November 18 2014, No.597
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リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World  
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     *** http://scousehouse.net/ ***


□■ INDEX ■□

 ▽フロム・エディター
 ▼寄稿:「クリスマスはリヴァプールで!」(7)
 ▽「1000枚のホワイト・アルバム」
 ▼NLW通販
 ▽スカウスハウス・ニュース
 ▼今週のフォト


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▽フロム・エディター
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NLW No.597です。

まず、Anneさんファンのみなさん、お待たせしました。「クリスマスはリヴァ
プールで!」が、連載第7回にしてついにイギリス入国です(でもまだ目的地の
リヴァプールには着いてないんですけどね…)。
今週より、あわせてAnneさん撮影の写真もご覧いただけます。
 http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo597.html

● ● ●

僕も原稿を書きました。
夏のリヴァプールで観たエキシビション《We Buy White Albums》のレヴューで
す。
「ホワイト・アルバム」はみなさんご存じかと思います。真っ白なジャケットの
ビートルズのアルバムですね。
1968年、世の中サイケだとかフラワーだとかのムーヴメントの真っただ中、サ
ブカルチャーのリーダー的存在だったビートルズが、ミニマリズムの極致ともい
える「真っ白け」でニュー・アルバムを飾ったことは、衝撃的な出来事だったこ
とでしょう。
ホワイト・アルバムのファースト・プレス盤を対象としたこのエキシビションも、
僕にとって衝撃的な体験でした。
うまく表現できたかどうかはわかりませんが、今日の半分くらいを費やして、レ
ヴューを書いてみました(ああ疲れた…)。ぜひ読んでみてください。

あ、原稿の中で紹介している「100枚のホワイトアルバムのジャケットとサウン
ドがひとつにまとめられた」アート作品(レコード)なんですが、会場で2セッ
トだけ購入しました。ひとつは自分用で、もうひとつはこのNLWの読者のみなさ
んのために。もしも「欲しい!」というかたがいらっしゃいましたら、ひさしぶ
りの本誌「NLW通販」コーナー(メール配信版のみで紹介)をご覧のうえ、オー
ダーをお願いいたします。おすすめですよ!

● ● ●

スカウスハウスのウェブサイトで、下村えりさんのエッセイ『Footballの旅』
を更新しました。
このNLW連載シリーズのウェブ版です。Vol.13でずっと止まっておりましたが、
今回Vol.14〜Vol.32を一気にアップ。現時点での完全版です。ぜひゆっくりと
ご覧になってみてください。
 http://scousehouse.net/football/eri_01.htm 

● ● ●

【Beatleweek 2015バンド・エントリー:最終募集です!】
スカウス・ハウスでは、2015年のインターナショナル・ビートルウィークに、日
本代表として出場するビートルズ・トリビュート・バンドを募集しています。
出場を希望されるバンドは、こちらまでお問い合わせください(件名は「BW15バ
ンドエントリー希望」とし、メール本文には、バンド名と簡単なプロフィール、
代表者のお名前・住所・電話番号・PCメールアドレスをご記入ください)。
お問い合わせをいただいてから24時間以内に、Eメールで募集要項を添付送信
いたします(募集要項をご検討のうえ、あらためてお申込みいただきます)。
※募集締め切りは11月19日(水)です…って、明日ですけど、お早めに!

                         ― Kaz(18/11/2014)


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▼寄稿:「クリスマスはリヴァプールで!」(7)
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「クリスマスはリヴァプールで!」 / Anne

≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo597.html ≫

■第13話《パリシャルルドゴール空港が苦手な2つの理由》■

いよいよ搭乗しました!
機内はいつもの旅よりかなり混んでいます。
「チェックインカウンターでも感じたよね(^。^)」
「いつもは3人席で私が最初に通路側を予約します!」
次に窓側が埋まるから、横の中央席はたいてい空席です。
今回は周りを見ても中央席も殆ど埋まっていました。
「離陸したからもうすぐ食事ね(*^.^*)」
「エールフランスの楽しみはやっぱりシャンパン(⌒^⌒)b」
迷わずシャンパンを頂いて、食事には赤ワインを頂きます!
「お腹も満足(*^¬^*)」
「さあ眠りましょ(-.-)Zzz...」

