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July 06 2021, No.792
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リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World
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     *** http://scousehouse.net/ ***


□■ INDEX ■□

 ▽フロム・エディター
 ▼リヴァプール・ニュース <7月6日>
 ▽スカウスハウス・ニュース
 ▼今週のフォト


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▽フロム・エディター
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ラファがリヴァプールに帰って来ました!
ラファエル・ベニテス。2004-05シーズンから2009-10シーズンまで、通算6季
リヴァプールFCの監督を務め、チャンピオンズ・リーグ(イスタンブールの奇
跡!)やFAカップなどのタイトルをもたらし、以後インテルやチェルシー、ナ
ポリ、レアル・マドリー、ニューカッスルなどでも手腕を発揮した世界的な名将
です。

しかし、「帰って来た」と言っても今回はリヴァプールという街の「赤いほう」
ではありません。そう、「青いほう」。リヴァプールの永遠の(+にっくき)ライ
ヴァルであるエヴァトンFCということで、センセーショナルな話題となってい
ます。

普通に考えると禁じ手というか「あり得ない」就任なわけで、「もしかして史上
初?」と一瞬思ったのですが、報道によると、両クラブの監督を務めた例は過
去に1度だけあるそうです。
調べてみたら、それはウィリアム・エドワード・バークレーさんというアイリッ
シュで、にゃんとこのかた、エヴァトンとリヴァプール、両方の初代マネー
ジャー(=監督)なのでした。
エヴァトンでは1888年8月(つまり世界初のフットボール・リーグであるイン
グリッシュ・フットボールリーグのスタートです)から1889年5月まで、そし
てリヴァプールでは1892年2月から1896年8月まで指揮を執っています(クラ
ブのセクレタリー、ジョン・マケーナとの共同監督)。

リヴァプールFC誕生のいきさつは面白くて、当時の本拠地アンフィールド・ス
タジアムの家賃値上げに怒ったエヴァトンFCが公園の向う側に引っ越して行っ
てしまい、しょうがないので(?)残ったスタッフや選手が中心となって新たに
結成されたのがリヴァプールFCだったのでした。つまりバークレーさんはその
「残ったスタッフ」のひとりだったわけですね。監督を退いたあとにはリヴァ
プールのチェアマンを務めたり、FA(英国フットボール協会)でも働いたりして
いたということなので、かなりの人格者だったのではないでしょうか。

それから特筆すべきなのが、クラブ名を「リヴァプールFC」にするようにオー
ナーのジョン・ホールディングさんに進言したのがこのバークレーさんだったと
いうこと。なんでもホールディングさんが新クラブにつけていた名前は「エヴァ
トンFC・アンド・アスレティック・グラウンズ・リミテッド」(略称:エヴァト
ン・アスレティック)というもので、たぶんこれは「こちがほんもののエヴァト
ンやで」という負けん気が現れた命名なんでしょうが、あっちもエヴァトンこっ
ちもエヴァトンではさすがにややこし過ぎますよね。もしも改称されないまま
続いていたらと思うとちょっと楽しい気分にはなりますが…いやいや、とにかく
「リヴァプールFC」の生みの親、バークレーさんありがとう。

念のためですが、これらの出来事が起きたのは19世紀の末で、日本では明治時
代です。確認してみると、バークリーさんのエヴァトン監督時代に起きた出来
事は、大日本帝国憲法公布(1889年)やパリ万国博覧会開催(1889年―通算4
度めのパリ万博)などが、リヴァプール監督時代には、日英通商条約調印
(1894年)、日清戦争開戦(1894年)、第1回夏季オリンピックがアテネで開催
(1896年)、明治三陸地震発生(1896年)などがあります。
ライト兄弟が初めて飛行機を飛ばすのも、日露戦争も、タイタニック号が沈没す
るのも、第一次世界大戦が始まるのも、フィンランドが独立するのも、もう
ちょっとあとのことです。

