February 26 2013, No.543
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リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World  
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 ▽フロム・エディター
 ▼「利物浦日記2010」(13)
 ▽スカウスハウス・ニュース
 ▼今週のフォト


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▽フロム・エディター
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NLW No.543です。
今週は、ひさ〜しぶりに「利物浦日記2010」をお届けします。
最後の掲載は2012年7月3日発行のNLW No.512でした。ほぼ8ヶ月ぶりの連載
再開です。
…といっても、忘れているかたもいるかもしれませんね、これは2年半前の
《International Beatle Week 2010》のレポートです。そうです、まだ終わって
なかったのです。あと1日分を残したままストップしてました!

2011年のレポート(ちかこさんありがとう!)も、2012年のレポートも済んで
しまった今、2010年の分もきっちり――「長いことほったらかしにしといてなあ
にがきっちりやねん!」とツッコまれそうですが――決着をつけておかなければ! 
…ということで、がんばって書いてみました。遅ればせながら。

2年半。つまり900日以上も前のことですから、何があったのかほとんど忘れて
しまっていたのですが、いざ書き始めるといろんな場面がリアルに浮かび上がっ
てきて、自分でもびっくりでした。人間のメモリー機能って面白いものですね。
でも冷静になって読み返してみるとちょっと筆が――じゃなくてキーボードが走
りすぎな部分、なきにしもあらずかなあ…う〜ん。まあいいや、このまま配信し
ちゃいます。よかったら読んでみてください。

ええと、今年の《International Beatleweek》鑑賞パッケージ「スカウスハウ
ス・ツアー2013」は、現在参加者を募集中です。
リヴァプールでお会いできればうれしいです!
http://scousehouse.net/beatleweek/scousetour2013.html

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今週の「Photo of the Week」は、2011年11月に閉店してしまったThe
Jacaranda。2006年の写真です。僕の大好きなパブで、2011年夏にはスカウス・
ハウス主催で東日本大震災のチャリティ・ギグをここで開催させていただきまし
た。再オープンを切に願っています。

「Photo of the Week」は、スカウスハウスのFacebookページ、またはウェブサ
イトのトップページでご覧いただけます。
 Facebookページ: http://www.facebook.com/scousehouse.net

                         ― Kaz(26/02/2013)


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▽「利物浦日記2010」(13)
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「利物浦日記2010」13 / Kaz

≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo543.html ≫

【8月30日(月)】

午前8時20分、マリオット・ホテルのロビーに集合。タクシーに乗って「スペ
シャルマニアック・ビートルズ・ツアー」に出発した。
参加者は4名+僕。少人数だけど、これくらいがちょうどいい。今日の訪問先は
わずか2ヶ所。そのうちのひとつは「誰でも連れて行きたい」という場所ではな
い。ほんとうにリヴァプールが好きな人、僕のツアーを心から楽しんでくれる人
だけを案内したい、特別なスポットなのだ。
もちろん今日のメンバーは申し分ない。リピーターのカップルのKさん&Tさん、
そして新婚旅行のNさん夫妻。和気あいあい。天気もいいし、いいツアーになり
そうだ。

まずはホープ・ストリートの裏通り、オックスフォード・ストリートにある元産
院へ。ジョン・レノンの生誕地である。ほぼ70年前、ジョンはこの場所で生を
受けたのだ。

ビートルズ関連本の多くには、「ジョンは1940年10月9日水曜日午後6時30分
にリヴァプールのオックスフォード・ストリートにあるマタニティ・ホスピタル
で生まれた。リヴァプールがドイツ軍の空襲に見舞われている最中の誕生であっ
た」というようなことが書いてある。
しかし当時の記録を調べた人の話では、その日その時間に空襲の事実はないそう
だ。

ではなぜ「空襲中に誕生」というドラマチックな俗説が生まれたのか。
おそらくそれは、ジョン自身に原因がある。後年、友人のビル・ハリーが主宰す
る音楽紙「マージービート」への寄稿でこんなことを書いているのだ。

「おれは1940年の10月9日に生まれたんだが、ちょうどマダルフ・ヒートラン
プんとこのナスティたちが爆弾落っことしてたんだとさ。奴らはおれを殺し損ね
たってわけだな」

マダルフ・ヒートランプというのはもちろんアドルフ・ヒトラーのことで、ナチ
スは「汚い・卑怯な」を意味する単語・ナスティに言い換えている。ジョン流の
アイロニーとおふざけ精神が全開の文章である。

