November 12 2013, No.568
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リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World  
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     *** http://scousehouse.net/ ***


□■ INDEX ■□

 ▽フロム・エディター
 ▼寄稿:「まさかのナショナルダービーへ!」(2)
 ▽「ポール・マッカートニー・イリュージョン」
 ▼スカウスハウス・ニュース
 ▽今週のフォト


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▽フロム・エディター
――――――――――――――――――――――――――――――――─ NLW □

ポール・マッカートニーのコンサートに行ってきました。
大阪ドームからまっすぐ(ビールも飲まずに!)帰って来てネコにごはんをあげ
てざっとシャワーを浴びて、いまこれを書いています。午前1時25分。

ポール、シビレるほどカッコよかったです。
最近の写真や映像を見て「ああ、ずいぶんと老けてしまったなあ、さすがになあ」
なんて思ってたんですけど、ライヴでのポールは実にイキイキとして若々しかっ
たです。「なあんだ、いつものポールじゃん!」でした。
しかも、ステージが進むにつれて、若々しさに磨きがかかって行ったのにはもっ
とびっくり。もし朝まで続けてたら、ビートルズのポールが観られたかもしれま
せん……というのは冗談ですが(あたりまえだ)、ポールって100%のエンターテ
イナーなんだなあと、あらためて感じ入った次第。「ポール・マッカートニーは
どこまで行ってもポール・マッカートニーなのだ」ということでしょうか。

「これが最後の来日だろう」「ポールにお別れを言いにコンサートに行きます」
という言葉を何人もの人から聞きましたが、いやいやなんのなんの、ポールの時
代はまだまだこれからです。1990年のソロ初来日以来のフィーヴァーぶりを見る
につけても、1985年の作品<Move Over Busker>の歌詞のように、ポール本人も
「My Time Has Come!」と思ってるかもしれません。

僕の席のとなりは、ちょっとワイルドな風貌のおじさんでした。
最初からハイテンションでノリノリに踊りまくるのはまあいいのですが、このヒ
ト、曲の演奏が始まる前にタイトルを絶叫するのです。
自慢じゃないけど僕はポールの最近のセット・リストなんでまるでチェックして
いません。「どんな曲が聴けるのかな?」という楽しみを胸に、ここに立ってい
るのです。意外なナンバーをいきなり披露されて、「おおっ! そう来たか! 
わお〜〜っ!!」と飛び跳ねたいのです。それが1曲目からことごとく台無しで
す。まわりの人たちもきっと迷惑していたはず。しばらく我慢したけど、ほっと
くと最後まで続けそうだったので、さすがに注意せずにはおれませんでした。
「ちょっとちょっと、タイトル言わんといてー!」
幸いにもそのおじさん、あっさり「ごめんごめん!」と言って、それ以降は黙っ
ていてくれました。やれやれです。
こういう人はきっとかなり珍しいとは思いますが、よい子のみなさん、くれぐれ
もマネはしないようにしてくださいね。

珍しいといえばこれも珍しいんじゃないでしょうか。このコンサート、写真撮影
は禁止ではありませんでした。
「フラッシュでの撮影は禁止」ということで、つまりはノンフラッシュならば
撮ってもいい、ということなのです。
これから行くみなさん、カメラを持って行きましょう。始まる前や後に、記念撮
影ができます。
演奏するカッコいいポールの写真ももちろん撮れますけど、たぶん「写真撮って
る場合じゃない!」ってことになると思います。目の前のコンサートが素晴らし
すぎて。僕はそうでした。
みなさんもぜひぜひ、目や耳や脳やハートや細胞のすみずみに、ポール・マッ
カートニーを受け止めて焼きつけてしみ込ませてくださいね。また会う日まで。
(今度は11年も待たせないでほしいですね!)

● ● ●

今日(日付けは昨日ですが)は、2003年のポールのリヴァプール公演観賞ツアー
に参加してくれた友人と一緒に大阪ドームに行きました。
思い出話をたくさんして、10年前のことがいろいろとよみがえってきて、とても
懐かしかったです。今日のコンサートもよかったけれど、2003年のポールもほん
とうに最高でした。とてつもなく。
このNLWに書いた僕のレポートを再録しますね。よかったら読んでみてください。

● ● ●

9月末よりスタートした《インターナショナル・ビートルウィーク》出場バンド
の募集は、10月末日を持って締め切りました。2014年フェスティヴァルの日本
代表ビートルズ・バンドは無事に決定しています。応募していただいたバンドの
みなさん、ありがとうございました。
どんなバンドがリヴァプールに行くのかは、来年にアナウンスします。どうぞお
楽しみに!

