatle 50 years after his death
by Jade Wright, Liverpool Echo, Apr 9 2012


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▽寄稿:「ハプニングもレベルアップな旅って!」(10)
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「ハプニングもレベルアップな旅って!」 / Anne

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■第29話《こんどは一人でグディソンパーク》■

10月2日。
今日はダービーを観戦したグディソンパークのスタジアムツアーの日!
出発する前に、ツアーの予約のことを書いておきましょう。
まだ7月で、旅行の計画を立てているときのことです。

「エバートンのホームスタジアムで観戦だもの!」
「スタジアムツアーも参加したいよねd=(^o^)=b」
「エバートンのホームページを検索しなきゃ!」
「もちろん英語だよ!」
この勢いでいつも通り検索! 検索!
「スタジアムツアーの日程は?」
「見つからないよ(―_―)!!」
サイト内検索に「Stadium tour」と入れてみたんですよ。

「やっぱりスカウスハウスさんに聞いてみよう!」
早速メールでお願い。
滞在中にスタジアムツアーが催行されるかどうか尋ねみますね、と返信メールが
来ました。
「催行されるかどうか???」
「これでは私には無理だ(^^;)」
毎日決まった時間にツアーが催行されているのでないようです。
「そうかあ(°σ °)」
「海外からいつもいつもツアー希望者が訪ねてくるとは限らないものね。」
「ビッククラブのような訳にはいかないんだあ!」

これまで私が参加したスタジアムツアーを振り返ってみます。
リヴァプールの「アンフィールド」、
バルセロナの「カンプノウ」、
アヤックスの「アムステルダムアレナ」。
「どれも世界中に多くのファンがいるビッグクラブだったよね(゜ο°)」

スタジアムへの行き方を検索した時も同じ。
グディソンパークに観戦旅行。
その情報がネットに少ないんです。
「19番のバス」という情報にたどり着くのにかなりの手間が掛りました。
殆どの情報は「アンフィールドから歩いて15分位」と書かれています。
「どれもこれもアンフィールドを拠点に書かれちゃってるよ(×_×;)」
「アンフィールドに行ったついでに立ち寄る情報かあ!」
そんな情報が多くて中々グディソンパークのものは手に入らないんですよ。

それもスカウスハウスさんに助けて頂きました。
エバートンのホームページのアクセスページのURLを送って頂いて解決!
「どうして自分でホームページを検索しても見つからなかったんだろう(?_?)」
「未だに英語のホームページで見つけられなかったなんて(;。;)」
「自分のことながら困ったものです(;-_-)/」

スタジアムツアーのお願いをして数日経ちました。
「ツアーは催行されないのかなあ」
「せっかくだから参加したいなあ」
少し待ったもののスカウスハウスさんからメールが届きました。
「日曜日午前中の申し込みが出来ました!」との内容です。
「これでスタジアムツアーは解決!」
「チケットを印刷していくのね(*^_^*)」
「まだまだお願いしなきゃ出来ないことばかりだあ(゜O゜;)」


■第30話《スタジアムツアーに参加》■

さあ、グディソンパークに出発です!
昨日も行っているから大丈夫ね。
駅に行って昨日と同じセイヴアウェイティケットを購入しましょ!
英語が出来ない私には良いアイディアがあります。
昨日のティケットを売り場の方に見せちゃえば良いんです。
「同じチケットを大人1枚ください!」
それで簡単に手に入りますよ。
「なぜ? 口で言わないで見せるのかって(^▽^?」
このセイブアウェイティケットってエリアの選択が必要なんですよ。
「リヴァプールの街のエリアのこと聞かれても分かる訳ない!」
「見せてしまえばミスもないよねd(⌒o⌒)b」

このチケットを手に入れたらあとは19番バスでスタジアムに向かうだけ。
昨日は人が多くてスタジアム周辺の撮影をゆっくり出来ませんでした。
撮影のために少し早目の到着。
「そうだ! その前に集合場所の確認をしておかなくちゃ(`´)/」
正面玄関に行ってみます。
「警備員さんがいるよ!」
「ツアーのティケットを見せて聞いてみよう!」
彼が指す方向だと裏手の方が入口のようです。
「そういえば昨日選手がスタジアムに入ったのも裏手の方だったよね!」
「言葉は分からないから行ってみることにしましょ!」
「誰もいなくてひっそりしてるなあ。」
「ツアーがあるんだもの!」
「集合時間になったら誰か集まっているでしょヽ(^-^)!」
まだ人が集まっている気配がないので撮影タイム開始!
静かな試合のない日のスタジアム周辺を撮影していきます。

