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February 08 2022, No.807
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リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NLW ■
     *** http://scousehouse.net/ ***


□■ INDEX ■□

 ▽フロム・エディター
 ▼NLWアーカイヴ:#24「サム・リーチとビートルズのアンプ」(2009)
 ▽スカウスハウス・ニュース
 ▼今週のフォト


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▽フロム・エディター
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今朝、朝刊をうしろからペラっとめくった瞬間、絶句しました。

「姫路城マラソン中止」

の記事。びっくり&がっくりです。これで3年連続。

(…このあとで、愚痴やら批判やらをさんざん書き綴ったのですが、見苦しい
のでカットします…)

僕もそうですが、出場するランナーは2ヶ月、3ヶ月、あるいはそれ以上の月
日をかけて走り込んで、レースのために準備しているのです。
今年こそは、なにがあっても開催してほしかった。このやり場のない気持ち、
どうすれば??

● ● ●

…と、今日は朝からカッカカッカしてしまってるわけですが、NLWのことは忘
れてません。
だからこそこうやって1週間ぶりくらいに(おいおい)コンピュータのスイッ
チを入れてるわけですが、1週間ぶりということはNLWのための原稿のストッ
クはゼロ(そしてアイデアもゼロ…)。これから準備します。さてさて……。

…およそ4時間後…

目処がつきました。
2009年…だから13年前のNLW No.373からのアーカイヴです。題して「サム・
リーチとビートルズのアンプ」。当時「フロム・エディター」で書いた文章、
プラスちょっと追記、のようなものを。
どうでもいいっちゃどうでもいいような話ではありますが、だからこそちょっ
と面白い…かな。アーカイヴ本文より追記のほうが長いです。

サム・リーチさんは2016年の12月21日に亡くなりました。もう5年も経っ
ちゃったんですね。あのはにかんだような笑顔と、ちょっとしゃがれた高い声
は、今でもよく憶えています。ほんと愉しくて人柄のいい、フレンドリーなス
カウサーでした。
(5年前のNLW No.659に追悼の記事&写真を掲載しています。
     http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo659.html )

● ● ●

≪Beatleweek 2022:出場バンド募集中!≫
スカウス・ハウスでは、2022年のインターナショナル・ビートルウィーク
(8月24日~30日)に、日本代表として出場するビートルズ・トリビュー
ト・バンドを募集します。出場を希望されるバンドは、info@scousehouse.net
までご連絡ください。メール件名は「IBW22バンドエントリー」とし、本文に
は、バンド名と簡単なプロフィール、代表者のお名前・住所・電話番号・PC
メールアドレスをご記入ください。折り返し、募集要項をメール添付送信い
たします(募集要項の内容をご検討のうえ、あらためてお申込みください)。
エントリー申し込みの締め切りは2月28日(月)です。

                         -- Kaz(08/02/2022)

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▼NLWアーカイヴ:#24「サム・リーチとビートルズのアンプ」(2009)
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過去のNLWからピックアップしてお届けするアーカイヴ・コーナーです。
第24回は、13年前のNLW No.373(2009年2月3日発行)の「フロム・エディ
ター」から。「リヴァプール・エコー」で読んだ記事をネタに個人的な思い出
を綴ったものです。
そして今回は、13年前の記事をさらに発展させる形で追記を加えてみました。


「サム・リーチとビートルズのアンプ」(2009)-----------------------

≪≪≪ NLW No.373 - February 03, 2009 ≫≫≫

*** フロム・エディター *********************

1週間ほど前のことですが、リヴァプールのローカル夕刊紙<Liverpool
Echo>のウェブ版で、「ビートルズのアンプが見つかった」という記事を
見つけました。
ウールトンにあるジョージ・ハリスンが住んでいた家の、数ブロック先の
お宅の物置で発見されたアンプが、どうやらビートルズがデビュー前に
使っていたものらしい、という話なのです。
VOX AC30というアンプで、マイクと西ドイツ製のリード、そしてビートル
ズのサイン入りの写真が一緒に置いてあったのだそうです。

本当だとすれば大発見ですよね。でも、それが本物であると証明でき
る人はいるのでしょうか。
ボブ・ウーラーさんは亡くなってしまったし、アラン・ウィリアムズが証言
しても誰も信用しません。
というわけで、やはりこの人、サム・リーチさんの登場となったようです。
ブライアン・エプスタインが現れる前まで、ビートルズのプロモーターを
やっていた人です。