今年の日本代表バンド、The Clover、The Beatribes、Mizuwari、Strawberry
Fieldsのリヴァプールでの写真を、「今週のフォト」ページで紹介します。すべ
て《Beatles Convention》でのショットです。ぜひご覧ください。

 http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo568.htm

                         ― Kaz(12/11/2013)


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▼寄稿:「まさかのナショナルダービーへ!」(2)
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「まさかのナショナルダービーへ!」 / Anne


■第3話《観戦にホテルはどこが便利?》■

「次はホテルの予約しなきゃ!」
予約し慣れたエクスペディアのサイトを検索してみます。
「突然のことだし!」
「マンチェスターのことが何も分からない (→o←)」
マンチェスターピカデリー駅から調べてみることにします。
「確かオールドトラッフォードに行くのはトラムだよねえ!」
オールドトラッフォードに行くためのトラムの駅からホテルを決めるのもありで
すよね。

そんな風に悩んでいると、エリさんから「自宅に宿泊してください」とお誘い。
「嬉しい〜 (*^o^)」
それはとても心強いけれど、一か月間日本に帰省していた後なので遠慮させて頂
くことにしました。
「疲れてらっしゃるに違いないですよね!」
「ご自宅に戻ったらゆっくり休んで頂きたい!」
そこでマンチェスターに到着の朝だけお邪魔することをお願いしました。
「マンチェスターの空港に到着時間は朝の8時 (゜゜)」
ホテルのチェックインは午後2時です。
「午前中だけご自宅にお邪魔させて頂きまーす(´▽`;)」

そんな訳で、到着した日はリヴァプールに行くことが決まりました。
「それならアンフィールドの近くで暮らしているナホさんにも会いたい!」
リヴァプールでナホさんと一緒にランチ出来ないかメールをしてみることにしま
した。
「ランチしてマンチェスターに移動したらチェックインにちょうどいいよ
ね d(⌒o⌒)b」

「マンチェスターのホテルはやっぱり駅に近いホテルが便利よね!」
到着してからの行動から単純にそう思っていました。
もっと詳しく調べているとナショナルレイルのピカデリー駅が便利と言う訳では
ないみたいなんです。
「マンチェスターの交通の中心はトラムなんだあ (°.°;)...」
「便利に過ごしやすいのはトラムのピカデリーガーデンズ駅ってことね (゜O゜)」
しかも、ピカデリーガーデンズ駅からオールドトラッフォード行のトラムに乗れ
ます。

サッカー観戦を考えても、マンチェスター滞在に便利な場所はピカデリーガーデ
ンズ駅辺りのようです。
「この駅からはトラムは3ルート利用出来る!」
「リヴァプールでお馴染みのM&Sなど大きなスーパーが2軒も駅前に並んで
る o(^-^)o」
「隣駅には大きなショッピングセンターもあるのね!」
隣駅と言っても、トラムの駅だから地図で見るとすぐに歩けそうな距離です。
「わあ! 駅前のスーパーは24時間営業 (^_^)/」
マンチェスターで観光したいと思っていたカテドラルもピカデリーガーデンズ駅
辺りからなら徒歩でいけちゃうそうです。
マンチェスターの市街地はとても小さくて徒歩で移動が出来ちゃうことが分かっ
て来ました。
「コンパクトな街って嬉しいなあ!」
こうして調べた結果、リーズナブルで、しかもピカデリーガーデンズ駅前のホテ
ルの予約が出来ました。
「これは便利そうだねー (^_^)V」

「そうだ! マンチェスターのTakaさんに私の選択を確認してみよう!」
Takaさんもよく知っているホテルでした。
「シングルは一階になる可能性があるのね!」
「一階はホテルのパブの賑やかな音が遅くまで聞こえるんだあ (^。^;)」
これはリヴァプールでもパブのあるホテルはそうでした。
それを知ってからは少しの値段の差だったらダブルの部屋を予約しています。
「ダブルやツインの部屋を予約した方が部屋のある場所もいいんですよ!」
あまり値段の差が無かったらシングルではない方をお薦めです。