「そろそろスタジアムの選手が到着した辺りに戻りましょ!」
「もしかしたらスタッフ?」
名簿を持った女性と男性がドアの前で誰かを待っている様子です。

「チケットを見えるようにして近寄ってみよう!」
「やっぱりツアー参加者を待っているスタッフの方々だ(^○^)」
チケットで名簿の確認を終わるとすぐに中に案内して頂けました!
案内されたのはバーカウンターのある客室のような場所。
すでに数名の方々がソファーで寛いでいます。
「とてもキレイな場所ね(^^ )( ^^)」
「子供用のおもちゃや大きなテレビもあるよ!」
「バーカウンターがある!」
「ここでお酒も頂けるのかな?」
暫く待っていると先程のスタッフの方がやってきて説明が始まりましたよ。
「ここは選手のご家族用のお部屋なんだあ(゜o゜)」←想像(;^^)
「試合中、この部屋でテレビ観戦しながら待っているのね」

この部屋から廊下を暫く歩いて選手の控室やバスルームに移動です。
日本人らしい若い女性もいます。
「日本人かなあ('' )( '')」
「ちょっと気になる!」
中々話しかけるきっかけのないままツアーの後を付いて行く私。
「パーティ用の部屋? レストラン?」
「英語が分からない(>。≪)」
「私には詳しいことは分からないよー!」
「それにしても随分アンフィールドより綺麗(°◇°)」
「しかもとても豪華だよね!」
「お客さんもとっても笑ってる!」
「きっと内容もユーモアに富んでいるんだろうなあ゜O゜)」

アンフィールドに観戦旅行を計画している方へ!
「グディソンパークのツアーもお薦めですよゝ(^.^)」
やっぱりチームが違うとかなり違う。
きっとグディソンパークの綺麗さにもびっくりすると思いますよ。
それにかなり丁寧なツアー!
「英語が理解出来たらとっても楽しめるだろうなあ(´。`)」
とても充実したツアーを楽しんで解散。
建物を出たところでツアーで一緒だった日本人の女性の方ともお話しました。

「女子大生なの?」
若く見えたわけですね。
「バレンシアCFを見てグディソンパークに来たの?」
「おー(。^。)! バレンシアCF」
「私も観戦に行ったことのあるよ!」
まさかの偶然にお話が盛り上がっちゃいました!
「もっと早く話せていたら良かったねー!」
「ここで日本人の女性に会えるって思わなかったね」
「グディソンパークのツアーに日本人の女性が一人で参加しているなんて!」
お互いに驚いたことで笑っちゃいました。
アンフィールドなら日本人と出会ってもこんなに驚かないんですけどね。

(つづく)

≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo503.html ≫ 


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▼特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
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「ゴールドフィッシュだより」 / ミナコ・ジャクソン
          〜 Goldfish Liverpool Update / Minako Jackson 〜

 ― 第206号 / Sea Odyssey Giant Spectacular ―

 ≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish206_photo.html ≫

こんにちは。
先々週末の4月20日から22日までの3日間、待ちに待った《シー・オデッセイ》
が リヴァプール市内各地で繰り広げられました。
北リヴァプールのスタンリー・パークからスタートし、アンフィールド、エヴァ
トン・ブラウ、そしてリヴァプール中心部の23マイル(37キロ)の道のりを3
つの巨大なマリオネットが練り歩き、象徴的な街の風景が余すところなく舞台背
景として活かされたストリート・シアター・ショウです。

これは、タイタニック号沈没100周年を記念して行われたリヴァプールにおける
目玉イベントで、フランスのストリート・シアター集団<ロワイヤル・ド・リュ
クス(Royal de Luxe)>によるものです。
ちなみに2008年のスパイダーを手掛けた<ラ・マシン>はロワイヤル・ド・リュ
クスから枝分かれしたカンパニーなのだそうです。DNAが流れているのが分かり
ます。

決して沈まないと言われていたホワイト・スター・ライン社の豪華客船タイタ
ニック号は、サウサンプトンからニューヨークへの最初の(そして最後となる)
航海の途中1912年4月15日に氷山に接触し沈没し、乗客、乗員合わせて1513
人が犠牲となりました。
タイタニック号がリヴァプールに立ち寄ることはありませんでしたが、ホワイ
ト・スター・ライン社の本社がリヴァプールにあったことから、登記上タイタ
ニック号の母港はリヴァプールで、乗員の多くがリヴァプール出身でした。