エールフランスでのフライトもいつものように過ごしてパリに到着しました!
「さあ、ここからが緊張だよー(`´)」
降りた直後はまだ日本語の案内があります・
「乗り継ぎの搭乗口を電光掲示板で確認ね!」
初めてバルセロナに行った時は、この掲示板をゆっくり確認する余裕もありませ
んでした!
「あの時は凄い早歩きで同じ便の人に付いていったよね(^。^;)」
「どこを移動中かなんて全く分からないまま歩いていたし(´▽`;)」

電光掲示板でマンチェスター行きを探します。
「見つけました!」
「確かに5Eなんだけど・・・」
「搭乗口の番号が凄く大きな数字ってのが嫌な予感(^^;)」
番号に従ってまずは下の階に下がって行きます!
「30、31、32・・・」
搭乗口の番号が大きいからかどんどん先の方に歩かされます。
「マンチェスター行きって60番台だもん(゜_゜;)」
「他の5Eの搭乗口はあるのに・・・」
「また階段を降りるの?」
「ガーン('〇';)」

階段の下では多くの人が何かを待っているようです!
「何だか駅のホームみたい(゜_゜;)」
表示を見ると鉄道のような乗り物の表示!
「まさかのサテライト(゜O゜;)」
「シャトルトレインで移動ってこと(°◇、°)?」
前回のEriさんと一緒の時には歩きだけでした!
「あの時は夜中だったからシャトルトレインは動いてなかったの?」
しかもこのシャトルトレインって駅が1つじゃないみたいなんです。
「私って間違いなく搭乗口の番号をたどってきたよね(゜□゜)」
乗る前に急に不安になって来ました。
「だってサテライトまで行ってから間違いに気づいたら乗り遅れるかも・・・」
「いや、絶対ちゃんと確認しながら来たはず(-_-;)」

そこに地下鉄のようなシャトルトレインがホームに入って来ました。
「英語とフランス語の案内だ!」
「なんていってるの(/゜ο゜)?」
表示を見ると次で降りるようです。
「でも自信ない(×_×;)」
何とか搭乗口の番号に到着出来ました!
「これだからパリシャルルドゴール空港の乗り継ぎって嫌い\(>_<)/」

「マンチェスター行きの搭乗が始まりました!」
機内に乗り込んで乗務員の方に「入国カード」をお願いします。
KLMではイングランド行きに搭乗する時に、パスポートとチケットを見せると入
国カードが必要か尋ねられます。
「ちゃんとカウンターに用意されているんだよね( ^^)ρ」
いつも搭乗のときに入国カードを貰うことが出来ていました。
ほかの人の搭乗を待ってる間に、ゆっくり落ち着いて記入が出来るんです!
「これはとても助かっちゃいます(*^o^*)」

でもエールフランスはそこまでのサービスはないみたい・・・
前回のエールフランスではマンチェスターでの記入は大変だからと、Eriさんが
スタッフの方に尋ねてくださいました。
「尋ねてからかなり待たされたんだよね( `.'X)」
乗務員の方にもう一度お願いして、やっとのことで入国カードを頂いて機内で記
入が出来ました。

今回の乗務員の方はすぐに入国カードのことを調べに行ってくださいましたよ。
「良かった! この方は優しいわあ( ^o^)」
・・・と思ったら・・・
「入国カードは到着してからなの(゜o゜;?」
機内にはないから、マンチェスターに到着してから入国時に記入するようにと
言っているようです。
とても済まなそうな表情をしてくれたんだけどね(-_-)
「着いたらすぐ鉄道駅に移動だから先に書いておきたかったのに・・・」
「やっぱりKLMの方が親切だ!」
「2つの理由は理解して頂けましたか?」
「シャンパンは嬉しいんだけどなあ(^◇^;)」


