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September 01 2020, No.757
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リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World
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     *** http://scousehouse.net/ ***


□■ INDEX ■□

 ▽フロム・エディター
 ▼NLWアーカイヴ:「リヴァプールの新ビートルズ・スポット」(2005年)
 ▽スカウスハウス・ニュース
 ▼今週のフォト


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▽フロム・エディター
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NLW No.757です。

先週木曜日にスタートした『"Virtually" International Beatleweek』、みなさんご
覧になっていますか? (キャヴァーン・クラブFacebookページ
www.Facebook.com/Cavernclubliverpool にて開催)

僕はといえば、さすがに全部とはいきませんが…というか、半分も観られてない
ですが…というか、6分の1もたぶん観てない…かな。それでもかなり楽しんで
います。

「世界にはいろんなバンドがいるもんだなあ」
「みんなすっごく個性的だなあ」
「おそろしいくらいにレベルが高いバンドがごろごろいるもんだなあ」

と、あらためて感心しました。演奏をただビデオに収めるだけじゃなく、趣向を
凝らした演出があったり、自分たちの街の風景を取り入れたり、20人くらいのリ
モート演奏があったり、十人十色。もうほんとカラフルで、まったく飽きません。

日本代表4バンドのビデオも、かなり評判がいいです。硬派なバンド、サウンド
が素晴らしいバンド、フレンドリーなバンド、フレンドリーすぎるバンド……と
まあいろいろですが、実にいいラインナップです。加えて、キャヴァーンの書く
紹介文や、バンドのビデオの中に僕の名前が(写真も!?)登場するのは、うれ
しいような恥ずかしいような。でももちろん、ありがたいことです(名前の綴り、
間違ったりしてるケド)。

ひとつ残念だったのは、おそらく配信元になっているFacebookのアクシデント
のため、ストリーミングが一時ストップしてしまったこと。日本時間の月曜日午
前のことで、3時40分に登場予定だった#4 Dreamsも含めて、いくつかのバン
ドが犠牲になってしまいました…。
「どうするのかなー」と思っていたら、さすがに対応は素早かったです。翌日の
プログラムを延長して、未配信のビデオを順次流してくれました(今朝のことで
す)。よかった~。

「ヴァーチャル・ビートルウィーク」は、今日・火曜日で閉幕となります。日本
のバンドのライヴ上映はすべて終わっていますが、今日も世界のトップ・バンド
が続々登場します。
もちろんアーカイブは残されているので、リアルタイムで観なくてもだいじょう
ぶ。あとで繰り返し観ることも可能です。バンドにとってはいい記念になります
ね…いや、いい記念どころじゃないか。「聖地」キャヴァーンのアーカイブに残る
わけですから、これはたいへんな名誉では?

つくづく思うのは、ビートルズ・バンドにとっての世界最大の舞台「ビートル
ウィーク」が、これほどまでに気前よくオープンに公開されるというのは実に画
期的なことで、「いつかあの場所に」と将来を夢見ているバンドにとっては目標が
より明確に、鮮明に、リアルになることでしょう。逆に、自信を失ってしまって
意気消沈、夢をあきらめるバンドも出てくるかもしれませんが…。みなさんがん
ばってくださいね。

……と、持ち上げたあとでナンなんですけど、ほんとうのビートルウィークのラ
イヴははっきり言ってこんなもんじゃないです。どれだけビデオのクォリティが
高くても、現場の音、ナマの迫力にはとうてい敵いません。それにプラスして、
リヴァプールという街や地元の人々、世界中から集まってくるビートルズ・ファ
ン、キャヴァーンやアデルフィという歴史が詰まった会場があってこそのビート
ルウィークなんですよね。
あの空気、爆音、匂い、密着感、たくさんの笑顔、陽の光や雨や風、カモメの鳴
き声……なにもかもがたまらなく恋しいです。

● ● ●

「NLWアーカイヴ」第4弾として、15年前のNLW No.217(2005年9月20日
発行)から、「利物浦日記(2005年夏) 第1話 <リヴァプールの新ビートルズ・
スポット>」をお届けします。
ビートルズの前身バンド「ザ・クォリーメン」が自主制作レコードを録音した
「パーシー・フィリップス・レコーディング・スタジオ」の跡地に、記念のプ
ラークが取り付けられたときのお話です。プラーク設置のセレモニーが行われた
のは2005年の8月26日でしたが、ビートルウィーク中で僕は都合がつかず、そ
の4日後にひとりで訪ねました(ということは8月30日で、ほとんどぴったり
15年前ですね)。
そのときに撮影した写真を、「今週のフォト・アルバム」で紹介します(…それ以
来まったく訪ねてないことにさっき気がつきました)。