リヴァプールのケンジントン地区に住んでいたウィリアム・マクマレーもその
一人で、タイタニック号の一等船客の客室担当として働いていました。
10歳になる娘のメイ・マクマレーは、航海に出ていてなかなか会えない父を恋し
く思う気持ちをしたためた手紙を父ウィリアムに出しますが、その数日後に事故
が起こり、その手紙はウィリアムのもとに届くことはありませんでした。

この手紙は、マージーサイド・マリタイム・ミュージアムに展示されています。
http://www.liverpoolmuseums.org.uk/maritime/collections/liners/titanic/mcmurray.aspx
この一枚の手紙がインスピレーションのもととなって、《シー・オデッセイ》が
生まれたのです。

《シー・オデッセイ》の物語の設定はこんな感じです。
タイタニック号には、50フィート(約15メートル)の巨人が潜んでいました。
この巨大な密航者は娘と会いに行くためにこの船に乗り込みましたが、船は大西
洋沖で事故に遭い沈没し、巨人は娘と再会することなく船に閉じ込められたまま
水深12,000フィートの海の底で命を失います。
でも父が娘に宛てて書いた手紙が船のどこかに残っているはず。。。

そのことを知った娘のリトル・ジャイアントは、巨人の弟である叔父を探し出し、
話しをします。
姪の話を聞いているうちに、叔父はダイビングスーツに身を固め、海底に潜るこ
とを決意します。
100年かけて海の底をさまよいながら、タイタニック号の沈む場所を見つけ、兄
を安らかに葬り、手紙の詰まったコンテナを海から運び出し、巨人が娘に宛てて
書いた手紙を探し当ててリトル・ジャイアントに届けるべくリヴァプールへ向い
ます。
リトル・ジャイアントはいたずらっ子の犬のゾロと一緒に市内を歩き回り、途中
何度も叔父とすれ違った後、ようやく再会を果たします。
そして二人と犬のゾロは、船に乗ってマージー川を後にします。。。

2008年のスパイダーも相当素晴らしかったですが、今回の《シー・オデッセイ》
は、スケールの大きさや驚きの要素だけでなく、マリオネットの細やかで豊かな
表情や動き、時折見せるお茶目な仕草(犬のゾロは目の前でおトイレをしてくれ
ました!)、そして何よりドラマ性の強さが加わって、観る側のハートを掴む力
が十二分にありました。

またメカニカルなスパイダーとは対照的に、《シー・オデッセイ》では、もちろ
んクレーンなどの大型重機も使われてはいましたが、マリオネットの操作そのも
のは主に人力で行われていたのが特徴です。
特に叔父さんが歩くとき、リリピューシャン(小人)と呼ばれるユニフォームで
身を包んだ操作チームが、ターザンのごとくワイヤーにつかまって飛び降りる力
で足を動かす様子や、叔父さんのダイバーヘルメットを取り外す光景などは目を
見張るものがありました。まさにガリバーと小人の実写版といった感じです。

書き忘れてましたが、女の子が30フィート(約9メートル)で、叔父さんが50
フィート(約15メートル)もあります。

このイベントには200人ほどの地元リヴァプールのボランティアが参加し、なか
にはリリピューシャンを務めた人達もいます。
この3日間の体力的にハードな大役を務めたオペレーションチームには、本当に
拍手を送りたい気持ちです。

ストリート・イベントにはパーフェクトとはいえない、肌寒く雨のちらつく不安
定な天候だったにも関わらず、街は本当に大勢の人々で賑わい、どこもかしこも
興奮と笑顔で満ち溢れていました。

街で通りすがる人達の発する言葉も、ソーシャルメディアのタイムラインも、
「ジャイアント・ガールが、」とか「アンクルが、」とか「犬が」と、すっかり
ジャイアンツで持ちきりで、リヴァプールは紛れもなく「ジャイアンツ現象」
一色となった週末でした。
誰もがこの週末、夢の中かあるいは映画のシーンの中にいるような感覚に包まれ
て、月曜日になってもその余韻から醒めることなく、今日も街のどこかで少女と
ゾロや叔父さんが歩いているのではないか、という錯覚に陥ったのは、私だけで
はなかったようです。

市の発表によると、推定60万人もの人々がこのイベントを鑑賞し、12万ポンド
の経済効果があったといわれています。
もちろん、こういう数字は良いに越したことはありませんが、それ以上に心のイ
ンパクトの大きさは、数字では計れない絶大なものだったに違いありません。
実在したリヴァプールの一人の少女が書いた手紙と彼女に降りかかった悲しい出
来事が、このようにこれまで誰も体験したことのない壮観な感動のフェアリー
テール(お伽噺)として昇華され、人々の心やまぶたの裏側にしっかりと焼け付
いて、いつまでも、きっと百年先にまで語り継がれるリヴァプールの原風景とな
るのではないか、と思います。