■第14話《あんなに調べたマンチェスターピカデリーの乗り換えは?》■

マンチェスター空港に到着しました!
多くのイングランドの人達が入国を済ませているのにせっせと入国カードを記入
してる私です!
「だから前もって渡して欲しいのに(;O;)」
「スペルを確認しながらだから手間が掛るんだよね(x_x;)」
入国はとても簡単に終わって荷物を受け取りに行きます!
「随分遅くなっちゃった!」
「あれっ( ^o^)?」
「何だかみんなボーっとしてるよ!」
荷物が出て来るのにかなり時間が掛っているようです!
「・・・遅い(^。^;)」
「なんでこんなに遅いの?」
「やっと出て来た〜!」
喜ぶのもつかの間。
ずっと同じスーツケースだけが回り続けています。
「また同じスーツケースだ(>。<)」
「いつもよりかなり待たされているよね!」

スーツケースもやっと受け取ってこれからが長い移動の始まりです。
「まずはビールを買ってからね( ̄ο ̄)」
リヴァプール到着は21時過ぎになるので、ここで水とサンドウィッチを買いま
す!
「そして温くなっちゃうのを覚悟でビールもね(*^.^*)」

スカウスハウスさんやTakaさんからのメールを思い出しながら慎重に歩きます!
「station・・・station・・・」
駅を目指して歩くと外に出る表示がありました!
「屋外を暫く歩くって聞いていた通りだ(゜゜)」
「何だか渡り廊下を歩いている感じ!」
「夜だからかあまり人が歩いていなくて寂しいなあ・・・」

再び建物内に入るとちょっと殺風景な場所です。
「エレベーターは・・・(。。)(゜゜)?」
表示に沿っていると数人の方が何かを待っているようでした。
「この人達も駅に行くのかなあ!」
「それならついて行ったらいいよねー(^-^)」
エレベーターに乗ってstationと書かれた階を見ると押されてなくてガッカリ!
「みんな他の階で降りちゃうのね( --)」

エレベーターを降りて表示通りに歩き始めると、やっと空港の建物内って感じの
明るい通路になって来ました。
「行き交う人も多くなって来たね!」
「他のターミナルからも集まって来ているからかな(^_^)」
「駅に向かう人たちも結構多いみたい!」

鉄道駅のチケット売り場にたどり着くと、自動販売機らしいものが並んでいます。
「でも販売機で買っている人っていない(。_゜)」
殆どの人が窓口に並んでいるので私も取りあえず列の一番後ろに並ぶことにしよ
う!
「相変わらずのんびりだなあ・・・」
列は長くなってきているけれど、窓口は1つしか開いていないんです。
しかも女性が長い時間何か相談を始めちゃっています!
「ダメダメ(*_*) ここでイライラするのは日本人丸出し〜(-.-")」
「日本で暮らしている時はこういう待ち時間って少ないからつい(;^_^A」
ヨーロッパに来るとこんな風にのんびりな雰囲気だったりすることも多いです!
「時間に余裕のある列車を想定しておきましょうね(^.^)b」

暫くしてやっと私の順番が来ました!
「リヴァプールライムストリート駅、片道で!」
クレジットカードで簡単に買うことが出来ました。
チケットを受け取る時に駅員のおじさんは何か私に言いました!
『○×△□・・・ピカデリー・・・○×△□』
「いま確かにピカデリーって聞こえたよ(°o°)ゝ」
私が想定していた通り、20:09発の電車で移動することになったんです。
「マンチェスターピカデリーの乗り換えを教えてくれたみたい!」
「もり出発前に詳しく調べなかったら(^^;)?」
「ホームページ通りマンチェスターオックスフォードって思っているよね!」
「これで駅員さんからはマンチェスターピカデリーって駅名が聞こえて来たら?」
「(゜ο°;)???」
きっと私はどうしていいか分からなくなっちゃっていただろうと思います。
「調べて来ていて本当に良かったo(^。^")o」