で、えーと、なんだっけ。
そうそう、ラファです。ラファでした。
リヴァプールとエヴァトンの両方で指揮を執るという130年ぶりの快挙達成には、
実はそれなりの、「ラファだからこそ」な理由があります。
ラファがリヴァプールの監督に就任したのは2004年の夏ですが、その時以来、
ベニテス家はずっとマージーサイドにあるのです。リヴァプールの監督を退任し
たあともずっと。気候とか食べ物とか言語とか習慣とか、どう考えても故郷のス
ペインのほうが過ごしやすいんじゃないかと思うんですけど、ラファも奥さまも
子供さんも、リヴァプールが心底気に入ってしまったのですね。うん、その気持
ちは僕にはよくわかります。わかりますが、かれこれもう17年です。こんなに
長いことマージーサイドに住んでおられるというのはちょっと感動してしまい
ます。

ラファと奥さまは地域のチャリティにも熱心で、リヴァプール監督退任後の
2011年には「モンツェ・ベニテス・ファウンデーション」を設立、以来毎年
15,000ポンド(およそ225万円)以上の基金を地域のために集めているほか、
リヴァプール・ウィメンズ・ホスピタルや「ヒルズボロ・ファミリーズ・サポー
ト・グループ」への協力も継続しているそうです。こうした長年の地道な活動は、
ラファのリヴァプール愛をしっかり証明しているわけで、ラファや家族にとって
リヴァプールはすっかり「地元」なんですよね。これまで単身赴任が多かったラ
ファが地元で仕事ができるんですから、ラファにとってもリヴァプールの人々に
とっても、こんなにハッピーなことはないんじゃないかと思うのです。
一部のエヴァトニアンはラファの監督就任に拒絶反応を示しているようですけど、
そのうち彼らもきっと理解してくれるはず…そうあってほしい。

僕はラファの監督ぶりが大好きで、ゲーム中の姿をいつも感心して見ていました。
監督というものはたいていはピッチサイドで派手なアクションをしてしまうもの
ですが、ラファは常に冷静沈着。怒ったり喜んだり取り乱したりするのを見たこ
とがありません(たぶん)。
劇的なゴールが決まろうが、逆に痛恨のゴールを許そうが、ピクリとも表情を変
えずにサラサラとメモを取っていたり、横のコーチと話をしていたりしているの
です。スタジアムじゅうが嵐のようになっていてもまるでどこ吹く風。これが実
にカッコいいんですよ。ゲームが終わるまではわき目も振らずひたすら勝利を求
め続ける。目の前のことに一喜一憂するヒマがあったら、1秒でも2秒でも早く
切り替えて、現状認識や対応策、打開策に頭を使うのが指揮官の仕事だというわ
けですね。実にクール。まるでドラゴンズの落合監督みたい…ですが、ラファは
選手への指示はそれなりにパッショネイトだし、一旦ピッチを離れると記者や
ファンへのサーヴィスを厭わないフレンドリーなジェントルマン。あ、いや、
落合監督がジェントルマンじゃないと言ってるわけでは決してないのですが、え
えと……(僕は落合監督も好きです)。

話を戻すと、試合でのラファの冷徹ぶりが嫌いという人も少なくないようですが、
僕はイイと思います。リヴァプールのクロップとは正反対ですよね。鍋焼きう
どんと冷製パスタくらい違います。なんだそれ。

新シーズンのマージーサイド・ダービーが今から楽しみです。

● ● ●

今号の「ニュース」では、ラファのエヴァトン監督就任後の初インタヴューを
抜粋&翻訳してお届けします。
6月30日、監督就任発表と同時にエヴァトンFCのオフィシャル・サイトが伝え
たものです。

● ● ●

「今週のフォト・アルバム」は、リヴァプール時代のラファの写真を。2007-08
シーズンのもので、現地のアーティスト、スー・ミルバーンさん撮影です。当時、
スカウスハウスのために撮ってくださいました。
 http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo792.html 

                         ― Kaz(06/07/2021)


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▼リヴァプール・ニュース <7月6日>
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*** 7月6日(火) *******************************

【ラファのファースト・インタヴュー】

6月30日、エヴァトンFCはラファエル・ベニテスの監督就任を発表しました。
以下はエヴァトンのオフィシャル・サイトに掲載されたベニテスの最初のインタ
ヴューです。