サムさんは、<エコー>の記者にこうコメントしています。
「間違いあれへんな。奴らはこのちんまいのとおんなじようなアンプをど
こんでも持ってっとったよ。ちゅうても女の子がきゃーきゃーゆうて何も
聴こえへんかったけどな」

思わず関西弁風に訳してしまいました。すみません。
でも、サムさんの口調は、なんとなくこんなニュアンスなんです。
サムさんとは、去年のBeatle Weekが終わった翌日に、マシュー・スト
リートのパブGrapesで話す機会がありました。

「カズ、俺、今度日本に行くかもしれへんねん」
「日本に? どうしたの?」
「コージュマーに招待されたんや。コージュマーはすごいビートルズ・
ファンでな、こないだ来たんだわ。ほんでぜひ日本に来てくれゆうて誘
われてな」
「コージュマー? 誰それ?」
「お前、コージュマーを知らんのか。前の総理大臣やろうが」
「総理大臣? …あ、もしかしてコイズミ??」
「そやそや、コージュマー」
「……」
「せやから俺、日本に行くかもしれへんねん。来年の春くらいちゃうか
な」
「…………」

小泉さんがリヴァプールに行ったなんて話は聞いたことないですよね?
ブッシュさんとメンフィスに行ってプレスリーのモノマネをした話なら有名
ですけど…。
いやいや、サムさんがホラ吹きだと言っているわけではないですよ。も
しかしたら本当かもしれませんし、僕を楽しませるために多少サーヴィ
スしてくれたのかもしれません。

さて、先ほどのビートルズのアンプの話。
あらためてサムさんのコメントを読んでみると、最初に間違いないと断
言しておきながら、その後はずいぶんと自信なさげなようにも見受けら
れます。
そりゃまあそうですよね。自分のものでもないアンプ、しかも47~8年前
に何度か見ただけのものを、細部までしっかり憶えてるなんてことはあ
り得ないですよね。
記事では、このアンプの現在の持ち主のコメントは紹介されていませ
ん。ということは、このアンプがいつ、なぜ、どうやってこの物置に置か
れたのかということは、おそらく不明なのでしょう。

なんだか謎はますます深まるばかり。
そもそも、サム・リーチの証言だけで「ビートルズのアンプ」と断定する
のは、そりゃあ無理というものです。
この記事を書いたエコーの記者にはぜひ、他の証言者を探したり(例
えばビートルズと共演したマージービートのバンドとか)、同じアンプが
写っているビートルズの写真を探したりして(いっぱいあると思うんです
けど…)、さらに追及して行ってほしいです。

                        -- Kaz (03/02/2009)


≪≪≪ 13年後の追記(February 08, 2022) ≫≫≫

今日、NLW No.807に何を書こうかと過去の同時期のバックナンバーをチェック
していて、上の記事を見つけた。書いたことすらすっかり忘れていたが、(な
かなか面白いじゃん)と我ながら感心してしまった。サム・リーチさんの愛す
べきダメ男ぶりがいくらかでも伝わる文章になっていると思う(書くまでもな
いと思うが、「俺、今度日本に行くかもしれへんねん」が実現することはな
かった)。
と同時に、この新聞沙汰になったアンプについて、もうちょっと深堀りしても
よかったのでは、とも考えた。
ビートルズのアンプといえばVOX。でも僕は楽器やら器材やらについてはぜん
ぜん詳しくないので、このVOX AC30というアンプがどんなものかまったくわ
かってなかったし、13年前は確認してみようともしなかったのだ。
というわけで、本棚の奥のほうにあった分厚い専門書を取り出してみた。
「Beatles gear - All the Fab Four's instruments, from stage to studio
by ANDY BABIUK」である。ビートルズ・バンドをやっている人にはおなじみの
本だろう。邦訳も出ているし、数年前に改訂版も出版されているが、僕が持っ
てるのは洋書(米国版)で、2001年発行の初版のようだ。
それをパラパラと繰っていると、ああ、これだこれだ、VOX AC30。ちっちゃい
けれど、ちゃんと写真付きで載っている。その横の本文に目を移すと、
「Beatles and Vox」というサブジェクトが。ふむふむ、なるほど。とっても
面白いエピソードが書いてある。ブライアン、強気すぎ。せっかくなので、ざ
ざっと翻訳してみよう。

