November 27 2012, No.531
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リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World  
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□■ INDEX ■□

 ▽フロム・エディター
 ▼連載:「BW2012 おぼえがき」(7)
 ▽「ゴールドフィッシュ・ミニだより」
 ▼スカウスハウス・ニュース
 ▽今週のフォト


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▽フロム・エディター
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先週、プレミアリーグ、チェルシーFCのロベルト・ディ・マッテオ監督が解任さ
れ、ラファエル・ベニテスが暫定監督に就きました。
ラファといえばリヴァプールですし、個人的にも大好きな監督なので、イングラ
ンドでほかのチーム、しかもよりによってチェルシーは勘弁してほしいなあとは
思うのですが、浪人生活ももう2年くらいになるし、まあ仕方ないかなという気
もします。ラファ、がんばってね。
…でも難しいなあ。ラファには成功してほしいけれども、チェルシーには勝って
ほしくない。う〜ん、どうすればいいんでしょう?

僕は、ラファのクールな采配ぶりが好きでした。
ベンチでは絶対に目の前のプレイに一喜一憂せず、状況の分析と次の作戦を考え
ることにひたすら集中しているのです。
起死回生の同点ゴールや劇的な逆転ゴールが決まってスタジアムじゅうが爆発し
ているときでも、眉ひとつ動かさずに静かにメモにペンを走らせていたり、隣の
コーチと話をしています。あるいは、まだ選手たちが歓喜の輪を解かないうちに、
ピッチの選手を捕まえて指示を与えたり。
逆に、致命的な失点をしたときでも、悔しがるようなそぶりは一切なく、同じよ
うにメモをとっているのです。
その姿が、実にカッコよかった。器が大きいなあと感心したものです。

確かに、監督が選手と一緒になって喜んだり悔しがったり怒ったりする必要は
まったくないですよね。それよりも、なぜそのプレイが生まれたのか、次はどん
な手を打てばいいのか、一刻でも早く計算し、解答を出して決断することがチー
ムのためなのは明らかです。だってまだゲームは終わってないのですから。

2005年のヨーロッパ・チャンピオンズ・リーグの決勝は、監督ラファの真骨頂で
した。
前半を終えて0−3。ACミランになすすべもなくけちょんけちょんにやられて、
絶望的な気分で控室に戻った選手たちを待っていたのは、いつもとまったく変わ
らないラファでした。元気を出せとか根性を見せろとかあきらめるなとかそうい
う言葉は一切なく、普段どおりに、後半からのポジション変更とフォーメーショ
ンの指示を始めたのだそうです。
落ち着いたラファの姿を見て、選手たちも落ち着き、試合への集中力を取り戻し
ました。

そしてひととおり指示を終えるとラファは、上を指差し、「耳を澄ませよう。聴
こえるか?」と言います。
イスタンブールのアタチュルク・スタジアムの7割以上を埋めたリヴァプール・
サポーターの歌声が、選手たちの耳に、そして心に響いてきます。もちろん歌は
「ユール・ネヴァー・ウォーク・アローン」。
ラファはこう言ってミーティングを締めくくりました。
「君たちには素晴らしいサポーターがついている。さあ歌詞のとおり、顔をあげ
て恐れず戦おう」

一方のACミランの控室では、勝利を確信した選手たちが大騒ぎをくりひろげて
いて、その騒音はリヴァプールの控室にも届いていたそうです。

このあとにリヴァプールは、フットボール史上に残る大逆転劇をやってのけまし
た。
「負けは勝ちの始まり、勝ちは負けの始まり」とはよく言われますが、まさにこ
のハーフタイムが分水嶺となって、天国と地獄がひっくり返ってしまったわけで
すね。ほんとうに勝負の世界は怖いものです。

ええと、なんの話でしたっけ?
そう、監督の器、でした。
たぶんラファは、徹頭徹尾、監督なのでしょう。1秒たりとも監督としての責務
を忘れることはないのです。そういえば中日ドラゴンズの落合前監督もそんな感
じだったかな…。
ゴールが決まるたびにガッツポーズして走り回ったり、決定的チャンスを外すと
オーバーに頭を抱える監督は多いですが、そういう姿を見るにつけ、ラファのこ
とをなつかしく思い出したものでした。あ、いつもぐちゃぐちゃと何かを噛んで
いる人は論外です。ほんとみっともないですよねえ。

というわけで、これからまた監督ラファの姿を見ることができるのが個人的には
とてもうれしいし、楽しみです。トヨタ・カップにも来ますね! …チェルシー
は応援したくないけど。

あ、それから、来年4月には「リヴァプールvsチェルシー」がアンフィールド
で行われます。リヴァプールのファンがラファにブーイングするなんてことは決
してないでしょうが、いったいどんなエモーションにスタジアムが包まれるのか、
実際に見てみたい気がします。

で、ここまで書いたのでいちおう宣伝しますけど、スカウスハウスではこの試合
の観戦チケットをキープしています。ご希望のかたはお気軽にお問い合わせくだ
さい。お早めに!