たぶんNLWでは伝えてなかったと思いますが(書かなきゃとは思ってたんです
が)、2年前・2018年のビートルウィークでは、このクォリーメンの(というか
ジョン、ポール&ジョージの)初レコーディングの60周年記念として、コンヴェ
ンションの会場で特別展『The Percy Phillips Studio Collection 1955-169』が
開催されました。これがなかなか本格的なもので、得難い体験でした。そのとき
の写真もあわせて紹介しますね。
 http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo757.html 

ちなみにですが、この世界に1枚しか存在しない10インチの超貴重盤は、クォ
リーメンのメンバーの間で回し聴きされて最後に行きついたジョン・“ダフ”・ロ
ウの手で20年以上保管され、その後1981年からポール・マッカートニーが所有
しています。
今では、A面・B面両トラックとも、1995年にリリースされた『ビートルズ・ア
ンソロジー1』で聴くことができます。
……が、B面の「イン・スパイト・オブ・オール・ザ・デインジャー」(ポール&
ジョージの共作)は、元々は3分25秒の演奏時間であったことが確認されている
のに対して、『アンソロジー』収録ヴァージョンは2分45秒と、にゃんと40秒も
短縮されているのです。まあこの曲は2分45秒でもちょっと長いかなと個人的に
は思ったりもするのですが(おいおい)、3分25秒ヴァージョン、いつか機会が
あったら聴いてみたいです。

……と思って調べてみたら、3:25ヴァージョンは、オリジナルの1枚のほかに、
ポールが個人的に制作して親しい人たちに配ったというレプリカ盤が存在するそ
うです。プレス枚数は、78回転盤(オリジナルと同じ)、45回転盤、それぞれ
25枚だそうで、つまり合計でわずか50枚。僕の手元にある『Record Collector -
Rare Record Price Guide 2010』に掲載されている評価額は、78回転、45回転と
もに1万ポンド(現在のレートでおよそ145万円)です(ちなみに世界に1枚し
かないオリジナル盤の評価額はその10倍)。このプライス・ガイドは2010年版な
ので、今ではもっと値上がりしているはず。まあどっちにしろ、レプリカ盤が市
場に出回る可能性は限りなくゼロに近いでしょうし、もしオークションに出品さ
れたとしても、我々庶民にとっては形而上的な落札価格になりそうです。

オークションといえば、ホンモノかどうかは不明ながら、そのレプリカ盤らしき
ものが2004年にeBayのオークションに出品されたことがあるそうです。その際
の落札価格は1,500ドル(現在のレートでおよそ16万円)ということで、ふうん、
これならちょっとだけ現実的、かも?? 「イン・スパイト・オブ・オール・ザ・
デインジャー」の収録時間は間違いなく3分25秒だったそうです。

● ● ●

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                         ― Kaz(01/09/2020)


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▼NLWアーカイヴ:#04「世界最大のストリート・フェスティヴァル」
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過去のNLWからピックアップしてお届けするアーカイヴ・コーナーです。
第4回は、15年前の2005年8月26日に記念プラークが設置された「パーシー・
フィリップス・レコーディング・スタジオ」の話。2005年9月20日発行のNLW
No.217に、「利物浦日記(2005年夏)」の第1話として掲載したものです。


「リヴァプールの新ビートルズ・スポット」/ Kaz (2005年)----------------

≪≪≪ NLW No.217 - September 20, 2005 ≫≫≫

2005年8月26日、リヴァプールのケンジントンで、小さなセレモニーが行
われた。
ロイヤル・リヴァプール・ホスピタルにほど近い小さなテラス・ハウスが、新た
にリヴァプールの「ビートルズ・マップ」に書き加えられることになったのだ。

これまでは「知る人ぞのみ知る」存在だった、ケンジントンの38番地。
この場所には、パーシー・フィリップスという男が経営するレコーディング・ス
タジオがあった。
スタジオではバンドの練習が出来るほか、テープに録音したり、レコードを作る
ことができた。
1958年、後にビートルズとなる「クォリーメン」が、ここで2曲の演奏を吹
き込んだ。バディ・ホリーの「ザットル・ビー・ザ・デイ」と、ポール&ジョー
ジの共作「イン・スパイト・オブ・オール・ザ・デインジャー」。
お金がなかったので、テープには録音せず、レコード盤に直接、演奏を刻んだ。

この日演奏したクォリーメンのメンバーは、ジョン・レノン、ポール・マッカー
トニー、ジョージ・ハリスン、コリン・ハントン(ドラムス)、ジョン・“ダフ”・
ロウ(ピアノ)の5人だった。
この時に作られたデモ・レコードは、メンバーの間で回し聴きされた後に忘れ去
られ、80年代になってジョン・ロウがその存在を明らかにした。
この世にたった1枚だけ存在するクォリーメンのレコード。現在はポールが所有
している。