■第4話《トラムや鉄道の乗り方ってどうよ!》■

旅行前にはいつも公共の乗り物の乗り方やチケットの買い方も詳しく調べる私。
「英会話が出来ないからね!」
「現地の方に説明をして頂いても理解出来ないもの!」
そんなことで不安が多くて、いつものようにチケットの買い方や乗り方を検索し
まくります。
「マンチェスターってとても情報が少ない (;°°)!」
エリさんからは街を無料のバスが走っているとの情報を頂きました。
でも、暮らしている街ではないので公共の乗り物のことはあまり詳しくないよう
です。
「そうよね! エリさんは解らないことはその場で尋ねたらいいんだものね!」
「それが出来ない私が問題・・・」
今回は滞在期間が短いから必要な時、その場でチケットを購入するのが良いよう
に思いました。
「カードや回数券を買うのは無駄になりそう(−o−)」

リヴァプールでマンチェスター行きチケットはナホさんとランチ後です。
「だから心配ないよね!」
「まあ、駅名と片道って言えばチケットは買えるんですけど・・・」
「日本と変わらないのに、相変わらず大げさな私だ o(^。^")o」

マンチェスター・ピカデリー駅からピカデリーガーデンズ駅はトラムで一駅です。
「それならスーツケースもあるし、タクシーに乗っちゃおう!」
「問題はオールドトラッフォードに行く時のトラムのチケットだ!」
「試合当日は往復チケットを買うように書いてあったよ!」
観戦に行った方のブログを探すと、当日は往復のチケットを持っているようにと
書かれていました。
あまり情報が無いけれど、駅名がスタジアム名だから何とかなりそうですね!
「パリでも回数券を販売機で買えたし! 行き当たりばったりで大丈夫な気がし
てきた (^。^*)」

初めての頃は自動販売機でチケットを買うのも不安で仕方がなかった私でした。
色々な国で経験しているうちに何とかなりそうな気持にもなって来るものです。
「自動販売機の前にたったら、まず落ち着いて(* ̄0 ̄*)」
「英語表記を選択してください Ю―(^O^ )」
そうしたら「目的地」「往復か片道か」「大人」「枚数」を選んでタッチをして行
くんだよね。
「あれっ? 結局日本と同じだよね!」
「少しは身に付いてきているみたいだなあ ヾ(´▽`;)ゝ」


■第5話《フライトの座席に拘り過ぎ?》■

「今頃エリさんは日本でご家族とお正月を過ごしているんだろうなあ!」
日本ではお正月休みを過ごした次の日曜日は成人式で三連休。
冬休み後すぐの連休だから仕事のスケジュールはちょっとキツイですよね。
「お休みが多いって嬉しいけど、仕事の振り分けが大変だったりねー (;^_^A」
今年の冬休み明けは仕事のスケジュールをいつもより念入りに整理が必要です。
「ちゃんと出発が出来るようにしなきゃ!」

エリさんは日本に滞在中はネット環境が無いそうです。
「フライトの座席の予約は2人分とも私がすることになりました!」
「もちろん、お隣同士の席で過ごしたいですよね」
私のフライトは往路がエールフランスで復路はKLMオランダ航空です。
「往復が違う航空券をKLMオランダ航空のホームページで取りました!」
エリさんは航空券を旅行会社で取ったそうです。

「往路のエールフランスの座席の予約は30時間前からしか出来ない (?_?)」
エリさんからそう聞きました。
KLMオランダ航空は航空券を手配した時、一緒に席の予約も出来るから予約して
みることにします。
「復路のKLMの座席は予約出来たよ!」
「帰りが予約出来たのに、やっぱりエールフランスは出来ないの (>o<")?」