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<スカウスハウス通販のお知らせ>
ウェブサイトの「英国盤レコード」通販ページを明日(11月28日)アップデー
トする予定です。オーダーをいただけるとうれしいです!
http://scousehouse.net/shop/records2012_02.html

                         ― Kaz(27/11/2012)


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▼連載:「BW2012 おぼえがき」(7)
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「BW2012 おぼえがき」 / Kaz

≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo531.html ≫

<8月25日(土)>

16:40 ミズウリ、キャヴァーン入り。バックステージのバックステージ(やや
こしいな)で、アンコールでジョイントするクローバーと<ラヴ・ミー・ドゥ>の
短い打ち合わせ。ほんとうに簡単な打ち合わせだった。

16:50 前のバンド、Beetles Oneのステージ終了。ブラジルの若者4人組だが、
ドラマーのウエスくんの日本語が達者でびっくり! 

17:00 ミズウリ3本目のギグがスタート。1曲目はなんと<アスク・ミー・ホワ
イ>である。続いて<ユー・リアリー・ゴット・ア・ホールド・オン・ミー>、そ
して<アイル・フォロー・ザ・サン>…って、ちょっとシブすぎるオープニング。
こんなの初めて見た。だって目の前には「歌うぞ〜! 踊るぞ〜! 騒ぐぞ〜!」
と待ちかまえているお客さんがびっしりなのだ。そんな状況で、よくまあこんな
地味なナンバーを連発できるものだ。マイペースというかなんというか、よほど
自信があるのだろう…さすがである。そして彼らの思惑通り(なのだろう)、
いったんリセットされたオーディエンスのボルテージは、ステージが進むにつれ
て、じわじわと、しかし確実に目盛りを上げて行くのだった。

客席には日本のTVクルーの姿はあるが、BBCは見当たらない。MCのフィルに
「どうなってるんだろ?」と訊いてみるが、彼も答えようがない。「ちゃんと伝
えたんだが…」と言って肩をすくめるばかり。

17:35 アンコール・ソング。クローバーがジョイントしての<ラヴ・ミー・ドゥ>
である。ミズウリのレパートリーになかった曲で、しかもほぼぶっつけ本番だっ
たのだが、完璧な演奏だった。クローバーも歌詞を間違えなかった。簡単な歌詞
だからまあ、当然といえば当然だけど。
結局BBCの取材チームは現れなかった。でも、お客さんも盛り上がったし、じゅ
うぶんに価値のあるイヴェントにはなったと思う。

18:00 キャヴァーンのフロント。リヴァプール・ボーイズ3本目のギグだ。<ア・
ハード・デイズ・ナイト>で始まって、<ユー・キャント・ドゥ・ザット>、<オー
ル・マイ・ラヴィング>。実にノリノリなオープニングである(そうだよな、普
通はこうだよなあ)。リヴァプール・ボーイズは、見た目もほんとうにカラフル
だ。キーボードのおすぎさんのパフォーマンスがとにかく派手で、まるで演奏す
る応援団長。バンドやオーディエンスを煽って、ぐいぐいとリードして行く。バ
ンドとしてのサウンドももちろん素晴らしいから、これで盛り上がらないわけが
ない。ロックンロール・パーティーのようなステージになった。

19:30 大雨の中、クイーン・スクエアへ。スペイン料理店<ラ・タスカ>でちか
こさんとミーティングがてら晩ごはん&ビヤ。前菜は相変わらず美味しかったが、
楽しみにしていたヴェジ・パエリアがしょっぱすぎて食べられたものではなかっ
た。残念…。途中で最後のお客さんMさんから電話。今日ヒースローに到着後リ
ヴァプールに向かう予定だったのだが、鉄道便に間に合わなかったとのこと。何
度かのやりとりの末、ロンドンに1泊して明日来てもらうことになった。寝坊し
ないようにね!

22:00 キャヴァーン・パブ。リヴァプール・ボーイズ4本目のギグ。さっきと
同じような、イケイケのセット・リスト。お客さんは満員。誰もがハッピー。し
かし進行が早く、用意していたセットリストでは2曲ほど足りなくなりそうだ。
こういうときは早めに知らせてあげないといけない。25分が経ったところでカク
さんにこっそり「あと5曲!」と伝える。しかし中腰でステージの袖に戻ろうと
したそのとき、クレソンさんにマイクを通して呼び止められた。びくっ!

「カズさん!」
「は、はい!?」
「ファイヴ・ミニッツ?」
「いや、ファ、ファイヴ・ソングズ!」
「ははは、了解!」

普通こういう会話はお客さんにわからないようにするものだけど、これはこれで
面白かった。結構ウケてたかもしれない。あと5曲っていうのが全員に知れ渡っ
てしまったけど。

22:50 大盛況でギグ終了。ハード・デイズ・ナイト・ホテルで解散。おつかれ
さま!