● ● ●

抜けるような青空の下、アラートンへドライヴ。
向かった先はアラートン・セメタリーだ。正門でタクシーを降りて歩く。目指す
はジョンのお母さん、ジュリアのお墓である。しかしこのお墓は正門から最も遠
いエリアにあって、10分ばかり歩かなければならない。つまり、歩いて行ってお
参りをして歩いて戻って来る、それだけで30分もかかってしまうわけだ。
敷地内には整備された舗装道路があるので、最初からタクシーでお墓の近くまで
行ってもらうことも考えた。そうすれば時間もかからず、足も疲れないだろう…。
でもやっぱり僕はそうする気にはなれない。なぜだかよくわからないが、ぜんぶ
歩いてこそのお墓参りだと思うのだ。

気持ちのよい朝の空気の中を、5人で歩く。何しろ広大なセメタリーで、見渡す
限りお墓が並んでいる。
おそらく50年前もそう景色は変わらないはず、きっとジョンもこうやってこの
道を歩いたに違いない…などと話もはずんで、長い道のりもまったく苦にならな
かった。おだやかな日差しがあたたかい。

ジュリアのお墓はとても小さくてわかりにくい。僕はこれまで何度も訪れている
し、数日前にも下見に来て確認している。それにもかかわらず、なぜか見つける
ことができなかった。
「あれ? このへんなんだけどなぁ…」
みんなで探す。
「あ! これじゃないですか!?」と向こうでNさんの声。
「どれどれ……。あ、そうそう、それだ〜」
――やれやれ、お客さんに先に見つけられてしまった。

僕がこの場所に初めて立ったのは、1997年だ。
そのときはお墓の番号を刻んだ小さな石と、同じく石でできたネコの置物だけが
置いてあるだけの、とても質素なお墓だった。

お墓の番号を刻んだ石はしばらくしてなくなったが、そのかわり、訪れるたびに
ちょっとずつ飾りものが増えた。しかし墓石がここに置かれていたことは、僕の
知る限りでは一度もない。
しかし今年、数年ぶりに来てみて驚いた。なんとそこには立派な墓石が――いや、
立派というのは少し違うかな、それにぜんぜん墓石らしくない。ちっちゃくて、
黒くて、先がとんがったカッコいい石が立っていたのだ。
表面には、4人の名前が刻まれている。

 Mummy
 John
 Julia
 Jackie

Mummyはお母さんのジュリアで、JuliaとJackieはジョンの異父妹である。
墓石をつくったのは、娘のジュリアに違いない。
最愛の母ジュリアと、リヴァプールで仲良く暮らした3人の子供のお墓、という
ことなのだろう。
上の2人はこの世にはいない。母ジュリアの名前があるのは当たり前だが、ジョ
ンの名前もしっかりと刻まれている。
ということは……。

僕はずっと前から、この場所にジョンが眠っていると思っている。
最初にこのセメタリーを訪れたときのことだ。暑い夏の昼間だったにもかかわら
ず、悪寒がして仕方がなかった。お墓を見つけるまで2時間以上かかったのだが、
そのあいだずっとブルブルとふるえていた。自分でもわけがわからず、なんなん
だこれは、もしかしてここで倒れてしまうんじゃないかと不安になったときに、
ふと、直感のようなものがあった。

――ああそうか、ジョンはここにいるのか…。

お墓にたどり着く頃には悪寒は止まり、セメタリーを離れる頃には、体温といっ
しょに現実感も戻ってきた。

ヨーコさんはジョンの埋葬場所を公表していない。ただ「イングランドのどこか」
とだけ言ったそうだ。
イングランドのどこか。それはどこなのかと考えれば考えるほど、ここしかない
んじゃないかという気がする。
もちろん確たる根拠や証拠は何もない。ただのひとりよがりな妄想にすぎないわ
けだけど…。

墓石のそばには、13年前と同じネコの置物が静かに佇んでいた。長年風雨にさら
されたせいだろう、最初に見たときよりもずっとちっちゃくなって、形もいくぶ
んぼやけてきている。
このネコはずっとここでお墓を守っているんだなあと思うと、抱きしめてよしよ
ししてあげたい気持ちになった。

(つづく)

≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo543.html ≫


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スカウス・ハウスは、リヴァプールへの語学留学をサポートしています。
公立のリヴァプール・コミュニティ・カレッジに加えて、今年より、私立の語学
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スカウス・ハウスには、リヴァプール留学に関する専門知識や経験を持つスタッ
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*** 原稿募集中 ******

NLWでは、読者のみなさんからの投稿を募集しています。
旅行記、レポート、研究、エッセイ、写真などなど、リヴァプール、あるいは英
国に関するものなら何でも歓迎です。
お気軽にお寄せください。楽しい作品をお待ちしています。


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