シー・オデッセイ: http://www.giantspectacular.com/

♪ ♪ ♪

【今号の告知】
5月も文化イベントがまだまだ続きます。

今年で5回目を迎える《リヴァプール・アート・プライズ》が4月24日にス
タートしました。
今年も強力な4組の候補者、アラン・ダン、ロビン・ウールストン、トモ
(ジェームス・トンプソン)、ドローイング・ペーパー(ジョン・バラクロフ&
マイク・カーニー)が非常に充実した展示を展開しています。
これに関連して、5月は《リヴァプール・アート月間》として、市内各地で展覧
会やアートオークション、アートフェアなどが行われます。
リヴァプール・アート・プライズ&アート・マンス: http://liverpoolartprize.com/

音楽の分野では、4月27日に第一回リヴァプール版マーキュリー・アワード
《GITアワード》が行われ、今年最もホットなバンドに、12組のバンドの中から
<ラヴド・ワンズ(Loved Ones)>選ばれました。
http://www.peterguy.merseyblogs.co.uk/2012/04/git-award-2012-and-the-winners-1.html

5月も音楽イベントが続きます。毎年恒例の《リヴァプール・サウンド・シティ》
が5月17、18、19日の3日間開催されます。
http://www.liverpoolsoundcity.co.uk/

5月18日(金)は、毎年恒例になりつつある《ライト・ナイト》が戻ってきま
す。市内各地のアート、音楽系の会場が夜遅くまでオープンし、さまざまな特別
イベントが開催されます。
http://www.lightnightliverpool.co.uk/

その他にも、日付が戻って5月のバンクホリデーの週末は、Liverpool ONEの
シャヴァス・パークでLIPAが主催する《グルーヴ・オン・ザ・グリーン》と題
したジャズ、ソウル、スウィング、ブルースの無料野外音楽イベントが5月5日
から7日までの3日間行われます。
http://www.liverpool-one.com/website/news-event-article.aspx?eventId=56

文化系以外では、2つほどお知らせがあります。
4月23日からしばらくのあいだ、リヴァプール・セントラル駅が再整備工事の
ため閉鎖となります。
ウィラル・ラインは8月25日から、ノーザン・ラインは10月22日に再開とな
ります。この間、2種類の代替バスが運行されます。

1)モーフィールズ−エリオット・ストリート(セント・ジョンズ・マーケット)
  −ライム・ストリート(セント・ジョージズ・ホール)循環シャトルバス:
  月〜土 始発〜午前7:00 10分おき
      午前7:00〜午後7:00 5分おき
      午後7:00〜終電まで 10分おき
  日曜日 始発から終電まで  10分おき

2)ブランズウィック(ノーザン・ライン)−ベリー・ストリート間シャトルバ
  ス:
  月〜金 午前7:00〜午後7:00 15分おき

あるいは、閉鎖はセントラル駅のみですので、ウィラル・ラインをご利用の方は
ライム・ストリート駅、ジェームス・ストリート駅、モーフィールズ駅から、
ノーザン・ライン(クロスビーやサウスポートなど)をご利用の方はモーフィー
ルズ駅から直接ご乗車ください。

詳細はこちらから。
http://www.loveliverpoolcentral.com/letmehelpyou/Default.aspx

リヴァプール観光案内所がセント・ジョージズ・ホールにオープンしました。
ホワイトチャペルの<08プレイス>が閉鎖されて久しいですが、ライム・ストリー
ト駅の目の前ですのでとても便利になります。
営業時間は、火曜日から日曜日まで午前10:00〜午後4:00。月曜定休ですが、バ
ンクホリデーマンデーは同じく午前10:00〜午後4:00まで営業しています。

セント・ジョージズ・ホール: http://www.stgeorgesliverpool.co.uk
リヴァプール・シティ・カウンシル: http://liverpool.gov.uk/news/details.aspx?id=214411

それではまた!