(つづく)

≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo597.html ≫ 


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▽「1000枚のホワイト・アルバム」
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「1000枚のホワイト・アルバム」 / Kaz

≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo597.html ≫

今年(2014年)8月の《インターナショナル・ビートルウィーク》の期間中、リ
ヴァプールのメディア・アート・センター<FACT>で、興味深いエキシビションが
開催されていた。
タイトルは《We Buy White Albums》。アメリカのアーティスト、ラザフォード・
チャンによるもので、彼が集めた1000コピー以上ものホワイト・アルバムの
ファースト・プレスが展示されているのだそうだ。

「ホワイト・アルバム」というのは、説明するまでもないだろうけど、ビートル
ズが1968年11月にリリースした2枚組のアルバム『The Beatles』のことだ。
バンド名がタイトルだったこと、ジャケットが「真っ白け」だったことから、
「ホワイト・アルバム」と呼ぶのが一般的になった。大作であり力作だけど、名
作とか傑作という言葉はあまり似合わないと個人的には思っている。タイトルが
示すとおり、ビートルズのありのまま、カッコつけない生々しい姿が真空パック
されているように感じるからだ。でももちろん、ひとつひとつの楽曲のクォリ
ティはおそろしく高い。

FACTの回転扉をくぐったのは、8月25日の月曜日(バンク・ホリディ・マン
ディ)、午前11時。
「ここは南半球かよ」とツッコミをいれたくなるほどの冬並みの寒気に、小雨ま
で降っていた。防寒具はおろかカサさえ持ってなかった僕は、文字通りふるえな
がらスタッフの兄ちゃんに尋ねた。
「ええと、<We Buy White Albums>を観に来たんだけど…」
「ああ、もうちょっと待ってね。もうすぐカギ開けるから」

5分くらいして、鍵を持ったスタッフが来て、さっきの兄ちゃん(アッシュくん
という名前だ)と3人で外へ出る。FACTの中ではなく、横にあるガレージス
ペースのようなところが会場なのだった。
シャッターをガラガラと上げると、その後ろには大きな透明のビニールカーテン
の壁があった。ノレン式になっていて、アッシュくんがそれをひょいと分けて中
に入り、照明のスイッチを入れた。

「うわ!」
思わず声がでた。
なんだこれは、ホワイト・アルバムだらけじゃないか!

「1000コピー以上のホワイト・アルバム」なんだからそれであたり前なんだろう
けど、壁一面にびっしり並んでこっちを向いている軍団を目の当たりにすると
やっぱり驚いてしまう。
アッシュくんに訊いた。
「すごいねこれ。ぜんぶホワイトアルバム?」
「そうだよ」
「むっちゃ面白い。よくこんなの考えたよね」
「ほんとに。クレバーだよね」
「何枚ある?」
「もともと914枚で、ここで始まった15日から昨日までに13枚増えた。だから
今は927枚だな」
「まだ増やしてるんだ」
「そう。だってWe Buy White Albumsだからね」
「なるほど」

真白いレコードラック、というか段ボール箱に入れられた「ホワイト・アルバム」
をぱらぱらとめくってみた。
ホワイト・アルバムの特徴として、1枚1枚、表ジャケットにシリアル・ナン
バーが振ってある。段ボール箱には、その番号順におおまかに整理して並べてあ
る。
見たところほとんどがアメリカ盤だ。アメリカのアーティストが、アメリカを
ベースにしてやっているのだから当然といえば当然か。30〜40枚に1枚くらい、
ほかの国のエディションが混じっている。懐かしい日本盤もあった。
日本や英国では、70年代や80年代のプレスでもシリアルナンバーがつけられて
いた。しかしアメリカでは初期のプレスだけで、すぐにナンバーレスになったよ
うだ。なので、「ナンバーつき=ファースト・プレス」とみなすことができるの
だろう。なるほど。