「何だか複雑でどうしたらいいのか迷う!」
私には初めての経験なので、頭の中を整理してみることにします。
「隣同士を取りたい!」
「でも、別々に購入した航空券だから1枚ずつ予約していくんだよね!」
「パリ旅行の時に書いた通りエールフランスとKLMオランダ航空は同じ会社!」
この2つの航空会社は違う国の航空会社のようですけど、同じ航空会社なんです。
「よし! KLMオランダ航空で私とエリさんの予約番号を入れてみよう!」
往復エールフランスのエリさんの予約もKLMのサイトで表示されました。
「でもやっぱりフライトがエールフランスだと30時間前まで予約出来ないん
だ (´。`;)」

「KLMオランダ航空のホームページでも、フライトがエールフランスだと30時間
前なのね!」
なぜそんなに予約に拘るのか不思議に思いますよね。
「30時間前って私は仕事中なんです!」
「夕方のまだ就業中の時間 (~へ~;)」
「だから取り忘れをしちゃうのが不安 (;-_-)」
諦めきれずにKLMオランダ航空のコールセンターに尋ねてみました。
やはりフライトがエールフランスだと、30時間以上前の予約は無理なようです。
「前日の夕方、仕事で慌ただしい中、忘れちゃわないようにしな
きゃ( ̄ο ̄)!」

フライト前日には仕事のスケジュールにインターネットチェックインを書き込ん
でおきました。
「忘れずにチェックインと座席の予約を完了!」
「お隣同士を取れたよ ( ^^)/\(^^ )」
「そうだ!」
チェックインしたチケットをエリさんに渡しておこうと気付きました。
「当日、もし私の体の調子が悪くなったら(゜ο゜)!」
「リムジンバスが事故等で成田への到着が遅れたら (゜□゜)?」
エリさんまで帰国のフライト便に搭乗出来なくなってしまったら大変です。
「前日に渡しておかなきゃ( ̄□ ̄;)!」

今回の旅行は冬休みと3連休の間が出発です。
「出発前に私もどうしても済ませておかなきゃならないことがある!」
フライト前日の夜、エリさんは新宿のライブハウスにいると聞いています。
ライブハウスではエリさんのためのライブパーティーが開かれるそうです。
「そうだ! そのライブハウスに行こう (^。^)b」
「エリさんにインターネットチェックインチケットを渡したら安心だよね!」

お店を訪ねてみると、スカウスハウスさんのお馴染みのお客様たちが一杯!
「初めてお会いする方ばかりだあ!」
エリさんにもお会い出来て無事にチケットも渡すことが出来ました!
「明日空港でねー (^。^)/」
次に済ませておかなければならない仕事の為にタクシーで移動です!
「ライブハウスで一緒にビートルズナンバー聞きたかったなあ (゜_゜;)」

初めての年明けの観戦旅行の決行です!
「この時期の出発の慌ただしさを体験出来たね!」
そうは言ってもフライトは夜なので、当日の朝は慌てる必要ないから安心です。
仕事も済ませた後、シルバ君のお店でゆっくり飲んでました。
「明日からマンチェスターに行ってくるからね ヽ(∇⌒ヽ)」

(つづく)


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▽「ポール・マッカートニー・イリュージョン」
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「ポール・マッカートニー・イリュージョン」 / Kaz

≪ http://scousehouse.net/beatles/maccatour.htm ≫ 

2003年6月1日、リヴァプールのキングズ・ドック、ポール・マッカートニーの
ホームカミング・コンサート。
午後8時すぎ、快晴の空はまだまだ明るいが、プレ・ショウが始まった。
日本公演で観たのと同じものだけど、間近で観るとやはり迫力があった。大勢の
パフォーマーたちが、ありとあらゆる奇抜な出で立ちとダンスで、摩訶不思議な
空間を作り上げる。僕の周りのリヴァパドリアンたちは、皆興味深そうに見守っ
ている。折り畳まれて箱詰めにされた少女が出てきた時には、やはりものすごく
驚いていた。

日本で観た時、このプレ・ショウは、我々の住むこの世界の多様性を表現してい
るのだな、と思った。異なった民族や文明同士の衝突と、それらが融合し調和す
る様子を描いていて、つまりそこにメッセージが込められているのだな、と。
しかし今は、プレ・ショウが進むにつれて、なんだかそういうのとはちょっと違
うような気がしてきた。
これは、イリュージョンを表現したものではないだろうか。いや、イリュージョ
ンの予告編と言うべきだろうか。我々はこれから、幻想の世界へと連れて行かれ
ようとしているのだ。