ミナコ・ジャクソン♪

 ≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish206_photo.html ≫


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ウェブサイトの「ガイド・ツアー/ロンドン」ページを更新しました。注目は
「ビートルズ・フィルム・ツアー」。ビートルズの映画にちなんだマニアックか
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ションとしてアレンジ可能。もちろん通常の「ロンドン・ビートルズ・ツアー」
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*** Beatle Week 2012:ツアー参加者募集中! ******

毎年恒例、International Beatle Week鑑賞パッケージ「スカウスハウス・ツ
アー2012」の参加者を募集中です。今年はビートルズ・デビュー50周年。記念イ
ヴェントが目白押し。この夏、ぜひぜひリヴァプールでお会いしましょう!
http://scousehouse.net/beatleweek/scousetour2012.html


*** LFCチケットあります ******

スカウス・ハウスでは、以下のLFCマッチ・チケットをキープしています。
購入ご希望の方は、こちらまでお問い合わせください(件名は「LFCチケット希
望」とし、本文に「お名前」「ご住所」「希望マッチ」「希望枚数」をお書きく
ださい)。折り返し、在庫の有無やチケット代金をお知らせいたします。
確保枚数はとても少ないです。お早めに!

 LFC VS Chelsea (5月8日アンフィールド・プレミアリーグ)


*** ガイドツアー「ロンドン特別編」 ******

好評のビートルズ・ツアーに加えて、ロンドンでのウォークツアーを2コース、
実施しています。シャーロック・ホームズゆかりのスポットを案内する「ホーム
ズ・ツアー」と、ちょっと怖い「ロンドン・パブ・ツアー」。ディープなロンド
ン体験をぜひ!
http://scousehouse.net/beatles/guidetour_london2.html


*** リヴァプール語学留学 ******

スカウス・ハウスは、リヴァプールへの語学留学をサポートしています。
公立のリヴァプール・コミュニティ・カレッジに加えて、今年より、私立の語学
スクールLILAとも提携しています。
長期でじっくり学べる学生の方にはコミュニティ・カレッジを、まとまった期間
を留学に充てられない社会人の方にはLILAをおすすめします。
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フが、日本とリヴァプールの両方に常駐しています。入学前はもちろん、入学後
のサポートについても安心してお任せください。
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リヴァプール&ロンドンのビートルズゆかりの地を訪ねるガイドツアーをアレン
ジしています。ツアーの詳細は、ウェブサイトの「ガイドツアー」ページをご覧
ください。
http://scousehouse.net/beatles/guide_liverpool.htm
http://scousehouse.net/beatles/guide_london.htm


*** 原稿募集中 ******

NLWでは、読者のみなさんからの投稿を募集しています。
旅行記、レポート、研究、エッセイ、写真などなど、リヴァプール、あるいは英
国に関するものなら何でも歓迎です。
お気軽にお寄せください。楽しい作品をお待ちしています。


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▼今週のフォト
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*** 今週の「ゴールドフィッシュ」フォト ******

ミナコさん撮影による《Sea Odyssey》の写真を掲載しています。最後の2枚は
夫のイアンさん撮影。ほんっとに素晴らしい写真ばかりで、とんでもなくブリリ
アントなスペクタキュラーだったことが伝わってきます。ぜひご覧ください!
http://scousehouse.net/goldfish/goldfish206_photo.html


*** 今週のフォト・アルバム ******

連載「ハプニングもレベルアップな旅って!」の写真を掲載しています(Anneさ
ん、ご提供ありがとうございました!)。ぜひご覧ください!
http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo503html


*** 「Photo of the Week」 ******

スカウスハウス・ウェブサイトのトップページに、「リヴァプールの今」を伝え
る写真を1枚、ウィークリーで掲載しています。
http://scousehouse.net/

今週の写真は、「The Liverpool Sailor's Home Gateway」。撮影したミナコさん
による解説を以下に紹介しておきますね

> Liverpool ONEのParadise Streetにある「The Liverpool Sailor's Home
> Gateway」という名前の門です。
> もともとCanning PlaceにあったSailor's Homeという船乗りの宿泊施設の建
> 物のゲートだそうです。
> 当時、門限が夜の10時だったらしく、遅れたら絶対に入れなそうな頑丈な門
> です。
> http://en.wikipedia.org/wiki/Liverpool_Sailors'_Home
>
> 建てられたのが1852年ですが、こんなに昔からライバーバードはシンボル
> だったんですね。
> 、、、と思ったら、18世紀終わりごろにはすでに市のシンボルになってたよう
> です。
>
> 左の新築のジョンルイスの建物と右側の今はソニーのショップとなっている
> アメリカ領事館だった建物(白い建物)とのギャップが対照的です。
>
> ちなみに、この建物の建築家のJohn Cunninghamは、Edge Hill駅(現在も使
> 用されている世界で最古の旅客鉄道駅)と Lime Street駅, 最初のLiverpool
> Philharmonic Hallの設計も手掛けたそうですよ。


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リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World
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       *** 毎週火曜日発行 ***


□■ 第503号 ■□

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◇編集 山本 和雄&ミナコ・ジャクソン
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