あらためて感じるのは、時間の経過である。
ここに並んでいるホワイト・アルバムで、きれいにホワイトなものは1枚もない。
みんな「クリーム・アルバム」や「ブラウン・アルバム」である。何かをこぼし
た跡や、補修テープが貼られているものも多い。
45年くらい前のものなのだから当然なのだけど、それはつまり、1つとして同じ
ものがないということだ。1枚1枚それぞれに歴史があり、それが個性になって
いるのだ。

変色よりもっと面白いのが、持ち主たちによる「書き込み」である。レコード・
ジャケットにいろいろなものが書き込まれているのだ。
アッシュくんがあちこちの箱をめくって、「これはどう?」「こんなものあるよ」
と次から次へと見せてくれた。

名前や住所が書いてあるのはまだカワイイほうで、意味不明の記号がついている
もの、イラストが書いてあるもの、アートっぽい絵が書いてあるもの、雑誌か何
かのビートルズの切り抜きを貼りつけてあるものなど、もうやりたい放題である。
プレゼントの品なのだろう、相手へのメッセージがえんえんと書いてあるものも
ある。

このジャケットに何かを書こうなんて、僕自身はただの一度も考えたことがない
ので、なんだか面喰ってしまった。
いやあ、みんなやるもんだなあ。なにしろ真っ白なんだからそこにペンがあれば
好きなものを書き放題だよね…なわけないだろう! これは落書き帳じゃなくて
ビートルズのアルバムなんだぞ!

でも眺めているだけでけっこう…いやかなり楽しめる。なんにも書かれてないと
つまらなく思えてしまうくらいだ。そうかホワイト・アルバムにはこういう使い
方もあったんだなあとしみじみ納得…していいのか? 

考えてみると、こういう味わい方ができるのは、ホワイト・アルバムだからこそ
なのだなあ。
真っ白だからこそ、変色やシミや汚れや書き込みといった変化を、歴史をそこに
読み取ることができる。もっと想像をふくらませてみれば、60年代の空気や生
活の匂い、持ち主の肌のぬくもりや思い出、あるいはタマシイなんかも入ってい
るような気がする。そう、ここに集められたホワイト・アルバムのひとつひとつ
が、それぞれ固有の物語を持っているのだ。

カウンターテーブルの上に、レコード・プレイヤーがあるのに気がついた。すぐ
そばにアヴァンギャルドなデザインのレコード・ジャケットが立ててある。
アッシュくんに尋ねた。
「これは?」
「ああ、ここにあるホワイト・アルバムだよ。ぜんぶじゃないけど、100枚かな、
それをひとつにトレースしてある」
「ん?」
「んーとたとえば、あの壁のカラフルなやつ。フラワーっぽいの。あれはほら、
ここに写ってるだろ。そのほかの文字やらなんやらも、ぜんぶここにあるアルバ
ムのものなんだ」
「え? 100枚のホワイトアルバムのジャケットをひとつにまとめちゃったわ
け?」
「そうそう」
「ひゃあ〜」

ターンテーブルにはレコードが載っている。レーベルはビートルズのアップル
マーク…なんだけど、ちょっとヘンだ。
「このレコードは?」
「これも同じだよ。100個ぶんがここに入ってる」
「ひゃあ〜。100個のアップルかあ」
「サウンドもそうだよ」
「え?」
「100枚分のサウンドが入ってる。レコードに」
「!!??」

ホワイト・アルバム100枚分の音が、ひとつの溝に刻まれている?
これを再生すると、使い古された100枚のホワイト・アルバムをいっぺんに鳴ら
したサウンドを聴くことができる、ということなのか?
「き、聴かせてもらえる?」
「もちろん」

アッシュくんがレコードに針を落とす。
ブチッ、サササーーー。
100枚分のサーフェス・ノイズの向うから風に舞うようなピアノのイントロが聴
こえてくる。「マーサ・マイ・ディア」だ。
続いて歌われるポールのヴォーカルもどこかつかみどころのないような浮遊感。
まるでアンビエント・ミュージックである。へえぇ、面白い。