予告版イリュージョンの盛り上がりがピークに達した瞬間に、本物のイリュー
ジョンが始まった。
ポール・マッカートニーという世界で最も愛されるポップ・アイコンと、3万
5000人のエキサイティングな群集が紡ぎだす、壮大なイリュージョンだ。
しかしその中心にいるポールは、とてもリラックスしていて、とても楽しそうで、
そしてとても饒舌だった。

「ハロー、リヴァプール。ホームに戻って来れて嬉しいよ」
「本当にここは特別だ。俺たち、モスクワとかローマとかでも演って来たけど、
でもやっぱりここだ、リヴァプールだぜ!」
「みんな、楽しんでる? リヴァプールの外から来てくれてる人もたくさんいる
よね、ちゃんとわかってるって。今マージー河のそばにいるみんなひとりひとり
に、アイ・ラヴ・ユーって言いたいな」
「オーケー、まあ落ち着いて、落ち着いて。ゆっくりやるからさ」
「おいおい、ちょっと待ってくれる? メッセージを書いたボードをいっぱい掲
げてくれるのは嬉しいんだけどさ、でも考えてみてよ。こっちは一生懸命コード
や歌詞を考えながら歌ってるんだぞ。ひとつひとつ読んで応える余裕なんてない
んだって。どれ、ナニナニ、何て書いてあるのかな、なんてやってたら、歌がム
チャクチャになってしまうよ。こんなふうにさ…(即興で歌う)」
「もうすぐキャピタル・オブ・カルチャーが決まるね。でもさ、リヴァプールは
キャピタル・オブ・ユニヴァースだよな!」

ポールは、リヴァプールの思い出についてもたくさん語った。
「ガンビア・テラスのことを思い出すなあ。あそこにはジョンとスチュが住んで
いて、僕もよく遊びに行ったよ。レコード・プレイヤーが置いてあってね、2日
酔いのへろへろ状態でスイッチを入れるとさ、こんな音楽が鳴り出したもんさ…」
間髪入れず、ポールのシャウトが炸裂した。僕の耳たぶもハートも、ビリビリと
震えた。
“Weeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeell, Come into this house, Stop
all the Yackey yak !! ...”

もちろん、リヴァプールのオーディエンスも全然負けていない。
拍手や歓声や手拍子だけでなく、曲の合間にフットボール式のチャントが幾度と
なく自然発生するのだ。
“Football's Coming Home” の替え歌で、“Macca's Coming Home” がものすご
いヴォリュームで歌われる。まるでフットボール・スタジアムにいるような気分
だ。

青空から夕暮れ、そして夜の闇へと、徐々に色を変化させていく空もまた、この
イリュージョンに参加しているようだった。
面白かったのは、ポールが「ロンリー・ロード」歌っている時だった。ずっと快
晴だった空が、突然曇り始めたのだ。そして曲が終わる頃には、ポツリポツリと
雨まで落ちてきた。
北中米や日本では、この曲の後に来るのは「ドライヴィング・レイン」だった。
ということは、もしかするとリヴァプールの空はステージの演出を考えてわざわ
ざ雨を降らせたのかもしれないなあ、すごいなあ、と勝手に感心する僕。
しかし今年のヨーロッパ公演からは、「ドライヴィング・レイン」は確かカット
されているはずだ。案の定ポールは、さっさと「ユア・ラヴィング・フレイム」
を歌いだしてしまった。
「あれ? なんだよお、せっかく苦労して雨雲を用意したのによお」という声が
空から聴こえたような気がして、しゅるしゅるしゅると雨はあがって行った。
僕はひとりでクスクスと笑った。

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故郷リヴァプールでのコンサートといっても、ポールも観衆も特別に感傷的にな
るわけではなく、ハッピー・モードで演奏が進んで行く。みんな、まるでホーム
パーティーのようにリラックスしている。

