February 02 2016, No.632
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リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World  
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□■ INDEX ■□

 ▽フロム・エディター
 ▼「利物浦日記2001」(最終回)
 ▽スカウスハウス・ニュース
 ▼今週のフォト


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▽フロム・エディター
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NLW No.632です。
ひさしぶりに、僕の連載「利物浦日記2001」をお届します…といってもこれが
最終回なんですけどね。
しばらくお休みしていた理由というのは、実はこの原稿、昔書いた当時に、ちゃ
んと終わりまで書いていなかったんです。その事実を今回の連載が終わる間際に
なって発見(というかなんというか)して、「あらら、どうしたもんかなあ」と
考えているうちに(というか思考停止しているうちに)何週間も経ってしまった
のです。

ちゃんと書けるほど細かいことは憶えてないけれど、かといってこのまま、蜜柑
じゃなかった未完のまま中途半端な状態で掲載するわけにもいかないので、
「2016年の追記」をエンディングに加筆してお茶を濁す、じゃなかった、落と
し前をつける、じゃなかったえーと、決着をつけることにしました。ピリオドを
打つのに14年もかかっていては手遅れという気もしないではないですが、ひと
まずめでたしめでたし、です。
といってもまあ、書けたのは「1964」というバンドのライヴのことだけなんです
けどね。でもこのバンドはほんとうにとんでもないバンドでした。いまはどうな
んだろう?

● ● ●

今年・2016年の《インターナショナル・ビートルウィーク》のプログラムが発
表になりました!
 https://www.internationalbeatleweek.com/ 

日本のみなさん向けの観賞パッケージは、スカウス・ハウスで企画します。数日
中に、えーとたぶん明日か明後日に、ウェブサイトにアップしますね。
日本代表バンドのライヴ・スケジュールは現在調整中です。決まり次第、発表し
ます。今年もいいバンドが集まりました。お楽しみに!

                         ― Kaz(02/02/2016)


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▼「利物浦日記2001」(最終回)
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「利物浦日記2001~インターナショナル・ビートル・ウィーク2001
/Kazのリヴァプール滞在記」(再録&モア)

≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo632.html ≫

【8月27日(月)】  ミニツアー、洗濯、そして静かなフェスティバル

夜。
「ファブ・フォー」のコンサートが行なわれるロイヤル・コート・シアターに向
かう途中で、「ロブスター・ポット」に寄った。
僕がリヴァプールでいちばんお気に入りのフィッシュ&チップスを売る店だ。
今年この店に来るのは初めてだ。去年は、ほとんど毎日ここに来たものだけれど。
そういえば、昼食、夕食、それから夜食と、同じ日に3度来たこともあったなあ。
ここのフィッシュは、大きさも揚げ具合もちょうど良くて、とても美味しい。
チップスの方は、「スモールで」と言っても食べきれないほどついてくる。
フィッシュとチップスを紙に包む前、いつものように「ソルト・アンド・ヴィネ
ガー?」と店員に訊かれ、いつものように「イエス、ア・ロット・オブ、プリー
ズ」と答えた。

包みを受け取って、外に出る。モルト・ヴィネガーの良い匂いがたまらない。小
脇に抱えた包みの、手前の部分だけを開けて、プラスティックのフォークで突っ
つく。幸せな瞬間。
時間がある時は、チャーチ・ストリートのベンチに座って、寄って来るハトたち
と一緒に食べるのだが、今日は開演時間が近いので、歩きながら食べた。

シアターに着く頃には、フィッシュ&チップスはきれいになくなっていた。歩道
のゴミ箱に包みを捨てて、セキュリティの兄ちゃんたちに挨拶をして中に入った。
1階はスタンディングなので、自称年寄りの僕にはツライ。階上で観ることにし
た。
しかし、英国の古い劇場はどこもだいたいこんな感じなのだろうが、客席が急勾
配で造られているので、2階に上がるには急で長いらせん階段を延々と登って行
かなくてはならない。年寄りにはかなりキツイ。
2階には、3割くらいしか客が入ってなかった。喉が渇いたのでビールが飲みた
くなった。バーは、このシアターのいちばん上にあるようだった。つまり、客席
の階段を全部登りき切った、その向こうにあるのだ。
でも仕方がないので、うんざりしながら長い長い階段を登った。美味しいビール
というものは、たいしたモチベーションを人間に与えるもんだなあと、あらため
て思った。

息を切らしながらバーに入ると、そこには2人の人間しかいなかった。バーテン
の兄ちゃんと、客の労働者風のおじさんだ。仲良さそうにしゃべっている。
「はあはあ…やあ、ビールはある? …はあはあ」と、僕。
「はは、だいじょうぶか? ビールか。ステラならあるよ」と、兄ちゃん。
「ステラかあ、ビターはないの? …はあはあ」
「悪いね、ビールはこれだけだ。でも美味いよ」
「うん、知ってるよ。美味いラガーだよね。じゃあそれ」
「オーライ、2ポンドだ…ありがとう…はいよ…これはな、俺のジュースなんだ」
「ありがとう…ん? ジュース? ははは、なるほどね。チアーズ、メイト!」