さらに面白いことに、トラックが進むにつれてサウンドにずれが出てきて、その
せいで深い深いエコーがかかって行った。ノイズはそれ以上に増幅されているの
で、ビートルズの歌や演奏は耳鳴りのように響く。嵐の中で龍がのたうち回りな
がら唸り声をあげているようでもある…って、なんだそりゃ。
アンビエント・ミュージックがいつのまにかノイズ・ミュージックになってし
まった。幻聴感がいっぱい。ううんこれは、なんだかトリップしたような気分。

「これ、むちゃくちゃ面白いね!」
「気に行った?」
「もちろん」
「そりゃよかった」
「これって売ってるの?」
「もちろん」
「これって、アートだね。まさに」
「うん、そうだな。このアーティストに会わせてあげられたらいいんだけどね。
2日前のイヴェントだったら会えたんだけど」

そうか土曜日か…。でもその日は朝からバスツアーをやって、昼からは日本のバ
ンドのステージが6本もあった。とてもじゃないがここに来る時間なんてとれな
かった。ほかの日も似たようなもので、今日やっと観に来ることができたのだ。
ラザフォード・チャンに会ってみたかったな…。
でも、ちゃんとこのエキシビションを観られただけでもよしとしよう。

100通りの物語をひとつに収めたアート作品を2セット買って、アッシュくんに
さよならを言った。
ビニールカーテンを開けて外へ出る前に、もういちど壁のホワイト・アルバムた
ちを眺めてみる。
なんだかさっきと様子が違う。みんな生きて呼吸をしているみたいだ。おや、
こっちを見て笑っている者もいる…なわけないか。

悪天候のせいで、真昼だというのに薄暗いボールド・ストリートを歩く。耳の奥
では、さっきの不思議なサウンドがこだまのように鳴り続いていた。

≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo597.html ≫


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スカウスハウスでは、2014-2015シーズンも、リヴァプールFCおよびエヴァト
ンFCのホームゲーム観戦チケットの手配を承ります。
また、スタジアムツアーや練習場見学をアレンジする「フットボール・ツアー」
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です。ぜひご利用ください!
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ウェブサイトに新ページ「for ビートルズ・バンド - PLAY AT THE CAVERN!」を
アップしました。
「リヴァプールのキャヴァーン・クラブで演奏する」というビートルズ・コピー
バンドの夢を、スカウス・ハウスがサポートします!
 http://scousehouse.net/beatles/playatthecavern.html


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「ガイドツアー/リヴァプール」のラインナップに、新しくカスバクラブ・ツ
アーが加わりました。カスバはビートルズがクォリーメン時代から演奏していた
伝説のクラブです。今現在もほとんど当時のままの状態で、まるで50年前にタ
イムスリップしたよう。若き日のジョンやポールやジョージがふと顔を出しそう
な空気があります。
 http://scousehouse.net/beatles/guide_liverpool.htm


*** ビートルズ・ガイドツアー ******

リヴァプール&ロンドンのビートルズゆかりの地を訪ねるガイドツアーをアレン
ジしています。ロンドンには「ポールゆかりのレストランでランチ」という新企
画も登場。ツアーの詳細は、ウェブサイトの「ガイドツアー」ページをご覧くだ
さい。
 http://scousehouse.net/beatles/guide_liverpool.htm
 http://scousehouse.net/beatles/guide_london.htm


*** 原稿募集中 ******

NLWでは、読者のみなさんからの投稿を募集しています。
旅行記、レポート、研究、エッセイ、写真などなど、リヴァプール、あるいは英
国に関するものなら何でも歓迎です。
お気軽にお寄せください。楽しい作品をお待ちしています。


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「今週のフォト・アルバム」では、「クリスマスはリヴァプールで!」と「1000
枚のホワイト・アルバム」にちなんだ写真を掲載しています。
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