「私がここでやるべきことは、勝者のメンタリティをもたらすこと、戦えるクラ
ブにすることだ。ピッチの上でも外でも、どこであろうと」
「このクラブの人たちの情熱に惚れた。この街のことはよく知っているし、スカ
ウサーについてもそうだ。すべてのファンにとって、我々が全力で戦うことや勝
利を求めることは大きな意味を持つことも理解している。このエヴァトンという
チームの一員になることは特別なこと。それもよく身にしみて分かっている」
「私は戦いの場が好きだ。戦いに勝つのも好きだ。私はレアル・マドリーのア
カデミー出身で、ウィニング・メンタリティーというものは昔から身について
いる。これまで13のタイトルを獲得できたのもそのメンタリティーのおかげだ
と思っているし、これで終わりにするつもりもない。もっともっと勝ちたいね」
「エヴァトンに決めたのは、強豪復活のプランが気に入ったからでもある。す
べてのゲームで、すべての相手に対して勝ちに行く」
「オーナーや経営陣の情熱を見てほしい。誰もがクラブをより良くしたい、
ニュー・スタジアムを大きな飛躍にしたいと一生懸命なんだ」

(名門復活にかける意気込みについて)
「人生を通じて、私はハードに働いて来たし、成功を求めて来た。そして幸運な
ことに、さまざまな国で成功を収めることができた。同じようにチャレンジする
つもりだが、これまでの経験が活かせるはずだ。ここがどんな街かもファンのこ
ともよく知っている。プレミアリーグがどんなリーグかもね」
「優秀なプレイヤーがそろっていれば、彼らをどうマネージするかということに
なる。選手たちが発展途上であれば、チームのクォリティを引き上げるための
何かを持って来ることになる。正しいメンタリティはもちろん必要だ」
「選手たちのキャラクターも大事だね。ピッチの上でみんなが一丸となって戦え
るような。それこそがファンが求めているものだ。ファンの後押しは絶対に必
要だし、そうしてくれると信じている」

(監督としてのキャリアのうち、6年間をエヴァトンにとって同じ街のライヴァ
ル、リヴァプールで過ごしたことについて)
「私はこれまでマドリッドやナポリ、ヴァレンシア、テネリフェ、エストレマ
ドゥーラなどで仕事をした。そのすべてのクラブで、私は全力で戦った。クラ
ブのために全力で戦う。それがクラブがマネージャーに望むものだと信じてい
るから、私はそうしたんだ」
「そして今私はここにいる。ここでクラブのためにすべてのゲームを全力で戦
う。相手がライヴァルであろうがどこであろうが関係なく。そうしなければなら
ないわけだが、そうしようと思ってするわけではない。自然にそうなるものだし、
とにかくベストを尽くすのみだ」
「この街には、実にたくさんのファンが私のことを愛してくれている。それはや
はり、私が彼らのためにすべてを捧げたことをわかってくれているからだと思う。
今度は同じことをエヴァトンのためにやるだけだ」

(エヴァトンのレジェンドでありコーチング・スタッフのダンカン・ファーガソ
ンについて)
「ダンカンは私たちにとって重要な基盤になる。彼はクラブのことをよく知って
いるし、ファンのこともよく理解している。そのメンタリティもね」
「彼が一緒に働いてくれることは心強い。我々は彼から学び、彼も我々から学ぶ。
私たちの、いろんな国やリーグでの経験を学んでもらえると思う」

(エヴァトンのダイレクター・オブ・フットボール、マルセル・ブランズにつ
いて)
「スペインではダイレクター・オブ・フットボールと仕事をしていたよ。マル
セルはプロフェッショナルだ。私もプロフェッショナルだ。共に働き、常に話し
合うことになるだろう。クラブの現状や未来や、プレイヤーについてね」
「私たちの間のコミュニケーションは非常に重要なものになる。だから常にお互
い言いたいことを言い合うことになるだろうね。そういうのは私は大歓迎だ」
「彼とはすでにコンタクトを持っているよ。(サマー・トランスファーについて
の)私のプランも伝えてある」

New manager Benitez on his desire to succeed at Everton
by Peter Lennox, evertonfc.com, 30 Jun 2021
https://www.evertonfc.com/news/2021/june/new-manager-benitez-on-his-desire-to-succeed-at-everton/


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「今週のフォト・アルバム」は、リヴァプール時代のラファの写真を。2007-08
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