「幻のレコーディング」だったこの2曲だが、1995年にリリースされたアル
バム『ビートルズ・アンソロジー1』に収録され、今ではファンの誰もが「クォ
リーメン=未来のビートルズ」の歴史的な音源を聴くことができる。
僕は、『ビートルズ・アンソロジー』シリーズの中では、『1』がいちばん好きだ。
圧倒的に。
それはやはり、リヴァプールを感じることができるからだと思う。中でもこの
クォリーメンの2曲は、「フリー・アズ・ア・バード」にも匹敵する、特別なト
ラックだと思う。

17歳のジョン・レノンの声。
「ジョン・レノンは産まれた時からジョン・レノンだったんだなあ」
と、聴くたびに感動してしまう。

 ● ● ●

さて、セレモニーの話。
クォリーメンのレコーディングが行われたことを記念したプラーク(記念プレー
ト)がケンジントンの38番地に設置され、8月26日に除幕式が行われた。
残念ながら僕は別の用事があってセレモニーには参加できなかったが、翌日の新
聞「デイリー・ポスト」と「リヴァプール・エコー」に、その模様が写真つきで
伝えられた。
除幕式に出席したのは、ケンジントン生まれのラジオ・プレゼンター、ビリー・
バトラー、レコーディングに参加したコリン・ハントンとジョン・ロウ、そして
ジョン・レノンの妹ジュリア・ベアードだった。

コリンは、「デイリー・ポスト」紙に当時のことをこう回想している。
「私たちみんな、3シリング6ペンスを出し合ったのを憶えてるよ。でもその時
フィリップスさんに、(直接レコードに音を入れるより)まずテープに入れるのが
ベストだぞって言われたんだよね」
「それにはいくらかかるんだってジョン(レノン)が訊いて、フィリップスさん
は1ポンドだって答えた」
「そしたらジョンもポールも真っ青になっちゃってね。で、結局レコードにダイ
レクトに吹き込むことになったんだよ」
「アップルが『ビートルズ・アンソロジー』にあれを収録してくれて、最終的に
はめでたしめでたしってことになったよね。私たちみんながあの音源をシェアで
きるし、3シリング6ペンスどころか、それ以上を還元してもらったよ。印税で
ね」

ジョン・ロウはこう話している。
「20年前にやるべきだったな。だってここからすべてが始まったんだから」

 ● ● ●

セレモニーから4日後、やっと時間ができたので、ケンジントン38番地を訪ね
てみた。
家の壁や玄関ドアのペンキは、キレイに塗り替えられている。玄関の上のガラス
窓には、演奏しているビートルズのシルエットに“BIRTHPLACE OF THE
BEATLES” の文字が添えられている。そしてその上のスペースに、素敵なデザイ
ンのプラークが居心地よさそうに収まっている。

実は僕は、ちょうど2年前に、このプラークのデザインを見ている。
見ただけでなく、このプラークの原画のコピーを持っている。
プラーク・デザイナーのフレッド・オブライエンさんと偶然に知り合って、彼か
ら気前良くプレゼントしてもらったのだ。もちろん、今も手元に大切にとってあ
る。

その原画と今回の完成版とを比べると、ポールとジョージ以外のメンバーの写真
は差し替えられ、文字のフォントや文言にも修正が施されていることがわかる。
しかし、いちばん決定的な違いは、“ SUPPORTED BY kensington regeneration ”
というクレジットだ。
おそらくは、このスポンサーを見つけ、実際の設置にこぎつけるまでに、2年の
月日を要したということなのだろう。

「ケンジントン・リジェネレーション」は、ケンジントン地区の再生を目的に活
動する公的機関のようだ。
ケンジントン地区に埋もれている歴史的・文化的なスポットにライトを当て、対
外的にPRして行くことは、彼らの重要な仕事のひとつであるに違いない。
それが、「ビートルズのファースト・レコーディングが行われた場所」であれば、
まさに願ったり叶ったりというところではないだろうか。
海外からも観光客を呼べるポイントが出来たことで、ケンジントン地区の活性化
に、大きな弾みがつくかもしれない。
もちろんビートルズ・ファンにとっても、ありがたい話だ。

この「パーシー・フィリップス・レコーディング・スタジオ跡」は、リヴァプー
ルの中心部からは少しだけ離れたところにある。
ライム・ストリート駅からだと、歩いておよそ15分というところだろうか。

何かのついでにひょいと立ち寄れるようなロケーションではないけれども、これ
からリヴァプールでビートルズの足跡を辿るファンには、ぜひとも訪れてほしい
と思う。
ビートルズのためにも、クォリーメンのためにも、そしてケンジントン地区のた
めにも…。

心からそう願いながら、ケンジントン38番地を後にした。

(おわり)

≪ http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo217.htm ≫


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▽スカウスハウス・ニュース
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▼今週のフォト
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*** 今週のフォト・アルバム ******

「今週のフォト・アルバム」では、「パーシー・フィリップス・レコーディング・
スタジオ」に関する写真を紹介します。2005年と2018年の撮影。
 http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo757.html 


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