アコースティック・ギターを抱えたポールを残して、バンドがステージを降りた。
ここからは、ポールと我々だけの時間だ。まるでポールと一対一で向かい合って
いるような、親密な空気が流れる。
ジョンに捧げる歌「ヒア・トゥデイ」が、そして、ギターをウクレレに持ち替え
てジョージの曲「サムシング」が歌われる。
ポールの顔は、今にも泣き出しそうだ。
ポールも我々も今、それぞれの心の中にいるジョンやジョージを想っているのだ。
あるいは、生きることのはかなさ、切なさ、そして美しさに思いを巡らせている。
涙をこらえながら何とか最後まで歌いきったポールが、いつものようにおどけた
ヴァージョンの「サムシング」を披露した。会場に笑いと安堵のため息がもれる。

さらに続けて、「リンゴには何もないの、って言うんだろう? ちゃんとあるよ」
とポールが言って、「イエロー・サブマリン」が始まった。いつの間に揃ったの
だろう、バンドでの演奏だった。
チヴァッセ・パークに置いてある「イエロー・サブマリン」(本物の潜水艦だ)
がスクリーンに大写しになると、大喝采が起こった。
ショート・ヴァージョンだったけれど、効果は充分だった。これでハッピー・
モードが完全に戻って来た。

ポールは、このリヴァプールだけで特別に披露する「サプライズ・ソング」を約
束していた。
コンサートに足を運んだ誰もが、どの曲かとあれこれ思いを巡らせていたことだ
ろう。でも、おそらく予想できた人はほとんどいなかったのではないだろうか。
リヴァプールのトラディショナル・ソング、「マギー・メイ」だったのだ。意表
をつかれたけれど、なるほどこの手があったかと感心する。
バックの巨大なスクリーンに、リヴァプールの名所やポールゆかりの地の写真が
次々に映し出される。これが大いに受けた。写真が替わるたびに大歓声が上がる。
みんなポールそっちのけで勝手に盛り上がっている。お馴染みの風景ばかりなの
に、いや、だからこそなのか、後から考えると自分でも不思議なくらいに僕も興
奮してしまった。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

コンサートの中盤では、数曲毎にバンド・メンバーがひとりずつ自己紹介をする。
エイブは景気付けの雄叫びを上げ、ラスティはいつものようにオーディエンスの
写真を撮り、ウィックスはダブリンで買って来た巨大なギネス・ハットを被り、
ブライアンは照れながらリヴァプールにお礼を言う。
最後のブライアンが喋っている時、あの大きなエイブがドラム・セットに座った
まま泣き崩れているのが見えた。ブライアンもポールも気がついていない。横の
ウィックスが立ち上がってそっと歩み寄り、エイブを抱きかかえる。エイブはそ
のまま、ブライアンの話が終わるまでウィックスの胸で泣き続けた。とても、と
てもいいシーンだった。

コンサートは、クライマックスの連続だった。いや、最初から最後までクライ
マックスだったような感じもする。

「バンド・オン・ザ・ラン」には、カッコいいイントロがついていた。
「バック・イン・ザ・USSR」では、全員がシャウトした。
「メイビー・アイム・アメイズド」でのポールは、やはりアメイジングだった。
「レット・エム・イン」では、マッカートニー・ファミリーの名前が歌われた。
「バースディ」では、後のおばちゃんが僕の両肩を掴んで思い切り揺さ振りなが
ら、「今日はあたしのバースディなの!!」と叫んだ。
「ヘイ・ジュード」では、曲が終わってもオーディエンスの歌は延々と続いた。
アンコールの「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」あたりになると、僕
はもうボーっとなっていた。

2回目のアンコールでポールは、「アイ・ロスト・マイ・リトル・ガール」を
歌った。
これも「サプライズ」のひとつになるだろう。ポールが少年時代に初めて作った
曲だ。
10年前のワールド・ツアーでセット・リストに入っていた曲だが、その時はリ
ヴァプールでのコンサートは行われなかった。
原点とも言える曲だからやっぱりリヴァプールで歌っておきたかったのかな、と
思った瞬間、別の考えが浮かんだ。
ポールは今、お母さんに向けて歌っているのではないのだろうか、ということだ。
14歳で母を亡くしたポールは、ギターを手に入れ、悲しさを紛らわすように音楽
に没頭するようになったという。そして出来た曲が、この歌なのだ。
ちょうどこの日の午前中に、ポールが少年時代を過ごしたフォースリン・ロード
の家を見学した。
40年以上前、あの狭い自分の部屋で一生懸命ギターを練習するポールの姿を想像
した。
「リトル・ガール」は、お母さんのことなのかもしれないな、と思う。