ステラ・アトワを持って客席に戻ると、ちょうど「ファブ・フォー」のステージ
が始まった。
このバンドは、ビートル・ウィークに出演する中でも別格中の別格だ。
メンバーの全員が、普段はニューヨークで活躍する一流のスタジオ・ミュージ
シャンで、毎年夏、このフェスティバルのために「ファブ・フォー」を編成して
リヴァプールにやって来る。
ソロ・アーティストとしてのキャリアもあるフロントマンのウィル・リーは、な
んと、元ビートルズの全員と共演したことがあるそうだ。もちろん他のメンバー
も、数々のスーパー・スターたちと仕事をしている。
当然ながら、演奏は抜群に上手い。「トゥモロウ・ネヴァー・ノウズ」などの難
しい曲も、軽々と演奏していた。
しかし、だからといって難しい曲を好んで演奏するわけではないし、曲に余分な
アレンジが付け加えられることもない。基本的には原曲どおりの演奏なのだが、
ビートルズに無理に似せようとはしていないので、そこには「ファブ・フォー」
としての自然なオリジナリティが存在していた。

そして最も印象的だったのが、バンドの全員が実に楽しそうに演奏していること
だった。まあ、プロの余裕とでも言ったらいいのだろうか、オーディエンスと
一緒になって楽しんでいるのだ。特にウィルは、演奏している間じゅうずっと、
ビートルズを演奏することが嬉しくて嬉しくて仕方がないというような笑顔をし
ていた。
会場全体がハッピーになるような、さわやかな笑顔だった。

素晴らしいエンターテイメント・ショウだった。幸せな気分で宿に帰った。


<2016年の追記> -----------------------------------------------------

以上が、2001年の「ビートル・ウィーク」のあとで僕が書いたレポートだ。
この再掲載連載をスタートしたあとで(…というか、ほとんど終了間際になって)
気がついたのだが、このレポートは未完成だった。続きの原稿はないけれど、ま
だ終わっていないのだ。ウェブサイトに載せていなかったのはそのせいで、たぶ
ん「ちゃんと完成させてからアップしよう」と思いつつほったらかしにして、そ
のまま忘れちゃっていたのだ、きっと(やれやれ)。

というわけで、2016年2月2日火曜日に、2001年8月28日火曜日のことを簡単
に書いてみようと思う。

【8月28日(火)】  キャヴァーンの1964

コンヴェンションもマシュー・ストリート・フェスティヴァルも終わってしまっ
たこの日、スカウスハウス・ツアーのお客さんはみんな帰ってしまった。でも
フェスティヴァルはもう1日残っていて、僕はひとりだけでしっかり堪能した。

最終日の目玉イヴェントは、キャヴァーン・バックでの「1964」のコンサート
だった。このアメリカのバンドは正式名を「1964...The Tribute」といって、僕
個人にとっては、世界ナンバー1のビートルズ・コピーバンドである。あれから
14年以上も経つけれど、今でもそう思う。1964を初めて観たのは1997年のビー
トル・ウィークで、あれはなんというホールだったか、古いボールルームのよう
なレトロな会場で彼らを観ていて、最初は背筋がぞくぞく、そしてそのうちにく
らくらとめまいがしたのをおぼえている。いつの間にかタイムスリップをしてほ
んもののビートルズのライヴ会場に紛れ込んでしまったのではないか、いやそん
なはずは、と自問自答した末に、横にいたおじさんに、「今って何年?」と訊い
てしまったくらいだ。おじさんも「1997年だけど、まるで1964年だよな」と真
面目な顔で答えてくれた。

あれはほんとうに信じられないような体験だった。幻想というか異空間というか、
自分が別世界に連れて行かれたような錯覚をおぼえたのは、あとにもさきにもこ
のときだけだ。ライヴが終わってもずっと鳥肌が立っていた。次にステージに登
場したのは全盛期のギャリー・ギブソンだったけれど、もうどうでもいいと思っ
てしまったくらいだ。

2001年ビートル・ウィークでの1964は、MCの二ールとのやりとりも含めて、実
にプロフェッショナルなステージだったことが印象に残っている。ぎゅうぎゅう
満員のキャヴァーンらしく、フィジカルでリアルで熱い(暑い)ライヴで、オー
ディエンスはひとり残らずノックアウトされた。会場まるごと全速力で突っ走ら
せてしまうような、おそろしいまでのドライヴ感だった。
ライヴのあとも興奮冷めやらず、彼らが手売りしているCDを思わず買ってし
まったのは僕だけではなかった。£10だったか£15だったか…2枚組のライヴ
盤だ。あれはいまどこに眠っているのだろう? ジョージ役のジミーが日本のこ
とをよく知っていて、やたら話しかけられたっけ。知っている日本語を得意げに
並べる姿がかわいらしかった。

2001年のビートル・ウィークというと、僕はまずこの1964のライヴを思い出す。
彼らをキャヴァーンで、しかも数メートルの至近距離で体験できたことはシアワ
セだった。また来てくれないかな。

(おわり)

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