22:30 小雨の中、とぼとぼとホテルに戻る。バスツアーに4本のギグ…今日も
長い長い1日だったな。あっという間だったけど。

(つづく)

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▽「ゴールドフィッシュ・ミニだより」
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「ゴールドフィッシュ・ミニだより」 / ミナコ・ジャクソン

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【Week 29 (27 November 2012); Epstein Theatre】

現在上演中の"Epstein: The Man Who Made The Beatles"を観にハノーヴァー・
ストリートのエプスティーン・シアターに行ってきました。

"Epstein: The Man Who Made The Beatles"は、5人目のビートルズと呼ばれ、メ
ンバーからは「エピー」という愛称で親しまれたブライアン・エプスタインを
テーマにしたものです。
2008年にリヴァプール・オリンピアで行われた"The Shankly Show"の脚本家アン
ドリュー・シャーロックが脚本を担当し、プロデュースはジェン・ヘイズとビル・
エルムズのコンビが手掛けています。出演は、テレビドラマ「コロネーション・
ストリートの悪役を筆頭に数々の役柄をこなしてきた俳優のアンドリュー・ラン
セルがブライアン役を、新人のウィル・フィンラソンが架空のリヴァプール出身
の青年"This boy"を演じています。

舞台はロンドンのブライアン・エプスタインの自宅。夜遊びに出かけたときに
ひっかけたリヴァプール出身のジャーナリスト志望の学生"This boy"を家に連れ
込みますが、お酒を飲んで楽しく過ごそうとするブライアンの意思に反して、こ
の青年はビートルズをはじめとしたブライアンの仕掛けたミュージシャンの影に
隠れたブライアンの素顔を引き出そうと真摯に迫るというストーリーです。会話
を通じてブライアンの華やかさ、高慢さ、その一方で情緒不安定で繊細で壊れや
すい人物像が細やかに演じられています。

劇場そのものですが、1913年にクレーンズ・ミュージック・ホールとしてオープ
ンし、1938年にクレーンズ・シアター、1967年にネプチューン・シアターと改
名されます。2005年に修復工事のために閉鎖され、120万ポンドをつぎ込んだ修
復工事の後、今年9月にエプスティーン・シアターとして正式にオープンを迎え
ました。建物本来の特徴に忠実な修復がなされたこの劇場は、噂できいていた通
り古風でこじんまりとしていて美しく、タイムスリップしたような感覚になれる
スペースです。

"Epstein: The Man Who Made The Beatles"は、12月1日まで続きます。
 http://epsteintheplay.com 

エプスティーン・シアター:
 http://www.epsteinliverpool.co.uk 

(ミナコ・ジャクソン)


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▼スカウスハウス・ニュース
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*** フットボール・チケットのお知らせ ******

スカウスハウスでは、以下のマッチチケットを確保しています。
ご希望のかたは、info@scousehouse.net までお問い合わせください(件名は
「フットボールチケット希望」とし、本文に「お名前」「ご住所」「希望マッチ」
「希望枚数」をお知らせください)。
下記以外のマッチも受け付け可能です。お早めにどうぞ!

 LFC vs Fulham (22 Dec)
 LFC vs Chelsea (20 Apr 2013)

フットボール・チケットに関する詳細はこちら:
 http://scousehouse.net/football/stadium2012-13.html 


*** ガイドツアー「ロンドン特別編」 ******

好評のビートルズ・ツアーに加えて、ロンドンでのウォークツアーを2コース、
実施しています。ホームズゆかりのスポットを案内する「シャーロック・ホーム
ズ・ツアー」と、ちょっと怖い「ロンドン・パブ・ツアー」。ディープなロンド
ン体験をぜひ!
http://scousehouse.net/beatles/guidetour_london2.html


*** リヴァプール語学留学 ******

スカウス・ハウスは、リヴァプールへの語学留学をサポートしています。
公立のリヴァプール・コミュニティ・カレッジに加えて、今年より、私立の語学
スクールLILAとも提携しています。
長期でじっくり学べる学生の方にはコミュニティ・カレッジを、まとまった期間
を留学に充てられない社会人の方にはLILAをおすすめします。
スカウス・ハウスには、リヴァプール留学に関する専門知識や経験を持つスタッ
フが、日本とリヴァプールの両方に常駐しています。入学前はもちろん、入学後
のサポートについても安心してお任せください。
http://scousehouse.net/study/index3.htm


*** ビートルズ・ガイドツアー ******

リヴァプール&ロンドンのビートルズゆかりの地を訪ねるガイドツアーをアレン
ジしています。ツアーの詳細は、ウェブサイトの「ガイドツアー」ページをご覧
ください。
http://scousehouse.net/beatles/guide_liverpool.htm
http://scousehouse.net/beatles/guide_london.htm


*** 原稿募集中 ******

NLWでは、読者のみなさんからの投稿を募集しています。
旅行記、レポート、研究、エッセイ、写真などなど、リヴァプール、あるいは英
国に関するものなら何でも歓迎です。
お気軽にお寄せください。楽しい作品をお待ちしています。


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▽今週のフォト
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*** 今週のフォト・アルバム ******

連載「BW2012 おぼえがき」で登場したシーンの写真をいくつか掲載しています。
ちかこさん、えりさん、提供どうもありがとう!!
http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo531.html


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       *** 毎週火曜日発行 ***


□■ 第531号 ■□

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