歓喜の渦と大きな花火とともに、コンサートは終わった。

コンサートの翌日、ロンドンのパブで呑んでいる時に出た話だ。
ポールはもうすぐ61で、でもあんなに元気だし声もすごく良く出るし、3時間
近くも何万人ものファンを熱狂させるコンサートを世界中を回ってやっている。
特に昨日のリヴァプールはものすごいコンサートだった。信じられない、これは
いったいどういうことなのだろう、という疑問がみんなの口から出て、ああでも
ないこうでもないと、その場は盛り上がった。

確かに、とても人間業とは思えない。
いや、あのステージの上のポールを、我々と同じ人間だと思ってはいけないのだ、
たぶん。
あれは、イリュージョンなのだ。
ポール本人に、ファンタスティックなポップ・ソングと、我々ファンの巨大な思
い入れを投影して創り出された、イリュージョンなのだ。
そして今回はもうひとつ、リヴァプールというマジカルなファクターが加わって
いたわけだから、もうほとんど奇跡と言っていいようなコンサートだったのかも
しれない。

ん? 奇跡? 
奇跡かあ…ポールに大笑いされてしまいそうだな、こんなこと言ってると。

≪ http://scousehouse.net/beatles/maccatour.htm ≫ 

    <NLW No.105(2003年6月24日発行), 107(2003年7月8日発行),
                   108(2003年7月15日発行)に掲載>


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▼スカウスハウス・ニュース
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*** スカウスハウス通販 ******

ウェブサイトの「英国盤レコード」通販ページに、新入荷アイテムを追加掲載し
ました(…といっても4枚だけなんですけど)。オーダーをいただけるとうれし
いです!
http://scousehouse.net/shop/records2013.html


***  PLAY AT THE CAVERN! ******

ウェブサイトに新ページ「for ビートルズ・バンド - PLAY AT THE CAVERN!」を
アップしました。
「リヴァプールのキャヴァーン・クラブで演奏する」というビートルズ・コピー
バンドの夢を、スカウス・ハウスがサポートします!
http://scousehouse.net/beatles/playatthecavern.html


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スカウスハウスでは、リヴァプールFCおよびエヴァトンFCのホームゲーム観戦
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クなフットボール・ファンはもちろん、初心者の方も大歓迎です。ぜひご利用く
ださい!
http://scousehouse.net/football/stadium2013-14.html 


*** 「カスバクラブ・ツアー」スタートです! ******

「ガイドツアー/リヴァプール」のラインナップに、新しくカスバクラブ・ツ
アーが加わりました。カスバはビートルズがクォリーメン時代から演奏していた
伝説のクラブです。今現在もほとんど当時のままの状態で、まるで50年前にタ
イムスリップしたよう。若き日のジョンやポールやジョージがふと顔を出しそう
な空気があります。
http://scousehouse.net/beatles/guide_liverpool.htm


*** リヴァプール語学留学 ******

スカウス・ハウスは、リヴァプールへの語学留学をサポートしています。
公立のリヴァプール・コミュニティ・カレッジに加えて、今年より、私立の語学
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長期でじっくり学べる学生の方にはコミュニティ・カレッジを、まとまった期間
を留学に充てられない社会人の方にはLILAをおすすめします。
スカウス・ハウスには、リヴァプール留学に関する専門知識や経験を持つスタッ
フが、日本とリヴァプールの両方に常駐しています。入学前はもちろん、入学後
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リヴァプール&ロンドンのビートルズゆかりの地を訪ねるガイドツアーをアレン
ジしています。ツアーの詳細は、ウェブサイトの「ガイドツアー」ページをご覧
ください。
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*** 原稿募集中 ******

NLWでは、読者のみなさんからの投稿を募集しています。
旅行記、レポート、研究、エッセイ、写真などなど、リヴァプール、あるいは英
国に関するものなら何でも歓迎です。
お気軽にお寄せください。楽しい作品をお待ちしています。


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▽今週のフォト
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*** 今週のフォト・アルバム ******

今年の《International Beatleweek》での日本代表バンドの写真を掲載しています。
http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo568.html


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