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Beatles and Vox

(1962年)7月のある日、(ブライアン・)エプスタインはセントラル・ロン
ドンのチャリング・クロス・ロードにある「ジェニングス」に足を運んだ。
「ジェニングス・ミュージカル・インダストリー(JMI)」は、1950年代初めに
トム・ジェニングスが創業した「ジェニングス・オーガン・カンパニー」から
1958年に社名を変更したもので、同時にチーフ・デザイン・エンジニアの
ディック・デニーが考案したVoxアンプの製造・販売へと事業の舵を切った。
1962年にはVoxギターの生産もスタートさせている。Voxの工場はロンドン南
西、ケントのダートフォードにあった。

エプスタインの接客をしたのはショップのマネージャー、レグ・クラークだっ
た。
「ブライアンは、ドイツで演奏していたバンドをみていると言ってた。イング
ランドに戻ったところなんだと。これからかなりビッグになるよ、ともね」と
クラークは回想する。
「だが彼らのイクイップメントはちょっとばかしくたびれてしまっている、と。
で、おたくの扱ってるアップ・トゥ・デートな機材を使ってみたいと思ってる
んだが、取り引きできないだろうかと言った。彼のお目当てはうちが売り出し
たばかりのAC-30だった」

クラークはエプスタインに、値引きは可能ですと答えた。しかしそのグループ
のマネージャーは、アンプリファイアをワンセット、ザ・ビートルズに無料で
提供してほしいのだ、と言う。
「彼は私にこう言ったんだ。このボーイズたちはとんでもなくビッグになる。
そうすればおたくにとっても素晴らしい宣伝になるし、何千倍もの見返りにな
りますよ、と」
「それで私はオーナーのトム・ジェニングスに電話をかけることになった。今
しがたのやりとりを彼に伝えたわけだ。それを聞いたトムの言葉を、今でも一
語一句、おぼえているよ。彼はこう言ったんだ。
『そいつは俺たちのことをなんだと思ってんだ? ファッキンな慈善団体か
よ!』
とは言え、私は自分の判断でエプスタインとの取引に応じることにした…だっ
て、トムはノーとは言ってないわけだから。

エプスタインはクラークに、自分の希望通りにしてくれれば、Voxはこのグ
ループをどんな広告にも使うことが出来るし、そのために1ペニーも支払う必
要はないと言った。さらに、自分がマネージャーでいる限り、グループには
Vox以外のアンプを決して使わさせない、とも。
「本当に使わなかったね。それに、エプスタインからは宣伝用の写真を何枚も
もらったけれど、代金を請求されたことはなかった。彼は約束をきっちり守っ
たんだよ」

(後略)
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実にビートルズらしい、豪快で痛快なエピソードではないか。ブライアンもブ
ライアンだが、クラークさんもクラークさんである。
この話が本当だとすると、ビートルズがVOX AC30を使いだしたのは1962年7
月以降ということになる。デビュー・シングルがリリースされるのは同年10
月5日だから、最大でもその間、3ヶ月。「エコー」に載った「ウールトンの
物置で発見されたAC30」が「ビートルズがデビュー前に使っていたアンプ」で
あるというのは、ほとんどあり得ないというほかない。JMIとの取引の前にす
でにAC30を購入して使っていた、という可能性も考えてみたが、AC30は発売
されたばかりだったわけだし、すでに最新機材を持っているのなら新調の必要
はないだろう。念のために片っぱしから当時のステージ写真をチェックしてみ
たが、1962年7月以前のビートルズのステージではジョージのアンプはギブソ
ン製、ジョンのアンプはフェンダー製であり、それが8月以降はVOXのお揃い
に切り替わっている。なるほど、この本に書いてあるとおりではないか。

……なんてことは、ビートルズの楽器に詳しい人なら常識の範疇(もしかして
初歩の初歩?)なのかもしれないけれど、自分であれこれ考えたり調べたりす
るのは、ひさしぶりにワクワクする体験だった。買ったままほったらかしにし
ていた「ビートルズ・ギア」も、活躍の機会が巡ってきて喜んでいるだろう。

ちなみに、ジョージとジョンの古いアンプは、VOX AC30の代わりとしてJMIの
ショップに引き取られた、ということだ。今も残っていたら国宝級だにゃ。


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▽スカウスハウス・ニュース
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≪Beatleweek 2022:出場バンド募集中!≫
スカウス・ハウスでは、2022年のインターナショナル・ビートルウィーク
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たします(募集要項の内容をご検討のうえ、あらためてお申込みください)。
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で掲載します(パート3)。
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